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LINKED Vol.14:伊勢赤十字病院


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シアワセをつなぐ仕事

患者さんの人生の伴走者として
ずっと支えていく。

山村真紀/伊勢赤十字病院 糖尿病看護認定看護師


 

main

「糖尿病とのつきあいは、
患者さんにとって人生を終えるまで続くマラソンのようなもの。
私はそのマラソンの伴走者として、患者さんを支え、
少し先を見ながら一緒に走っていきたい」。
そう話すのは、伊勢赤十字病院の糖尿病看護認定看護師、山村真紀。
病院の外来から地域を見つめ、
糖尿病とともに暮らす患者の支援にできる限りのパワーを注いでいる。

 

 


病院から地域へ。活動のフィールドを広げる
糖尿病看護認定看護師の大いなる挑戦。


 

 

 

離島で暮らす高齢者たちに
フットケアの重要性を指導する。

DSC_0050 平成26年3月下旬、伊勢赤十字病院の山村真紀看護師は鳥羽市の離島「神島」にやってきていた。同院のメンバーとともに、高齢者が40人ほど集う「神島ふれあいいきいきサロン」の場に、出張指導にきたのである。
 「足を守るには、皮膚の清潔と保湿が基本です。皆さん、足をきれいに洗って、保湿クリームをぬっていますか」。山村の問いかけに、会場に集まった人たちは小さな驚きの声をあげて、周囲の人たちとお互いに目と目を合わせIMG_0396る。糖尿病と足のケア、全然関係ないように見えて、実は深い関係がある。血糖値が高い状態が続くと、身体の抵抗力が弱まり、神経障害も起こしやすい。小さなケガでも傷口は化膿しやすいが、痛みを感じにくいため、放置しがちになる。そこへ、糖尿病による血流障害が重なると、傷口の周りの組織が死んでしまい、最悪の場合、足の切断に至る可能性もある。「病院では、糖尿病や動脈硬化症がかなり進行してから来る方が大勢いらっしゃいます。そうなる前に、足のケアが大切だと気づいてもらえただけでも、神島に出向いて良かったと思います」と山村は話す。
 この出張指導は、伊勢赤十字病院の「チームおかげ(糖尿病チーム)」が行っているもの。「糖尿病療養指導士(糖尿病患者に必要な自己管理を指導する医療者)」の資格を持つ薬剤師、管理栄養士、理学療法士、そして看護師がチームを組んで、地域の診療所や施設などに出向いて、糖尿病予防の啓発活動を行っている。「健康に役立つ情報が聞ける」と、地域住民からの評判は上々だ。

 

 

糖尿病看護認定看護師として
通院の糖尿病患者を支える。

IMG_0359 山村は、同院の糖尿病・代謝内科外来に配属されている。毎週木・金曜日は、フットケア外来。前述したような足のお手入れ方法を患者に指導するとともに、糖尿病になるととくに症状が悪化しやすい巻き爪や魚の目などの処置を行う。フットケア外来は平成19年から始まったものだが、順調に患者数が増え、現在では他院からの見学依頼も寄せられるほど充実してきたという。
 毎日行っている糖尿病療養指導外来では、主に糖尿病の退院患者のその後のフォローを行う。「病院の外にでると、食べ物の誘惑がいっぱいあります。とくに働き盛りの方は飲み会もあり、大変苦労します。でも、この病気は自己管理が一番大事なので、少しずつでも成果がでるように根気よく療養指導をしています」。
 このほか山村は、平成25年に発足した「下肢救済チーム」にも参加している。これは、「重症下肢虚血(※)患者の足を守ろう」という取り組み。チームのメンバーは糖尿病・代謝内科、形成外科、循環器科、皮膚科、整形外科、胸部外科の医師のほか、理学療法士、義肢装具士などが顔をそろえる。病気の進行により、足の血管が閉塞・虚血し、下肢切断を余儀なくされる患者が年々増加している。切断まで至る前に、なんとか食い止める。あるいは、切断したとしても義肢を装着して社会復帰できるように、多職種がしっかり連携して活動している。
※ 重症下肢虚血とは、足への血流障害により、足の動脈が狭くなったり、詰まったりした状態。潰瘍が壊死(えし)しやすくなる。

 

 

「こんなことになるとは…」
足を失う患者の一言がすべての始まりだった。

Unknown 山村が糖尿病看護認定看護師を志したのは、糖尿病中心の内科病棟に配置転換になってからだ。それまで混合外科に勤めていた山村は最初、糖尿病の患者の気持ちに親近感を抱きにくかったという。「自己管理できない人が糖尿病になるという先入観があって、指導にも積極的になれませんでした。でも、あるとき、足を切断しなければならない患者さんと出会い、その方が<こんなふうになるとは知らなかった>とおっしゃったんです。衝撃的な一言でした。そこまで悪化する前に、私たち医療者が何かできなかったか。自己管理できるようにアドバイスできなかったのかと悔やまれました。それが、糖尿病に真剣に向き合い始めたきっかけです」。
 しばらくして山村は「糖尿病療養指導士」の資格を取得。少し自信をつけた山村は、さらに看護の専門性を深めたいと考え、認定看護師になることを決意する。上司を通じて看護部長に相談したところ、二つ返事で「ぜひ行っていらっしゃい」と快諾。休職ではなく、出張扱いにするなど経済的なバックアップも受けて、東京にある看護研修学校に入学した。病院の期待に応えなくては、というプレッシャーはなかっただろうか。「いえ、そういう重圧感よりも、ただ単純に学ぶことがすごく楽しかったですね。集まった学生はみな看護に熱く、時間の経つのも忘れて糖尿病について語り合ったこともありました。先生方の講義も興味深く、看護師の可能性の広がりを感じましたね」。
 認定看護師の資格を取得した山村は迷わず「外来勤務」を願い出る。「病院では重度の糖尿病患者さんの治療にあたりますが、実は糖尿病は慢性疾患であり、患者さんは地域全体に広がっています。外来から地域を見つめ、糖尿病も含めた生活習慣病の予防活動を実践したり、糖尿病とともに生活している人たちを支えていきたいと考えたんです」。

 

 

次に続く糖尿病看護認定看護師とともに、
活動のフィールドをさらに広げていきたい。

IMG_2158 山村が今後力を入れていこうと考えているのは、まずは看護師をはじめとした医療者への教育・指導だ。「医療者の教育に力を入れることが、その向こう側にいる糖尿病患者さんを支える近道になるのかなと…。院内ではすでに研修や勉強会を開催していますが、今後は地域にもっと出ていきたいですね。近隣の病院や糖尿病クリニックに出向いたり、糖尿病だけでなく透析施設などとも連携していきたいと思います」。透析患者は動脈硬化になりやすく、足の病気や障害を引き起こすリスクが非常に高い。糖尿病患者にとどまらず、山村が対象とする患者は広がっている。
 そんな山村の前向きな取り組みを、糖尿病・代謝内科部長の村田和也医師は、非常に頼もしいという。「糖尿病にとって<教育は治療そのもの>。糖尿病を予防したり、糖尿病発症後の重症化を防いでいくには、患者さんはもちろん医療者への啓発活動や指導が重要になります。山村看護師のように高度な知識と豊富な経験を持った認定看護師が地域に出ていくことで、地域の医療者の方々の力になれると考えています」と話す。同院の糖尿病・代謝内科がめざすのは、同院が核となり、糖尿病患者を地域で継続的に支えていく仕組みづくりだ。「当院では、合併症の進んだ糖尿病やコントロールの難しい糖尿病症例の急性期治療に全力を注いでいますが、糖尿病の治療は退院後も継続的に必要ですし、予防も大切です。医師会や地域の先生方と連携して、糖尿病にならない、仮に糖尿病になっても足を失うほど重症化しないように、地域の患者さんを支援していきたいと考えています」と、村田医師は抱負を語る。
 その構想の実現において、山村の役割はますます重要になる。うれしいことに、山村に続いて糖尿病看護認定看護師をめざす看護師が学校へ通い始めたところだ。「一人でできることは限られています。次に続く後輩と一緒に、予防や教育の活動をもっと広げていきたいですね」。山村はこれからも、地域で暮らすたくさんの糖尿病患者の伴走者として看護の道を走り続けていく。


 

 

columnコラム

●地域の病院・診療所との連携をどのくらい密に図っているかを測る指標として、患者の紹介率・逆紹介率(※)がある。伊勢赤十字病院はここ数年、紹介率100%、逆紹介率85%をキープしており、同院の密な病病・病診連携体制を物語る。

●同院が志向する「地域完結型医療」とは、地域の医療機関が明確に役割分担し、地域全体で患者をサポートしていく体制である。そのために、同院自身は重篤・重症な患者の高度急性期治療に専念する一方で、院内の人的な医療資源を積極的に地域に役立てていこうとしている。その先頭に立っているのが、「チームおかげ」であり、地域を見据えて活動する山村看護師の存在だといえるだろう。
※ 紹介率とは、病院を受診した患者のうち、他の医療機関から紹介されて来院した患者さんの割合。逆紹介率とは、病院から他の医療機関に紹介した患者の割合を示す。


 

backstage

バックステージ

●65歳以上の高齢者が総人口の3割強を占める2025年に向け、わが国では今、病院から在宅へ、地域医療の提供体制を大きく転換していこうとしている。今後ますます早期退院が加速するなか、退院した患者のフォローを担う外来診療がいちだんと重要な役割を発揮していく。伊勢赤十字病院の糖尿病・代謝内科では、退院後も糖尿病が重症化しないよう、セルフケアの指導など継続治療に力を注いでいる。

●超高齢社会の地域医療で大切なもう一つのポイントは、「病気予防」という視点だろう。地域の診療所や施設、老人会などに、積極的に職員を派遣し、病気予防の啓発を推進する伊勢赤十字病院の「チームおかげ」の活動。病院から地域へ目を向ける同院の活動は、まさにこれからの地域医療に求められているものだ。同院は、三重県中南勢地区の基幹病院として高度医療を提供する一方、地域医療のなかでリーダーシップを発揮していこうとしている。


 

 


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