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LINKED vol.12 タイアップ

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LINKED Vol.12:トヨタ記念病院

2013年11月20日 水曜日
main「患者さんの悩みや苦しみに共感し、 共にがんと対峙していく」。 自分らしく生きてもらうために。     トヨタ記念病院 入院治療、外来化学療法、緩和ケア…さまざまな部門が密に連携し、「がんと共に生きる患者」を多面的に支えていく。 「これからも治療しながら、好きなボランティアを続けたい」と語るのは、高橋三四治さん(66歳)。平成24年3月、膵臓がんと診断されたときは、すでに病状がかなり進行していた。手術よりも抗がん剤治療をすすめられ、2週間に一度の外来治療が始まる。つらい副作用 [...]

LINKED Vol.12:トヨタ記念病院


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病院を知ろう

「患者さんの悩みや苦しみに共感し、
共にがんと対峙していく」。
自分らしく生きてもらうために。

 

 

トヨタ記念病院


main入院治療、外来化学療法、緩和ケア…さまざまな部門が密に連携し、「がんと共に生きる患者」を多面的に支えていく。

「これからも治療しながら、好きなボランティアを続けたい」と語るのは、高橋三四治さん(66歳)。平成24年3月、膵臓がんと診断されたときは、すでに病状がかなり進行していた。手術よりも抗がん剤治療をすすめられ、2週間に一度の外来治療が始まる。つらい副作用、背中の疼痛、黄疸症状、さまざまな症状と闘いながら、今という時間を精一杯自分らしく、そして、楽しみながら生きている。

大切な一日一日を愛おしみながら生きていく。

みこし 一昨年、定年を迎えた高橋さんの楽しみは、ボランティア活動。毎週土日に、豊田市の市街地にある自然公園で、草刈りに汗を流し、子ども向けの田植え教室や餅つき大会に携わる。ボランティアを始めたのは18年くらい前から。小さい頃から父親に「人のために何かやれよ」すがいと教えられたからだという。公園活動のほか、14年前からは富士山の植樹活動も始めた。年2回、マイクロバスに子どもたちを乗せて、富士山の5合目まで登り、苗木を植えている。今年は、9月末に出かけた。
 トヨタ記念病院に通うのは2週間に1回、火曜日に化学療法を受けている。点滴の後は全身がぐったりして、木曜か金曜までだるさが続く。「土曜日曜は元気になるので、ボランティア活動に合わせて治療しているような感じですね」と高橋さんは笑う。ボランティア活動こそ今の生きがい。高橋さんは、自分を支えるこの活動にすべての照準を合わせ、一日一日を大切に積み重ねる。しかし時折、妻と二人、朝の珈琲を飲んでいると、「こうして二人で飲めるのは、あと何回あるかな」と思う。
 抗がん剤のコントロールが効かなくなると、短期入院することもある。取材当時、高橋さんは、膵臓がんにより圧迫された胆管を広げる内視鏡的治療を受けるために入院していた。調子が落ち着いているときと、やや悪くなるときと、のこぎりの刃のようだと高橋さんは言う。

 

がんと共に生きていく。そう決意するまで。

_BA9273 高橋さんが体の異変に気づいたのは、平成23年12月中頃。胃に重苦しい痛みを感じ、年が明けて1月13日、診療所を受診。ひと通り症状を訴えると、「紹介状を書くから、トヨタ記念病院へ行ってください」と言われ、「えっ」と驚いた。ちょうど定年を迎え、これからゆっくりしようか、と思っていた矢先のこと。「多分、あまりよくないんだなと思いました」。
 トヨタ記念病院では、後の主治医となる鈴木貴久医師(消化器科科部長)が出迎えた。最初に胃カメラ(内視鏡検査)を行ったが、異常なし。さらに、血液検査やCT検査を行うなかで、膵臓の病気が疑われた。
 最終的な診断は、3月22日。造影剤を用いたCT検査で膵臓に腫瘍発見。その画像を元に、鈴木医師は消化器外科の辻秀樹医師(副院長)に手術適応について相談した。辻医師の判断は、「手術よりも、化学療法がいいのではないか」。膵臓がんは進行してから見つかることが多い。高橋さんも同様で、手術をしてもがんを全部摘出できず、しかも重要な血管が錯綜した手術が難しい部位で、術後の予後不良も懸念された。「医師チームで話し合った末の難しい判断だった」と辻医師は振り返る。
 鈴木医師、辻医師は、高橋さんに診断結果と治療方針を丁寧に説明した。告げられた余命は、早くて4カ月。これを聞いて無論、衝撃を受けないわけはない。しかしこのときも、高橋さんの脳裏には父親の言葉が過ぎった。「40歳を過ぎたら自分で判断して自分で行動する。それで初めて自分の顔になる」。定年まで自動車エンジンの技術者として、精一杯生きてきた自分がいる。その人生に寄り添って歩いた妻との時間が在る。「これだけ生かさせてもらったのだから」と思う。傍らにいた妻も「しょうがないね」という顔でうなずいた。「先生たちが包み隠さず、素直に丁寧に説明してくださった。だから、抗がん剤治療を受けようとその場で決心できました」。高橋さんはそのときのことをこう振り返る。
 抗がん剤治療はそれからすぐに始まった。1年半ほど治療を続けた頃、高橋さんはセカンドオピニオンを求めて、愛知県がんセンターを訪ねたことがある。きつい痛みが続き、違う意見も聞いてみたかったからだ。そこで、抗がん剤を変更する提案を持ち帰り、鈴木医師に相談。別の抗がん剤にしてから、身体は少し楽になったという。「知人からは先進医療や治験など、いろいろ方法があるのではないかとも言われますが、そういう話もここの先生にはすべて相談し、素直な意見を返してもらっています。一番良いのは、先生が何でも隠さず丁寧に話してくださること。余分な不安を持たずに済む。最期までここでお世話になりますよ」と高橋さんは言う。

 

残された時間を有効に使ってもらうために

Plus顔写真1 日本では、男性の2人に1人、女性の3人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなっている(厚生労働省ホームページより)。がんは今や身近な国民病となり、病名の告知は当たり前の時代になってきた。
 しかし、それでもなお、患者にとって告知は衝撃的なできごとであり、絶望感や不安、抑鬱などさまざまな精神的な苦痛を伴う。家族にとっても、それは同様だ。そうしたなかで、辻医師は「(条件がそろえば)100%病名を告知する」という。自分の病気について正しく理解し、残された時間を有効に使ってほしいと考えるからだ。たとえば、やり残した仕事や家族との約束など、「やっておきたいことをして、自分らしく生きてほしい」と願う。
 辻医師は率直に病名を告げると同時に、病状をわかりやすく説明し、治療法についてもさまざまな選択肢を提示する。リスクのある治療法については、「自分や自分の親だったらどうするか」を念頭に置いてアドバイスするという。積極的な手術療法が適応できない場合も、「当院では診られない」と突き放したりはしない。抗がん剤治療、緩和ケアなどを組み合わせ、全力でサポートする。「うちの患者さんはうちで責任をもつのが当たり前ですから」と辻医師は言う。

患者さんを独りにさせない、不安にさせない。

_BA9315 がんを発症して治療が終わるまでの道筋を支援するために、同院では、さまざまな部門が関わり、一人ひとりのがん患者にアプローチしている。積極的な入院治療が必要な段階では、臓器別センターを組織し、チーム医療を推進。週に一度は症例検討会を開催するなど、内科医と外科医が密接に連携し、最善の医療を提供する。
 抗がん剤の通院治療を行う段階では、化学療法室のがん化学療法看護認定看護師、がん専門薬剤師などが身体的、精神的にきめ細かく支える。同時に、疼痛を訴える患者には、緩和ケア外来で辻医師、緩和ケア認定看護師などがさまざまなケアを行う。
 また、緩和ケア外来に限らず、一般外来においても看護師が不安な心に寄り添う。高橋さんは、鈴木医師の診察を受ける前に看護師と30分以上面談し、さまざまな相談をしているという。
_BA9129 このほか、医療社会福祉相談室内には、生活上の悩みに応える「がん相談支援センター」があり、医療ソーシャルワーカーの発案で、がんサロン「なごみ会」も発足した。この会には、辻医師もほぼ毎回出席し、患者の疑問や相談に親身に応えている。「他院のがんサロンに足を運んだこともありますが、患者同士の交流だけ。ここでは先生が専門的な話やアドバイスをしてくれるから、とても役立ちますね」と、高橋さんも評価する。
 こうしたがん患者への手厚い支援体制の狙いはどこにあるのか。「この地域のがん患者さんが、この病院で一貫して治療やケアを受けられるようにしたい。その利便性を地域に広げていくのが目標です」と辻医師は語る。同院がめざすのは、高度な治療と総合的なケアが受けられる地域の拠点づくり。がん患者一人ひとりの心に寄り添いながら、長期にわたる「がんとの闘い」を、病院を挙げてサポートしている。
 高橋さんは言う。「父親から『自分がどう生きるか』といった話を常に聞いていました。だから私、生きることには一生懸命です。あと4カ月と言われてから1年7カ月、ここの先生たちと一緒に、こうして生きています」

 


 

column

 

コラム

●トヨタ記念病院のがん診療に対する総合的なアプローチは、十数年前から始まった。入院がん患者の苦痛を少しでも取り除けるように、日本緩和医療学会に所属し、情報収集と勉強をスタート。平成17年より病棟において緩和ケアチームが活動を開始。それ以降、化学療法室、緩和ケア外来、がんに関わる認定看護師の育成など、必要な機能を順次、整えてきた。

●こうした基盤づくりの上に、平成24年4月、「愛知県がん診療拠点」の指定を受ける。この指定を機に、病院を挙げての取り組みがいっそう活発化。「がんサロン」の開設に続き、今年1月には手狭だった化学療法室を広げ、従来の10床から15床に増床し、アメニティ環境を大きく向上させた。がん診療に総合的に取り組む拠点として、同院は今後もさまざまな機能の充実を図っていく計画である。

backstage

バックステージ

●「がんと共に、自分らしく生きよう」とする人たちを支えるために、医療や社会は何ができるだろうか。そう考えると、多くの課題が見えてくる。まず、難治・再発がんを受け入れる病院や、終末期医療に力を入れる病院の数が少ないこと。病院ではなく、在宅で終末期を迎える場合も、訪問医療・介護の支援体制は充分に整備されていない。

●次に、長期にわたる化学療法における経済的な問題。民間医療保険の多くは外来治療をカバーしておらず、高額療養費制度などを利用しても、月々の経済的な負担は患者と家族に重くのしかかる。その上で、就労の問題もある。職場の寛容な理解が得られず、職場復帰を断念する人が多いのが現状だ。治療の不安、経済的な不安、生活の不安…。こうした不安を解決するには、医療と社会が一体となって、がんと共に生きる人を支える仕組みづくりが急がれているのではないだろうか。

 


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