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アーカイブTOPタイトル-075年ほど前、病院の救急車受け入れ拒否、いわゆる「たらい回し」による死亡事故が全国で相次ぎ、マスコミのセンセーショナルな報道によって救急医療崩壊の危機感が高まった。最近になって救急搬送に関する報道は減ったが、それは救急医療が持ち直したことを意味するのだろうか。それとも、マスコミが取り上げるような事件が減少しただけで、救急医療崩壊の危機は過ぎ去っていないのではないだろうか。東海エリアにおける救急医療の現状と課題を探った。


「たらい回し」は絶対にしない。

救急車の受け入れ拒否が少ない東海地域。

96BC8FCC96A290DD92E82011 救急医療の健全度を示す指標として、病院の「救急患者受け入れ率(救急隊の要請を受けた病院が断ることなく受け入れた患者数の比率)」がある。消防庁の調査結果によると、救命救急センターにおける救急患者受け入れ率は、岐阜県が99.12%、愛知県が97.89%、三重県が90.10%。これは東京都 (73.69%)、大阪府(83.24%)など大都市圏と比較すると、非常に優秀な成績である。とくに220万人都市・名古屋を抱える愛知県の救急医療はかなり健闘していると言えるだろう(消防庁・平成22年中の救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査より)。では、救急医療の現場では、どのように24時間365日の救急医療に取り組んでいるのだろうか。都市部、郊外、山間部にある病院をそれぞれ取材した。名古屋市東部の約57万人の人口を医療圏に抱える名古屋第二赤十字病院。ここでは、年間8000台以上の救急搬送患者を受け入れ、救急患者数は年間4万6000人以上にのぼる。「救急搬送は年々増えており、救急車が重なって到着することも珍しくありません。しかし、当院は“救急は医療の原点”という理念をもち、すべての救急搬送応需をめざして頑張っています」と石川清院長は語る。IMG_0898
 「西濃地域ではうちが最後の砦なので、何があっても断れないんです」と語るのは、曽根孝仁院長だ。選択肢のない西濃地域40万人の救急医療を支えるために、今年1月には、手狭になった救命救急センターを増築。スペースを約4倍に拡張し、救急病床数も15床から倍の30床に増床。さらに万全の救急医療体制を整え、基幹病院としての使命を果たそうとしている。山間部の状況はどうだろうか。愛知県東北部に位置するへき地医療拠点病院の厚生連・足助病院を訪ねた。医療圏の人口は概算1万5000人。救急患者は1日1、2例。しかし当然、人口に比例して医師も少なく、休日夜間は圧倒的にマンパワーが不足するという。早川富博院長は「夜間の診療については、広報誌などを通じて地域の方々に理解と協力をお願いしています。また、循環器疾患のうち心筋梗塞はすぐに豊田市街の豊田厚生病院などへ搬送し、多発外傷などは愛知医科大学病院へ送ります。距離は離れていますが、愛知医大にはドクターヘリがありますから強力な支援になっています」と説明する。地域住民の理解を仰ぐとともに、疾患別に送るルートを確立することで、へき地救急医療を守っている。


たくさんの救急患者を受け入れる仕組み。

病床も勤務医も足りない。

  都市部、郊外、山間部と、立地条件は違うものの、どの基幹病院も「救急搬送を断らない」という強い信念をもって救急医療に取り組み、高い救急患者受け入れ率を維持している。これは、潤沢な医療資源によるものなのだろうか。いや、実はそうではない。人口10万人対病院病床数を見ると、3県とも全国平均を下回るのだ。とくに愛知県は912.5床で、神奈川、埼玉に次いで3番目に少ない。さらに勤務医の数(病院における人口10万人対常勤換算医師数)においても、愛知県は131.1人、岐阜県は120.4人、三重県は118.6人で、いずれも全国平均の152.6人を大きく下回る。(厚生労働省・平成22年の統計表より)病床も勤務医も少ないなかで、一体どのようにして救急患者を受け入れているのか。その理由について、名古屋第二赤十字病院の石川院長は「救急医療の仕組みにある」と言う。「当院では救急部の専従医師を中心に、各科から配属された医師および研修医が前面に立ってあらゆる救急患者さんを受け入れ、初期診断をして各診療科へ振り分けています。同時に、すべての診療科が全面的に協力し、病院が一丸となって救急医療に取り組んでいます」。 従来、日本の救急医療体制は、患者の重症度により医療機関の役割分担を定めてきた。軽症患者は一次救急(休日夜間救急センターや当番医)、中等症の患者は二次救急(一般病院)、重症患者は三次救急医療機関(救命救急センター)を利用するのが原則となる。しかし、医療機関を利用する患者側からすると、病気の症状を見極め、施設を使い分けることはむずかしい。「とりあえず大きな病院に行けば安心」という大病院志向もある。そこで、東海地域の基幹病院の多くが、一次〜三次の役割分担を超えて、歩いてきた患者も救急搬送された患者もすべて受け入れる仕組みを採用しているのだ。

 

北米型ERシステムの普及が進む。 ER907D21

 また、愛知県西三河南部地域にある岡崎市民病院は、平成16年に救急科を発足して以来、救急搬送台数が年々増加しており、平成23年度は愛知県下でもトップとなる9928台に達した。救急科専門医と研修医が中心となり、すべての各科専門医が協力する体制を敷いて、不応需率は0.5%以下をキープ。救急搬送される患者の入院率は35%で、残りの65%はそのまま帰宅しているが、木村次郎院長は「軽症のなかにも実は重症という方もいますから、むやみに断ることはできません」と語る。急増する救急搬送に対応するため、同院では救急病床を15床整備する計画を進めている。同じく西三河南部地域にあり、岡崎市民病院とともに、救急搬送台数の多い医療法人豊田会・刈谷豊田総合病院。ここでは、救急・集中治療部と麻酔科が中心となって重篤な救急患者に対応し、ウォークイン患者を中心とした軽症・中等症患者は各診療科の医師が交代で診るという仕組みで、あらゆる救急患者を受け入れ、初期診療から集中治療まで切れ目のない迅速な救急医療の提供を実践している。井本正巳病院長は「救急搬送台数は年々増え続けていますが、“断らない救急”をモットーに全診療科の総力戦で取り組んでいます」と力強く語る。

「名大方式」の伝統が受け継がれる救急の研修医。

 少ない医療資源にもかかわらず救急医療を維持できているもう一つの理由として、刈谷豊田総合病院の井本病院長は「“名大方式”による研修医教育の伝統」を挙げる。名大方式とは何か。かつて日本のほとんどの大学医学部では、卒業と同時に大学医局(※)に入局(勤務)するのが主流だった。これとは違い、名大方式は名古屋大学医学部を核に70余りの関連病院と連携し、少なくとも1年間は特定の専門科に入局せず、複数の科を研修するもの。卒業生たちは関連病院に分散し、それぞれが多様な臨床の現場を体験し、幅広い知識と技能を身につけてきた。tousei02「東海地方では名古屋大学医学部と基幹病院が中心となって、救急、プライマリケアを重視した研修をやってきました。その伝統があるから、今も救急の最前線を若い研修医が支えています」と井本病院長は語る。夜間救急外来の第一線で活躍するのは、どこも若い研修医だ。上級医の指導のもと、研修医たちは主に軽症患者に対応。上級医・指導医たちは救急搬送されてきた中等症・重症の患者に対応している病院が多い。救急患者の過半数は軽症者であり、研修医の貢献度は非常に高い。睡眠が十分に取れない救急の現場は、若くないととても勤まらない。別の視点から見ると、多様な症例が集まる救急外来は格好の勉強の場となる。さまざまな症例に触れ、密度の濃い臨床経験を積むことができるからだ。救急医療が盛んで教育内容がしっかりしている病院は医学生の間でクチコミで広がり、人気の研修病院になる。その一つ、西三河南部地域にある厚生連・安城更生病院は医学生の研修病院人気ランキングで、常に上位にランクされている。研修医が多く集まることによっ て、夜間のマンパワーが充実し、より多くの救急患者を受け入れることができる。当直医が増えることで指導医のゆとりも生まれ、教育体制も充実する。その好循環が過酷な救急現場を支えている。※大学医局とは、大学医学部や歯学部、附属病院の教授を中心とした講座ごとの同門組織であり、医師の教育機能を備える。また、大学病院を頂点として関連病院も含めて医師の派遣・人事を采配する。


東海地方の救急医療は、これからも盤石か。

聞こえてくる二次医療機関の悲鳴。

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651026 東海地域における救急医療のこれからを展望する上で、懸念される問題がある。それは、急速に進む高齢化だ。東海地域の中心である愛知県における高齢者数は、平成22年の時点で約149万人。10年後には約189万人になると推計されている(愛知県・平成24年愛知県高齢者居住安定確保計画より)。高齢者が増えれば増えるほど、自ずと有病率も上がる。高齢者の場合、小さなきっかけで生命の危険に陥ることも多々あるため、救急搬送件数の爆発的な増加が予想されている。
 そうなれば、基幹病院の救急機能はどうなるのだろうか。前頁・右下の図は、岡崎市民病院の例だが、東海地域では多くの基幹病院に救急患者が集中している。そんな過密状態に、予測される高齢の救急患者が加われば、たちまち医療機能はパンクしてしまうだろう。
 となると、今後の鍵を握るのは、二次医療機関(二次救急の機能をもつ地域医療機関:以下、二次医療機関という)ではないだろうか。前述したように、日本の救急医療体制は、患者の重症度により一次・二次・三次救急医療機関が整備されている。二次医療機関は基幹病院に続く入院治療機能を担い、軽症・中等症の救急患者を受け入れるとともに、急性期病院として基幹病院で超急性期治療を終えた患者の継続治療も行う。
 だが、二次医療機関はどこも悲鳴を上げているのが実情だ。たとえば、愛知県西三河南部東医療圏では、二次医療機関が輪番制(当番制)で救急患者を受け入れているが、参加病院が減り、輪番を実施できない日が年間3割程度あるという。
 この背景として、一つには救急医療が不採算だという事情がある。救急医療は非常に大きな人件費がかかる割に、それに見合う十分な診療報酬が評価されていないことだ。結果、救急の赤字を他の診療部門の収益で補うか、地域自治体の支援を受けて維持するのが現状のようだ。
 そしてもう一つが、深刻な医師不足だろう。従来、地域病院への医師の供給は主に大学医局に任されてきた。ところが、平成16年に始まった新医師臨床研修制度で、研修医が研修指定病院を自由に選択できるようになり、これを機に、医師たちが研修後も自分で勤務先を選択する傾向が強まった。そのため、魅力のある病院には医師が集まり、そうでない病院には医師が集まらないという「医師の偏在化」が生まれたのではないか。さらに、従来ならば大学医局がそのバランスを調整してきたが、人事機能が弱まってきたと同時に、医師を派遣する際、どうしても基幹病院を優先する傾向があり、結果として、特徴のない二次医療機関は重大な医師不足に陥り、診療科の閉鎖や救急の規模縮小を余儀なくされたと考えられる。
 このように、二次医療機関の弱体化は個々の病院だけに非があるのでは決してない。診療報酬上の経済的な問題と医師供給という構造的な問題が根底にあり、それが解消されない限り、抜本的な解決は望めないと言えるだろう。

二次医療機関のパワー不足が、救急医療の“出口”を塞ぐ

83r83W838583A838B02 二次医療機関の弱体化は、救急の“入り口”において、基幹病院への患者集中という事態を招いている。同時に、コインの表裏の関係にある救急の“出口”にも、大きな影響を与えている。
 救急の基幹病院では次々と搬送される患者で、救急病床やICU(集中治療室)がすぐ満床になる。すると、それまで救急病床やICUにいた患者を急性期病床へ。さらに急性期病床に入院していた患者を一般病床を有する他の医療機関(二次医療機関を含む)へ、さらにその先の福祉施設や在宅へと、患者を移していく必要がある。しかし、どの基幹病院の病院長も「後方を引き受けてくれる病院(入院病床をもつ医療機関)が圧倒的に少ない」と頭を抱える。
 病院の満床の程度を示す指標として、病床稼働率がある。これはホテルの稼働率と同じで「どれだけベッドが埋まっているか」を表すものだ。西三河南部地域を例に見ると、岡崎市民病院は 98.9%(平成21年度)。同じエリア内の安城更生病院、刈谷豊田総合病院も96%以上で、常時満床の状態と言っていい。これに比べ、一般病床を有する他の医療機関(二次医療機関を含む)の病床にはまだ余裕がある。そこへ患者を転院させれば良さそうなものだが、前述の通り、深刻な医師不足の問題もある。また、超急性期を脱したばかりの患者を引き受けるには、医療の質を担保して継続ケアを提供しなくてはならない。不安定な病状を管理し、適切に改善へと導けるか…。患者を受け取る側も送る側も双方が不安感をもったまま、そのことでスムーズな転院がなされていないのではないか。
toyota01 二次医療機関の後方支援機能を補強するために、岡崎市民病院は「医師の派遣」という新たな試みに着手した。「当院から地域の医療機関に週に1回、医師を派遣しています。まだ入院患者を診るまでには至っておらず、一歩を踏み出したところですが、可能性として医師の多い病院から他院へ派遣するシステムがあってもいいと考えています」(木村院長)。
 後方支援病院との連携ではなく、基幹病院が自ら後方支援病床を確保する動きもある。刈谷豊田総合病院では2つの分院を設けて、合わせて334床の療養病床を確保するとともに、介護老人保健施設も備えている。「当院は635床あって、平均在院日数は約11日間。毎日50人くらいの方が退院されます。退院先を用意する上で、周辺の病院との連携に加え、3つの施設を有効に使えるので比較的スムーズに転院できていると思います」(井本病院長)。
 急性期病院における患者の平均在院日数は、どんどん短くなっている。たとえば脳卒中で救急搬送され入院した場合、現在でも10日ほどで退院しなくてはならないが、高齢化が進展すればさらに早期退院を余儀なくされるだろう。そうなると、後方支援病院の医療レベルも問われる。転院しても高度治療を継続して提供できるような連携とシステムづくりが求められている。


救急医療の再編から将来ビジョンへ。

二次医療機関を再生し、救急医療ネットワークの構築を。

1030 現在はなんとか円滑に回っている救急医療体制も、救急患者の増える超高齢社会の到来で、対応できなくなる可能性が高い。その問題を解決するには、まずは二次医療機関の再生だろう。それぞれが自院の個性を見直し、他院にない特色や得意分野を打ち出すようになれば、今まで以上に研修医を獲得できるはずだ。また、二次医療機関がそれぞれの得意分野をもち、その領域における救急を引き受けるようになれば、救急医療ネットワークのなかで大きな力を発揮できる。現在は基幹病院に集中している救急患者を、本来の一次・二次・三次医療機関で分散して受けもつことで、爆発的に増えると予想される救急患者をコントロールできるのではないだろうか。 すでに、病院同士の機能分担と連携に取り組む動きも活発化してきた。愛知県西三河南部地域では、平成19年、救急受け入れ拒否が社会問題になったことを契機に、地域の医療機関・消防隊・保健所が協力体制をとるために「西三河南部救急連携ネットワーク協議会」を発足。二次・三次医療機関と保健所、消防隊が2カ月に1度集まり、現状と課題について話し合っている。顔の見える関係ができたことから、「基幹病院が満床時に互いに協力し合う体制が生まれ、後方支援病院との連携も進んでいる」と安城更生病院の浦田士郎病院長は言う。

大学に期待されるこれからの医師育成機能。

 今後、救急医療ネットワークを構築していく上では、医師育成・派遣を担う大学の役割も重要になる。
 優先課題は医師不足解消で、不足している救急科専門医の育成が急務と言われている。医学教育の臓器別細分化が進むなかで、“どんな疾患も診る”救急科専門医の教育は軽視されてきたのが実情だ。大学教育の立ち遅れから、救急科専門医は症例豊富な基幹病院の臨床現場で育ってきたが、本来は大学が主体となって教育に取り組むべきだろう。近年になり、ようやく救急医学教育が見直され、ここ10年間で大学の救急医学講座も増えてきた。名古屋大学医学部にも研究科の講座として「救急・集中治療医学分野(救急医学)」があり、目下、救急医学の地位確立をめざして精力的な活動に取り組んでいる。
okazaki02 愛知医科大学も、救急医療を担う救急科や麻酔科の医師教育に力を注ぐ。愛知医科大学病院・野浪敏明病院長は、「医師が不足しがちな救急科や麻酔科などについては、大学が率先して人を育てていくべき」と語る。その上で「国がある程度のインセンティブ(報奨)を出すことも必要です。救急科や麻酔科医に対し、診療報酬はもちろん待遇の面でも評価していくことが、救急科専門医をめざそうとする若い医師の増加に繋がると思います」と言う。
 救急科専門医の育成と並び、内科を総合的に診る医師の育成も期待されている。名古屋大学医学部附属病院・松尾清一病院長は語る。「200〜300床規模の病院では、一人の医師が脳卒中も心筋梗塞も診なくてはならない状況もあります。そういう場面に対応できる内科総合医が今後ますます必要になるのではないでしょうか。名大医学部には総合診療医学という講座がありますが、教授陣には病院で活躍する内科総合医をたくさん育ててほしいとお願いしています」。

地域からの要望をもとにバランスよく医師を派遣していく。

G02.22 大学に期待される二つ目の課題は、医師が敬遠しがちな医学領域(救急科、産科、小児科等)を魅力あるモノへ育てていくことだろう。魅力づくりのキーワードは、学ぶ環境と働く環境にある。学ぶ環境では、卒業後、指導医のもとでしっかり研修できる体制が肝心だ。たとえば、大学が基幹病院に指導医を配置し、基幹病院と協力して若手医師を育てていくといった、大学と病院の密接な連携も期待されている。働く環境では、労働環境の改善への声が強い。とくに年々増加する女性医師の働きやすい環境整備が急務とされ、愛知県地域医療再生計画においても予算が計上されている。同時に、医療訴訟のリスクにさらされやすい救急科などの医師を守る仕組みも必要だろう。
 また、医療圏ごとにバランスよく医師が配置できるよう、地域の病院、医師会と大学の協議も必要だ。愛知県では医学部を有する4大学が集まり、「医師派遣に係る大学間協議会」を開催し、医師派遣状況について情報を共有し、医師派遣のシステム構築を模索。最終的には、地域からの要望をもとに医師派遣を適切に実施する「愛知方式の医師育成・派遣体制」の構築をめざしている。
 その一環として、県内3大学(愛知医科大学、名古屋市立大学、藤田保健衛生大学)に「救急医療学」寄附講座を設置し、救急科専門医を育成・派遣していくことも予定されている。寄附講座とは、県や自治体がスポンサーとなって開設される講座で、地域ニーズを取り込んだ形での新しい医師教育・供給のスタイルとして注目をあびている。さらに、医師をめざす受験生へのアプローチとして始まっているのが、大学医学部入試で、地元高校の出身者らを特別な枠で選抜する「地域枠」制度だ。地域枠で入学した学生には、医師免許取得後に一定期間、指定された領域の医師として地元で働くことを条件に奨学金などの優遇制度が提供される。
 このような医師の育成・配置計画の成果が、地域医療全体の再生に向けての大きな足がかりになるよう期待したい。

超高齢社会を見据えた取り組み。

annzyou02 ここまで東海地域における救急医療の現状と課題、そして対策を追ってきた。では、もう少し視野を広げて、救急医療も含めた地域医療全体は、迫り来る超高齢社会に備え、どの方向へ舵を取ろうとしているのだろうか。愛知県の地域医療再生を考える有識者会議のメンバーでもある松尾病院長(名古屋大学医学部附属病院)は、「もはや病院を一つ作れば、市民が幸せになるという時代ではない」と言い切る。「今後ものすごい勢いで高齢者が増えていくわけですから、急性期中心で医療を整備しても意味がない。国も地域包括ケアシステムの構築を掲げていますが、東海地域においても医療と介護の垣根をなくすシステムづくりが急務だと思いますね。まずは、二次医療圏ごとに医療と介護のスタッフが全員参加するような協議組織を作っていくべきだと考えています」。
 藤田保健衛生大学病院の星長清隆病院長も、急性期から慢性期までを見渡し、近未来の地域医療のあり方を模索中だ。「新しい地域抱括ケアを前提とした、新たな地域医療システムを開発するための教育・研究の場が必要になっている」と提言する。
 地域の病院長もまた、急速な高齢化に危機感を抱き、それぞれの施策を打ち出している。尾張東部医療圏を支える公立陶生病院の酒井和好院長は「複数の疾患をもつ高齢者を支えていくには、今後さらに急性期治療を終えた後の継続ケアが重要になる」と指摘する。同院は急性期病院でありながら、いち早く訪問看護に取り組み、在宅への支援を進めてきた。近年は「退院調整支援室」を設けて、専属の看護師が退院後も安心して在宅療養できるサポートに力を入れている。
 超高齢社会を見据え、救急病院の後方支援、そして在宅医療や介護はどうあるべきなのだろうか。次回LINKEDでは、“救急の出口”に焦点を当て、個々の二次医療圏のケースを見つめつつ、引き続き救急医療について考えていきたい。


 

HEYE

元厚生労働副大臣 大塚耕平/
活躍が期待される地域医療コーディネーター

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私たちは忘れない、3.11を。

東日本大震災に遭遇した一人の医療人から、地域医療への熱く、そして、冷静な眼が、私たちが3.11の教訓から学ぶことの大切さを教えてくれる。

EEYE
国、県、自治体、そして住民。
それぞれが自ら救急医療を守るという視点。

 

SPECIAL THANKS(編集協力)
「PROJECT LINKED」では、「LINKED」vol.07制作にあたり、多くの医療機関に取材を行いました。 ご協力くださいました皆さまに、厚く御礼を申し上げます。 (病院名は、あいうえお順にて掲載)

愛知医科大学病院
野浪 敏明 病院長

足助病院
早川 富博 院長

安城更生病院
浦田 士郎 病院長

一宮市立市民病院
中條 千幸 院長

犬山中央病院
竹腰 昭道 院長

大垣市民病院
曽根 孝仁 院長

岡崎市民病院
木村 次郎 院長

海南病院
山本 直人 院長
 春日井市民病院
渡邊 有三 院長

刈谷豊田総合病院
井本 正巳 病院長

江南厚生病院
加藤 幸男 院長

公立陶生病院
酒井 和好 院長

小牧市民病院
末永 裕之 院長

社会保険中京病院
渋谷 正人 病院長

総合大雄会病院
中北 武男 院長

高山赤十字病院
棚橋 忍 病院長
 中部ろうさい病院
吉田 純 院長

津島市民病院
松崎 安孝 病院長

豊川市民病院
吉野内 猛夫 院長

トヨタ記念病院
稲垣 春夫 病院長

豊田厚生病院
片田 直幸 病院長

豊橋市民病院
岡村 正造 院長

中津川市民病院
浅野 良夫 院長

名古屋掖済会病院
加藤 林也 院長
 名古屋記念病院
藤田 民夫 院長

名古屋大学医学部附属病院
松尾 清一 病院長

名古屋第二赤十字病院
石川 清 院長

はちや整形外科病院
蜂谷 裕道 院長

藤田保健衛生大学病院
星長 清隆 病院長

松波総合病院
山北 宜由 病院長

 

※読者の皆さまへ
<LINKED>は生活者と医療を繋ぐ情報紙。生活者と医療機関の新しい関係づくりへの貢献をめざし、中日新聞広告局医療チームとHIP(医療機関の広報企画専門会社)の共同編集にてお届けします。

企画制作:中日新聞広告局

編集:有限会社エイチ・アイ・ピー

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