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LINKED Vol.18:名古屋医療センター

2015年7月7日 火曜日
表紙大医療を創り出す特別な病院。2年の歩みと、 これからのビジョン。     名古屋医療センター 国際水準の臨床研究を進める病院として、高度な研究支援体制を整え、新しい治療法や予防法の開発をめざす。 平成25年4月、国立病院機構(NHO)を代表して、<臨床研究中核病院整備事業(※)の対象機関>に選定された名古屋医療センター。平成27年4月から臨床研究中核病院が医療法上に位置づけられることになり、同院は引き続き<臨床研究品質確保体制整備病院>として、出口戦略を見据えた臨床研究や医師主 [...]

LINKED Vol.18:名古屋医療センター


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病院を知ろう

医療を創り出す特別な病院。
2年の歩みと、
これからのビジョン。

 

 

名古屋医療センター


国際水準の臨床研究を進める病院として、
高度な研究支援体制を整え、新しい治療法や予防法の開発をめざす。

main

平成25年4月、国立病院機構(NHO)を代表して、<臨床研究中核病院整備事業(※)の対象機関>に選定された名古屋医療センター。
平成27年4月から臨床研究中核病院が医療法上に位置づけられることになり、同院は引き続き<臨床研究品質確保体制整備病院>として、出口戦略を見据えた臨床研究や医師主導治験の中心的な役割を担っていくことになった。
この2年間の臨床研究の成果とこれからのビジョンについて話を聞いた。

※日本発の革新的な医薬品・医療機器の開発をめざし、厚生労働省が進めている事業。臨床研究中核病院の法制化に伴い、現在、事業の名称は<臨床研究中核病院整備事業>から<臨床研究品質確保体制整備事業>へ変更されている。

 

 

 

 

 

臨床的な疑問(気づき)を
臨床研究のテーマに育てていく。

Plus顔写真1 革新的な医薬品・医療機器・医療技術を創出するための<臨床研究中核病院整備事業の対象機関>に選定されてから丸2年。この間、名古屋医療センターでは、国際水準の質の高い臨床研究を進めるためのインフラ整備を精力的に進めてきた。その筆頭が、臨床研究センター内に開設した<臨床研究事業部>。ここでは、シーズ探索・企画から薬事承認やエビデンス(科学的根拠)創出に至る出口まで、一気通貫で研究の実施・支援を行っている。
 シーズ探索とは、具体的にどういうことか。「全国143病院から成るNHOでは、医師たちがグループを作って、たくさんの新しい研究を進めています。そのなかで、新しい治療法などとして花開く可能性のあるシーズ(種)を私どもが目利きして、医師(研究者)たちと一緒に、研究の道筋を考えていくのが、シーズ探索です」と説明するのは、血液・腫瘍研究部部長であり、臨床研究事業部・研究管理室長を兼任する永井宏和である。ここでいうシーズとは、基礎研究のシーズだけでなく、日々診療に携わる医師のクリニカルクエスチョン(臨床的な疑問・気づき)から生まれたもの。「普通は、医師が何か研究のテーマを思いついても、それを形にしていく術がありません。その部分をお手伝いするのが私たちの役目です」と永井部長。臨床研究事業部の専門家たちが、その研究の価値を見極め、プロトコール(治験実施計画書)の作成159_NagoyaIRYOc_LinkedP18_2015、倫理審査、治験、データ管理、薬事承認など、研究開発にかかわるさまざまな業務を強力に支援していく。それが、臨床研究事業部の役割なのである。「当院は大学病院と違い、診療と研究の距離が近く、診療に携わる医師が気軽に臨床研究事業部のスタッフに相談できる風土があります。その良さを活かし、臨床で先生方が得た<気づき>を吸い上げ、いち早く研究開発へと進めるよう努めています」と、永井部長は言う。

 

 

ゲノム解析の体制を整え、
遺伝子医療を研究。

 187_NagoyaIRYOc_LinkedP18_2015 質の高い臨床研究を進めるためのインフラ整備の二つ目は、遺伝子医療時代を見据えた、ゲノム(全遺伝情報)解析の体制整備だ。まず、ゲノム解析のキーパーソンとして、東京大学、京都大学で豊富な実績を重ねてきた眞田 昌医師(臨床研究センター・高度診断研究部部長)を招聘。続いて、最新鋭の次世代シークエンサー(ゲノム配列を自動的に読み取る装置※)を1台追加購入し、合計3台体制にしてハードを充実させた。
 ゲノム解析の目的は、患者の検体(血液や組織など)から遺伝情報を取り出し、網羅的に解析することで、病気の原因となる遺伝子を突き止めること。そこから、病気の発症メカニズムを探り、患者個々の体質や病気の特性に合わせた新しい治療法や予防法、診断法の開発をめざしていく。すでに同院は、得意分野である小児血液がんにおいて、小児白血病・リンパ腫のゲノム解析に基づく遺151_NagoyaIRYOc_LinkedP18_2015伝子診断の開発に取り組んでいるが、今後、そうした技術をさまざまな疾患分野に広げていきたい考えだ。「これから質の高い臨床研究を行っていくにはゲノム解析が必要不可欠です。ゲノムに基づく病気の診断や治療技術を患者さんの診療に役立てていくために、院内にバイオバンク(患者から提供された生体試料・生体情報を厳密に保管する仕組み)を構築することも視野に入れて、遺伝子医療の研究に力を注いでいきます」と、臨床研究センター長の堀部敬三は語る。

※従来型シークエンサーは、一人分のゲノムを読み取るのに13年間・30億円費やしたが、次世代型では、約1カ月・数百万円で一人分の全ゲノム解読が可能になっている。

 

 

低コストで高品質な
独自開発のデータ管理システム。

142_NagoyaIRYOc_LinkedP18_2015 同院が推し進める臨床研究において、最も大切なことは何だろうか。堀部センター長は、「基本として大切なのは、臨床研究の品質管理」だと断言する。なるほど、昨今、大手製薬メーカーと大学病院がかかわる臨床研究での不正疑惑が相次いで発覚し、大きな社会問題になっている。しかし同院では、そうした問題が取り沙汰されるはるか以前から、臨床研究の<データ管理>の質の確保と<倫理審査(詳しくはコラム参照)>に力を注いできた。
 データ管理の中核を成すのが、長年にわたり小児血液がんにおいて多施設共同臨床研究を進めてきた過程で構築したデータセンターである。ここでは、臨床試験データを電子形式で収集し、管理する独自のシステムを開発して運用することで、データ品質の向上を実現。さらに、経験豊富な生物統計家による統計解析、データマネージャーによるモニタリングにより、データの信頼性を担保している。なお、同院は平成26年2月、国際標準化機構が定めた世界共通の規格であるISO9001(品質マネジメントシステム)とISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証を同時に取得。データの品質管理と情報漏洩の防止という二つの側面から高い外部評価を得ている。データ不正の影が忍び寄る隙がない盤石な体制が、同院の質の高い臨床研究を支えているのだ。

 

 

診療と臨床研究を融合させ、
新しい医療の創造に挑む。

Plus顔写真2 この2年間で、質の高い臨床研究を支援するためのインフラ整備を急ピッチで進めてきた名古屋医療センター。これからの課題は、その支援体制をどう活かしていくか。同院が描く第一の戦略は、「多領域の医師を抱えるNHOのネットワーク力を活かし、広範な領域で専門性の高い研究を行っていくこと」だと堀部センター長は言う。NHOでは現在、がん、感染症、血液疾患、免疫異常など多様な領域においてグループ内の専門家が連携し、研究を行っている。同院がこれらの研究を後押しするとともに、約5万2000床を抱えるNHOのスケールメリットを活かし、多くの患者の協力を得て、臨床試験に力を入れていく方針である。「たとえば、次世代のがん治療法として注目される免疫細胞療法の分野で、がん細胞を攻撃する特殊なリンパ球<NKT細胞>を用いた治療法の有用性を検証する臨床試験を進めています。保険適用の判断材料にできるように、試験データを増やしていく計画です」。
 こうした先進的な臨床研究と並んで、堀部センター長が重視するのは、同院、そしてNHO内で日々診療に携わる医師たちに、「ここまで築いた研究支援体制を積極的に使ってもらう」ことだという。「当院は単に日常臨床をこなす病院ではなく、医師たちがリサーチマインド(研究心)を持って、医療の疑問に向き合い、患者さんが次に求める治療法を開発していくことができる病院です。たとえば、医師主導治験(製薬メーカー主導ではなく、医師が治験の準備から管理までを担う治験)のサポートもその一つですね。現在、永井先生に医師主導治験の先頭に立っていただいていますが、若い医師が彼のやり方をロールモデルとして学び、後に続いてくれれば、と期待しています」と堀部センター長は語る。そして、それらの臨床研究の先に見つめるのは、研究成果を患者に還元していくことにほかならない。たとえば、副作用のないがんの新薬、免疫難病に対する遺伝子治療など、さまざまな夢の治療法に期待が集まる。日々の診療と臨床研究を融合させながら、同院は次代を見据えた新しい医療の創造をめざしていく。


 

column

コラム

●名古屋医療センターは平成27年3月、厚生労働省から、適切な審査を行える<倫理審査委員会>として認定を受けた。この認定制度は平成27年から始まったばかりの新しい取り組み。これまでわが国では研究機関ごとに、倫理審査委員会が設けられてきたが、委員会ごとに審査の質にバラツキがあり、充分なチェック機能が果たされていないと指摘されてきた。そのために、厚生労働省が、質の高い倫理審査委員会を認定する制度をスタートしたものである。

●同院はその第一号に選ばれた機関であり、初回の認定制度で選ばれたのは、全国9つの機関のみに留まる(全国の倫理審査委員会の設置数は、1330件にのぼる)。同院ではこれからも臨床試験に参加する被験者の安全や人権を守るために、臨床研究や治験の倫理性・安全性・科学的妥当性に厳しいチェックの目を向けていく方針である。

 

backstage

バックステージ

●海外では、ゲノム解析を行う次世代シークエンサーの導入競争が続き、高機能化・低価格化により普及が進んでいる。欧米諸国や中国の医療研究機関では、そうした新しい装置を大量に導入し、ゲノム解析に基づく医療の研究を強力に推進。国を挙げての法整備などの体制づくりも進んでいる。こうした海外の動きからすれば、日本の取り組みは圧倒的に遅れており、遺伝子医療に携わる専門家も育っていない。

●日本が今後、世界市場へ革新的な医薬品や治療法を開発するには、遺伝子医療における研究の巻き返しが不可欠である。名古屋医療センターは貴重な人材を得るとともに、ハードを拡充し、その分野で大きな一歩を踏み出したばかり。遺伝情報を用いたオーダーメイド医療が生まれる日をめざして、新しい挑戦が始まっている。

 


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