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病院を知ろう

最先端のシステムを備えた新病院は、
新たな医師像を描ける最高の教育の場。

 

 

愛知医科大学病院



main新病院で稼働する最新技術の粋を結集した「情報システム」。
その真の実力は、診療だけでなく
教育の現場においても発揮される。

 平成26年5月、愛知医科大学病院では、巨大な新病院がいよいよ始動する。
その原動力の一つとなるのが、新たに導入される最新鋭の情報システムだ。
病院という巨大な「体」のなかに、「神経」のように張り巡らされたシステム。
その仕組みを詳しく知るうちに透けて見えてきたのは、「生活時間の最大活用」という新病院の明確なコンセプトだった。

 

 

専門的な高度医療だけでなく総合性を持った新たな病院へ。


IMG_2094 新病院の開院が間近に迫る愛知医科大学病院。すでに建物の大部分が完成し、事務職員を中心に新病院への移転に向けた準備が着々と進められている。取材に訪れた平成26年1月下旬、建設が続く新病院内に足を踏み入れてみると、1階入口付近の吹き抜けの開放感に思わず息をのむ。患者向け案内板の多くがすでに設置された館内。そこは今まさに病院が動き出そうとする高揚感で満ちあふれていた。
 新病院では、大学病院として高度先端医療を徹底的に追求しようとする概念に加え、実はもう一つ、新たな概念が盛り込まれている。それは「プライマリケア(幅広い総合的、全人的な医療)」の発想だ。従来の臓器別・疾患別に専門特化した医療だけではなく、患者を全人的、総合的にとらえ、入院から退院までの時間軸でとらえる。こうした発想を、新たに設けた「プライマリケアセンター」に集約。これが新病院の大きな特色の一つになっている。
 「今までも救急には力を入れてきましたが、高度先端医療を担う大学病院として、重症度の高い症例に特化してやってきました。今回の新病院では、地域の救急医療を担うべく、救命救急センターの隣にプライマリケアセンターを設置し、相互に連携を図りながら、<救急を断らない>という方針を貫きたいと考えています」と野浪敏明病院長は話す。

 

 

新病院を支え、地域と繋げる2つの最先端情報システム。


Plus顔写真1 ただ、新病院の凄みは、こうした新しい概念で作られた施設だけなのか。それは違う。実はそこに走っている情報システム、いわば病院を司る「神経」こそ、新病院の特筆すべきポイントだ。要となる情報システムの一つは、高度急性期医療を支える「電子カルテシステム」、そしてもう一つが、地域との連携を支える地域医療連携ネットワークシステム「ヒューマンブリッジ」である。
 この二つの情報システムは、どんな役割を果たすのか。まず「電子カルテシステム」は、従来の電子カルテをさらに発展させたシステムだ。モバイル端末を利用し、医師が患者の最新の医療情報をどこからでも確認できる。カルテにアクセスする時間と労力を大幅に短縮した。
 一方の「ヒューマンブリッジ」は、地域の診療所から紹介された患者情報を、紹介元である医師と共有する仕組みのこと。同じ地域に点在する患者の情報を一つに集約し、患者情報をリアルタイムで共有できる。
 「電子カルテシステム」にある診療情報を、「ヒューマンブリッジ」によって地域の医療機関と共有する。そのことで、地域全体で質の高い医療を提供することが可能になる。「電子カルテシステム」は、新病院内の高度急性期を担う診療科、「ヒューマンブリッジ」は、地域との連携を担うプライマリケアセンターの要となるシステムといえる。
 この他にも、受付機で配布する電子ペーパー端末を使った患者案内システム「ナビット」も採用。まさしく情報システムという「神経」が、病院全体に張り巡らされた格好だ。

 

総合性を持った医師を育てる大いなるチャレンジ。

IMG_2097 愛知医科大学は、なぜ巨額の資金を投入して最先端のシステムを導入したのか。その理由のカギは、日本が直面する「医療を取り巻く現実」にある。
 「大学病院」と聞いて、一般の人はどんな場所を連想するだろうか。診療・教育・研究の三つを担い、市中の病院では手に負えない、命に関わる重病や難病を治療するところ。そんな風にとらえている人も多いはずだ。従来の大学病院は、まさしくそんな役割を担う存在だった。長らく高度かつ専門性の高い疾患に特化して治療を行ってきたのだ。018_0023a 特A病室_R
 しかし、日本の医療を取り巻く状況は、ここ数年で急激に様変わりしてきている。2025年には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に。一人で多くの疾患を抱えた高齢者が世の中にあふれ、臓器別・疾患別に専門特化した高度医療だけでは医療が成り立たない、という現実が迫りつつあるのだ。そのようななか、従来の専門特化した医師だけでなく、幅広い疾患に対応できる総合性を持った医師の育成の必要性がIMG_9748より高まっている。
 今回の愛知医科大学病院の新病院は、そうした「次世代の医師教育のあり方」を世に問うような、画期的な学びの場を生み出すチャレンジでもあるのだ。
 「今までの大学教育は、総合性を持った医師の育成は苦手な領域でした。しかしこれからは絶対に避けて通れません。今回のプライマリケアセンターの設置、さらに地域と情報を繋ぐ新たなシステムの構築は、これからの超高齢社会を見据え、私たちが診療、教育、研究という機能を最大限に発揮するためのものなのです」と野浪病院長は話す。

 

 

名だたる大学と肩を並べる最高の医師教育の場へ。

IMG_4468 時代の要請に応じた「総合性を持つ医師」の教育拠点へ。まさしく愛知医科大学病院は、新病院の建設を機に、外見だけでなく中身も「新たな姿」へと変貌を遂げる。今回の新病院建設を陣頭指揮してきた整形外科の佐藤啓二教授は言う。「新病院の柱となるコンセプトの一つが、<生活時間の最大活用>。今回の新システムの導入やプライマリケアセンターの開設は、患者さんや病院職員はもちろん、学生たちの学びの時間を最大活用させるものでもあります。電子カルテシステムは今後、学生たちの教育にも活用していく計画です。例えば、見落としやすい症例を、医師がエビデンスをつけて学生にフィードバックする。モバイル端末を使えばそれがもっと迅速にできるようになります。これによって教育にも大きな効果が生まれてくるはずです」。
 全国の医科大学のなかでも、愛知医科大学は後発組。医師教育において長IMG_1525らく後塵を拝してきた感は否めない。だが、これからは違う。「教育」というベクトルを纏った新しいコンセプトに基づき、最先端のシステムなどを導入。ついに名だたる大学と肩を並べるだけの「大学病院」が完成したのだ。佐藤教授は「卒業時点で圧倒的な診療能力を備え、どこでも通用する医師を育てたい。『愛知医大出身者はすごい』と言われる教育を提供したいですね」と並々ならぬ意気込みを覗かせる。
 「新病院は、高度急性期医療とプライマリケアという2つの柱を築くためのもの。今回のプライマリケアセンターは、単に救急を担うだけでなく、研修医教育や学生教育の場としても大きな役割を果たすはずです」と、野浪病院長も教育への熱い思いを口にする。
 後期高齢者人口がピークに達する2025年に備え、愛知医科大学から巣立った医師たちが、全国の医療機関で躍動する。野浪病院長と佐藤教授の言葉を耳にしながら、そんな光景がはっきりと脳裏に浮かんだ。

 


 

column

コラム

●新病院の情報システムが「神経」だとすれば、病院の「血管」を担うのが職員動線、「血液」を担うのが物流システムだ。今まで個別に対応してきた物流を、地下1階の総合物流センターに集約。病棟や部署ごとに必要な物品を混載した便を作り、専用エレベータで垂直搬送することで、大幅な効率化を図っている。また、職員動線については、職員専用のバックヤードや、スタッフステーション間の連絡通路を設置。人・物・情報はすべてバックヤードで移動させる。

●その背景にあるキーワードが「ホテルのような病院を作ろう」というもの。近年、医療において、プライバシー保護、セキュリティなどの必要性が声高に叫ばれるようになっている。この考え方を積極的に取り入れたのが新病院だ。その病室は、まるでホテルに足を踏み入れたかのような静寂な空間となっている。

 

backstage

バックステージ

●本文でも触れたように、ますます進む超高齢社会における社会医療ニーズに応えるため、愛知医科大学病院では、「総合性」に着目した実践的な医師の育成に力を注いでいく。その決意の表れが、今回拡大整備されるプライマリケアセンターの存在だ。一次・二次救急に幅広く対応するなかで、実践的な知識と技術を習得する。

●今後、愛知医科大学病院は、これまでの急性期病院だけでなく、中間的な病院(一次・二次救急に対応し、亜急性期などの病床を持つ病院)との連携をも視野に入れる。プライマリケアセンターで「総合性」を身につけた学生たちが広く地域にいきわたっていく。その可能性の大きさに注目したい。

 


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