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病院を知ろう【vol.17】

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LINKED Vol.17:名古屋第二赤十字病院

2015年3月27日 金曜日
表紙大地域の一員として、会話を重ね、理解を深め、それぞれの場所で、明るい地域社会創りに貢献する。     名古屋第二赤十字病院 高度急性期病院であっても、在宅医療支援ネットワークづくりを強力に支援していく。その理由は…。 病院完結型から地域完結型へと国の医療政策が変化するなかで、名古屋第二赤十字病院は地域のなかで<高度急性期病院>の役割を担う決意を固めている。だが、それは、高度な先進的医療のみを追求する、という意味ではない。地域の在宅医療支援ネットワークのサポートに、本腰を入れて取 [...]

LINKED Vol.17:名古屋第二赤十字病院


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病院を知ろう

地域の一員として、
会話を重ね、理解を深め、
それぞれの場所で、
明るい地域社会創りに貢献する。

 

 

名古屋第二赤十字病院


高度急性期病院であっても、
在宅医療支援ネットワークづくりを
強力に支援していく。その理由は…。

main

病院完結型から地域完結型へと国の医療政策が変化するなかで、名古屋第二赤十字病院は地域のなかで<高度急性期病院>の役割を担う決意を固めている。
だが、それは、高度な先進的医療のみを追求する、という意味ではない。
地域の在宅医療支援ネットワークのサポートに、本腰を入れて取り組む同院の新たな動きをレポートする。

 

 

 

 

 

チームハナミズキの
メンバーとして

 名古屋第二赤十字病院のある昭和区は、名古屋市のほぼ中央に位置し、閑静な住宅地が広がるエリアである。この昭和区で、地域の在宅医(在宅医療を行う医師)や訪問看護師、ケアマネージャーといった多職種の連携による医療介護ネットワークづくり<ハナミズキプロジェクト(以下、ハナミズキ)>が展開されている。これは、昭和区医師会が中心となり、在宅でも患者が安心して療養できるように、多職種が協力しながら、地域における在宅医療の支援体制を作り上げようとする取り組み。昭和区の木=ハナミズキにちなみ、「安心の昭和区を咲かせよう」という思いから命名されたという。
Plus顔写真1 同院はハナミズキの立ち上げ当初からその趣旨に賛同し、プロジェクトを支援してきた。「当院は重篤な疾患に対する入院治療を中心に担う高度急性期病院であり、在宅医療は本来の役割とは外れます。しかし、同時に当院は地域の一員として、医師会の先生方と連携を深め、地域医療を支えています。医師会が主導して行う今回のプロジェクトも当然協調していくべきだろうと考えました」。そう語るのは、チームハナミズキの会議に毎回参加している、地域医療連携センター・副センター長の塚川敏行医師である。チームハナミズキには医療・介護従事者だけでなく、行政、保健所などの医療と介護福祉に関わるメンバーが一堂に集まる。「これだけ多職種が集まる会議は、地域の関連機関が<顔の見える関係>を構築する上でとても有意義だと思います。組織、そして職域を超えてお互い腹を割って話せる場を提供していただきました」と塚川副センター長は話す。会議では、在宅の医療介護ネットワークを作るために、専門職団体それぞれの役割を再確認し、連携を深めているという。

 

 

ハナミズキがめざす安心の地域づくり。
地域包括ケアをめざして。

950151 ハナミズキは、地域包括ケアシステム(※)の実現をめざし、愛知県で進められている在宅医療連携拠点推進事業の一つである。高齢化の進行に伴い、住み慣れた地域で人々が安心して生活できるように、医療・介護のさまざまな支援を充実させる必要がある。そのために、在宅医療・介護を連携させる仕組みを面的に整備しようと始まったのが、在宅医療連携拠点推進事業である。平成26年1月、愛知県内で12のモデル地域が指定され、そのうち名古屋市内には3つの事業と合わせ、市の委託事業も含めて4つの拠点(東区医師会、昭和区医師会、南区医師会、中村区医師会)が設置された。
 ハナミズキではこれまで、在宅医療・介護をフォローするための<ハナミズキ在宅ネット>を開設。主治医を持たない状態で、在宅医療を受け始める患者と家族に、医師を紹介する<在宅主治医・副主治医マッチングシステム>や、在宅患者を常にフォローする<24時間365日在宅医療対応バックアップシステム>などを構築し、その試行運用を開始。目に見える形で地域の医療・介護の連携を着実に前進させている。ハナミズキが成果を上げている理由について、塚川副センター長はこう分析する。「昭和区は病院や診療所、介護施設などが比較的豊富で恵まれた土地柄ですが、それ以上に旗振り役が素晴らしいんです。宇野岳人会長率いる昭和区医師会を中心に職能団体が集まり、在宅療養支援病院として往診や訪問看護に力を入れておられる<かわな病院>が事務局となり、亀井克典院長はじめ事務局の皆さまが情熱を持ってシステムを提案し、それぞれの機関に足を運び、意見を聞き、自分たちの身を削って事業を牽引してくださっている。この原動力こそがこの地域での一つの理想的な結果に繋がっています。当院としてもそういう皆さまと一緒に歩調をあわせ、システムづくりの一端が担えるよう、支える一員として頑張っていきたいと思います」。

※ 地域包括ケアシステムは、高齢者が住み慣れた地域で生活を継続できるように、住まい・医療・介護・予防・生活支援などのサービスを包括的に提供する仕組み。

 

 

在宅医療支援において
高度急性期病院が果たすべき役割とは。

Plus顔写真2 高度急性期病院の提供する医療は、重症患者、急性期患者に対しての入院治療を中心とする、高度専門的な医療である。これに対し、在宅医療は、セルフケアを基本としながら、住み慣れた家での療養を支える医療。両者はいわば両極にある存在だ。それゆえ、最先端の医療提供に力を注ぐ同院のような高度急性期病院が、その対極に位置づくハナミズキのような在宅医療支援に参画するのは、珍しいケースといえる。にもかかわらず、なぜ同院は、在宅に目線を向けるのか。「高度急性期病院であっても、地域包括ケアシステムの輪のなかに当然入っていくべきだろうと考えています」。そう語るのは、塚川副センター長を従え、チームハナミズキに参加している副院長兼地域医療連携センター・センター長の佐藤公治医師である。「国は今、2025年問題(詳しくはバックステージ参照)に備え、地域包括ケアシステムの構築をめざしてさまざまな取り組みを進めています。でも、国が描いたビジョンが、実際にそれぞれの地域でどういう形で実現するかはまだ誰も分かりません。逆にいうと、今はいろいろな可能性を模索する時期だと思うのです。まずは規模の大小や機能を問わず、地域にある各医療機関が、何ができるかを考え、それぞれの得意分野を持ち寄って、地域包括ケアシステムづくりに参加することが重要ではないでしょうか」。
2022 では、同院はどんな得意分野を活かしていこうとしているのか。「やはり第一に、24時間365日の救急医療だと思います。医師をはじめとした医療スタッフや、医療機器を豊富に有する地域の基幹病院だからこそ、いついかなるときも救急患者さんに対応できます。たとえば、チームハナミズキでは『日赤さん、認知症患者の容態が急激に悪化したケースですが、対応してもらえますか』といった具体的な相談ごともお聴きしています。また、地域の先生方にお使いいただける開放型病床(※)を8床用意していますので、その活用をより広げていこうと考えています」と、佐藤副院長は語る。

※ 患者のかかりつけ医(診療所の医師)と病院の医師が、共同して患者の治療を行える病床のこと。

 

 

医療者の意識を変え、
地域包括ケアシステムの実現に貢献していく。

表4 ハナミズキは単年度事業(平成27年3月末終了)だが、昭和区医師会では事業終了後も多職種連携をさらに強め、在宅療養患者を支える「昭和区モデル」を構築していく計画を持ち、同院も継続的にこれをサポートする予定だ。しかし、同院が支える地域は、昭和区に限らない。今後も同院は、ハナミズキでの経験をベースに、昭和区のみならず近隣の千種区、瑞穂区、天白区、名東区などにも広く目を配りつつ、在宅医療支援において、高度急性期病院としての役割を果たす。
 そして、その先に、同院が見据えるのは、地域の医療機関があたかも一つの病院のように機能していく新しい地域医療の姿だ。「設立母体の異なる医療機関が手を結び、さらに介護事業者とも連携し、地域医療を作っていかねばなりません」と佐藤副院長は話し、そのためには「職員の意識変革も必要です」と続けた。「高齢化の進行や、入院医療から在宅医療へのシフトにより在宅療養の患者さんが増えるこれからは、高度急性期病院であっても、単に病気を治すだけではなく、患者さんの退院後の生活を考えて最善の医療を提供していかねばなりません。そういう意味では、医師も含めた職員がもっと在宅医療への理解を深めるような教育も重要だと思います」。
 職員教育の場で、佐藤副院長が大切にしているのは、「それぞれの人がそれぞれの場所や立場でベストを尽くそう」という考えだ。「個々の人が照らす小さな光を集めて、この地域の医療を明るく照らしていきたい。それが私の夢です」と語る佐藤副院長。病院全体も職員も、<地域の一員>としてポテンシャルを発揮し、明日の地域社会への貢献を果たしていこうとしている。

 

 


 

column

コラム

●急速な高齢化を背景に、国は地域包括ケアシステムの構築をめざしている。その核となるのは、高齢者を地域で支えていく「在宅医療提供体制の整備」であるが、具体的な方策はまだ見えていない。また、地域の医療資源(人材、医療機能など)は限られており、それをいかに有効活用して高齢患者の増大に対応していくかが重要なポイントとなっている。

●地域のなかでもっとも豊富な医療資源を持つのは、名古屋第二赤十字病院のような高度急性期病院である。同院ではハナミズキの事例以外にも、院内の医療資源を活用した在宅医療支援に取り組んでいる。たとえば、専門性の高い認定看護師が地域の訪問看護師に同行して患者宅を訪問したり、在宅療養中のがん患者を支える「がん相談支援センター」を運営するなど、同院の人的資源を地域全体で共有し、活用することをめざしている。

 

backstage

バックステージ

●世界でも例を見ない超高齢時代を迎えた日本。2025年には団塊の世代が75歳以上になり、医療や介護を必要とする高齢者はさらに増加する見通しである。その2025年に向け、国は<病院完結型から地域完結型>へ地域医療の提供体制を再編。地域の医療機関が役割を分担した上で互いに連携し、地域全体で患者を治し、支える体制づくりを進めている。

●地域完結型医療体制のなかで、高度急性期病院はどんな機能を果たしていくべきか。高度で最先端の医療を追求することはもちろん、名古屋第二赤十字病院の例のように、在宅医療を担う医療、介護機関を支えていくことも重要な責務であろう。また、高度急性期病院は、地域で最も多くの医療資源を抱える病院である。その特徴を活かし、専門的な技能を持つ専門医や認定看護師などを地域に派遣したり、地域の医療、介護者教育に貢献することも、今後、ますます高度急性期病院に期待される役割なのではないだろうか。

 


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