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病院を知ろう

当院の地域医療に対する理念は変わらない。
人と人との信頼関係で地域医療連携を強化する。

 

 

名古屋第二赤十字病院


高度急性期医療に特化した病院として、地域の病院と強固な連携体制を築き、地域で患者を治療する体制を築いていく。

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高度で先進的な医療を提供する基幹病院として、百年の歴史を積み重ねてきた名古屋第二赤十字病院。
病院完結型から地域完結型へと国の医療政策が変化するなかで、
同院は「高度急性期医療」に特化した病院として地域に貢献することを決断。
そのために必要な病病連携を、今、病院を挙げて推し進めている。

 

 

 

 

 

我々が医療提供の仕組みを変えていかねばならない。

 DSC_0005 「大きく変化する国の医療政策。大きく変化を求められる当院の使命。」といった内容のポスターが、平成25年秋、名古屋第二赤十字病院の院内のあちこちに掲示された。国は今、2025年の超高齢社会に向けて、医療提供体制を大きく転換させようとしている。そのなかで、同院は高度急性期医療を担う病院として歩んでいくことをいち早く表明し、患者の理解と協力を仰いだのである。
 同院の医療体制はどのように変わるのか。「まず平成26年4月1日から、外来を完全紹介型に移行しました。次に、入院期間のさらなる短縮化を進めています。当院では三次(重症)・二次(中等症)の疾患に対し、短期間で集中的に治療します。そして、容態の安定した患者さんは、他の病院に転院して治療を継続していただくことになります」と、話すのは、同院の副院長であり、地域医療連携センター長の佐藤公治である。
716023 わかりやすくいえば、引き受ける対象を重症な患者に限定し、その人たちに、難度の高い手術をはじめ、高度急性期医療を提供する病院になるというのだ。だが、同院は地域の「命の砦」として、救急医療においても「原則、救急搬送の不応需は行わない」方針を掲げ、どんな症状の患者も受け入れてきた。 「あらゆる患者さんを責任を持って治療する、という理念は今後も変わりません。ただし、それを、当院だけで完結するのではなく、地域の医療機関と連携して実行しようということです」と佐藤は語った後で、「でもこれは、医療者としては、苦渋の選択でもありました」と本音を漏らした。「僕自身もそうですが、医療者はみんな患者さんを最後まで治したいんです。本当は完治する前に転院していただきたくないし、自宅退院まで見届けて患者さんやご家族と喜びを分かち合いたい。そういうことが今後、できなくなるのが、少し寂しいですね」。

 

 

ライバル同士だからこそがっちり手を結べる。

Plus顔写真 医療者としての一抹の寂しさを胸の奥にしまい、同院の職員たちはここ数年来、退院した患者の受け皿となる病院との連携を模索してきた。もともと同院は、以前から一部の診療科で病病連携を行ってきたが、それだけでは、受け皿となる病院は圧倒的に少ない。より幅広い診療科で病病連携を進めるために、新たな連携先を探していた。
 そんなときに持ち上がったのが、独立行政法人国立病院機構 東名古屋病院との連携だった。平成22年4月、東名古屋病院に内海 眞院長(右写真)が就任。常に満床状態で、救急患者の受け入れに苦慮していた名古屋第二赤十字病院の窮状を知り、「退院した患者さんを引き受けましょう」と申し出てくれたのである。
227052 東名古屋病院(名古屋市名東区)は病床数521床。急性期・亜急性期・回復期リハビリテーション医療を提供しており、急性期・亜急性期医療では、同院とライバル関係にある病院だった。こうした病院同士は、一般にはあまり歩み寄れないものだが、「ライバルだからこそ良かった」と佐藤は言う。「ライバルとして認め合える病院でないと、患者さんを安心して委ねることはできません。質の高い医療水準を誇る東名古屋病院だからこそ連携できたわけですし、内海院長の強いリーダーシップが病病連携の具現化を加速させてくれました」。

 

 

原点は人と人の繋がり。腹を割って話せる関係をつくる。

227059 両院の連携の基本は、医師同士の電話連絡。だが、決して最初からうまくいったわけではない。「どこまで当院が治療して、どこから東名古屋病院にお願いするかという︿線引き﹀が難しかった」(佐藤)という。お互いに遠慮もあり、なかなか連携の患者数は増えていかない。そこで始まったのが、両院の医師・看護師・リハビリテーションスタッフなどが顔を揃え、率直に意見交換する「病病連携協議会」だ。現場の人同士が顔を合わせ、問題点を話し合う。227148「(受け入れた患者が)想定していた症状と違って困った」など、遠慮なく問題点を指摘することで、お互いの距離は一気に縮まった。
 病病連携というと、組織同士の繋がりに見える。しかし実は、「人と人の繋がりこそ大切」と佐藤は言う。「同じ診療領域の医師や職員同士が信頼関係を築けるかどうかが鍵を握ります。気心が通じ合い、困ったらいつでも相談できる関係を深めていきたいですね」。平成22年11月から始まった病病連携協議会は、すでに7回を数えた。回を重ねるごとに参加する診療科も増え、病病連携の絆はどんどん深まっている。顔の見える関係(face to face)という以上に、「腹を割って話せる関係(heart to heart)」の構築が、密度の濃い連携を可能にしている。
 また、病病連携でうれしい発見もあったという。それは、連携することにより、患者により良い医療を提供できるという確信が得られたことだった。「たとえば僕の専門である整形外科でいえば、大腿骨頸部骨折などを当院で手術して、リハビリテーションは東名古屋病院などにお願いした方が確実に治療期間が短くなります。それだけ効率的に医療を提供できるわけです。亜急性期、回復期と、症状に応じて、適切な医療を提供していくことで患者さんの満足度も上がります。それが、病病連携の真の意義だと思います」。

 

 

設立母体の違いに関係なく地域の医療機関と手を結んでいきたい。

 227019実は佐藤は、平成26年4月1日、地域医療連携センター長に就任したばかり。最初に佐藤が行ったのは、挨拶回りだった。近隣の病院や診療所を、最初の1カ月間だけで70軒近くまわった。移動距離が1日に100kmを超える日も稀ではなかったという。なぜそこまで、佐藤は熱心に地域を回ったのだろうか。「病病・病診連携は、医療機関の上下関係で結ぶものではありません。お互いに得意分野を持ち寄り、歩み寄ることだと思うんです。そういう当院の思いを伝えるには、直接会ってお話しするのが一番だと考えました」。トップ自らが示した連携への熱意は、確実に地域の医療機関に伝わったはずだ。
 佐藤が構想する地域連携のかたちは、「経済界でいえば、別々の道を歩んできた複数の企業が統合し、巨大な企業グループを作るようなイメージ」だという。「この地域にある医療機関が、設立母体の違いに関係なくグループとなって、均質な医療を提供できるのが理想です」。そのために、解決すべき課題は何だろうか。「地域連携パスの運用など、いろいろありますが、やはり︿人と人の繋がり﹀の強化に尽きると思います。医師はもちろん、看護師、コメディカルスタッフの連携を推進する。さらに連携先の病院と一緒に研修を行ったり、人事交流を図る必要もあるでしょう。この町に地域完結型医療を築くということは、そこまで踏み込んで連携していく覚悟が、個々の病院に要求されているのだと思います」と佐藤は語る。
 患者からすれば、病院が変わり、担当医が変わっても、均質な医療を受けられ、早く快復するのであれば、これほど喜ばしいことはない。「病病連携は、患者さんのために。これからも患者さんにいちばん良い地域医療の体制を考えていきたいと思います」。佐藤は力強い口調でそう締めくくった。

 

 


 

column

コラム

●名古屋第二赤十字病院の地域医療連携センター。ここでは、佐藤センター長をリーダーに、医師、看護師、医療社会福祉士、医療ソーシャルワーカー、事務系職員と、多職種からなるメンバーを配置。「地域包括ケア支援室」「地域医療連携室」「退院支援室」「医療福祉相談室」の4つの機能を併せ持ち、転院や退院を必要とする患者を、亜急性期以降の病院や在宅医療へスムーズに繋げるよう、さまざまな側面から支援している。

●同センターが地域医療連携のキーワードとしているのは、「迅速、円滑、安心」の3つ。できるだけ速やかに転院先や在宅への道筋を作り、円滑に患者を送り出す。そして、患者が安心して質の高い医療を継続して受けられるような連携体制づくりをめざしている。全メンバーは常に「患者さんのために何が良いか」を考え、地域の医療機関との連携強化に取り組んでいる。

 

backstage

バックステージ

●異なる医療機関が連携する上で拠り所となるもののひとつに、地域連携パスがある。地域連携パスは、患者が病院を転院しても継続して標準的な医療を受けられるように作成された診療計画表のことだ。

●名古屋第二赤十字病院では、これまで大腿骨頸部骨折、脳卒中、5大がん疾患において、連携パスを開発し、地域の医療機関と共有してきた。さらに今後は、心臓疾患、糖尿病など、他の診療領域においても、地域連携パスの運用を広げていく考えだという。

●疾患ごとの専門性に基づき、医療の質を保証する地域連携パスは、医療機関にとっても患者にとっても、安心して治療を継続できる<病病・病診連携の切り札>といえるだろう。地域の医療体制が病院完結型から地域完結型へ移行するなかで、今後さらにさまざまな疾患において地域連携パスが整備されることを期待したい。

 


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