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LINKED Vol.22:みよし市民病院


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病院を知ろう

医療・介護・行政が一つとなり、
さらに深く生活のなかへ。
<オールみよし>に向けた挑戦は続く。

 

 

みよし市民病院


病院と生活を繋ぐ、新たなアプローチ。
行政サービスのスペシャリストと、地域包括ケア病床。

main

近年、退院支援(調整)に力を入れる急性期病院が増えてきた。退院支援(調整)とは、退院して自宅に戻る患者に必要な医療・介護サービスの継続と活用を支援したり、自宅に戻れない場合に介護施設などを紹介する取り組みである。
みよし市民病院においても、退院支援のキーマンとして、行政の最前線で活躍してきた社会福祉士を招き入れた。
だがその背景には、単に退院支援に留まらない同院の目線があった。

 

 

 

 

 

地域包括支援センターから
社会福祉士を登用。

Plus顔写真_1 「今はまだ、医療用語にとまどうことも多くて…」。そう言って苦笑するのは、平成28年4月、みよし市民病院の地域連携・医療相談室(退院支援チーム)に赴任した社会福祉士(※)の七里祐次である。これまでは、みよし市や豊田市の地域包括支援センター(高齢者の生活を総合的に支える自治体のサポート機関)の相談員として、行政サービスの最前線で高齢者の在宅療養を支援してきた。
 以前は、病院の外側から高齢者の生活を支えていた七里は、そこで、たびたび難問にぶつかっていた。「近年、急性期病院は退院支援に力を入れていますが、その仕組みからこぼれてしまう患者さんがいます。たとえば…ご家族から、『昨日いきなり退院になって、どうすればいいのか…』という相談の電話があり、駆けつけてみると家の中は大混乱。患者さんは自力で起き上がれないのに、介護用ベッドもなく、必要なおむつも用意されていない。家族を励ましながら、一つひとつ療養環境を整えていきました。また、高齢者の独居世帯や夫婦二人世帯が増え、介護力の不足から療養生活を継続できなくなることもあります。どうすればよいのか、思い悩む場面も多々ありました」。
 KX0A5908在宅療養を支えたいが、行政が提供できる支援には限界がある。そんな問題意識を抱えていた七里は今、<病院の内側から患者と家族を支える>という新たな任務を得て、大きな意欲を燃やす。「病院内なら、行政の窓口よりもっと早い段階から、踏み込んだ支援ができるはず。前職で築いた地域の在宅療養を支える多職種チームとのネットワークも活かし、退院日までに万全の準備をして、患者さんを送り出せる体制を構築していきたいですね」。

※ 高齢者や障害者の援助を行う、福祉サービスの専門家。病院に勤務する場合は、一般に<医療ソーシャルワーカー:MSW>と呼ばれる。

 

 

医療・介護、
そして、行政との繋ぎ役。

 KX0A5841 七里の赴任は、同院の事業管理者・成瀬 達医師のたっての希望だった。理由は、患者の退院後の生活を支えるには、医療・介護の連携だけでは限界があり、患者の生活を援助する行政も加わることで、三位一体の強力な支援体制が構築されるとの考えにある。七里は話す。「管理者からは<行政との繋ぎ役を担ってほしい>と言われています。必要な行政サービスを的確に患者さんに繋ぐとともに、医療・介護サイドの要望を行政に伝え、問題解決を図っていく役割ですね。重責ですが、医療・介護・行政の連携強化に貢献していきたいと考えます」。
 そうした七里がまず取り組んでいるのは、院内スタッフとの関係づくりだ。「これまで当院には社会福祉士という専門職、MSWといった職制の職員がいませんでした。ですから、どのような専門知識を持ち、何を担うのか。みんなに知ってほしいですね」。KX0A5697
 同院の病棟看護師たちは、患者の生活背景をも見つめ、退院後の在宅療養に繋がるケアを行っているが、在宅療養は、ケアだけでなく患者や家族の金銭問題、施設問題など、総合的にバランスを取らないと実現しない。保険や福祉関係の公的な申請、療養に必要な自宅環境の整備、さらには、多職種連携での在宅サービス提供にも、手続きや段取りが必要なのだ。
 「患者さんの退院後の生活を見つめ、退院カンファレンスの充実なども図っていきたいですね。これまで当院の退院支援業務は、看護師1名・事務職1名の先輩たちが、全力を注いできました。今春から私ともう一人、みよし市の在宅介護支援センター(※)から看護師(保健師)が加わり、退院支援チームは4名体制。退院する患者さんと家族を総合的に支えていきたいと思います」(七里)。

※ 高齢者の相談を受け、介護に関わる情報提供や調整を行うサポート機関。平成18年の介護保険改正で地域包括支援センターが新設され、在宅介護支援センターの統廃合(地域包括支援センターへの一本化)が進められている。

 

 

背景にあるものは   
地域医療体制の転換。

KX0A5755 わが国の地域医療体制は、今、<病院から在宅へ>と大きな転換が進められている。これまで、病状は安定したが、自宅へ戻るには不安が残るという高齢患者は、慢性期を対象とする療養病棟(医療保険)に入院し、退院の準備を進めることができた。しかし、これからはそうした時間の余裕が許されなくなるのだ。
 それは、急性期治療を終えた患者だけが対象ではない。同じく療養病床に入院する<医療区分1(軽度)>の患者にも適用される。こうした患者は、さまざまな理由で退院の見通しが立たず、長期入院しているケースが多い。いわば病院が生活の場である。その70%は在宅で過ごすことが可能だと国は表明し、早期の在宅復帰を促しているのだ。
 急性期治療後の高齢患者だけでも、スムーズな在宅療養への移行が問題になっている今日、さらに、在宅に戻るべき高齢患者の母数が一気に増加。医療や介護、福祉の援助を必要とする人々が、今後は地域のなかに溢れ出ることになる。
 ではそうした人々を、地域で支えていくことができるのか。KX0A5776それに対し、国は、団塊の世代が75歳以上になる2025年を目標に、全国の市町村で<地域包括ケアシステム>の構築をめざしている。これは、住み慣れた地域で高齢者が暮らしていけるように、<住まい・医療・介護・予防・生活支援>の5つのサービスを、地域住民に一体的に提供する仕組みづくりだ。
 しかし、その実現には、住居や人材の確保など、多くの困難が立ちはだかる。今から準備をしても間に合うのかどうか。みよし市民病院が、退院支援チームの強化を図った理由がここにある。これまで、地域包括ケアシステムを推進する側にいた専門職を招聘し、在宅療養に入る患者の道筋を、さらに明確に、的確につけていこうというものだ。
 そしてさらにその奥には、同院が地域を見つめ平成28年度に開設する、<地域包括ケア病床>の存在がある。

 

 

地域包括ケアシステムの
中核を担う病院として。

Plus顔写真_2 地域包括ケア病床には、三つの機能が求められている。急性期治療後の患者の受け入れ、在宅療養中に急性増悪した患者の受け入れ、そして、そうした患者の在宅復帰への支援だ。すなわち、高度な急性期医療までは要らないが、一般急性期の範疇での医療を必要とする患者への対応。家族の介護負担軽減を目的とした、レスパイト入院にも対応する。
 総看護師長の尾崎真代は言う。「病院から在宅への転換が進むなかで、当院が果たすべき第一の役割は、病院(入院治療)と生活(在宅療養)の間にある溝を埋め、切れ目なく支援することです。地域包括ケア病床は、まさにその機能を担うもの。病院から生活(地域包括ケアシステム)への繋ぎ目に存在します。上手く活用し、今まで以上にシームレスな療養支援をしたいですね」。
 そこで大切なことは何だろうか。尾崎は「患者さんの生活を見据えた継続的なサポートです」と言い、こう続けた。「在宅療養中の高齢者はささいなことで体調を崩します。そんなときに速やかに受け入れ、調子が戻ったら在宅に帰っていただく。そんなふうに地域で暮らす人の<入退院>を時間軸で支援し続けることが私たちの使命です。その使命を果たすには、新たな病床の機能を使い切ること。その推進役を、在宅療養の現実を知る七里さんたちに期待しています」。
KX0A5913 みよし市では、地域包括ケアシステムに関わる人の団結力を意味する<オールみよし>をスローガンに掲げ、市民病院や医師会、介護事業所の関係者などが集まり、地域包括ケアシステムを構築するための協議(オールみよし推進会議)を進めている。そこにあって、みよし市民病院は、医療と地域を見つめ、市民の生活に寄り添う病院としての責任を、どこまでも果たそうと挑戦を続けている。

 


 

columnコラム

●みよし市民病院に併設されている在宅介護支援センターは、平成29年度から<地域包括支援センター>に統合され、地域包括ケアシステムの実現に向けた中核的な機関として機能していく。具体的な役割としては、①地域で暮らす高齢者に対する総合相談支援 ②虐待の早期発見・防止などの権利擁護 ③地域の多様な社会資源を活用した、包括的・継続的ケアマネジメント支援 ④介護予防ケアマネジメントの4つの機能を果たしていく。

●同院には、このほか「みよし市訪問看護ステーション」「みよし市訪問看護ステーション居宅介護支援事業所(要介護認定の申請や介護サービス計画作成依頼の窓口)」も併設されており、医療と介護のサービスを一体的に提供している。在宅療養に関わるあらゆる相談に対応できるのも、市直営の施設ならではの特徴といえるだろう。

 

backstage

バックステージ

 

●みよし市民病院は、地域に根っこのある病院である。<2025年の地域医療はどうあるべきか>を考え、市民に一番やさしい病院づくりをめざして、平成13年に開院した。開院時の病床数は、一般病床が52床(現在は68床)、療養病床が54床。全体の約半分の病床を慢性期疾患を対象にした設計は当時、急性期主体の公立病院とは違う画期的なものだった。

●それから15年、同院が地域に下ろした根は、確実に、市民の生活のなかに深く浸透。入院や手術を要する急な病気やケガへの対応、在宅療養のサポートまで、まさに市民の健康と生活をトータルに支えるコミュニティホスピタルとして成長を続けている。地域包括ケアシステムを構築するには、同院のように、地域の医療・介護資源を一体的・包括的に提供できる拠点が必要不可欠である。在宅医療支援の方向性を明確に打ち出す同院のこれからに注目していきたい。

 


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