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LINKED vol.19 タイアップ

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LINKED Vol.19:名古屋市立大学病院

2015年10月5日 月曜日
表紙大地域と繋がる高度急性期看護からの試み。 大串陽子(呼吸器内科・外科病棟主任)・長谷川憲子(NICU主任)/名古屋市立大学病院   2人の看護師が、訪問看護ステーションの長期派遣研修事業に参加した。高度急性期病院の看護師として、生活への目線の重要性を再確認した看護師。そして、病院と地域の看護師同士が、もっと繋がらなければと、意識を強めた。2人の貴重な体験は、職場に何をもたらすのか。そこからまた、どのような発見があるのか。2人を通して、名古屋市立大学病院看護部がめざすものを追う。 &nbs [...]

LINKED Vol.19:名古屋市立大学病院


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シアワセをつなぐ仕事

地域と繋がる
高度急性期看護からの試み。

大串陽子(呼吸器内科・外科病棟主任)・長谷川憲子(NICU主任)/名古屋市立大学病院


 

main

2人の看護師が、訪問看護ステーションの長期派遣研修事業に参加した。
高度急性期病院の看護師として、生活への目線の重要性を再確認した看護師。
そして、病院と地域の看護師同士が、もっと繋がらなければと、意識を強めた。
2人の貴重な体験は、職場に何をもたらすのか。
そこからまた、どのような発見があるのか。
2人を通して、名古屋市立大学病院看護部がめざすものを追う。

 

 

 


「高度急性期病院こそ、患者の生活を意識した看護が必要」。
地域の訪問看護ステーションでの長期派遣研修が、
看護部に新風を巻き起こす。


 

 

 

7週間の研修で
体感した退院後の現実。

 Plus顔写真1 「家ではどれくらいのことができていましたか?」「退院後はどんな風に生活したいですか?」。呼吸器内科・外科病棟の連携推進主任(コラム参照) 大串陽子看護師は、入院したばかりの患者にこう話しかける。「入院時から退院後の話をすると戸惑う患者さんもいますが、一日も早く、元気に生活に戻っていただくためには必要なことです」と言う大串。連携推進主任として、患者の退院後の生活に意識を向け、在宅復帰へスムーズに移行できるようにと、大串は入院時からの声かけを怠らない。
 退院後の生活を見据えて入院患者に向き合う。大串にその姿勢を決定づけたのは、名古屋市立大学病院看護部として、平成27年2月に実施した、名古屋市療養サービス事業団緑区訪問看護ステーションでの研修がきっかけだ。退院後の患者の生活や自宅療養の様子を知ることを目的に、7週間に及ぶ研修に参加した2人の看護師の一人が、大串であった。
 この研修では、緑区訪問看護ステーションの訪問看護師に同行し、さまざまな患者の在宅生活を目の当たりにした。トイレに行くだけでも、互いの支え合いが必要な高齢夫婦。人工呼吸器をつけた患者を、24時間支え続ける家族。その姿には頭が下がる思いがしたという。
 その一方で、大串は「退院する患者さんに私たちがアドバイスをした内容が在宅では実践されていない」という現実に愕然とした。「私たちは、もっと生活全般に目を向けることが必要でした。家族の支援はどれくらい受けることが可能か、訪問看護をはじめとする在宅サポート体制はど17_Linked19MeishiDai_2015こまで必要か。そうしたことを確認し、整えた上で、家に帰っていただくことの大切さを思い知らされました」。
 7週間の研修を終え、退院後の生活により強く意識が向くようになった大串。彼女自身の看護への取り組み方が変化したのはもちろん、周りのスタッフにも、研修での体験を伝え、退院後の生活を具体的に意識するように促している。

 

 

病院からの情報提供を、
見直し始める。

Plus顔写真2 研修に参加したもう一人。NICU(新生児集中治療室)と小児科外来を兼務する連携推進主任の長谷川憲子看護師だ。長谷川は以前から退院後の生活に強い関心を持ち、「より詳しく知りたい」と思い、今回の研修に参加した。
 そうした強い意識を持ったのは、NICU勤務となった8年前。先天性の疾患を持つ多くの子どもたちと関わり、退院後も小児科外来で継続ケアを受ける子どもたちの姿に接してからだ。また、「人工呼吸器を持ち帰る患者さんが増え、どうすればご自宅での療養生活が維持できるか、ずっと考えてきた」とも言う。懸命に治療を受ける小さな患者と、その子を、不安を抱えつつ守り続ける家族たちを支えたい。そうした思いが、長谷川の目線を<退院後の生活>へと向かわせてきた。
 研修を終えた長谷川は、訪問看護師の仕事を間近で見たことで、「病院と地域の医療従事者をしっかり繋ぐことが、患者と家族を支えることだと考えるようになった」と言う。例えば、<看護サマリー>。治療や看護ケアの経緯や生活上の注意点などを記したものだ。「研修先の訪問看護ステーションでは、『サマリーが分かりづらい』と指摘されました。そこでサマリー自体を見直し、患者さん・ご家族の抱える問題を明確に記すよう病棟スタッフに伝えています。また、在宅において031_Linked19MeishiDai_2015も、訪問看護師がご家族への説明に使えるよう、退院指導のパンフレットの添付も始めました。あと一つ、患者さんのご家族が、病院で受けた指導ばかりが正しいととらえ、訪問看護師のアドバイスを、聞き入れてもらいにくいという声も聞きました。そこで患者さんの退院時には、『訪問看護師さんたちは、家でのやり方を熟知しているから、それを取り入れても大丈夫ですよ』と、ご家族にお伝えしています」(長谷川)。

 

 

病院と地域を繋ぐ。
そのキーパーソンは看護師。

126_shidai_2014 団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年に向け、国は、保健・医療のあり方を大きく変革しようとしている。人口・疾病構造の変化に伴い、国民の医療に対する需要は急激に増加すると見込まれており、医療費の増大を抑える政策を打ち出したのだ。それは、地域の医療機関の機能と役割を明確化させ、違う領域を担う医療機関同士が連携することで、より効率的な医療の提供体制を構築しようとするもの。そのため、高度急性期病院は今まで以上に急性期機能に特化し、在院日数を短縮させ効率化を図り、回復期・療養期を担う医療機関に、患者を繋いでいくことが求められている。
 在院日数の短縮化を強く進めていけば、当然、急性期治療を終え、症状が安定した時点で、すぐに患者は、回復期や療養期の病院に転院することが必要になる。また転院ではなく、患者の状態や本人・家族の希望で自宅へ退院するケースも出てくる。
 そこで必要となるのが、病院と在宅医療との連携。入院中の医療・看護を、在宅医療を担う地域の医療従事者に、いかに正確に、丁寧に、そして、患者が適正な継続医療を、在宅で受けることができるよう繋いでいくかである。
 その役割を担うキーパーソンとして、注目を浴びているのが、看護師だ。看護師は、一番患107_shidai_2014者の身近にいて、病気の治療に加え、患者の生活をも支えていく存在だ。患者を知り、家族を知り、その上でいかに継続ケアを結んでいくのか。そのためには、高度急性期病院の看護師こそ在宅医療を、患者の生活実態を、知らなければならない。さらに、在宅医療を担う訪問看護師らの声を聞き、双方での歩み寄りを図ることで、切れ目のないケアの継続を実現させることが可能となる。

 

 

高度急性期病院看護部、
そして、看護師たちの使命感。

Plus顔写真3 今回、7週間に及んだ訪問看護ステーション研修は、切れ目のない医療・介護の提供体制を構築するために厚生労働省が交付する<地域医療介護総合確保基金>を活用して実施された。だが、名古屋市立大学病院 副院長 兼 看護部長の平岡 翠は、「以前から当院の看護師たちを、地域の訪問看護ステーションへ研修に出したいと考えていました」と話す。
 「今後の社会を見つめたとき、患者を送り出す側と、受け入れる側が、退院後の生活を見据え、その人らしく暮らしていけるよう、連携を深めていくことが必要。この研修は、当院がこうした背景をふまえ、担うべき役割を再認識し、変化させていく第一歩となりました。今回、連携推進主任である2人が参加したことは、変化を生み出す原動力になると思います。これからは研修で得たものを、院内全体へと広げてほしいです。そして今後も同様の研修を続けていきたいと考えています」(平岡)。
 平岡が具体的にめざすのは、まさに看護サマリーの事例のごとく、看護の現場が抱える問題を可視化し、業務プロセスを変え、それによる効果測定を行うことだ。「私たちが時代の変化に対応した新しい看護を創造することで、国民のニーズに応え、多くの患者さんに貢献できれば03_Linked19MeishiDai_2015うれしいですね」と平岡は言う。
 最後に、長谷川のチャレンジのもととなっている思いを紹介しよう。彼女は、退院後の患者の生活に強い関心を持っている。なぜなら、高度急性期病院の看護師には、自分たちの最新の知識や技術を広く地域に伝え、看護を繋いでいく重要な役割があると考えているからだ。だからこそ、高度医療と在宅医療を繋ぐ強い使命感を持ち、その熱い視線は、地域へ、そして、新しい看護の創造へと注がれている。


 

 

columnコラム

●名古屋市立大学病院に連携推進主任会ができたのは、平岡副院長が5年前に参加した神戸での研修がきっかけだ。そのプログラムのなかにあった、兵庫県職員による<地域連携>の講義に衝撃を受けたという。

●この研修を通じて「当院は<病院完結>のままで遅れている」と痛感した平岡副院長。研修から戻るとすぐさま、当時の看護部長に直訴し、連携推進主任会を立ち上げた。以後、病棟ごとに配置された連携推進主任の看護師が、病棟間の連携を図るために、定期的に意見交換する場を設け、相互の理解を深めてきた。

●連携推進主任会の立ち上げ以降、看護師の意識も変わり、連携推進主任が主導する形で、申し送りのための専用シートを作成し、情報共有を図るなど、着実に成果が現れている。

●院内の連携を深めつつ、さらには地域との医療・看護連携をいかに円滑に進めるかに視線が注がれており、今回の研修もその一環として実施されたものだ。

 

backstage

バックステージ

●名古屋市立大学病院が果たすべき役割は、特定機能病院として高度な医療を提供するだけでなく、次世代の医療モデルや新しいシステムを構築することにある。

●そうした次世代への視線は、同大学自体が基本とするものだ。その一例に、文部科学省の<未来医療研究人材養成拠点事業>の採択を受けた、<地域と育む未来医療人『なごやかモデル』>がある。

●『なごやかモデル』では、高齢化の先進地域・名古屋市緑区鳴子地区を対象に、学生や若い人材が住民と協働し、その人らしく暮らせる社会づくりをめざす一方、これを支える次世代の医療従事者を育成する取り組みが展開されている。

●こうした同大学の<地域への目線>は、超高齢社会に向けて、社会が大きく変化しつつある日本において、最先端の研究テーマ。看護部の今回の訪問看護ステーションでの研修もまた、その一つだ。同大学の、そして、大学病院の今後の取り組みを注目したい。

 

 


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