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仕事と育児を両立。
ママさんナースたちが支える「断らない救急」へのプライド。

青山かおり/公立陶生病院 救急外来


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「一刻も早くかけつけたい」。公立陶生病院のドクターカーを変えたのは、救命救急に携わる看護師たちの声がきっけだった。救急の最前線を担う看護師のおよそ半数がママさんナース。プライベードでは子育てする母親の顔を持ちながら、命の現場で日々格闘する看護師に“救急への想い”を聞いた。

 

 

 

 

 


子育てをしながらでも、救急の最前線で活躍し続けられる。その見本となるためにも、私は頑張る。


 

 

「ドクターカーに看護師も同乗。“攻め”の救命救急を実践。

144028 「走る救急病棟」。しばしばこう表現されるのがドクターカーだ。患者監視装置などの医療機器を搭載し、医師らが現場にかけつける救急車のことで、救急現場で一刻も早く医師の初期診療を行い、救命率を向上させるのがその目的だ。日本では、救急車で患者を救急医療機関に搬送、そこではじめて医師の診察を受けるという救急体制が取られてきたが、これでは発症から治療まで時間がかかり、救命率の低下を招く要因になっていた。そのため近年は、全国的にドクターカーを導入する動きが活発化。平成20年4月の道路交通法改正では、医師搬送のみを行う自動車が緊急自動車として認められるようになった。
 愛知県瀬戸市の公立陶生病院でも、平成18年度からドクターカーを導入している。当初は週1回の運用だったが、平成20年7月に週2回、平成22年4月に週4回へと拡充。同年10月からは、医師に加えて看護師も同乗するようになり、従来の“待ち”から“攻め”の救命救急に姿を変えてきた。
 看護師の同乗が始まったのは、「一刻も早くかけつけたい」という看護師からの声がきっかけ。救急外来に勤めて6年目の青山かおりも、そんな声を上げた看護師のひとりだ。「医師や救急隊員は、重症であればあるほど患者さんのみに意識を集中せざるを得ません。でもそこにご家族がいた場合、看護師がいればご家族をフォローし、不安を和らげることもできます。うれしいことに、患者さんのご家族のなかにも『看護師が現場に来てくれて安心した』と口にされる方が多いですね」と青山は話す。

病院全体のコンセンサスを図ることで、増え続ける救急搬送に対応。

 

143036 公立陶生病院は指定上では二次救急にあたる。だが、実質的には三次救急に匹敵する機能と能力を持ち、“断らない救急”を標榜して、救急車搬送からウォークインでの来院まで幅広い患者を受け入れている。その数は救急搬送が年間約7000台、ウォークインでの来院者がおよそ3万人だ。
 断らない救急を実践するため、公立陶生病院では救急科の専門医を配置し、病院を挙げての協力体制を徹底。月1回、医師と研修医、コメディカルを含めた“救急カンファレンス”を実施し、各部署が抱える問題点を忌憚なく出しあいながら改善に向けた意見交換を行う。こうしたミーティングを定期的に行うことで、他部署とのコミュニケーションを図り、円滑に連携が取れる環境を生み出している。「患者さんのことを考えると、オーバートリアージになるかもしれないけれど、アンダーにはならないようにと、全員で心掛けてやっています。医師とも同じ考え方ですから、オーバーになることを気にせず判断できるのが大きい」と青山も話す。病院全体で“断らない救急”に対するコンセンサスが取れていることが、公立陶生病院の救急医療の原動力といえよう。

※トリアージ 病気やケガの重症度や緊急度を判断し、治療の優先順位を決める行為。

「パートでは我慢できない」。夫の理解もあり、入職3カ月で正規職員に。

144035 「3カ月しか我慢できませんでしたね」。苦笑いしながら話す青山は、2人の子どもを持つママさんナースだ。愛知県内の病院のICUなどで働き、出産前は春日井市の診療所に勤務していたが、一人目の子どもが1歳を迎えた頃、「また大きな病院で働きたい」と一念発起。6年前に公立陶生病院の救急外来を新たな職場に選んだ。
 その頃の公立陶生病院は、より本格的な救急医療の提供をめざし、救急の仕組みづくりに全力を注いでいた時期。青山もその一員となったのだ。
 「当時はまだ子どもが小さかったので、日勤専従のパートで入ったんです」と青山。ただ、3カ月が経過し、仕事が軌道に乗り始めると「夜勤もしてみたい」と思うようになった。「なんだか血が騒ぐというか、無性にやりたいと思い始めまして」。外来の夜勤は病棟よりも少なく、家庭との両立を図ることを夫と何度も話し合い了解を得た。
 青山は「私を一番理解してくれているのは夫ですね」と笑顔で語る。「うちは核家族のため親の協力は得られないし、夫は勤務先が三重県にあり、毎日春日井市の自宅から通勤しています。それでも夫は『僕ができる所はできる限り協力するよ』と。家族に負担をかけることは分かっていましたが、どうしても私は正規職員として責任のある仕事がしたかった。救急のエキスパートになりたかったのです」。
 今は2人目が産まれたこともあり、育児との両立はさらに大変になったが、子育てが仕事に活きる面も多いという。「子どもができたことで、患者さんに対する理解が深まり、我慢強く接することができるようになりましたね」。

ママさんナースとして、手本になる存在をめざして。

959495AA95E290B3 瀬戸市は県内でもとりわけ少子・高齢化が進む地域だ。別の地域での勤務経験がある青山も、「高齢者が多いと感じます」と口にする。増え続ける救急搬送数の背景には、地域で急速に進む高齢化の問題が横たわっている。
 公立陶生病院は、高齢化による救急搬送の増加を見据え、すでに対策を始めた。来年には対策の柱となる新たな救急病棟が完成する予定だ。新設される病棟では全体を見渡せる造りとなり、レントゲンやCT、処置室、手術室との動線を縮めるため、専用エレベーターを導入。これにより大幅な時間短縮が可能となる。
 ただ、ハード面の拡充が進む一方、ソフト面の充実はなかなか進んでいない。目下の課題は看護師の不足だ。「仲間を増やすためにも、自分自身が手本にならないと」。青山の言葉にも思わず熱がこもる。「私自身、周りのお手本を見ながら頑張ってきました。入職当初から憧れているのが古川さん。同じように子育てをしながら看護師をしている方ですが、すごく頼りになる存在です。患者さんだけでなく、その家族まできちんと気を配る。スタッフにはやさしいだけでなく厳しい一面もある。その仕事ぶりを見て『できる人だな』と思います。また、年齢が近いママさんナースの横山さんからも、いい刺激を受けています」。
 地域の皆さんが安心して救急を受けられるために組織の一員としてDMATの資格を取得するなど救急のエキスパートをめざして努力を続ける青山。今後はさらなる資格取得に加え、重篤な患者をいち早く発見するためのフィジカルアセスメントの技術などを磨いていきたいという。
 「私自身も子育てと救急看護の仕事を両立する見本になりたい。そして、『自分にもできるんだ』と思ってもらえる仲間を増やし、当院手づくりの救命救急をもっと充実させていきたいですね」。

※DMAT 災害急性期に活動できる機動性と、専門のトレーニングを受けたチーム。


 

column

83R83898380● 病院を挙げて救急医療に取り組む公立陶生病院。その牽引役となっているのが、救急部・部長の市原利彦医師である。新たな救急病棟設計にも深く関わり、“動 きやすい・働きやすい・処置しやすい”ことを主眼に置いた。「救急は、救急部の医師と各専門医がいくら揃っていても、それだけでは回りません。看護師、検 査技師、薬剤師など、チーム一丸となることが必要です。そうした大勢のスタッフにとって充実した環境であること。それはイコール、患者さんのために他なら ないのです」と語る市原医師。その言葉には“ウチが救急を断ったら、患者さんにもう先はないという覚悟”を、正に具現する強い意志が窺える。

 

backstage

83o83b83N83X83e815B83W (1)●公立陶生病院では、24時間を通して緊急性が高い診断と、治療の頻度が高い心筋梗塞、くも膜下出血、消化管出血等に対して、分単位の速やかさで準備、診断、治療ができるように、各分野の医師、看護師、技師等のスペシャリストが交代制勤務で常駐している。

●医師や地域の救急隊と、密なコミュニケーションによるネットワークが充実しているのも特色の一つだ。ACLS(二次救命処置)、JPTEC(外傷病院前救護プログラム)等を通じ、人材育成にも力を入れ、結果、心筋梗塞などの救命率が高くなっている。

●こういった面から、同院は実質的に三次救急に匹敵する機能と能力を有しながらも、現行制度では二次救急指定病院である。一方、生活者には重症度の判定は難しく、二次救急、三次救急の違いも解り難い。救急医療制度の矛盾、限界が浮かび上がっているのではないだろうか。

 

 


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