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病院を知ろう

視点は市民の命と健康、鍵は地域連携。
私たちは医療から地域を支援する病院である。

 

 

岐阜市民病院


main市民病院として、我々に何ができるか。岐阜市民病院は常に自問自答する。
急性期医療の高度化に全力を注ぐ一方で、見えてきた未来像は、
医療と介護と福祉とを有機的に結ぶ軸。

地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院、そして、災害拠点病院、臨床研修指定病院。
こうした数々の指定や認定、承認は、急性期病院としての実力を示すもの。
そのいずれをも有する岐阜市民病院は、高度専門的な医療を提供している病院といえる。
現在では、赤字に苦しむかつての姿は無く、突入した高齢社会での有意な医療のあり方を見つめている。

岐阜県初の、地域医療支援病院。

137_GifuShimin_Linked2014 ノバリス_01岐阜市民病院が、地域医療支援病院の承認を得たのは、平成19年。岐阜県で初めてのことであった。地域医療支援病院とは、平成9年に制度化された医療機関の機能別区分の一つ。この承認が今の岐阜市民病院を創り上げる大きな出来事であった。
 そして現在、救急医療においては、岐阜市民病院は三次救急で対応するさまざまな疾患をはじめ、コモンディジーズ=地域で頻回に発症される疾患のすべてを受け入れる。その一方で、院内にスペースを用意し、地域の小児科医が診療を行う小児夜間急病センターを設置。現在は、医師会、歯科医師会、薬剤師会も含めた休日急病センターも置かれ、まさに24時間365日地域医療機関とともに、子どもから大人まで、地域の救急患者を守る体制がある。
 また、がん治療では、平成26年4月には最新鋭の高精度放射線治療装置を導入するなど、高度先進的な治療に取り組みつつ、地域診療所と5大がん(肺がん・胃がん・肝がん・大腸がん・乳がん)の地域連携パス(治療計画)を整え、早期発見、術後の経過観察など、継続的ながん治療における強固な体制を構築している。加えて、がん治療では注目を集めて久しい緩和ケアにも力を注ぐ。完全個室4床を置き、個人の要望に沿って、緩和ケアを行いつつ最期までがんと闘う患者への治療を展開する。
 なお、地域連携パスでいうと、がんを含め26種類があり、それは「岐阜版」と名づけられている。すなわち、岐阜地域のすべての病院が、同じ治療計画に基づき連携体制を整えているのだ。岐阜市民病院は、これらの連携体制構築に当初から積極的に関わっており、地域医師会や病院間の枠を超えたチーム医療によって実現することができた。

 

 

救急・小児・緩和(がん)。それが地域のニーズ。

Plus顔写真 こうした急性期病院としての実績。実は、順風満帆に手に入れたものではない。冨田栄一院長(平成17年就任)は語る。「私が副院長に就任した平成12年、多くの自治体病院と同じく、当院は累積赤字を抱えていました。まずはこれを何とかするために、大学にも協力を願って医師を獲得し、急性期病院としての診療能力を高度化しました。地域連携部も創設し、私も初代部長として医師会との連携に奔走しました。全職員が本当に必死で病院を立て直すことに心血を注いだのです。その結果、平成15年に累積赤字も解消し、平成20年には外来や西診療棟の改築を始めることができました」。
 冨田院長の言葉は続く。「急性期病院としての数々の取り組みにおいて、いずれの局面においても、自院だけが発展すればよいのではなく、地域全体の医療の向上に資さなくてはならない、という考えが根底にありました。それは反面、今後、市民病院として我々はどうあるべきか、という自らへの問いかけです。その確認の一つとして、平成16年、周辺の住民、病院、診療所の方々を対象に、大々的なアンケートを実施しました。そこで得た答えは、<救急・小児・緩和(がん)医療>です。これが当院に求められているもの。地域から求められている市民病院としての姿です。
 一つひとつ挑戦しました。少しずつ形ができてきました。しかしそれは当院だけの力で実現できたのではありません。地域医療機関との連携によって成すことができた。地域医療機関とともに、地域全体の医療の向上に資することを最優先した結果、地域の要望に近づくことができたのです。
 こうした歩みの象徴ともいえるのが、地域医療支援病院の承認です。当院にとって、地域の医療機関の後方支援を通した、地域一体型医療提供こそが使命であると再認識しました」。

 

フォーカスするのは、市民生活。

110_GifuShimin_Linked2014 岐阜県には西濃・岐阜・東濃・中濃・飛騨という5つの二次医療圏がある。県全体で見ると医療過疎地ではあるが、そのなかの岐阜医療圏だけは、大学病院・県立病院(岐阜県総合医療センター)・市民病院の大規模病院が3つ存在するという医療集中地区。いずれの病院も急性期医療を核に展開する、特殊な医療圏である。
 一般的にいえば、大学病院は高度先進的な医療の研究・教育・臨床を進め、県立病院は県単位での政策医療全般を担う。では市民病院はどのように機能するべきであろうか。
 「大学病院や県立病院に求められているものと、市民病院に求められているものは異なります。私たちがフォーカスするのは、あくまでも市民生活です。そしてそれを時代の要請に沿った形で、いかに素早く、柔軟に応えるかです。例えば、団塊の世代が後期高齢者となる2025年を目前に控え、これからの医療は<治す医療(根本的治療)から、ケアする医療(生活の質を高める全人的医療)へ>と移り変わります。簡単にいえば、病院にとって、短い入院期間で手術をして終わり、という時代ではありません。また、高齢社会では一人の患者さんがいくつもの疾患を抱える、すなわち、複合疾患患者さんにトータル的にケアすることも不可欠です。こうした背景を考えたとき、当院の医療は2階建てであるべきだと考えています。救急医療での姿と被りますが、一つは、得意分野において三次医療に匹敵する能力。もう一つは、コモンディジーズへの対応能力。その両方を有することが必要だと考えています。後者ではあくまでも地域の診療所との連携が前提となります」(冨田院長)。

 

急性期医療を高めつつ、介護・福祉との連携強化。

161_GifuShimin_Linked2014096_GifuShimin_Linked2014 岐阜市民病院の今後について、冨田院長はどのような構想を持っているのだろうか。現在の高度な急性期医療とコモンディジーズへの対応路線を高めるのであろうか? 「もちろんそれは重要だと考えています。しかしそれだけでは、市民生活を見たとき欠けている部分があります。結論からいえば、医療だけではなく、介護・福祉との連携です」。具体的にどういったものであろうか。
 「急性期医療は、これからさらに短い期間での治療、すなわち、平均在院日数の短縮化に拍車がかかります。当院は急性期病床559床を有していますが、医療能力を高度化することで効率性が高まったとき、極端にいうと、平均在院日数が短くなれば、必要な病床も少なくてよいことになります。しかも岐阜医療圏に急性期病床はたくさんあるのですから。逆に足らないのは、急性期治療の後、患者さんが在宅に戻るまでをシームレスに繋ぐ病床です。そうした機能を市民病院としてどうサポートするか…。そうしたことも考えていく必要性を感じています」。
 「それは…」と冨田院長は語る。「今、世界中で問題になっている健康寿命をいかに伸ばすか、という発想にも繋がります。当院での急性期治療後、いかに社会生活を、あるいは在宅に戻っての自立した生活をすることができるか。在宅も含めた流れを患者さんの側から見て、考えていきたいですね。その際に不可欠になるのは、地域の介護・福祉事業所との連携。医療とそれらを線引きするのではなく、市民生活という視点を持てば、トータル的なサポート体制を構築できると考えます。繰り返しになりますが、当院に大切なのは、市民生活への目線です。医療を通じて地域を支援する病院であり続けたいと考えます」。

 

 


 

 

column

コラム

●岐阜市民病院では、初期臨床(※)研修医を毎年連続して10名ずつ獲得している。病院が一体となって若手医師の臨床教育に力を注いでおり、研修内容の充実ぶりは、全国から研修医が集まる病院として評されている。

●研修プログラムは、同院の2階建て医療構造を最大限に活かし、高度な専門医療と基礎的・総合的な初期診断能力を学ぶことができる。さらに、大学との良好な連携が進められており、2年の研修期間を修了した医師は、専門領域を学ぶ後期研修医として同院に残る、あるいは、大学の医局に入局することが可能。いずれにしても、臨床と教育とが結びついた病院、マグネットホスピタルとして岐阜市民病院の果たす役割は年々高まりを見せている。

※医学生が医師資格を取得後、2年以上、大学病院もしくは臨床研修指定病院での臨床研修を義務づけられたもの。

 

backstage

バックステージ

●疾患の急性期に必要なのは、専門的な医療である。今日では臓器別、あるいは疾患別に専門深化が進むなか、いずれの地域でも標準的な高度な治療を受けることが可能だ。

●しかし、病気は急性期だけでは終わらない。病状が落ち着いたからといって、すぐさま在宅に戻ることができるケースは若い世代でしかない。特に高齢社会の今日では、本文でも紹介したとおり、複合疾患を抱える高齢者にとって、急性期のその先の医療が不可欠である。

●その際に必要なのは、時間軸に沿って患者に寄り添う医療の提供。介護や福祉と手を結んでの総合的な支援体制である。高度な急性期医療を追求し、その成果として余剰となる病床を、在宅へと繋ぐために活用するという考えは、今後の地域医療のあり方を示唆するものと考える。

 


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