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2025年に向けて、国は今、社会保障を充実させた「地域包括ケアシステム」の構築をめざし、
動き出している。それにともない、地域医療の提供体制も大きく変わりつつある。
地域にある病院が明確に役割分担して連携することで、地域完結型医療体制を作り、
高度急性期から急性期、回復期、慢性期、在宅までを切れ目なく繋いでいこうとしている。
急性期病院の多くは今、地域における自院の立ち位置を考え、
自らの病院機能を「選択」することが迫られている。
病院がどのように悩み、選び、歩んでいこうとしているのか。
ある病院のケーススタディを通じて、探ってみた。

 


 見出し01 A病院は、地域の二次救急を担う郊外の急性期病院。ここにきて、病院の
将来について院長は悩んでいた。2025年に向けて国は急性期病床を減
らし、病院機能の分化と連携を進め、在宅医療を充実させようと考えてい
る。さて、わが病院はこれから、どんな役割を担っていくべきだろうか。

 


 

悩み01

院長は思案していた。地域住民のために、救急は全部引き受けたい。しかし、医師不足で受けられない診療科もある。当院はこのまま、二次救急の体制を維持できるのだろうか。

 


 

悩み02

同じ地域にあるB病院は、基幹病院。A病院にとってはライバル的存在だ。今までずっと張り合ってきたが、何とか協力関係を作れないかと院長は考えていた。

 


 

悩み03

このまま急性期一本で頑張るか。それとも、B病院との連携を前提に、亜急性期以降の機能を充実すべきか。だが、急性期医療を縮小すれば、ただでさえ少ない医師が、やりがいをなくして辞めていくのではないか。それが院長の心配のタネだった。

 

 


 

見出し02

本当に地域に必要とされている医療は何か。そのことを考え抜いて、院長は決意した。それは、急性期病床の一部を亜急性期などを担う病床へ転換するという選択だ。B病院をはじめ、地域の医療機関としっかり連携し、この町に安心の地域医療を築くために、A病院は新たな一歩を踏み出した。

 


 

決断01

救急は、これまで以上に断らない体制を構築する。そのために、当院の医師が初期診断をして、必要に応じて、適切な病院に紹介する仕組みを作ろうと、院長は考えた。

 


 

決断02

やっぱりこれからは病病連携だ。重症患者はB病院に任せ、我々はB病院を退院した患者を引き受け、在宅へ繋ごう。ただし、得意な分野では高度な医療体制を堅持していく、というのが院長の戦略である。

 


 

決断03

院長の決断によって、一部の医師は高度急性期を担う病院へ移ったが、大半の医師はA病院に留まった。「時間軸で患者さんを支えるやりがいがある」と、医師のモチベーションは高い。院長は胸をなでおろしていた。

 


地域完結型医療体制実現の鍵を握る、個々の病院の「決断」。

  左の紙面で紹介した物語は、郊外にある急性期病院の院長の抱える悩みと決断で
ある。なぜ院長はこの時期、悩み、決断したのか。その背景を少し説明したい。
 国は地域完結型医療体制を構築するために、地域にある病院機能の再編をめざし
ている。その政策誘導のために、平成26年度診療報酬改定では、急性期病床の大幅
な絞り込みを意図した内容が盛り込まれた。さらに平成26年10月から病床機能報
告制度がスタートする。個々の病院は現在の病床機能と今後の方向性を病棟単位で
報告。これらの報告に基づき、都道府県において、その地域にふさわしいバランスのとれた病床機能の配置を示す地域医療ビジョンが策定される予定だ。病院の多くはまさに今、自院の病床機能をどうすべきか「選択」を迫られているのである。
 では、もう一度、A病院のケースを考えてみよう。A病院は病床数350床(急性期)。肺炎、骨折など、一般的な中等症患者の救急に対応でき、得意分野においては、高度な専門治療を提供している。その反面、慢性的な医師不足に悩まされ、診療機能の縮小を余儀なくされている分野もある。
 院長の決断のポイントは三つ。一つは、救急医療の再構築。二つ目は、病院間の連携の強化。三つ目は、医師の働く環境整備とモチベーションの維持である。「臓器別専門診療は基幹病院に大半を委ね、時間軸で患者さんを在宅へ導くのは我々の役目。病院から在宅へ医療体制がシフトされるなか、我々こそが地域医療の主役となり得る」という自負心を持って、院長は決断した。院長の考えに共感した医師や職員たち。A病院は以前にも増して前向きなエネルギーにあふれた病院として動き出したのである。
 急性期病院から急性期・亜急性期・回復期・慢性期を併せ持つ中間的な病院への大転換を決断したA病院。一方、B病院のような基幹病院も、一定の患者の在宅復帰を、実現させなければならない、というハードルが課せられた。そこにおいては、急性期間の転院は在宅復帰と見なされず、亜急性期病床(地域包括ケア病床)・回復期病床を持つ病院との連携でなければならない。そういった病院との連携は、平均在院日数の短縮にも繋がる。基幹病院も、また、中間的な病院もそれぞれが、わが町の地域医療のバランスを見極め、地域に足りない医療を病院同士がカバーし合うことで、地域医療の最適化が実現する。院長一人ひとりの「決断」が、地域完結型医療体制の具現化に繋がっている。


 

01:地域包括ケアシステム
団塊の世代が75歳を超える2025年に向けて、国が構築をめざす地域社会の仕組み。地域住民に、「医療・介護・予防・生活支援・住まい」の5つのサービスを一体的に提供。介護が必要になっても、一人暮らしの高齢者であっても、住み慣れた町に生活の拠点を置いて、安心して暮らし続けられる社会の構築をめざしている。その実現には、地域にある保健・医療・介護・福祉関係者の連携ネットワークが不可欠であり、実現化への道筋はこれからである。

 

02:病院機能の再編(2025年モデル)img
国は地域包括ケア社会を構築する上で、あるべき姿を「2025年モデル」として提示。病院・病床機能の役割を分担し、医療と介護の連携を図りながら、在宅医療の充実を進めることで、限りある医療資源を有効に活用していく方向性を示している。このうち、病院・病床機能の再編を示したのが、下の図である。現在、法的に認められ、7対1という最も手厚い看護配置をしている急性期病床約36万床を、18万床まで減らし、亜急性期や地域に密着した病床を増やしていく方針である。

 

03:地域完結型医療体制
地域包括ケアシステムの実現に向けて、地域の医療提供体制も、「病院完結型」から、地域の医療機関が連携して提供する「地域完結型」へ転換することが求められている。具体的には、高度急性期医療を提供する病院(病棟)から、急性期、亜急性期、回復期、慢性期医療を担う病院(病棟)、診療所まで、機能の異なる医療機関がしっかり連携し、地域で一つの病院のような機能を持ち、切れ目のない医療を提供していく体制である。

 

04:基幹病院と中間的な病院
LINKEDでは、読者にわかりやすいように、基幹病院と中間的な病院という言葉を使用している。三次救急、もしくはそれに準ずる機能を有する地域の医療機関を「基幹病院」と称し、基幹病院と診療所(在宅)の間にあって、二次救急のできる急性期の医療機能を持ちつつ、それに続く亜急性期・回復期なども併せ持つ病院を、「中間的な病院」と総称している。

 

05:平成26年度診療報酬改定
診療報酬とは、診療や薬の処方の対価として医療機関が受け取る報酬である。その価格は全国一律で定められており、原則として2年に一度、改定される。その改定が医療機関の経営に直結するため、国の政策誘導の手段ともなっている。平成26年度診療報酬改定は2025年に向けた改革を加速させる内容が盛り込まれ、「急性期病院の絞り込み」ともいわれ、最も手厚い7対1の看護配置の要件が厳しくなった。

 

06:地域包括ケア病床
平成26年度診療報酬改定で、新たに作られた病床のカテゴリー。二次救急患者の受け入れ、急性期治療を終えた患者の受け入れ、在宅療養中の患者の急性増悪時の受け入れ、在宅への復帰支援などの機能を担う病床である。これを有する病院には、急性期と在宅の間を繋いで、患者をスムーズに在宅へと帰していく役割が期待されている。

 

 

 

 

 


 


 

HEYE

名大副総長 松尾清一/
「社会参加寿命」を支える医療のあり方


元厚生労働副大臣大塚耕平/
「地域完結型医療」は「医療クラウド」
EEYE

 


SPECIAL THANKS(編集協力)

「PROJECT LINKED」は、本活動にご協力をいただいている下記の医療機関とともに、運営しています。
(※医療機関名はあいうえお順です)

愛知医科大学病院
愛知県がんセンター中央病院
足助病院
渥美病院
安城更生病院
伊勢赤十字病院
稲沢市民病院
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大垣市民病院
岡崎市民病院
尾張温泉リハビリかにえ病院
海南病院
春日井市民病院
刈谷豊田総合病院
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岐阜県立多治見病院
岐阜市民病院
江南厚生病院
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名古屋掖済会病院
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西尾市民病院
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半田市立半田病院
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藤田保健衛生大学病院
増子記念病院
松阪市民病院
松波総合病院
みよし市民病院
八千代病院

 

※読者の皆さまへ
<LINKED>は生活者と医療を繋ぐ情報紙。生活者と医療機関の新しい関係づくりへの貢献をめざし、中日新聞広告局広告開発部とPROJECT LINKED事務局・HIP(医療機関の広報企画専門会社)の共同編集にてお届けします。

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編集:PROJECT LINKED事務局/有限会社エイチ・アイ・ピー

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Associate Editor/中島 英
Art Director/伊藤 孝
Copy Director/村島 旬
Planning Director/吉見昌之
Copywriter/森平洋子
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Editorial Staff/猪塚由衣/吉村尚展/佐藤さくら/伊藤研悠/村岡成陽/黒柳真咲/國分由香/
      /小塚京子/平井基一/木下郁子/平田啓介
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