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病院を知ろう

地域包括ケアの一員として高齢化社会を支える。

 

 

尾張温泉リハビリかにえ病院


待ったなしの高齢化問題。
地域に密着し、医療の隙間を埋め、在宅療養を支える病院になる。

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平成26年の秋、新しく生まれ変わる<尾張温泉リハビリかにえ病院>。
その新設に至るまでには、法人理事長の幾つもの決断があった。
2025年問題を目前に控えた今、海部医療圏の特殊な事情を見据え、
いちはやく地域包括ケアヘの参画をめざす。

 

 

 

 

 

180度違う世界で、真野理事長が見たもの。

 Plus顔写真 <尾張温泉リハビリかにえ病院>(以下、かにえ病院)の真野寿雄理事長が、同院にやって来たのは、4年前の平成22年のことだ。奥さんである真野康子事務局長の実父で、かにえ病院の創設者である勅使河原順三前理事長から病院の経営を任されたことがきっかけだった。
 長年、産婦人科診療所の院長として活躍してきた、真野理事長が目の当たりにしたのは、それまでとは180度違う世界だったという。「患者さんの平均年齢は軽く70歳を超える状況で、いかに高齢化の問題が間近に迫っているかを、直に感じることになりました」。
 昭和63年の開院当初は、最新鋭のリハビリテーションを売りにしていた同院だが、真野理事長が着任したときは、高齢者をお預かりすることが中心となって、持てる医療・リハビリテーション能力を活かし切れていなかった。実際、地域では、高齢者のための病院というイメージが先行し、一般的な病気には対応していないと、住民に思われていた。
 地域により密着した病院をめざして、経営を立て直し、人事も刷新、落ち気味である病院としての活性度を高めねばならない。名古屋市医師会理事として在宅医療の拠点づくりに奔走し、これからの地域医療のあり方を考え続けてきた理事長だからこそ、その必要性を強く認識した。

 

 

地域に密着した病院への大転換。
新生かにえ病院。

200 真野理事長がまず着手したのは、回復期リハビリテーション病床を新設することだった。この病床は、脳血管疾患や大腿骨骨折、また、脳や脊髄の損傷などを受けた患者に対して、病状が安定した次の段階で積極的にリハビリテーションを提供するのが目的である。その設置は、かにえ病院がこれまでとは違い、患者の在宅復帰を支援する病院に変わるという、方向転換を院内外に示す第一弾であった。
 これに続いて、理事長は、病院機能全体のさらなる見直しを図るとともに、その実現に向けて、老朽化した病院の新築移転という第二弾を決断。開院は平成26年秋とした。
087 理事長が構想する新生かにえ病院は、蟹江町唯一のケアミックスである。ケアミックスとは、目的の異なる病床を併せ持つスタイルを指す。同院の場合、一般的な病気に対し積極的な治療を提供する「亜急性期病床」、病状が安定した患者に長期的な医学管理を提供する「慢性期病床」、そして、前述の積極的なリハビリテーションを提供する「回復期病床」である。亜急性期病床では、急性期病院で、高水準の専門治療を短期集中的に受け、その後の医学管理が必要な患者や、在宅療養中に病状が悪化した患者に対応する。
 そうした病院機能に、訪問・通所のサービスを連結。それにより地域住民が在宅においても安心して医療・介護保険を利用することができる在宅復帰・在宅療養を支える医療・介護サービスを提供する。
 それにしても真野理事長は、なぜこれほどまで矢継ぎ早に、大きな決断をする必要があったのだろうか。それにはまず、かにえ病院のある蟹江町を含む、海部医療圏の地域的な特殊事情を考えねばならない。

 

 

覚悟と決断を招いた、海部医療圏の特殊事情。

102 名古屋市の西に位置する海部医療圏は、津島市、愛西市、弥富市、あま市、そして大治町・飛島村・蟹江町のある海部郡からなる。この医療圏の特殊性としては、まず、人の流入が少ないということが挙げられる。その結果、4人に1人が75歳以上となる2025年に先行する形で、既にこの地域には超高齢化が現れはじめている。「待ったなしという形で、高齢者の医療に取り組まなければならない状況です」と真野理事長は語る。
 次の特殊性は、急性期の治療に関して、この地域に住む人が、本診療圏の医療機関で治療を受ける割合は6割程度とやや低い点。「今後増加する高齢者が、海部医療圏を越えて医療を受けに行く負担を考えると、圏内での受診割合を、他の医療圏のレベルである7割に引き上げる必要があります」と理事長は語る。そのためには、各病院単位で完璧な受け入れ体制をめざすのではなく、同じ医療圏内の病院同士で足りない機能を補完し合う。いわば、病院完結型の医療から地域完結型の医療への移行が必要不可欠だ。
 そういった意味では、この医療圏には海南病院、津島市民病院とい128った急性期を担う病院はあるものの、それら急性期病院と、かかりつけ医との間を繋ぐ病院が少ないという実情がある。その結果、生じることは、まだまだ急性度の高い患者を、いきなり在宅・施設療養に委ねなければならぬ状況である。
 こうした事態を踏まえたとき、急性期病院の後方機能として病院の存続ができたとしても、果たして地域のニーズに応えているのだろうか。そんな疑問が真野理事長に、海部医療圏の機能区分としてのエアポケットを埋める新生かにえ病院を構想させたのだった。

 

 

地域包括ケアへ向けて、次なる課題を見据える。

140718尾張温泉リハビリ蟹江病院_054034 「これから取り組んでいかなければならない課題も山積みです」と真野理事長は言う。地域が一体となり高齢者の医療、介護、保健、生活支援と住まいをサポートしていく体制、いわゆる地域包括ケアシステムのなかで、その前提となる地域完結型医療を推進するためには、急性期を担う病院との連携はもちろんのこと、診療所との綿密な連携が求められる。
 「地域の診療所の先生たちに患者さんをご紹介いただく、そして、当院での治療が終わり、状態が良くなればまた診療所の先生にお任せするということをしっかり守り、がっちり連携を組んでいきたい。また、診療所の先生たちをサポートする訪問看護ステーションは、最優先で用意したいところです。私たちは、地域医療における診療所の先生方の、伴走者としての役割を担う必要があります」。理事長のこの判断は、医師会での経験はもちろんのこと、長年、診療所の医師としても奮闘してきた経験があってのものだ。
 在宅療養支援に取り組むにあたっては、医師、看護師、介護士が連携する際に、情報を共有しやすい通信技術の基盤構築も必須となってくる。さらに、在宅復帰支援のための新たな病床である「地域包括ケア病床」の開設もめざす。そのためには、看護師をはじめとする人員配置基準などの高いハードルを乗り越える必要がある。
 まだまだ乗り越える問題はあるが、この地域に必要な器を同院は用意した。後はそれをどう使うか。「魂を入れるのは皆さんです」。病院スタッフに向け、あるいは自分自身に向けて、真野理事長はそう力強く語る。

 

 


 

column

コラム

●医療機関が不足している蟹江町では、巡回健診車を活用していた。住民にとって負担の大きいこの事実を見つめ、新病院建設にあたり、まずは健診部門自体を強化。磁気共鳴画像診断装置(1.5テスラMRI)、断層撮影装置(16列マルチスライスCT)を備えることにした。そして、健診センターを併設し、町民健診、企業健診をスタート。住民はいつでも健康診断を受けることができる。同センターは、病院の外来待合室とは別の空間で待つことができ、インフルエンザなど気になる病気が流行しているときも、安心して健診を受けることが可能だ。

●新病棟には、温泉健康増進棟がある。ここでは、尾張温泉の源泉掛け流しの入浴、20mある温泉プールでの水中歩行訓練を行うなど、病気予防のための温泉療法を推進する。日本百名泉の一つである尾張温泉の活用は、前理事長が進めた温泉療養の継承である。

 

backstage

バックステージ

●新生かにえ病院の医療機能は、①急性期を脱した患者の早期受け入れ、②自宅や介護施設にいる患者の緊急時の受け入れ、③在宅へ向けた復帰支援の3点に要約できる。高度で専門的な医療機能を持つ病院から、在宅医療までの間を柔軟に受け持ち、地域の医療をシームレスに繋ぐには欠かせない存在となってくる。これは「地域包括ケア病床」と新たに呼ばれるものであり、同院では、そのための要件を満たすことがこれからの課題である。

●さらに、もう一つ同院がめざしているのが、在宅療養支援病院(在支病)。これは、地域の診療所と連携し24時間365日体制で在宅療養を支える病院である。

●地域包括ケア病床にしても、在宅療養支援病院にしても、新生かにえ病院の視線は明確である。地域に根づき、地域の生活を支え、地域のより安心な医療の構築。あくまでも住民側に立ち、高齢者も安心して、自分らしく暮らすことができる地域づくりといえよう

 


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