カテゴリー別アーカイブ: 病院を知ろう【vol.21】

病院を知ろう【vol.21】

次ページへ »

LINKED Vol.21:尾張温泉かにえ病院

2016年4月1日 金曜日
表紙大地域を見つめた決断が、医療と日々の生活を繋ぎ始める。     尾張温泉かにえ病院 回復期リハビリテーション病棟を大幅に増床。そして、海部医療圏で初の地域包括ケア病棟を開設。地域の人々の生活を守る病院として、歩みは止めない。 <病院>に求められる機能や役割は、多岐に亘る。高度で専門的な治療の提供、日々の生活に寄り添う診療、在宅医療の支援…。現在では、<治す機能>と<治し支える機能>という言葉が生まれ、生活者にとっては、どちらも不可欠な機能だ。ここで紹介する尾張温泉かにえ病院は、 [...]

LINKED Vol.21:尾張温泉かにえ病院


2,498 views

病院を知ろう

地域を見つめた決断が、
医療と日々の生活を繋ぎ始める。

 

 

尾張温泉かにえ病院


回復期リハビリテーション病棟を大幅に増床。
そして、海部医療圏で初の地域包括ケア病棟を開設。
地域の人々の生活を守る病院として、歩みは止めない。

main

<病院>に求められる機能や役割は、多岐に亘る。高度で専門的な治療の提供、日々の生活に寄り添う診療、在宅医療の支援…。
現在では、<治す機能>と<治し支える機能>という言葉が生まれ、生活者にとっては、どちらも不可欠な機能だ。
ここで紹介する尾張温泉かにえ病院は、<治し支える機能>を核とした病院。
診療所、在宅サービス事業所とともに、生活に密着したところで、住民を守る医療を貫こうとしている。

 

 

 

 

 

医療と生活、
病院と在宅を結ぶ。

Plus顔写真1 「患者さんと職員たちの明るい笑い声、明るい笑顔が広がる病院になりました」。こう語るのは、尾張温泉かにえ病院の院長・榊原敏正医師である。
 同院が、以前の尾張温泉リハビリかにえ病院から、<尾張温泉かにえ病院>に改称し、新築移転したのは平成26年10月。それに先駆け開設した回復期リハビリテーション病棟、移転後に開設した地域包括ケア病床、そして、従来からある一般病棟、療養病棟と合わせ、現在は4種類の異なる病棟を持つケアミックス病院に生まれ変わっている。
 回復期リハビリテーション病棟では、脳卒中や大腿骨頚部骨折、脊髄損傷などの患者に、集中して日常生活動作の機能回復を図り、在宅復帰を支援する。同院は30床からスタートし、移転後は55床まで増床。その後、平成28年4月からは、60床に増床する。また、地域包括ケア病床では、急性期の治療を終えた後の患者に、継続的な医学管理を行いつつ、在宅復帰をめざす。この病床の開設は海部医療圏で同院が初めてだ。
 「以前の当院は、一般的な病気の治療、手厚い医学管理・看護を活かし切れておらず、また、地域では高齢者を預かってくれる病院というイメージが先行し、院内には沈滞した空気がありました。それを払拭し、且つ、地域医療における当院の位置づけを明確に示した回復期リハビリテーション病棟の増床、海部医療圏初の地域包括ケア病床の開設と新築移転です。<医療と生活、病院と在宅を結ぶ病院>という方針がはっきり0122蟹江温泉病院¥IMG_0443し、職員は自院の方向性を正しく理解、一方、患者さんも、お家に帰るという目標を持ってくださるようになりました。双方の目線が重なり合って、建物の新しさだけではなく、<人>の明るさが生まれたのだと思います。地域包括ケア病床には、当院の一般病棟から移られる患者さんはもちろん、地域の高度な急性期病院からの転院患者さんも増えてきていますね」。

 

 

地域との絆を、
さらに深めるために。

 0122蟹江温泉病院¥IMG_5819 ただ、<医療と生活、病院と在宅を結ぶ病院>としては、まだ足らない面が二つあると榊原は言う。一つは、尾張温泉かにえ病院の先、つまり、同院を退院後、地域で患者が継続ケアを受けながら生活をし続けていける環境整備である。「当院は118床しかありません。それをより有効に、効率的に活かすには、地域の診療所、介護サービス事業所の皆さんと連携し、患者さんに無理なく在宅へ戻っていただく道筋をつける機能が必要です」。
 そのため、同院の母体である医療法人尾張温泉かにえ病院では、老人保健施設の開設をめざし準備を整えている。そしてさらに、訪問看護ステーションの設置も、より早い段階で実現させるために、積極的な活動を進めている。榊原は「老人保健施設と訪問看護ステーションが揃うと、患者さんは当院を退院した後も、より安心して在宅での生活を描くことができると思います」と言う。
 足らない面のもう一つは、地域包括ケア病床の機能だ。同病床には、先に紹介した急性期の治療を終えた患者の受け入れとともに、在宅療0122蟹江温泉病院¥IMG_5831養する患者が急性増悪した際の受け入れという機能が求められている。「地域の皆さんのなかには、何かあったとき当院で診てほしいと、思ってくださる方がいます。もちろん緊急対応もです。現在、当院では昼間の対応はできますが、24時間365日となると、人材不足の面からどうしても対応が難しい状況です」と、榊原は苦しい顔を見せる。
 ではそれをどのようにカバーするのか。地域の診療所や介護サービス事業所との連携、そして、海南病院といった地域の基幹病院との連携が重要になる。「医療と生活、病院と在宅を結ぶ病院として、さらなる地域貢献を果たすためには、急性期病院・尾張温泉かにえ病院・診療所・介護サービス事業所。それが一本に繋がることが必要と考えます」。

 

 

真価は、
<地域のハブ>にある。

 愛知県海部郡蟹江町では、一般や回復期の入院病床を持つ病院が尾張温泉かにえ病院しかない。これまで海部医療圏(津島市、愛西市、弥富市、あま市、大治町、飛島村、そして、蟹江町)では、基幹病院である弥富市の海南病院などで高度な急性期治療を終了した場合、まだ医学的な管理を必要としながらも、患者は在宅療養に踏み出すことが多かった。また、住民のなかには、海部医療圏ではなく、名古屋市の医療機関などを受診するケースも多々あり、いわば医療圏全体でさまざまなエアポケットが発生していたのだ。
 0122蟹江温泉病院¥IMG_5795そうした問題のなかで、尾張温泉かにえ病院は自らの機能を活かしつつ、地域の実情に沿った形で病院を再設計。現在の形となった。とはいえ、医師不足が影響し前述の榊原が言うように、地域の要望にまだ100%応えるには至っていない。榊原は言う。「当院では高度な急性期治療はできません。しかし、あらゆる患者さんの初期診断を行い、適切な医療へと結びつける。例えば、患者さんを、海南病院や名古屋掖済会病院などに迅速に紹介する。そこでの積極的な治療が終わった後、退院に向けての継続的な治療を当院が担う。そしてその後、地域の診療所と連携して在宅に戻っていただく。あるいは、診療所の先生からご紹介を受けた患者さんを、そうした医療の流れのなかで一緒になって診ていく。そうしたいわば<医療のハブ>として機能してこそ、当院の真価となります。その機能構築に向け、今後は力を注いでいきたいと考えます」。

 

 

<会話>を広げ、
地域に不可欠な存在へ。

 榊原が認識する今後の課題。これは尾張温泉かにえ病院だけではなく、蟹江地区全体の課題ではないだろうか。「何より必要なのは、人材です」と榊原は言う。「例えば、医師。病病連携(病院と病院の連携)に対して、院長同士が理解し合うだけでなく、現場を担う医師同士が結びつくことが必要です。その上で、例えば、高度急性期病院の専門医が当院に来てくださり、転院した患者さんの経過を確認してくださる。また、当院と診療所医師との信頼関係を深める。つまりは患者さ0122蟹江温泉病院¥IMG_5828んを、地域の医療機関全体で一緒に守る体制を作ることができたらいいですね。そのためには、いずれの医師も、当院のような、地域のコミュニティホスピタルをめざす病院への正確な理解が必要になります。それは、当院があくまでも急性増悪時に対応できる機能を有しつつ、回復期、あるいは在宅との双方向の結節点に位置する病院であること。つまりは、地域全体にとって医療ニーズに合致したものであることを、解ってほしいと思います」。
 医師派遣だけではなく、看護師交流、それに紐づいた教育機会の創設など、尾張温泉かにえ病院は、さまざまな形での<会話>が必要と考える。地域包括ケア病床開設の際は、榊原自らが診療所への紹介を行った。次は、高度急性期病院の医師たちへのアプローチと考えている。それは病0122蟹江温泉病院¥IMG_5825院と病院の連携で成り立つ<地域完結型医療>と、中学校区を一つの目安に、新たなコミュニティを形成しようとしている<地域包括ケアシステム>(※)という、今、わが国にとって喫緊の課題に対する、尾張温泉かにえ病院の挑戦。病病連携でも役立つICT導入、総合診療科・老年内科の診療開始など、打てる布石を一つひとつ増やしつつ、次代の地域社会に不可欠な医療のあり方への模索を続けている。

※ 重度な要介護の状態になっても、住まい・医療・介護・予防・生活支援の5つのサービスを一体的に受けながら、住み慣れた地域で暮らすことができる仕組みづくり。

 


 

column

コラム3

●尾張温泉かにえ病院が大きく方向を転換したのは、平成22年、真野寿雄理事長がその任に就いてからである。高齢化問題を見据え、地域に密着し、医療の隙間を埋め、在宅療養を支える病院になると、明確な方向性を決めた。

●そして、回復期リハビリテーション病棟の開設、新築移転、そして、地域包括ケア病床の開設、また、居宅介護支援事業所の院内設置。さらには、老人保健施設、訪問看護ステーションの開設に向け、法人として力走する。

●真野理事長は語る。「国の施策として、今後、地域の診療所の先生は、かかりつけ医として、在宅医療と介護の連携の推進役を担っていかなくてはなりません。その先生方を後方支援することが、当院がコミュニティホスピタルをめざした目的です。現在は、ある程度の方向性を打ち出すことができたと思っています。ラインナップが揃った、というところですね。これをさらに充実させ、真の意味で、在宅に向ける基盤として貢献できたらと考えます」。

 

backstage

バックステージ2

●榊原院長は言う。「病院機能は、地域ニーズを見つめた変化が大切です。しかし、病院経営は、医療制度のなかでしかできません。当院のような医師が不足している病院が、高度急性期病院に医師派遣の支援を求め、また、高度急性期病院がそれに応えようと思っても、その支援に対する診療報酬や制度の裏付けはありません。気持ちがあっても、実態が動かない。そこが辛いところですね」。

●超高齢社会にあって、医療費の削減という大きな問題を抱え、わが国の医療は変革を迫られている。それは必要不可欠であり、いずれの病院も経営努力を続けるが、その努力に限界があるのも事実。特に、地域完結型医療と地域包括ケアシステムの繋ぎ目に位置し、断層を埋めようとする中小規模病院は、さまざまな制約を受けざるを得ない。

●<私>の力で地域医療を守ろうとする病院に対して、行政、また、国全体としての制度保障や支援システムの構築が必要なのではないだろうか。

 


2,498 views