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LINKED Vol.09:安城更生病院

2013年8月9日 金曜日
シアワセメイン_09安城在宅医療の夢を追う看護師と、 その夢を全力で支援する病院と。 小森恵太/安城更生病院 緩和医療センター 看護の領域は多岐にわたるが、とりわけ訪問看護師には、急性期から終末期にわたる幅広い知識や応用力が要求される。なぜなら、一人で患者を看て、自分の裁量で判断しなくてはならないからだ。一途に在宅医療を志し、安城更生病院へ飛び込んだ看護師。その思いを受け止めて支援する病院。両者の関係から、看護師教育の新たな意義が見えてきた。         地域基幹病院としての [...]

LINKED Vol.09:安城更生病院


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在宅医療の夢を追う看護師と、
その夢を全力で支援する病院と。

小森恵太安城更生病院 緩和医療センター


シアワセメイン_09安城

看護の領域は多岐にわたるが、とりわけ訪問看護師には、急性期から終末期にわたる幅広い知識や応用力が要求される。なぜなら、一人で患者を看て、自分の裁量で判断しなくてはならないからだ。一途に在宅医療を志し、安城更生病院へ飛び込んだ看護師。その思いを受け止めて支援する病院。両者の関係から、看護師教育の新たな意義が見えてきた。

 

 

 

 


地域基幹病院としてのあり方への挑戦。組織を超えた広い視野で、地域の「看護」、そして「看護師」を考える。


 

夢の実現に向けて、今までと違う領域でキャリアを磨きたい。

190020 「将来は在宅医療分野で訪問看護ステーションを開業したい。だから数年後には必ず辞めますが、それでも採用していただけますか」。看護師の小森恵太がそう言って、安城更生病院の門を叩いたのは、2009年のことだった。
 小森の話をひととおり聞いた看護部長の神谷正湖は、「同じ看護師の仲間として、精一杯応援しましょう」と快諾した。小森が当時在籍していた大学病院から安城更生病院への転職を考えたのは、同院が地域の基幹病院であるとともに、訪問看護センターを開いて地域医療に貢献しているからだった。「ずっと救急看護に携わってきたので、神経疾患や脳血管疾患を患う方の在宅ケアの技術がなく、看取りの技術もありません。この病院なら、そういうことがすべて学べると考えました」。
 入職した小森はまず、在宅医療に役立つだろうと、神経難病患者や脳卒中患者をケアする病棟へ配属された。そこで2年間、セルフケア拡大や家族看護の重要性などを学んだ小森は、次に「訪問看護センター」への異動を願い出る。しかし、神谷看護部長の「緩和ケアも体験しておくべき」という助言に従い、緩和医療センターへ。その次にタイミングをみて訪問看護センターへ異動することが決まっている。こうした目標に沿った異動のほか、院外の勉強会に参加する機会も豊富に提供されてきた。その勉強会で、小森は在宅医療のトップランナーとも言うべき男性看護師と出会うこともできた。「看護部長の支援から、院内外からの刺激を受けて燃え上がれ、というメッセージを感じています」と小森はほほえむ。

友人の突然の死。そして、2025年を見据えた将来ビジョン。

 そもそも小森が看護師を志し、在宅医療へと導かれるようになった原点は、18歳の頃にさかのぼる。当時、中学を出て鳶職として働いていた小森は、突然の交通事故で友人を失う。生きるとは何か、自問自答の日々が続いた。「彼が死んで、僕は生き残った。しかし、彼が生きていた方が世のためになったかもしれない。だとすれば、僕は生きている意味がない。“小森が生きて良かったんだよ”と彼から思われる人間になろう」。そう思えた瞬間、幼い頃から親に教えられてきた「誰かのためになる人間になりなさい」という言葉が浮かんだ。「そうだ、人を助ける医療の仕事をしよう」。固く決意した小森はすぐさま鳶職を辞め、定時制高校から准看護学校を経て個人病院に入職。さらに看護専門学校で看護師の資格を取得し、大学病院へと歩んできた。190130
 高度救命救急の最前線で誇りをもって働いていた小森だが、やがて「家で死にたいと考える人がたくさんいる」ことに気づく。「家で死にたいとか、その人らしい最期を迎えるとはどういうことか、と救急をやりながらすごく考えました。目の前の人を助けることだけが、看護の仕事じゃない。在宅医療こそ、僕が進むべき道だと思ったんです」。
 この新たな決意が、冒頭で紹介した安城更生病院への転職につながった。今、小森の頭の中には、明確な将来プランができあがっている。安城更生病院で約5年間、緩和ケアや訪問看護を学び、その後、小森が師匠と仰ぐ看護師(勉強会で出会った在宅医療のトップランナー)のもとで1年間修業、2015年には訪問看護ステーションを立ち上げるというものだ。小森が訪問看護ステーションの開業を急ぐのには、理由がある。「2025年から30年の間に高齢者が日本の三分の一を占め、独居の人が4割になるといわれています。そのときになって訪問看護ステーションを開いても遅い。早くからネットワークを作り、2025年に備えたいと考えています」。

地域に貢献できる看護師を育て、輩出していく仕組みを。

190039 一方の神谷看護部長は、どんな思いで小森を受け入れたのだろうか。「面接するまでは、救急領域の充実を考えていて、彼のキャリアに期待していました。でも、話を聞いて、この人は本気だと思ったんです。安定を捨て、起業というリスクをとろうとしている。それなら、こちらも組織を超えた広い視野で支援しなくては…と思いました」。
 医師の場合、地域の基幹病院が多くの研修医を採用して、臨床での教育をしっかり行い、その後は大学医局を通して地域に輩出するシステムが構築されつつある。安城更生病院自体もその任への挑戦を果たす。しかし、看護師の場合、採用した人を育てて社会に送り出すような仕組みはまだない。「今回のケースを通じて、医師だけでなく、看護師教育にもそういう考え方が必要だと改めて思いました。当院が“教育病院”的な立ち位置なら、広く地域に貢献できるような看護師を育てていく役割が、そろそろ私たち看護部にも求められている。そのことを彼が教えてくれましたね。また、在宅で活躍する看護師が増えなくては、高齢化の進む地域社会を支えられないとも思います。組織としてはやせ我慢なところもたくさんありますが、そういう時代になっていくのではないでしょうか」。
 確かに、一生懸命育てても、数年で辞めてしまうということは、所属部署にとっても、そして、病院にとっても、残念なことといえよう。「でも、夢のある人を応援するのは気持ちいいものです。将来、彼が訪問看護ステーションを立ち上げれば、当院とのネットワークも持てると思いますね」と、神谷看護部長は懐深く、小森の将来を見守っていこうとしている。

「看護師はいい仕事」と心から断言できる。

190168 小森は今、他の病院ではあまり見られない独立型の緩和医療190114センターの日々を通じ、学びと成長を続けている。緩和ケア病棟のテーマは、“患者さんにとって良い時間”を提供すること。「一方的な医療ではなく、その人にとってより良い時間とするには何ができるか、という思想を学んでいます。緩和ケアの第一人者といわれる方の言葉で“看護師の自由度が患者の可能性を広げる”というのがあります。たとえば、自転車の好きな患者さんの良い時間は何かを考えたら、風を感じることだと気づきました。そこで、ほとんど寝たきりの日々でしたが、薬の量などを工夫して、30分だけ車椅子で戸外に出ていただけるようにしました。車椅子では自転車のハンドルに見立てた棒を握っていただき、僕が通常より早い速度で車椅子を押したんです。患者さんは、本当にうれしそうに、風を感じる爽快感を味わってくださった様子でした。安全性はもちろん確認したうえで、他部署のスタッフと連携してあらゆる手を尽くせば、患者さんの自由や可能性が広がることを実感しています」。
 小森がめざす看護とは何か。「病気にフォーカスするのではなく、病気をもって生きている人を看る、それが看護だと思います。その視点でいえば、投薬もリハビリテーションも心のケアも全部、看護の領域です。求められるものも大きいけれど、患者さんからもらうものもすごく多いし、看護師って本当にいい仕事です。日本で今、就職難で困っている人もみんな看護師になればいいのにって思いますね」。そう言って、小森は朗らかに笑った。


 

 

 

 

column

83R83898380●安城更生病院では、看護師のキャリアアップを実現するために、経験年数に応じた院内研修をはじめ、多数の研修会・勉強会を院内で企画。各種学会、院外研修への参加の機会も豊富に設け、適した人材をタイミング良く派遣している。

● 一人ひとり異なるキャリア志向への対応もきめこまやかだ。たとえば、個々の思いを把握するためのツールに、「キャリアアップシート」がある。これは各自が 今後、どのように活躍したいかを具体的に記入し、その内容に沿ったアドバイスや支援を病院サイドが提供するものだ。さらに神谷看護部長は「研修医がいろい ろな施設を経験するように、将来的には、看護師も当院に所属したまま、他院で勉強するような機会を用意できれば…」と構想をふくらませる。看護師一人ひと りを主役にした教育支援。それが、同院の大きな魅力といえるだろう。

 

 

backstage

83o83b83N83X83e815B83W● 「2025年問題」という言葉が、たびたび報道でも取り上げられるようになってきた。65歳以上の人口が3600万人を超え、戦後の団塊の世代が75歳以 上になり、医療費など社会保障費が急増すると心配される問題である。そうなれば当然、医療ニーズの高い在宅療養者も増え、在宅医療の現場はいっそう人手が 足りなくなるだろう。

●看護師不足が叫ばれ、どこの病院でも看護師の獲得が死活問題となっている。採用した看護師を育て、戦力にしていく ことは、組織としての命題である。しかし、これからの高齢化と地域医療の行方を展望すれば、組織単位で看護師の充足を図るだけではとうてい対応できない。 安城更生病院のように、必要な人材を地域へ送り出す“教育病院”的な取り組みが重要になっていくのではないだろうか。

 


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