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シアワセをつなぐ仕事【vol.18】

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LINKED Vol.18:公立西知多総合病院

2015年6月19日 金曜日
表紙大<地域との共生>、<生活のなかへ>。新しい看護を創造する。 植村真美(副院長 兼 看護局長)・松岡サチ子(患者サポートセンター)/公立西知多総合病院   東海市民病院と知多市民病院を統合し、地域に必要な新しい病院を創造する。その思いのもと、平成27年5月1日、知多半島北西部の基幹病院となるべくスタートを切った公立西知多総合病院。高度な急性期医療の提供をめざす同院には、<患者サポートセンター>が設置され、看護師を中心に、患者への総合的な支援を行っている。その取り組みを追うなかで見えてきた [...]

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シアワセをつなぐ仕事

<地域との共生>、
<生活のなかへ>。
新しい看護を創造する。

植村真美(副院長 兼 看護局長)・松岡サチ子(患者サポートセンター)/公立西知多総合病院


 

main

東海市民病院と知多市民病院を統合し、地域に必要な新しい病院を創造する。
その思いのもと、平成27年5月1日、
知多半島北西部の基幹病院となるべくスタートを切った公立西知多総合病院。
高度な急性期医療の提供をめざす同院には、<患者サポートセンター>が設置され、看護師を中心に、患者への総合的な支援を行っている。
その取り組みを追うなかで見えてきたのは、地域の医療再生に向け、新しい看護を創り上げようとする看護局の姿だった。

 

 



入院前から退院後の生活までを、看護の視点で繋ぐ。
高度な急性期病院として、
新たな目線の看護を創造する。


 

 

 

病院の思いを込めた、
患者サポートセンター。

015_L+18_NishiChita  平成27年5月1日に開院した公立西知多総合病院。正面玄関を入るとすぐ右手に、<患者サポートセンター>がある。同センター、ここには、病院の熱い思いが込められているのだ。
 まずは組織から紹介しよう。患者や家族の相談窓口である<総合サポート室>、地域医療機関との連携を担う<地域医療連携室>、患者の療養生活を支援する<患者支援室>、栄養サポートチームなど、院内のチーム医療を推進する<チーム医療推進室>の4部門から成る。センター長は、石川敦子医師(内分泌、代謝内科)。そして、18名の看護師、医療ソーシャルワーカー、事務職員などによって構成される。
 同センターの役割は、大きく三つ。<地域住民の信頼獲得><医療連携の推進><患者を生活に戻すための支援強化>である。具体的な例として、<入院前>からのサポートがある。例えば、服薬指導。薬のコントロール不良で手術ができず、入院期間が無用に延びないよう、同センターが薬剤師と連携し、入院前から患者への指導を始める。あるいは、高齢者へのADL(日常生活動作)トレーニング。これは入院中の転倒・転落事故や廃用症候群(※)予防が目的である。つまり061_L+18_NishiChitaは、患者にとって負荷が大きい入院治療を、安心して受けることができるよう、その準備段階を含めサポートを行う。
 さらに、治療後にも目を向ける。地域の診療所や訪問看護ステーションなどと、顔の見える関係づくりに注力し、患者が次のステージへ、また、在宅生活にスムーズに進むことができるよう、同センターでは地域の連携体制強化を進めているのだ。

※ 過度な安静や活動性の低下により生じる、体や頭の動きが低下した状態。

 

 

緩和ケア認定看護師が、
患者サポートセンターにいる理由。

088_L+18_NishiChita この患者サポートセンターの<患者支援室>で、退院調整を軸に、患者の在宅復帰への中心的な役割を担っているのが、緩和ケア認定看護師の松岡サチ子だ。複数の病棟勤務を経て、退院支援室で2年間勤めた。
 「これまでの退院支援室では、入院後からのサポートが中心でした。でも、新病院は、とても高度な急性期医療を中心にしており、そうした病院は国の方針として、入院期間がどんどん短くなります。そのため、患者さんがより良い状態で、速やかに生活の場に戻っていただくには、入院前から積極的に患者さんと関わることが必要です」と松岡は言う。「その上で、高度な医療提供には、医師や看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカーをはじめとした院内の多職種同士が、また、地域の医療機関と新病院が、明確に役割分担し、そこでの連携を一層強化する必要があります。私の経験を活かし、それらを繋ぐ役割を担いたい」と語る。
 新病院は、この松岡に大きな期待を寄せている。その理由は、看護師とは、疾患や治療への理解だけでなく、患者の状態や環境を一番近くで知る存在であること。それに加え、以前のキャリアから、退院支援のポイントや難しさを肌感覚で身につけていること。さらに、緩和ケア認定看護師という専門性を有することがある。緩和ケア認定看護師は、がん患者を中心に、診断時から身体面、精神面での継続ケアを組み立てる。すなわち、松岡には、患者を全人的、且つ、継続的な視点で支援する素地が備わっているのだ。
 彼女のような人材を患者サポートセンターに置く。それはイコール、新病院が、限られた日数で、高度な治療をするだけではなく、入院前から患者を見つめ、治療後も、地域での連携をもとに、在宅生活に戻る道筋をサポートする。すなわち、地域医療の核として、住民の健康的な生活そのものを支援するという決意そのもの。そうした思いを詰め込んだ患者サポートセンターなのである。

 

 

知多半島の医療を守るという、
新たな病院のミッション。

086_L+18_NishiChita 公立西知多総合病院のある、知多半島医療圏は、かねてから愛知県や有識者により、医療資源不足が指摘されていた。南北に長い半島内には、いくつかの中規模病院が点在するものの、基幹的な病院としては、半田市立半田病院が中央部に位置するのみ。そのなかで、中規模病院には慢性的な医師不足による医療機能の低下が発生し、救急医療、急性期医療の負担は半田病院に集中。半田病院のみではそのすべてをカバーするには限界があり、名古屋市の南部に患者が流出する状態となっていた。
 半田病院の北に位置する知多半島北西部においても、こうした状況が顕著であった。半田病院の手がまわらない分、同じく名古屋市の南部への患者流出は多く、それは流出先の医療体制にも歪みを生むに至っていた。
 こうした危機的状況を打開し、また、団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向け、増071_L+18_NishiChita加が予想される医療需要に対応するため、中規模の2病院を解体。行政区を越えて、地域に必要とされる新たな中核病院として<創造>されたのが、公立西知多総合病院なのだ。
 同院には、これまで半田病院に負担をかけ過ぎていた、救急医療、高度な急性期医療を担う役割が期待される。そして同時に、急性期を脱した患者を切れ目なく地域に繋ぎ、住み慣れた地での生活に、戻していく役割も求められる。

 

 

急性期看護の水準づくりと、
患者を生活へ繋ぐ仕組みづくり。

Plus顔写真 患者サポートセンターを発案し、浅野昌彦院長へ提案したのは、公立西知多総合病院の植村真美看護局長(副院長兼務)である。植村は、名古屋大学医学部附属病院に長年に亘り勤務。副看護部長として、高度な急性期看護に携わっていた。そこへ、公立西知多総合病院からのオファー。急性期看護を熟知する植村に、新病院の看護を創り上げてほしいという病院側の要望と、新しい病院を創り上げる過程に参画したい、という植村の思いが一致し、新病院の看護局長に就任した。
 植村は、開院前の取り組みを次のように振り返る。「大役を任され、私は、大きく二つの点に力を入れました。一つは、組織文化や価値観の違う2病院の看護部を、一つの方向に向かって歩ませること。一つは、これまで地域になかった高度な急性期病院として、看護能力や体制を整えることです」。
 その言葉の通り、植村は、就任後まず両病院の主任、副師長以上の看護師一人ひとりと面談。さらに、看護師長を集めての合同会議、グループワークや食事会を頻繁に実施した。新病院の理念や基本方針が策定された段階では、看護師全員に向けてその考えを丁寧に説明。︿新しい病院を創造する﹀という共通の目的に向かって、意識統一を図ってきた。また、名大病院、半田病院などの協力を得て、研修を実施。高度な急性期病院に求められる看護能力を、均てん化するとともに、一方で、患者サポートセンターを設置するなど、体制構築を力強く推し進めた。
 植村は語る。「患者サポートセンターは、高齢者が急増するこれからの時代にふさわしい看護の一つの形です。この地域にこれまでなかった高度な急性期病院、そこでの看護局として、急性期看護を充実させるだけでなく、地域の実情を視野に、患者さんを生活へと結ぶ仕組みを充実させることもまた、看護の役割と思います。外来、入院そして、患者サポートセンターなど舞台は異なりますが、松岡をはじめとする看護師が一丸となり、地域に必要な新しい看護をめざします。そして、その先では、在宅医療へのもっと直接的な支援も図っていきたいと考えます」。
 長い準備期間を経て、その歩みをスタートさせた公立西知多総合病院。地域との関係性を深め、地域との共生を実現するため、果敢なる挑戦は続く。


 

 

columnコラム

●緩和ケアとは、本来、患者とその家族が抱える身体的な痛み、心理的、社会的な苦痛を和らげるためのケアを意味し、あらゆる病期においてクオリティ・オブ・ライフ(人生や生活の質)の改善をめざして行われるものである。

●しかしこれまでは、積極的な治療法がなくなった終末期の段階で、苦痛病状を緩和させるために行われる、という認識が一般的に広まっていた。

●これに対し、近時では、特に急性期病院において、早期の段階から緩和ケアを提供する病院が増えている。

●なかでもがん医療においては、早期がんもその対象となり、診断時から緩和ケアを実施することで、より良い状態で生活できる環境を整えることに注力する。

●国が、入院中心の医療から在宅中心の医療への変革を進める今後においては、入院時から苦痛を和らげ、在宅療養へと繋ぐためにも、<本来の緩和ケア>が果たす役割は、ますます大きくなるのではないだろうか。

 

backstage

バックステージ

●高度な急性期病院では、限られた在院日数で、濃厚で集中的な治療を提供することが使命だ。だが、急性期後の回復期、療養期の病院が地域に整備されてなければ、まだ医療を必要とする患者が地域に帰ることになる。それは、公立西知多総合病院だけのことではなく、知多半島全体の大きな問題といえよう。

●そこで重要となるのは、植村看護局長が語る<地域の実情を視野に、患者さんを生活へと結ぶ仕組みを充実させることもまた、看護の役割>という発想だ。半島のすべての病院が、また、在宅医療の担い手が、<看護>という視点を基軸に、顔の見える関係を築くことができれば、地域にとって新たな展開が見えるのではないか。

●患者サポートセンターの松岡看護師は言う。「患者さんの思いを外来や病棟の看護師、また、地域の医療職に繋ぎ、地域全体で、患者さんを継続的にフォローする体制を作りたい」。その大いなる一歩に期待したい。

 

 


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