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シアワセをつなぐ仕事

地域の子どもたちのために健やかに、
笑顔があふれるまで成長を助けていきたい。

髙木知子/トヨタ記念病院 ER(救急外来)・小児救急看護認定看護師


 

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トヨタ自動車の一部署であるトヨタ記念病院では、
看護師の育成に、企業経営の視点とノウハウを活かしている。
髙木知子看護師は、病院の支援のもと認定看護師資格を取得。
多くの先輩看護師を手本に、仕事と育児の両立に取り組む一人である。

 

 

 

 


 「小児救急看護認定看護師」という実践のスペシャリストとして、
地域チーム医療の実現をめざす。


 

 

 

子どもの命と向き合い続けるために
小児救急看護認定看護師資格に挑戦。

Plus顔写真1 平成7年、髙木看護師はトヨタ看護専門学校を卒業し、トヨタ記念病院に入職。「子どもが大好き」という理由で、小児病棟を希望した。入職1年目に、治療の甲斐なく亡くなる子どもや虐待を受けている子どもなど、小児医療を取り巻く現実を目の当たりにした。小児病棟には10年間在籍し、平成18年に子どもや女性の入院患者を受け入れるレディース病棟へ異動。さらに平成20年に小児救急看護認定看護師資格を取得し、ER(救急外来)へ異動した。「入職してから今まで、多くのお子さんやそのご家族と接するなかで、元気になって退院していくお子さんもいれば、治療の甲斐なく亡くなっていくお子さんもいました。また成功率の低い治療を受けるか、否か、究極の選択を迫られる親御さんもいました。子どもの命とどう向き合えばよいのか悩むことがあり、専門の知識が必要だと思いました」。
 小児救急看護認定看護師資格は、認定看護師教育機関で1年間(6カ月間は東京の認定看護師教育機関で研修、残り6カ月間はレポート提出など)の教育課程を修了し、日本看護協会が実施する認定審査に合格して得られる。トヨタ記念病院では、資格取得費用は全額病院が負担する。その上、研修期間中は出張扱いで、トヨタ自動車の社員寮を無償で使えるなど、手厚いサポート体制で看護師のキャリア形成を支援している。
 感覚ではなく、エビデンスに基づいて物事を考えるようになったという髙木看護師は、「同じ思いを共有し、一緒に問題を解決してくれる仲間を全国に得たことも大きな収穫だった」と話す。
 トヨタ記念病院では、院内の教育体制も整えている。キャリアアップに向けた段階的な研修や個別の希望に応じた教育研修など、個々の能力や適性を伸ばすためのサポートをしている。

 

 

充実した就労支援を活用し不安なく、仕事と家庭の両立へ。

IMG_0492 平成24年に結婚した髙木看護師は、昨年、待望の第一子を出産。産前産後休暇、半年間の育児休暇を取得して、元の職場であるERには平成26年4月に復帰したばかりだ。現在は1日2回各30分の育児時間を取り、仕事と子育ての両立に取り組み始めているが、「不安は感じていない」と言う。
 その理由の一つに、就労支援体制がある。トヨタ自動車の一部署であるトヨタ記念病院では、高い水準の福利厚生、就労支援が看護職にも適用される。実施状況の端的な一例が有給休暇取得日数だろう。トヨタ記念病院の看護師の取得日数は一人あたり年平均20.4日にのぼる。さらに、子育て世代が安心して働けるように、病院内には0歳児〜6歳児まで受け入れ可能な託児所・ジョイキッズが完備されている。
 そのため、トヨタ記念病院には髙木看護師をはじめ、仕事と家庭を両立し、ワーク・ライフ・バランスを確保している看護師は数多い。「育児をしながら仕事をしている先輩看護師を間近で見ていますので、自分にもできると思った」と言う髙木看護師。しかも彼女の場合は、「実家や夫が看護師の仕事を続けることを応援してくれているので、サポートも受けられます」と、恵まれた環境だ。
 なかには、まだ乳児を、保育園などに預けて働くことに罪悪感を覚えるという母親もいるが、髙木看護師は、「私と子どもの人生は別々のもの。互いに認め合いながら一緒に生きていきたいと考えています。子どもにも、大好きな仕事を続けている母親のことを理解してもらいながら、両立していきます」。
スケジュール

 

社員を守る仕組みを医療現場に活かす。

IMG_2666 最近は、<イクメン>と呼ばれ、男性の育児への積極的な参加がみられるが、それでも育児あるいは介護は女性の役割だという意識は依然として根強い。ハードワークが多い看護職に限らず、仕事と家庭の両立に悩む女性は少なくない。
 トヨタ記念病院では、企業の経営手法を病院運営に取り入れ、看護職の業務改善など近代化が進んでいる。同院で働くスタッフはトヨタ自動車の社員であり、労働時間の管理や事故防止に向けた安全性の徹底など、基準がそのまま適用される。
 看護師が働きやすい労働環境の実現によって、一定数以上の看護師の確保が容易になり、長く働き続ける看護師が増え、看護の質が向上するという好循環が生まれている。ただし、その反面、24時間365日機能を維持しなければならない医療現場では、会社が求める労働のあり方が足かせになる面もある。髙木看護師の上司で看護職を取りまとめる清水由美子総看護長はこう話す。
 「看護室では毎年、QC(業務改善)活動として、残業低減、医療安全、看護サービスに関する内容に取り組んでいます。この活動を通して、看護職が業務の効率化と質の高い看護提供の調和を実感できるよう工夫が求められています」。
 現状は、今いる人員で医療の質を維持できる業務体制を組めていることから、清水総看護長は、「良いバランスを壊さないように心がけていく」と話す。

 

 

 

小児救急看護認定看護師としての役割を果たすために。

Plus顔写真2 小児救急看護認定看護師資格取得の過程で、数多くの知識を学び、それまで自身のなかに抱えていた小児看護に対する課題の多くが解決された髙木看護師は、「小児救急のやりがいと使命感に目覚めた」という。学んだ知識が活かせるER(救急外来)勤務を志望し、現在も同じ職場で働く。
 髙木看護師は着任後、最初に、保護者の家庭看護力向上に向けた方策の立案に取り組んだ。トヨタ自動車内の2年間の研修で学んだ「SQC(統計学的品質管理)」を用い、救急外来の24時間以内の再受診小児患者のデータを子ども、保護者、医療者とそれぞれの因子で分析し、リーフレットの作成、急病時の電話相談窓口や、自宅に近いかかりつけ医の紹介、豊田市が開催している子育て講座の案内などを計画。また地域からの要請に応じて講演を行っている。
 現在、髙木看護師は自身の役割を、「子どもの成長に点ではなく線や面でかかわり、最善を追求するチーム医療を推進していくこと」と認識している。
 小児救急看護認定看護師の数はまだ少なく、豊田市内には髙木看護師のみ。愛知県内にも14名しかいない(平成26年4月現在)。それだけに使命感も強く、希望すれば1年間取得できる育児休暇を半年で切り上げたのもそこに理由がある。
 髙木看護師が理想とするチーム医療は病院内の連携にとどまらない。小児救急だけではなく、他の領域の認定看護師や地域の診療所、虐待が絡む場合は保健師や学校と、連携すべき職種は広い。このような髙木看護師の地域への視線は、同院の取り組みとも一致する。現在、トヨタ記念病院では、今後期待される地域横断的な医療の構築に向け、豊田市内、近隣の看護師同士の交流会や勉強会を開催し、顔の見える関係性の構IMG_0515築を始めている。こうした取り組みは、平成37年をめどに国が推進している「地域包括ケアシステム」における医療ニーズへの対応にも繋がるものである。清水総看護長はこう期待を寄せる。
 「多忙な医師に代わってチーム医療を動かしていくのは看護師だと思っています。その意味では認定看護資格を取得した髙木さんには当院だけでなく地域の看護の質を維持し、高めてくれる存在になってほしいと思っています」。


 

 

columnコラム

●トヨタ記念病院内には、託児所が開設されている。従来は0歳〜3歳が対象だったが、平成26年4月より施設を拡張し、0歳〜6歳まで預けることができる。夜勤者のために週4日24時間保育が実施され、病児も預かってもらえる。利用者の声を反映して、常に改善も行われている。

●教育研修が業務の一環として行われているため、研修受講者は出張扱いとなり、給与は通常通り、出張手当ても支給される。例えば認定看護師の資格取得において、他の病院などでは研修期間中は休職し、休業補償や資金援助を受けながら研修に参加することが多い。

●勤務体制は、個別の事情や希望を考慮しながら組んでいる。ただし、個々の事情によって偏りが生じないよう、公平感を重視している。

 

backstage

バックステージ

●トヨタ自動車には、トヨタ生産方式という考え方がある。ムダを徹底的に排除して生産性を高め、原価を下げるために磨き上げられた、幅広い産業の手本ともなっている生産システムである。

●こうした考え方がトヨタ記念病院の運営にも活かされ、効率化に向けて改善が図られている。看護師はトヨタ自動車の社員となり、教育制度や人事労務制度など働く者にメリットのある仕組みをあますところなく享受できる。やりがいを持って長く働ける環境が整い、人材が有効活用されているのだ。

 

 


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