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LINKED Vol.25:稲沢市民病院


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消化器領域で、
できないことをなくしたい。

 

 

稲沢市民病院


人を得て、さらなる躍進をめざす、
消化器内科。

main

平成26年11月、新病院へ新築・移転した稲沢市民病院は、
内視鏡による診断・治療体制を大幅に拡充させ、成果を上げている。
その原動力が1年半前に赴任した女性医師とカプセル内視鏡の導入。
これまでとは何が違い、何ができるのか。導入の経緯と実力を探る。

 

 

 

 

 

きっかけは、小腸カプセル内視鏡。
高まる診断力、治療力。

C1__170217_046 かつて〈小腸〉は、医療界では暗黒大陸といわれていた。胃と大腸の間にあって複雑に折り畳まれており、検査をするにも胃や大腸のように専用の内視鏡はなく、長らくCTなどを用いたX線検査で、外部からその様子をとらえることしかできなかった。
 そこに近年、画期的な検査方法が登場した。〈小腸カプセル内視鏡〉である。長さ約2・1㎝のカメラのついたカプセルを、錠剤と同じ要領で口から飲む。すると、カプセルは胃腸の収縮運動によって小腸に運ばれ、自動的に小腸内を撮影し、その画像が無線で体外の受信装置に送られる。これにより全長6〜7mある小腸全体の観察が可能となったのだ。稲沢市民病院に、このカプセル内視鏡を導入したのが、名古屋大学医学部附属病院の消化器内科で、後藤秀実教授の指導のもと臨床経験を積み、約1年半前、同院に赴任した名倉明日香医師である。
 「カプセル内視鏡の画像なら、これまでX線では判別できなかった小さな病変や小腸内の出血まで判断できます。」と名倉医師。その導入により、上部消化管(食道・胃・十二指腸)と下部消化管(小腸・大腸)は、内視鏡とカプセル内視鏡。肝臓、胆道(胆管・胆嚢)、膵臓には、MRIの一種であるMRCP(MR胆管膵管撮影)、内視鏡とその先端から伸びるカテーテル(細い管)によるERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)、内視鏡を用いて超音波を体内から送受信するEUS(超音波内視鏡)で対応。よほど特殊な症例でない限り、消化器領域のすべてにおいて診断ができるようになった。
 また、診断に加え、同科は治療面も充実させている。7年前に赴任した坂田豊博消化器内科部長は、広範囲の病変を切除でPlus顔写真_名倉先生きる内視鏡治療ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)に、いち早く取り組んできたエキスパート。稲沢市民病院にも、上部消化管の早期がん治療にESDを導入した。そして、下部消化管が専門の名倉医師が赴任以降は、大腸にもESDが実施できる体制が整った。
 検査の結果、手術が必要な場合は、消化器外科との連携になる。その外科について、「対応できない疾患はほとんどないと思います」と話す名倉医師。久納孝夫副院長をはじめ、経験豊富なベテラン外科医が控えており、坂田部長は「他の病院では執刀できない病変にも、対応してもらっています」と言う。外科との連携も含めて、消化器領域において同院は、非常に高いレベルの診断・治療が実践されているのだ。

ボックス(知ろう)1

 

 

過去のジレンマを越え、充実した体制を整備。
そしてさらなる進化へ。

 C2__170217_131 旧病院時代の消化器内科は、検査数が圧倒的に少なかった。診療機器は大半が旧式。当時の医師たちは、同院の医師不足を補うために、消化器以外の疾患にも対応が必要であり、そうした状況が地域の人々にも伝わるのか、坂田部長は「消化器疾患で来院される患者さんの数自体が少なかった」と打ち明ける。それらが相まって、医師たちの士気も低迷気味だった。
 こうした状況を一変させるべく、新病院では診療体制の強化が図られた。医療機器では、内視鏡には、画像がより鮮明に映し出される細径ファイバーを採用。超音波内視鏡の専用機も導入され、病変を超音波内視鏡で観察しながら、生検針で穿刺して細胞を採取できるEUSーFNA(超音波内視鏡下穿刺吸引術)も可能となった。そして、前述のカプセル内視鏡が入ってきたのだ。
 環境整備に加え、医師たちに刺激を与えたのが名倉医師だ。これまでピースとして欠けていた下部消化管の診療に、その専門である彼女が加わり、各自が得意な専門領域を持ちつつ、消化器全般に幅広く対応できる総合力が増大。環境の変化が医師たちを奮起させていった。
 現在では、患者数が急激に増加。「私が赴任した頃の検査数は年間1800件程度。Plus顔写真_坂田先生それが平成28年には約2倍の約3500件まで伸びています。6000件までは対応可能ですね」(坂田部長)。
 充実した診療体制が整備され、周辺地域の中核病院と比べても、全く遜色ない医療が提供できる同院の消化器内科。ただ、ここで満足するつもりはない。名倉医師は「消化器内科は疾患の幅が広いのですが、私たちを頼って来てくれる患者さんの期待に応えられる医療を提供したい」と言う。そして、坂田部長は「まだまだ現実と理想はだいぶ離れている。現実を一つずつクリアして理想に近づけていきたいです」。
 その理想とは、〈消化器領域なら、できないことはない〉病院になること。その理想を、これからも追い続ける決意だ。

ボックス(知ろう)2

 

column

コラム

●稲沢市民病院の外科は、中堅以上のベテラン外科医が顔を揃える。上部・下部消化管、肝臓、胆道(胆管・胆嚢)、膵臓、そして、がん治療において、各学会の専門医、指導医たちばかりだ。

●消化器内科の坂田部長、名倉医師は、「この手術は難しいだろうと判断した症例についても、『大丈夫、いきましょう』と外科側から声をかけてくださる。フットワークも軽く、内科医としてとても安心できます」と口を揃え、全幅の信頼を寄せている。

●内科と外科の関係を簡単にいうと、内科が見つけ外科が切るというもの。すなわち、内科が診察や精密な検査をもとに病気などを診断し、その病気の原因部分を、外科が手術で取り除くことになる。

●消化器内科が活性化し、本来の力を発揮し出した今、〈技に自信あり〉の外科と一体となることで、同院の消化器領域は、さらなる進化を遂げようとしている。

 

backstage

バックステージ

一つの新たなピースが、
組織本来の実力発揮に繋がる。


●稲沢市民病院・消化器内科の姿を通して、人と組織の関係を改めて考えさせられた。要は、組織の構成員たちが個別には力を持っていても、それらが別々の方向を向いていては、組織としての総合力には結びつかないということだ。

●そこに新たなピースが一つ入ったことによって、複合的に混ざり合い、それがこれまでにない刺激となり全体を活性化させる。まさに人による化学反応の大きさを知ることができた。

●その一方で、病院自体も設備投資に力を入れた。医師たちが本来有している能力、機能を発揮できるステージを整えたのだ。

●人を得て、環境を得て、今、稲沢市民病院の消化器内科は大きく前進しようとしている。そこには、高い技術力を持つ外科のバックアップがあることは言うまでもない。

 


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