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病院を知ろう

広域医療圏。不足する医療資源。
要は、「連携」。

 

 

岐阜県立多治見病院


main地域を見つめ、地域と会話する。
その真摯な姿勢が、地域住民の安心を守る。

岐阜県には、岐阜・西濃・中濃・東濃・飛騨と、5つの医療圏がある。
そのなかで、岐阜県立多治見病院は、
多治見市や土岐市、瑞浪市、恵那市、中津川市で構成される東濃医療圏と、
可児市など中濃医療圏の東部を含め、広域の責任医療圏を有する病院である。

 

 

地域で必要とする医療は、一定水準以上で提供する。

  IMG_0937岐阜県立多治見病院(以下、多治見病院)は、第三次救命救急センターをはじめ、地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院、災害拠点病院、臨床研修指定病院などの数々の指定・認定を、関係省庁・県から受け、まさに地域に不可欠の存在である。
 こうした同院の位置づけを考えると、「救急はもちろん、地域で頻回に発生する疾患のすべてに対して、一定水準以上の医療を提供しなければならないと考えています」と語るのは、病院長の原田明生医師である。「今日の病院経営では、選択と集中が注目を集めています。すなわち、自院の得意分野を定め、専門的かつ効率的な医療を提供するという考え方です。確かにそれも一つの方法ですが、当院の場合、それでは広域の責任医療圏での使命を果たすことはできません。救急・周産期・高度急性期・放射線治療・感染症・精神疾患・緩和医療と、多様な医療への対応に力を注ぎ、そのなかから、地域において当院でしかできない医療の高度化を図る、それがあるべき姿だと考えます」。
 原田病院長が言う高度化の一つに、高齢化の進展のなかで、日常的な病気になりつつあるがんの治療がある。同院では開腹手術はいうまでもなく、内視鏡下による低侵襲手術も実施。また、薬物療法、放射線治療にも注力している。放射線治療では、従来から設置している高エネルギー放射線治療装置に加え、より高精度な治療が可能なノバリスTxを導入した。さらに、在宅で療養する患者のQOL(生活の質)の改善を目的とした緩和ケア病棟を設置するなど、患者にたくさんの選択肢を示し、その患者ならではのより良い治療へと結びつける。それが地域における同院の医療の高度化の姿である。

 

 

ハードもソフトも、常に進化させていく。

407085 地域のなかでの役割を確実に果たすため、多治見病院は、さまざまな挑戦を行っている。まずは新診療棟の建設。「病棟の建設は4年前に終えていますが、治療機能を支える建物がまだ古いままです。先にお話しした医療の高度化のために、是非とも実現させなくてはなりません。時間を必要とするものですが、その準備を加速させたいと考えています」(原田病院長)。
 診療棟には、救命救急センターをはじめ、手術室、ICU(集中治療室)、血管内治療のカテーテル室、内視鏡室、そして、最先端機器による検査・治療が可能な中央放射線センターなどを集約。その相乗効果で、治療能力のさらなる高度化を図る考えだ。
 また、入院機能では、在院日数の短縮化に力を注ぐ。同院が地域の急性期医療の拠点であることを考えると、一人でも多くの患者を受け入れるために、最適な医療を短期間に提供しなくてはならない。実際、医師をはじめとする職員の努力で、在院日数は短くなってきた。そして、そうした患者がよりスムーズに在宅に戻るためにも、診療所医師との連携会議を行うなど、地域の診療所とのより強い信頼関係づくりを進めてIMG_1031いる。
 こうした挑戦を続ける同院では、医師と看護師の質と人数をもっと充実させたいと考えている。医師では、初期臨床研修医の定数(※)が増加する予定であり、各大学と近隣病院との研修医交流プログラムを構築することで、より充実した研修内容整備に努める。
 一方、看護師では、現在の看護配置10対1を7対1へ。これは入院患者7人に対して24時間、看護師を1人以上配置するというもの。実質的にはすでに7対1と同様か、それ以上に手厚い看護を実施している部署もある。そうした看護職については、夜勤専任や短時間就労など、雇用形態もフレキシブルな考え方で対応。また、専門の資格取得に対しては病院で補助をするなど、キャリアアップ支援の面でも力を入れている。
※ 国家資格を取得した医師は、2年間の臨床研修が義務づけられている。その研修医を受け入れる病院ごとに、厚生労働省が募集定数(人員数)を決めている。

 

 

すべての鍵を握るのは<連携>にある。

IMG_1008 岐阜県は医療資源が少ないエリアといわれており、多治見病院がカバーする広域医療圏も例外ではない。原田病院長は「医療機関や医療従事者など、絶対数が不足しているのは事実です。当院でも大きな問題であると認識しています。その意味では、地域住民の方々にとって、便利な医療とは言い難いかもしれません。しかし、限られた医療資源であっても、医療機関同士がしっかりと<連携>し、有効に機能すれば、地域としてのメリットは高い。つまり、住民が安心できる医療を、創り上げることが可能だと私は考えています」と言う。
 例えば、病院と病院との連携。東濃地区の各市には幸い自治体病院、総合的な病院が揃っており、多治見病院がその中核となることで、それぞれの機能や役割を明確にし、個々のプラス面を活かした連携をすることができる。そこでは国が進める先進医療といった特殊な疾患、治療は対応できなくても、同院が最適な医療機関への窓口になり、最適な治療に繋いでいく。また、病院と診療所の連携においては、地道な関係づくりへの努力をもとに、同院の機能への理解が進んでいけば、ここでも双方のプラス面を活かした連携IMG_1043体制を整えることができる。こうした面では、原田病院長は、近い将来、IT技術による連携システム構築を図っていきたいと考えている。
 さらに、医療従事者にも連携はキーワードといえよう。自院の機能強化だけを目的に、医師や看護師を集めるのではなく、地域の医育機能を担った上で、地域に送り出していく。すなわち、人が架け橋となって、東濃地区の医療を活性化させていくこともできる。
 「ハブと言えばよいのでしょうか。医療、医療従事者など、当院は地域医療に関する中継点でありたいと考えています。あるものは当院に留まり、あるものは当院よりふさわしい環境に繋がっていく。特殊な医療も、日常的な医療も、患者さんには地域全体で応えていきたいと考えています」(原田病院長)。

 

 

医療・介護について、「足るを知る」。

IMG_1022IMG_0389 医療・介護について、「足るを知る」。これは原田病院長の切実なる思いだ。すなわち、この地域の医療は都会と同じ観点では考えられない。医療資源という「点」は限られているからだ。だが、その点を繋いで「面」として展開している。原田病院長は、それを地域住民には理解してほしいと願う。
 「高齢者が非常に増えるこれからの時代にあって、この地域の医療はどうあるべきか。医療機関同士がもっと会話を進め、ともに考えていかなくてはなりません。しかし、それは医療機関だけの問題ではないのです。地域に暮らす一人ひとりの方が、地域の実情を理解してくださることがとても大切です。その理解に立って考えると、この地域の医療は、各医療機関が強い結びつきを持とうと大きな努力を重ねていることも、ご理解いただけると思います。例えば、山間部にお住まいの方も、この病気なら地域の診療所や病院が診療する。しかし、もし重症度が高いと診療所の医師が判断した場合は、当院が診療にあたる。こうしたそれぞれの医療機関が役割を分担し、果たしていく地域医療の形を、皆さんに知っていただければ、余分な不安感を抱く必要もありません」(原田病院長)。
 超高齢社会を目前にして、これからの日本は社会のあり方が変わろうとしている。それに伴って医療のあり方もまた変わろうとしている。こうした背景をもとに、多治見病院は、責任医療圏での使命を果たすために、常に視線を地域に向け、さらなる成長への挑戦を続ける。

 

 


 

column

コラム

●岐阜県立多治見病院は、平成22年4月に地方独立行政法人に移行している。

●地方独立行政法人は県立と異なり、事業運営のすべての判断を県に委ねるのではなく、ある程度の自由度を持って、自律的に病院経営ができる組織体である。県という大きな単位ではなく、地域の事情にもっと寄り添った形で判断が可能だ。

●当然ながら、その使命は、本来、県立病院が果たしていた、広域医療圏の医療を安定化させる、公的事業を行うという点で変わりはない。実現するための方法論、あるいは仕組みが変わったということである。

●「自由度が高くなったぶん、責任は大きくなった」と原田病院長は言う。経営においてやりやすくはなったが、それはイコール、やり切らなくてはいけないからだ。

●一方、職員に対しては大きなプラス効果を与えた。病院をより良くしようという意識が、前より一層高くなっている。

 

backstage

バックステージ

●これまでの地域医療では、<連携>は病診、すなわち病院と診療所との連携を指していた。それが最近になって、病院と病院による病病連携がクローズアップされてきている。

●以前にも病病連携はあったが、それは急性期病院と回復期病院という、異なる領域での連携を語るものであった。だが、今日、注目されているのは急性期病院と急性期病院、すなわち、同じ領域での連携である。

●領域が同じ場合、医師と医師との関係において難しさが大きい。治療方針の違いや、患者への責任感から生まれる、医師としてのプライドがぶつかることもあり得るからだ。

●にもかかわらず、多治見病院は診療圏の急性期病院との連携を進めている。医療資源が少ない地域だけにそれは必須ではあるが、地域に必要な医療提供のためには、双方がしっかりと会話し繋がる。その姿勢は他の医療圏においても、今後、大いに必要となるであろう。

 


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