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病院を知ろう

「心カテ」も「内視鏡」もできる。
そんな医師に僕たちはなりたい。

 

 

 

尾西病院


main総合性を学ぶことは、決して内科医として「回り道」ではない――。
循環器内科をめざす研修医が選んだ、尾西病院という実践教育の場。

 将来めざすのは、循環器内科の専門医。でも、専門分野のカテーテルも、専門外の内視鏡も、自分でやってみる。
尾西病院で学ぶ研修医に、「専門しか学ばない」という考えはない。
目の前の疾患に向き合い、何でも自分でやれるスキルを貪欲に吸収していく。
そんな研修医たちの光景は、今後の医師教育のあるべき姿なのかもしれない。

 

本日の心臓カテーテル検査の担当医は、消化器内科の後期研修医。

212138 稲沢市西部の急性期病院として、地域医療を担い続ける尾西病院。その医師教育の現場を覗いてみると、不思議な光景を目の当たりにした。
 カテーテル室に案内されると、大学医学部卒業後2年間の初期研修を終え、引き続き後期研修を受ける医師が、主治医として心臓カテーテルの検査に当たるところだった。何気なく話を聞いてみる。すると、その医師の専門は消化器内科なのだという。
 実は、心臓カテーテル検査を専門に行うのは循環器内科。消化器内科は内視鏡検査を行うのが一般的だ。しかも、その日の助手を務めたのが、循環器内科の後期研修医。立場が逆になっていた。さらに、もう一人、初期研修2年目の研修医の女性が、その検査に立ち会っていた。この研修医は初期研修修了後、別の病院で産婦人科の後期研修を受ける予212152定だという。そんな3人が心臓カテーテルの検査に当たっていたのだ。
 3人を背後から見守る浅田 馨循環器内科部長と後藤章友副院長。何かあれば自ら当たる構えで、真剣に彼らの様子を見つめていた。浅田循環器内科部長に「消化器内科の医師が心臓カテーテル検査をやるのは普通なのか」と聞いてみる。すると、「いえ、違います。私が受けた研修では、循環器についてしか学びませんでした」と返ってきた。「もちろん専門性を持つことは大事ですが、市中の病院では内科という枠組みのなかで他の領域にも対応しないといけない。私もこういった研修を受けてから循環器をめざした方がよかったと思います」。浅田循環器内科部長自身、専門分野以外については、「今ここでもう一度勉強しているんですよ」と話してくれた。

 

 

全部ができる内科医になる。それは、回り道じゃない

 212002先ほどの心臓カテーテル検査で、助手を務めていた循環器内科の長縄博和医師。長縄医師が尾西病院を研修先に選んだのは、「中規模病院ならではのメリット」を感じたからだと言う。「診療科の垣根がなく、全般的に診療ができる。覚えるべき手技を幅広く実践的に経験できるのが魅力的でした」。大学医学部卒業時点でめざすべき科を決めていたわけではなかったが、漠然と内科がいいと考えていた長縄医師。そこで、内科医に必要な手技が身につけられそうだと感じ、尾西病院を選んだのだという。
 実際に尾西病院で勤務してからも、当初の印象とのギャップはないと話す。「指導医の先生はとても親切ですし、内視鏡やカテーテルの検査なども、最初から一緒にやらせていただきました。実際の手技を早くから経験でき、とても満足しています」。
 長縄医師がめざすのは212054、循環器内科の専門知識を有する一方で、幅広い疾患に対応できる総合性を持った医師になることだ。「高度な専門知識を持った先生が当院にお見えになったときも、専門分野はすごいと感じるものの、他の分野になると経験がなく、どうしていいか分からない。そんな状況を見たときに、私は最初のうちに幅広い知識をきちんと身につけておきたいと思いました」。そして、後期研修で尾西病院を選んだ理由をこう語る。「他の大規模病院も見に行きましたが、私はいきなり大きな病院に行くより、ある程度の規模の病院で研修した方が、多くの経験を得られるのかなと感じました。専門性を高めるのは、数年経ってからでも遅くはないと思ったのです」。
 内科医としてさまざまな経験を積むのは、決して回り道じゃない。そんな思いが尾西病院で学ぶ長縄医師の原動力になっている。

 

 

社会ニーズにマッチした医師像を描けるように。

212093  研修医の教育プログラム策定の責任者である後藤副院長は、これからの医師教育を考える上で、「社会的なニーズがどこにあるのか」を考えるのが重要だと話す。
 「我々の病院が果たすべき使命は、この地域の医療に貢献することだと思います。高度で稀な疾患は難しくても、2次救急の範囲でしっかり対応できる。さらには、予防から在宅までを見据えた包括ケアを実践できる。だからこそ、それに応える人材を育成することが、私たちの医師教育の目標です」。
 医学生の求める将来像は、専門医をめざす流れが強い。ただ、そのなかでも医師に必ず求められる基礎的な部分がある。こうした医師のベースとなる部分をきちんと養うことが、医師教育には必要だと後藤副院長は考えている。
 「とりわけ内科医であれば、広く一般的な症例について学ぶことが大切だと痛感します。2年間の初期研修を終えて専門に進むと、同じ内科でも他の内科の分野の症例を診る機会は少なくなります。だからこそ、当院の研修では、専門分野の症例を診つつ、それ以外の分野でも経験を積んでもらいたいのです」。
 尾西病院では、各科で独自に行う研修プログラム以外にも、第1・第3土曜日の午前中、研修医全員を集めた勉強会を実施している。そこでは、さまざまな診療科の医師が研修医のニーズに合わせたテーマを設定し、幅広い知識を習得するための学びの機会を提供している。指導医との対話形式の講義は、研修医からの評判も上々だという。

 

 

総合性を手に入れるため、尾西病院で学ぶ大きな意義。

212169  2025年には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に到達し、いくつも慢性疾患を抱えた高齢者が増加。医療・介護の問題が深刻化することが予想される。そこに必要とされる医師像を考えた場合、あえて専門医としては遠回りであるが、最初に総合的な知識と技術を学ぶことのできる尾西病院の医師教育はとても大きな意味を持つに違いない。
 「一般的な初期研修は、<見学>であることが多い。専門的なものをたくさん見る機会はありますが、主体的に参加するのではなく、どうしても受け身になりがち。その意味では、当院は大規模病院にはない貴重な学びが得られる場所だと思います」と眞下啓二院長は断言する。
 「僕は循環器以外も幅広く診察できる内科医になりたい」。そう語る長縄医師は、尾西病院での学びを端的に表した象徴的な姿だといえるだろう。
 平成26年度の新東館オープンを機に、「稲沢厚生病院」へと名称を改め、再出発を図る尾西病院。地域医療の貴重な担い手として、さらには、時代が求める総合性を持った医師育成の場として、同院の今後に大きな期待が寄せられている。

 

 

 


 

columnコラム

●尾西病院では、臨床研修病院としての初期研修プログラムの質を高めるため、NPO法人卒後臨床研修評価機構による機能評価を受けている。この機能評価の認定を得るためには、病院施設や研修設備、そして研修プログラムなどの評価判定を受けなければならない。これらの調査を経て、安全管理や法令遵守、教育レベル、地域への貢献度など、さまざまな角度から設置された認定基準を満たせば、晴れて認定が得られる仕組みだ。

●現在、愛知県で認定を受けている病院は19病院。認定期間は、2年間、4年間、6年間の3種類があり、優れているほど長く設定される。尾西病院は、評価の80%以上が「適切」、または「a」という結果を受け、「認定期間4年」を取得している。名だたる病院が名前を連ねるなか、同院のような病床数200〜300床規模の病院が、比較的ハードルの高い4年間の認定基準をクリアするのは極めて稀なケースだ。同院の臨床研修が、客観的にも評価されている証拠といえるだろう。

 

backstage

バックステージ

●内科医とは、さまざまな検査を実施して診断を下し、投薬などの治療方針を決定する医師を指す。しかし、検査に使用するカテーテルや内視鏡といった医療機器の高度化に伴い、状況によっては内科医がそれらを用いて自ら治療するようになってきた。そしてそのことが、内科医を臓器別・疾患別の専門特化へと促してきた。

●一方、尾西病院の研修は、カテーテルのみ、内視鏡のみしか使えない専門特化した医師を育てることではなく、専門性を高めつつも、幅広い診療能力の底上げを行う試みだ。その背景には、今後の超高齢社会をにらみ、限られた医療資源のなかで、高度急性期病院と連携し、地域医療を守る「中間的な病院」の必要性が高まるという洞察がある。「中間的な病院」では、診療科の垣根を超えて、幅広い疾患を診る対応力が求められる。医師自身も、社会全体のあり方、そして社会が医療に求めるものに対応していく必要があるのではないだろうか。

 


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