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「考える看護」の実践が、
集中治療の質を高めていく。

畑迫伸幸/海南病院 ICU(集中治療室) 集中ケア認定看護師


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JA愛知厚生連・海南病院(愛知県弥富市)は、名古屋市西部から三重県北勢地域と岐阜県南部地域の一部にまたがる広い地域を支える医療機関として機能する。畑迫伸幸は、重篤患者を治療する同院のICU(集中治療室)で、集中ケア認定看護師として「治療スピードを速める看護」をめざす。診療の補助、療養の世話だけではない、〈考える看護〉を実践する畑迫看護師の横顔を取材した。

 

 

 

 


何より大切なのは、チーム医療。看護師が多くの専門職を繋ぐ要となり、より良い治療を進めていく。


 

ICUで呼吸器の看護をもっと追求したい。それが、転職のきっかけだった。

250220 畑迫伸幸が大学病院から海南病院へ移ってきたのは6年前。きっかけは、海南病院で開催された研修会への出席だった。「大学病院でもずっとICU(集中治療室)に勤務していました。そのなかで呼吸器に興味をもち、呼吸療法認定士の資格が取りたくなったのですが、なかなか機会が得られませんでした。そんなとき、研修会で海南病院がICUで呼吸理学療法に力を入れていることを知り、思いきって転職しました」と畑迫は振り返る。
 海南病院のICUに入職して2年目、念願の呼吸療法認定士の資格を手に入れた。
 畑迫が呼吸器に興味をもつのはなぜか。「集中治療で重要となるのは、心臓と肺、すなわち循環器と呼吸器に大きく分けられます。そのうち、より看護の力を発揮できる分野が呼吸器だと思うんです。たとえば、患者さんの胸を手で押して、呼吸を助ける呼吸介助という手技があります。これをすると、呼吸状態が良くなったり、痰が出やすくなるんですね。こうした細かな援助が、治療スピードを上げることに繋がります」。
 呼吸障害のケアに自信を深め、いっそう仕事に邁進していた畑迫のもとに、数年後、再び新たなチャンスが訪れた。上司から「集中ケア認定看護師の資格を取らないか」と声をかけられたのだ。「いつかは取りたいと思っていた資格だから、すごくうれしかった」という畑迫は、病院のバックアップを受けて教育課程で学び、集中ケア認定看護師の資格を取得した。畑迫がめざすのは、ICU看護に精通したスペシャリストだ。「疾患や病態の知識をつけ、チーム医療の場で、看護師の見解を治療方針に取り入れてもらえるような、医師と積極的に話ができる看護師になりたい」と意欲を燃やす。

チームの連携を円滑に進める、コーディネーターが看護師。

250256 畑迫は、ICUの看護をどのように捉えているのだろう。「医師が決めた治療方針に沿って、その治療効果がより上がるよう、看護師ならではのプラスアルファの援助を考え、見つけ出していくのが、ICUにおける看護かなと考えています。たとえば、患者さんの容態を細かに観察し、そのときどきの状況に合わせて体の向きを変え、吸引の援助をするなど、さまざまなことを考え、日々実践しています」。
 ただ受け身で看護をするのではない。「考える看護」の重要性を畑迫は強調する。「患者さんが少しでも早く回復して、ICUから退出することができるよう、プラスアルファの看護をまだまだ発掘していきたいですね」。
 もう一つ、畑迫がICUで大切にしているのは「チーム医療」だ。集中治療を必要とする患者は、多種多様な重症疾患を抱えたうえ、心機能、呼吸機能、腎機能、肝機能など、さまざまな臓器の機能が低下している。そのためICUでは、医師、看護師をはじめ、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士などがチームを組み、総合力で治療を進めていく。「医師は治療に専念し、コメディカルもそれぞれの専門性を発揮します。そのなかで、誰がチーム医療を円滑に進めるキーパーソンになるかというと、それは看護師だと思うんです。看護師は患者さん全体を見て、疾患や病態だけでなく、その人の背景にある人生や家族のことも把握します。だから、患者さんを中心にしたより良い治療にもっていこうとするまとめ役になるべきだし、そうなっていきたいと考えています」。
 患者を中心に、機能が分かれた専門職を有機的に繋ぎ、調整し、治療の質を高めていく。それが、畑迫の描くICUでの看護師の姿なのである。「最終目標は患者さんの退院や社会復帰です。その目標を達成するために、チーム医療の重要性を身にしみて感じています」と畑迫は表情を引き締める。

仕事以外の〈場〉でのコミュニケーションを、大切にする。

250095 集中ケア認定看護師としてICU看護をリードする畑迫だが、その一方で院内のイベントごとでもリーダーシップを発揮している。「入職したときに開いてもらった歓迎会でちょっとした芸を披露して以来、面白いやつだと思われたようで…。忘年会などでは、必ずお笑いの出し物にかり出されますね」と苦笑する。しかし実は、そういった仕事以外の〈場〉で築いた人間関係が後輩の指導にも生きているという。「現場での指導は、どうしてもピリピリしてしまいます。でも、普段の顔を知ってもらっていれば、後輩たちも声をかけやすいし、質問もしやすくなるでしょう」。ICUでは、多くの後輩が畑迫を慕い、頼りにしている。
 みんなで楽しむことの好きな畑迫は、オフタイムも思いきり羽を伸ばす。趣味は大型バイク。休日ともなると、バイクの整備やツーリングを思う存分楽しむ。「遊びの日が決まったら、それまでに仕事をびしっと終わらせます。仕事も遊びも引きずらないようにしていますね」。オンとオフのうまい切り替え、これが畑迫のストレス発散術となっているようだ。

医師ではなく、看護師になりたかった。

250123 畑迫には、看護師になってからずっと守り続けていることがある。それは「昨日できなかったことは今日できるように。今日できたことは明日もできるように」という学びの精神。医療は常に進歩している。分からない治療や病態はその日のうちに解決し、明日に繋げていく。
 そうした学びの積み重ねで、畑迫は、多くの疾患や病態の知識をつけた。友人や知人に「なぜ医師にならなかったのか」と聞かれることがよくあるというが、「治療ではなく、看護をしたかった」とキッパリ言う。なぜなら「治療をして助けるだけではなく、患者さんにより密着した援助をしたい。患者さんの人生の質を高めていけるような存在になりたかった」からだ。250019
 畑迫は今、ICUから病院全体、さらには地域全体へ視野を広げ、活動を広げようとしている。「やはり僕を認定看護師の教育課程に送り出してもらったので、病院に還元していきたいという思いがあります。重症の患者さんはICUだけではなく、病棟にもいらっしゃいます。だからもっと病院全体に、重症の患者さんの看護を広めていきたいんです」。また、呼吸ケアチーム(RST)の活動にも意欲的だ。「病棟を回診するなかで、病棟のスタッフに安全な人工呼吸器管理について指導したり、勉強会を開いたりしています。そういう取り組みにも力を入れていきたいと考えています」。そしてさらに、と畑迫は続けた。「東日本大震災の後、日本DMAT(災害派遣医療チーム)の研修を受けました。今は、出動に備えて訓練を積んでいます」。
 昨日より今日、今日より明日、畑迫はこれからも学び続け、看護師としての幅を広げていく。



column

-83R83898380●海南病院のスローガンに「和を大切に心ある医療」がある。そして、「病院全体が部門を超えた一つのチームである」を信条に、チーム医療に力を入れている。5年ほど前の海部医療圏の救急医療崩壊の危機に際し、患者が集中するなか、業務分担の見直しや効率化を図った。このことが、海南病院のチーム医療への認識を、より強いものにした。

●そのチーム医療の推進に一役かっているのが、「和親会」の活動だ。ここでは、職員相互の親睦を深めるとともに、会員の人格を高め、健全明朗な環境を作ることを目的に、年間を通じて数多くの行事を企画・運営している。旅行、忘年会、福祉、運動、文化などそのテーマは多岐にわたり、家族参加型のイベントも開催している。こうした「和」を大切にした交流が、海南病院の絆をいっそう強めているのである。



backstage

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●医療の高度化・複雑化が進み、医師の指示のもと、さまざまな職種がその専門性を生かして治療を行うチーム医療の重要性が増している。チーム医療を推進するうえで、看護職には、よりエビデンス(根拠)に基づく看護が求められている。

●看護にはキュア=診療の補助と、ケア=療養上の世話がある。看護に期待される役割が、より高度に、より多様になってきている今、キュアとケアの融合を、高度な知識と技術を持って実現できる看護師が必要とされている。専門分野において特定の能力を認証された認定看護師、専門看護師などは、時代のニーズが生みだした看護師と言える。どちらも実務経験5年以上が必要で、そのうえに認定看護師は半年の研修、専門看護師は専門課程の修士課程を修了しなければならない。臨床現場で経験を積み、さらに深く学ぼうとする看護師たちが増えている。


 


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