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病院を知ろう

人と人の繋がりが医療人としての
「心の礎」を築く。

 

安城更生病院


main多職種みんなで、研修医を育てる。
安城更生病院に伝統的に受け継がれる教育体制。

若い医師たちが集まる病院は、いつも明るく活気に満ちている。
安城更生病院も、そんなアクティブな雰囲気につつまれた病院だ。
有名市中病院が並ぶ東海地区にあって、同院は例年、初期研修医の募集定員を上回る希望者数が集まる。
多くの医学生から「ここで研修したい」と思われる理由はどこにあるのだろうか。
研修医や、研修を支える医師、教育研修センターのメンバーに話を聞いた。

多職種の先輩たちに支えられることを実感する2年間。

112_Linked_AnjoKosei_2014114_Linked_AnjoKosei_2014 毎年、20名程度の初期研修医が入職する安城更生病院。平成25年度に入職した一人、奥村暢将医師は、いろいろな病院を見学したなかで「診断能力の高さと教育熱心さ」に惹かれ、入職したという。ほぼ1年間の研修を過ごしてきて、「ひたすら雑務に追われるのではなく、知識やスキルを高める時間もしっかり取れています。業務と勉強のバランスがとてもいいですね」と満足げに語る。
 研修医2年目の小塩真史医師は、「規模の大きな病院で、たくさんの仲間と切磋琢磨したい」と考えて、入職。2年間のプログラムをほぼ終えて、「救急外来の患者さんも多く、診療科も充実。医師としての基本的な知識や技術を修得でき、とても有意義でした」と話し、「ここまで成長できたのは、上の先生方はもちろん、コメディカルスタッフの方々のサポートのおかげです」と続けた。「たとえば、微生物検査室の技師さんは非常に専門性が高く、僕が興味のある感染症について詳しく教えてくれるし、放射線の技師さんはこれまたプロ意識が高く、画像を読んで的確に指摘してくれます。看護師さんも含め、そういう多職種の方々が、未熟な僕らをサポートするために積極的に動いてくださいます」と語る。奥村医師も、同意見だ。「薬の処方について薬剤師さんがさりげなくフォローしてくれたり、看護師さんが手際良く処置などをしてくださって、とてもありがたいと感謝しています」。

 



教育研修センターは、研修医の「保健室」。

Plus顔写真 同院で充実した研修の日々を過ごす研修医たち。だが、彼らも当然、壁にぶつかることがある。そんなときにふらりと訪れるのが、「教育研修センター」だという。教育研修センターは<人材は組織の財産>という考え方のもと、医師をはじめ、全職員の教育研修活動を支援する部門だ。
 同センターの立ち上げにも参加した三井千鶴は、「研修医の皆さんは、レポート提出など用事のあるときはもちろん、相談ごとでもよく立ち寄られます」と話す。たとえば、自分に対する不甲斐なさ、上級医や指導医に対する不満や希望など、もやもやした思いや悩みを打ち明けるという。そんな研修医たちを三井たちはいつでも温かく迎え、お菓子をすすめたり、和みの雰囲気を作る。「勤務前に来られる人もいるので、朝早くから部屋を開けています」と三井は笑顔で語る。居心地のいい雰囲気のせいか、「用事もないのに、ついつい足が向く」と小塩医師も言う。まさに、医療業務の緊張感の合間にほっと息抜きして、ほろりと本音も語れる<学校の保健室>として機能しているようだ。
116_Linked_AnjoKosei_2014 もちろん、同センターは研修医の悩みを聞くだけでなく、問題解決にも積極的に動く。研修を受け入れる側・研修を受ける側の間に入って、「当事者同士がぎくしゃくすることなく、人間関係が円滑にいくようにさりげなく仕掛けていきます」と語るのは、同センターの三浦崇則センター長(薬剤師)だ。他職種から研修医への不満が寄せられれば、上級医に現場で事実関係を確認してもらった上で、的確に指導してもらう。こうしたきめ細かな対応が、現場の人間関係の円滑化に大きく貢献している。さらに、同センターでは、研修医のモチベーションに応え、院内勉強会のほか、外部からも積極的に講師を招いている。「著名な先生方の話は含蓄に富み、すごく刺激になる」と研修医からも好評だ。同センターは、研修医を上級医・指導医、そして多職種と繋げ、外部の先生とも結びつけるパイプラインのような役割を果たしているといえるだろう。

 

 

 

「人と人の繋がり」は安城更生病院に受け継がれる伝統。


071_Linked_AnjoKosei_2014 「教育研修センターのような存在があって、今の研修医はうらやましい」と語るのは、平成7年に同院で研修を受けた杉浦 真医師(在宅診療部長)だ。「当時は、教育研修センターのような、ここまでしっかりしたサポート組織はなかったですからね。どちらかといえば、<根性で頑張れ>という感じで…(笑)。でも、上の人が下の人を教えて一緒に育っていく、多職種みんなで人を育てていく、という雰囲気は、昔と全然変わっていないですね」。
 杉浦医師は、医師としての最初の5年間を同院で過ごした後、大学院へ進み、平成16年に再び、神経内科に戻ってきた。同院を離れていた4年間、杉浦医師は改めて安城更生病院の良さを再認識したという。「当院がすごく働きやすくて、組織としてうまく機能しているのは、<人は財産であり、人と人の繋がりが財産である>という考えがあるからなんだなと気づきました。人と人の関わりというのは、患者さんもそうですし、一緒に働くスタッフもそうですし、みんなの気持ちが一つにまとまっているんです」。
 その一方で、杉浦医師が離れていた時期に同院は新築移転し、規模もぐんと拡張された。組織が大きくなり、職員の繋がりに支障は出ていないのだろうか。「それは多少、感じることはあります。たとえば、電子カルテで常に情報共有できていますが、カルテだけでは伝えきれないニュアンスなど、もっとチームで共有していきたい。良い医療は人の繋がりがあってこそ実現する、という当院の精神が途切れないように、そこは常に意識していかないといけないと考えています」。
 そう語る杉浦医師は今、研修医に地域との繋がりを経験させようとしている。病棟で一緒に入院患者を診療するのと同時に、在宅診療の現場にも積極的に研修医を連れ出しているのだ。在宅では患者や家族との関係づくりが一層強く求められる。「現場を見て、何か気づいて学んでほしい」という杉浦医師の思いは、研修医の心にしっかり届いているに違いない。





研修医は病院の宝。病院長のメッセージが教育の核となっている。

130_Linked_AnjoKosei_2014 平成21年、同院に「教育研修センター」が作られたのも、実は、杉浦医師が語る「人と人の繋がりという伝統」を受け継いでいく狙いが大きかった。三浦センター長は、そのあたりの経緯について、こう説明する。「<職員が繋がってこそ、人の命を救える>ということを、当院の病院長が歴代ずっと受け継いできた。それが、新築移転後、職員が一気に増えて薄まってしまうことに、病院長をはじめ皆が危機感を感じたんだと思います」。
 同院の伝統を受け継ぎ、職員同士をうまく繋げるのが、教育研修センターの使命。三浦センター長はそう考えて、職員個々の成長はもちろん、職員間・職種間の交流、信頼関係の構築に力を注ぐ。「病院長から管理職、研修医に至るまで同じ目標に向かうことがまず大前提になります。目標というのは、すなわち当院の理念ですね。その上で、みんなが単に仲良くするのではなく、プライドを持つ専門職同士が互いに切磋琢磨し、疑問があれば遠慮なく指摘し、全体のレベルを上げていく。そういう積み重ねが、地域の患者さんに寄与することに繋がるのだと考えています」。
121_Linked_AnjoKosei_2014 とくに研修医教育については、浦田士郎病院長自らが「研修医は、病院の宝」とメッセージを送り、病院全体で育てる意識づくりを徹底している。そうした手厚いサポートを受けるなかで、研修医たちは知識や技術以上に大切なものに気づくという。「それは、自分一人でできることは限界がある。この地域の患者さんを守るためには、みんなが協力してやらないとダメだということです」と、三浦センター長は語る。院内の多職種との連携、さらに地域の介護・福祉施設との連携を通じて、地域医療は成り立つ。その基本的な連携の精神を学べる環境が同院には用意されているのだ。
 最後に三浦センター長は、同院の魅力をこんなふうに表現した。「医師としての心の礎は、最初の2年間でしか学べません。当院は<心を学べる病院>だと自信を持って言えますね」。


 

 

column

 

コラム

●Webサイト(病院情報局)で、毎年発表されている初期臨床研修人気病院ランキング。これによると、安城更生病院は愛知県下で常に上位にランクされ、とくに平成25年度は<第2位>に輝いた。それだけ「この病院で学びたい」と希望する医学生が多い、東海地域屈指の教育病院である。

●同院が医師教育に熱心に取り組み出した歴史は古く、昭和43年にさかのぼる。その当時から複数診療科研修を開始し、昭和49年からは現在の研修制度の原型ともいえるローテート研修(複数の診療科を順番に研修していく)を始めている。こうした歴史から、どの診療科も研修医を積極的に受け入れようという懐の深さを持つ。全診療科に、臨床研修指導医講習会を修了した卒後7年目以上の医師が配置されており、その指導医を中心に、コメディカルスタッフも積極的に協力して、研修医教育に情熱を傾けている。

 

 

 


backstage

バックステージ

●現代の医療は専門化が進み、臓器別、病態別に診断・治療能力は著しく進化している。その一方で、専門的な知識・技能には長けていても、患者を全身的に診る力に乏しい専門医が増え、問題となっている。なぜなら、超高齢社会の進展に伴い、多臓器にわたる慢性疾患を抱えたり、社会的問題を背景に持つ患者が急増しているからだ。

●これからの時代に必要なのは、多臓器に問題のある患者を総合的・長期的に支えていく医療体制であり、すべての専門医には患者を全人的に診る能力が必要となってくる。そういう視点から見ても、安城更生病院の<チーム医療のなかで研修医を育てる>教育体制は大変望ましいといえるだろう。最初の2年間で「人と人の繋がりの大切さ」を学んだ医師たちが、やがて地域医療の最前線に飛び出し、多職種の医療スタッフを繫ぎ、さらに介護・福祉のスタッフを繫ぎながら、患者を支えていく。そんな理想的な未来予想図が実現していくことを切に願いたい。

 


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