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在宅で、医療を必要とする方を
「孤立」させないための、
病院と自宅の架け橋という存在。

小野 薫/公立陶生病院 退院調整支援室・在宅医療室


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急性期病院で在院日数の短縮化が進んでいる。入院期間が短くなることで、医療管理や医療処置を必要としたまま退院していく患者への継続ケアが、重要な課題となっている。公立陶生病院で退院調整支援、在宅医療を統括する小野薫看護師長は「大切なのは、生活のなかの医療を考える視点」と話す。退院していく患者に、より確かな安心を。急性期病院からの新たな働きかけは、始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 


 入院から退院後まで、継続した支援を。生活のなかの医療を考える。


 

 

自宅でも安全に継続ケアを。
起こり得る事象を予測し、療養計画を組み立てる。

170220 急性期医療の地域基幹病院として大きな役割を担う公立陶生病院。小野看護師長が室長を務める退院調整支援室では、患者が退院後も安全に安心して在宅療養を継続できるようさまざまな準備を整える。
 出勤するとまず、新しく入院した患者に対しコンピュータでスクリーニングを行い、退院調整が必要な患者を拾い出す。入院時に看護師が作成するシートを基準に、進行性や後遺症の残る疾患の患者、医療処置が継続する患者を拾っていく。新規の入院患者数は、平日で1日約60人、うち退院調整が必要と判断されるのは約20人という。該当する患者のカルテには、退院、転院のメドがついたら必ず退院調整支援室へ連絡をしてもらうよう、コメントを入れる。
 患者の退院日が決まり、病棟から連絡が入ると、退院調整に入る。人工呼吸器、在宅酸素、経管栄養、気管切開…。症状により継続する管理・処置はさまざまだ。病院からどんな機器類が提供されるのか、どのような症状が起こるか、急変時の搬送病院はどこかなど、起こり得ることを事前に予測し、それを踏まえ在宅での療養計画を組み立てる。170229
 在宅で介護に当たる家族に、処置の仕方や機器類の扱い方などを教えることも重要な仕事だ。急性期病棟の看護師は病棟でケアをすることには長けているが、患者が家に戻ったときのことを考え、家族に技術指導するところまでは手が回らない。「その部分を退院調整でカバーしています」と小野看護師長は言う。

呼吸器病棟での急性期医療、
訪問看護の2つの経験を通して

170328.jpg 小野看護師長が看護師の道を選んだのは「人の役に立つような仕事をしたかった」から。公立陶生病院へ就職後は、小児科病棟、呼吸器病棟、訪問看護などでキャリアを積んだ。
 呼吸器病棟へは、計2度配属された。1度目に配属されたのは就職間もない頃。病棟には、急性期と慢性期の患者が混在し、忙しさはあったが、それなりの余裕もあった。2度目に病棟に戻ってきたとき、その変化に驚いたという。「急性期医療に特化したためでしょう。重症の患者さんばかりで、忙しさも緊張感も昔とは比べものになりませんでした」。めまぐるしい忙しさの急性期医療の現場では、いかに安全に迅速にケアするかが第一となる。「当時、退院後の医療について考えることは、まったくできませんでした」と振り返る。170225
 結婚、育児が重なる7年間は、訪問看護に従事した。設備の整っていない在宅での看護は、日常的に病棟でやっていた処置をするだけでも不安に感じたという。急変時にすぐ医師を呼べないことも、病棟での看護との大きな違いだ。訪問看護を経験したことが、在宅医療の難しさや、“生活のなかの看護”を考えるきっかけになった。

急性期と在宅を繋ぐ、新しい看護の領域。

170317 退院調整は、急性期医療と在宅医療を繋ぐために生まれた、新しい看護の領域だ。
 小野看護師長の退院調整支援室は昨年4月に、ようやく2人体制になったばかり。仕組み作りはすべて手探りだ。この領域での看護の新たな仕組み、体制を作り上げるのに、呼吸器病棟と訪問看護での経験が生かされている。
 小野看護師長は、急性期の呼吸器病棟を経験してきただけに、次々に入ってくる患者の処置に忙殺される急性期病棟の看護師が、“退院後の医療”にまで意識がいかないことをよく知っている。訪問看護の経験から、在宅で、生活の場で医療を継続していく難しさ、問題点も見えている。「患者さんがより安心して退院後の療養生活を送るためには、私たちが機能しなければ…」。退院調整支援室の重要性を誰よりも感じている。
 「呼吸器病棟と訪問看護、2つのステージでの経験がなければ、何もできなかったと思います。今はまだ発展途上ですが、退院調整支援室が、これからどんどん病院の組織として機能するよう働きかけていきます」。

入院から退院後まで、息の長い医療を。

 退院調整に対する院内での理解度はまだ十分とは言えない。「まずは、退院調整の機能を急性期医療の現場の看護師に知ってもらうことが重要です」。
 対象患者のカルテへのメモ書きには、退院が決まれば連絡をというコメントの他、内線番号まで明記し、退院調整をアピールしている。それでも、病棟看護師からの連絡は、まだまだ遅いのが実情だ。患者の看護に追われる急性期の病棟では、患者の〈その後の生活〉にまで意識がいきにくく、退院調整という機能に目を向けることが難しくなる。
 病棟の看護師と退院調整支援室との連携が悪ければ、退院調整は機能しない。退院調整が機能しなければ、患者は安心した療養生活を送る環境を整えることができないのだ。「例えば医療処置があまりなくても、オムツ交換が必要な状態で帰った患者さんがいたとします。家でオムツ交換を誰がするのか意識せずに帰してしまうと、患者さんもご家族も、帰ったその日から困ってしまいます」。
 100%の退院調整を実現するには、病棟で患者を看ている看護師に“在宅”の視点を持ってもらうことが必要だ。それには、在宅の現場を知ってもらうことが一番の近道。看護師は、常に患者に寄り添う存在だ。病棟看護師が在宅医療の現場を知れば、すぐに患者の“生活”に目を向けられるようになる。退院調整支援室では、院内研修のプログラムに訪問看護を入れ、病棟看護師にも在宅医療の現場を見てもらう取り組みも始めている。
 小野看護師長は、病棟の看護師に退院調整まで求めているのではない。必要なのは“家に帰ったらどうするの”という視点だけだ。「あとは私たちの仕事です。病棟の看護師に“在宅”の視点さえあれば連携がスムーズになり、退院調整は一気に機能するようになります」。
 入院から退院後までを視野においた息の長い医療を可能に…。急性期病院の取り組みは、始まったばかりだ。


 

column

83R8389838093A990B6●急性期病院の在院日数の短縮化で、医療依存度の高い患者の早期退院が余儀なくされている。一方で、そういった患者に対する在宅での受け入れ体制は、十分に整っていないのが実情だ。

● 公立陶生病院では、医療依存度の高い患者に対するケアとして、在宅医療室で訪問看護を行っている。訪問看護チームの看護師は、ほとんどが急性期医療や ICUを経験したベテランだ。急性期から間もない段階の、医療依存度の高い患者を公立陶生病院の訪問看護師がケアし、状態が落ち着けば町の訪問看護ステー ションへ移行していく。急性期病院を担う地域の中核病院として、入院から退院後までしっかりと見つめる目線がある。

 

backstage

83o83b83N83X83e815B83W93A990B6● 「何かあればこの病院へ」。信頼度の高い急性期病院へは、多くの患者が集まってくる。住民の期待感が高いだけに、多くの患者が病院に訪れ、医師や看護師は 対応に追われることに…。
改善には、医療体制以外に、急性期病院という位置付けに対する地域住民の正確な理解も必要だ。

●受け入れ人数の拡 大や医療費削減の問題から、急性期病院の在院日数は短縮傾向にある。医療依存度の高い患者が次々と退院していく一方で、退院した患者を受け入れる医療機関 の数は少ない。結果、在宅医療への移行が増えている。急性期医療から在宅医療への移行はハードルが高い。より安全で安心な自宅での継続療養を可能にするた めに、退院調整という新しい看護分野の役割は大きい。

 

 


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