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地域が今必要とする医療は何か。
考え続け、求め続けて、海南病院の看護は進化する。

 

德滿和美/海南病院(救急看護認定看護師)


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控えめで穏やかな印象から一転、救急の現場で患者を見つめる瞳は鋭く力強い。德滿和実看護師は、年間約5000台の救急車を受け入れる海南病院のER救急センターに勤務する救急看護認定看護師だ。海南病院では今、大々的な建て替え工事が進行中だ。2013年夏をめどに、ER救急センターを約4倍に拡大する。救急医療への地域ニーズは高まる一方だ。德滿看護師はその最前線で、一人ひとりの患者と向き合う。

 

 

 


ER救急センターの看護師が、現場で必要な看護を実践できるよう、中心となって救急看護レベルを上げていきたい。


 

 

生涯の仕事として選んだ看護師。でも、流されている自分に気付いて。

652015 看護師になったのは「いつまでも働き続けられる仕事をしたいと思ったから」。高校時代、父親が入院した病院で働く看護師の姿が心に残り、進学を考えたとき、自然と看護学校を選んだ。
 江南の看護学校を卒業し、2000年に海南病院へ入職。最初に配属されたのは内科外来だった。当時、内科外来では500人以上の外来患者のほか、救急で来る患者を受けていた。救急患者がさほど多くなかった時代で、院内にはまだ救急部がなく、内科の救急患者は内科で受けていた。忙しかったが、勤務時間は17時までと規則正しく、先輩との人間関係も良好で働きやすい職場だった。「今、振り返れば、何も分からずに、なんとなく過ごしてしまったのかなと思います」。内科外来にいた3年間は、目の前にある仕事を淡々とこなしていく毎日だった。
 生涯続けたいと思い看護師の道を選んだ。しかし、流されるままに仕事をしている自分がいる。そう気付かせてくれたのは、結婚を機に病棟から外来へ移ってきた先輩看護師の言葉だった。「看護師になったのなら、やはり病棟で、看護学校で学んだ継続的に患者を看ていく看護を経験した方がいい」。心に深く響いた。もっと深く看護を学びたい、そのために急性期の看護を知りたい、という思いが、德滿看護師のなかに少しずつ芽生え始めた。

命により深く関わる現場で、看護師としての使命を感じた。

653009 チャンスは2003年、院内ICU(集中治療室)立ち上げという形で訪れる。海南病院は常に、地域に必要なものを提供し続け、地域医療を守ってきた。増えていく急性期患者、高度医療への高いニーズが、ICU整備に繋がった。「急性期のなかでも最も重篤な患者さんに対する最先端の医療と看護を、ICUならばしっかりと学ぶことができる」。期せずして訪れた絶好の機会を、德滿看護師は逃さなかった。
 ICUのオープニングスタッフは、志願者のなかから選ばれた看護師で構成された。その一人としてスタッフに加わったが、病棟での看護経験が皆無だった德滿看護師にとって、ICUでの仕事はキツかった。慣れない環境と重篤患者の全身管理という責任の重さに、志願したことを後悔したこともあった。
 「最初は患者さんを受け持っても記録の取り方すら分からず、一緒に看てくれる先輩看護師がいなければ、仕事が回っていかない状態でした」。ICUでの仕事が初めてなのは、スタッフ全員同じはずだ。それでも、病棟を経験してきたスタッフや、外での実習などを受けてきた先輩看護師は、しっかりと自分たちの役割を果たしている。知識がなければ看護はできない。内科外来でなんとなく過ごしてきた3年間が口惜しかった。ICUは患者の命により深く関わる現場だ。「もっと勉強しなければ…」。看護師の責任と使命を強く感じた。
 スタートを切ったばかりのICUは、教育や役割分担など、システムづくりにおいても試行錯誤の連続だった。同年代のスタッフと勉強会を重ね、先輩に学び、お互いに協力しながら一歩ずつ前に進んできた。配属されてから8年、立ち上げ当時に比べマニュアルも整備され、ICUの看護レベルは確実に上がっている。德滿看護師の成長の歴史は、ICUの発展とともにあった。

今後ますます重要となる救急の現場で、看護師として生きたい。

 德滿看護師は一昨年7月、救急看護認定看護師の資格を取得した。認定看護師とは、特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有し、水準の高い看護実践のできる者をいう。資格を取るには一定期間の教育課程を経て、日本看護協会の審査を受けることが必要だ。ICUに8年勤務しながら救急看護認定看護師をめざした理由は「軌道にのりつつあるICUでの自分の役割は果たしてきた。次は、今後重要度を増し大きな役割を担っていく海南病院の救急で、看護師として役に立ちたい」と感じたからだ。
65102889FC 現在、海南病院の救急車受入件数は年間5200件、ウォークイン患者も合わせた救急患者数はこの3倍ほどにもなる。同じ海部医療圏内の市民病院の機能が低下した2006年以降、海南病院に来る救急患者の数は飛躍的に増えている。
 德滿看護師がICUに移った後、院内には救急部が立ち上がった。増加する救急患者への対応でICUから応援に行くことも多く、自分が内科外来にいたころとはまったく違う、救急の現場を目の当たりにした。次から次へと運び込まれる患者。救急医療が今、地域の人にどれほど必要とされているのかを感じた。救急の現場で役に立つには、今の自分では力不足だ。「救急看護の専門知識がほしい」。静かだけれども強い思いが募っていった。
 普段、あまり前へ出るタイプではない德滿看護師。救急看護認定看護師になりたいと先輩に打ち明けたときには驚かれたという。ICUにいながら救急看護認定看護師資格取得に挑戦する。これまで一緒にICUを築き上げてきたスタッフに対し「教育課程に進むとき快く送り出し、帰ってきたときにも温かく迎えてくれたことに、とても感謝しています」と話す。救急外来への異動は昨年6月。救急看護認定看護師として、救急の現場で新たな一歩を踏み出した。

一人でも多くの患者を救うために、進化し続けていく。

654024 海南病院では、救急医がすべての初療を行い、各専門科に繋げる北米型ERをめざしている。しかし現状は、救急医の数が充分ではなく、看護師が患者の症状を分析した後、各科の専門医に繋ぐことも多い。まだ発展途上のER救急センターで、看護師に要求されるものは高く、特に患者とのファーストタッチにおける病状判断能力は重要だ。「すべての看護師が現場で求められる看護を常に実践できるよう、救急看護のレベルを上げることが第一です」と德滿看護師。救急看護師の教育、院内トリアージの基準作成など、救急看護認定看護師としてやるべきことは山ほどある。2年前からはドクターカーも稼働しており、広域な地域をカバーするため、德滿看護師も医師とともに積極的に外に出ていく。
 「看護の仕事には終わりがない。地道に確実に、この地域に必要な看護を実践していける看護師になりたい」。一言ずつ、噛みしめるように話す。一人の患者を救うことは、その家族をも救うこと。一人でも多くの患者を受け入れ、助けることが、地域の医療を守ることに繋がる。一年後には新しい高度救急センターが稼働し始め、今後その機能は、より充実していくだろう。德滿看護師もまた、センターとともに進化し続けていく。


column

83R83898380● 海南病院では現在、2期に亘る病棟の大々的な建て替え工事を進めている。「コンパクト・高機能・次世代型」がコンセプト。バックヤードを極力削り、療養環 境を確保する。例えば独立した院長室もない。動線を短縮し、徹底的に無駄を排除する。限られた敷地で高機能な次世代型病院を実現する、日本の新しいモデル 病院をめざしている。

●第1期(平成23年度3月〜平成25年度8月予定)は救急医療関連の整備がメイン。現在のER救急センターを約4倍 に拡大、救急車を同時に5台まで受け入れ可能とし、あらゆる救急疾患に対応できる高度救急センターを設置する。地域ニーズの高い急性期医療へのシフトを強 化する。第2期(平成25年度8月〜)では、高機能専門外来、外来化学療法センターを拡充し、チーム医療を意識した、各診療科のセンター化を進める。地域 医療を守るための取り組みは、これからも続いていく。



backstage

83o83b83N83X83e815B83W (1)●海南病院のある海部医療圏では数年前、市民病院が医師不足のために機能低下し、患者が海南病院に集中し混乱するという状況があり、その傾向が今でも若干続いている。

● 海南病院では、この状況を乗り切るため、医療圏内の他の病院、医師会とのネットワークづくりに力を入れた。診療科ごとの顔の見える連携会議を立ち上げ、情 報を共有化し、医師の支援や応援などにおける連携体制を強化して、地域の医療体制を再構築したのだ。また、診療圏内の病院と医師会を中心に「海部地域の医 療と健康を推進する協議会」を立ち上げ、地域住民を巻き込んでの活動も行う。「地域医療と健康生活を守るためのシンポジウム」や勉強会を開催、住民の会も 結成されている。地域連携や、住民への情報発信は、地域医療の崩壊を防ぐために、今後ますます重要になっていく。

 


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