3,370 views

病院を知ろう

地域医療を守るための大胆な投資。
次代を見据えた
刈谷豊田総合病院の戦略。

 

刈谷豊田総合病院


平成26年秋、待望の新病棟が完成。
地域に求められる医療を重点整備し、
地域医療と住民の健康を守る。

main

刈谷市、高浜市、知立市、東浦町の3市1町の中核病院として、施設の整備計画を進めてきた刈谷豊田総合病院。
その計画もいよいよ最終段階。
平成26年10月、がん診療、周産期医療、災害医療、予防医療を充実させた新病棟「新2棟」が開棟する。
新2棟の概要や今後のビジョンについて、井本正巳病院長に話を聞いた。

 

 

 

 

 

 今秋オープンをめざし着々と建設が進められる「新2棟」。

 049_KariyaToyotaSogo_2014刈谷駅から南へ約900mほど行ったところに位置する、医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院。その敷地の南側で、連日、日が沈むまで、工事車両が慌ただしく行き交い、建設工事が進められている。平成26年10月の開棟をめざす、新2棟(鉄筋コンクリート造、8階建・地下1階)の建設である。
 新2棟は、かねてより同院が進めてきた中長期整備計画のクライマックスともいえる事業。同院では平成23年2月に、高機能の手術室を備えた中央棟を開棟。その後も救命救急センターの拡張などを進め、いよいよ最終段階として新2棟の建設に着手したのである。この病棟がオープンすると、同院の病床数は737床に。同院の東分院(刈谷市・療養型病院)と高浜分院(高浜市・療養型病院)を合わせると、合計1071床(透析除く)となり、法人全体では東海地区においてトップクラスの規模を備えることになる。
 さて、新2棟では、どのような医療機能を備える計画か、その概要について、井本正巳病院長に聞いた。「まずは、第一にがん診療の充実です。新たに緩和ケア病棟をつくり、放射線治療装置も更新します。緩和ケアについては、以前から<自分たちの手でターミナルケアを行いたい>という声が医師や看護師の間で上がっていて、ようやくそれに応えることができます」。同院では平成22年、愛知県がん診療拠点病院に指定されて以来、がんに対する最先端の治療技術を積極的に導入してきた。今秋、緩和ケア病棟ができることにより、がんの初期からターミナル期まで、すべてのステージに対応できる診療体制が整う。
 さらに、井本病院長は「第二のポイントは、周産期医療です」と続ける。新2棟では新たにNICU(新生児集中治療室)とGCU(新生児治療回復室)を備えた小児病棟を開棟。同院の産婦人科と連携し、妊娠初期から小児期まで切れ目のない医療を提供できるようになるのだ。「目標は、地域周産期母子医療センターの認可取得です。将来的には、隣接する安城市にある安城更生病院の総合周産期母子医療センターとも協力体制を結びながら、地域のハイリスクな妊婦さんや新生児の命をしっかり守っていきたいと考えています」。

 

 

豊田会の理念に基づき予防医療も充実。

Plus顔写真 新2棟の特徴は、治療体制の充実だけではない。従来の健診センターを棟内の1・2階フロアに移し、アメニティを向上させたゆとりの環境を整備する。この狙いはどこにあるのだろうか。「私たち豊田会では、<保健・医療・福祉分野で社会に貢献します>という理念を掲げています。その理念に通底しているように、予防医療は私たちの重要なテーマなのです。高機能・高精度の医療機器を揃え、地域住民の病気の予防と早期発見に力を注いでいきたいと思います」と、井本病院長。新しい健診センターでは、女性専用フロアを用意するとともに、新しい健診項目として「大腸CT」検査を用意するなど、質の高い健診を提供していく方針だ。
 この他、新2棟は、災害拠点病院(地域中核災害医療センター)として、大規模災害に対して万全の備えを講じている。建物は地震に強い免震133_KariyaToyotaSogo_2014構造で、安定した電力を受電できる特別高圧電気設備を整備。健診フロアの各所に酸素・吸引設備、ソファーベッド(災害時対応タイプ)を備え、有事の際、大勢の被災者を受け入れることができるよう考えられている。
 地域住民が病気になったときはもちろん、健康づくりを促進するための拠点として、また、万一の災害時に頼れる防災拠点として、新2棟は大きな役割を担っていこうとしている。

 

 

3市1町で唯一の急性期病院の使命を果たす。

104_KariyaToyotaSogo_2014085_KariyaToyotaSogo_2014 同院がこのように、さまざまな医療機能を充実させる背景には、この地域ならではの特性がある。同院は、刈谷市、高浜市、知立市、東浦町の3市1町が協定を結ぶ「衣浦定住自立圏(※)」において中核病院の役割を担っているが、この地域には急性期医療を担う病院がほとんどなく、同院に一極集中しているのである。
 「とにかくこの地域では、急性期を担うのは当院しかありません。当院が先頭に立って高度な医療機能を完備しなくてはならないという覚悟で、今回も思いきった投資をしました」と、井本病院長は話す。新2棟がオープンすれば、地域のがん患者は同院で高度な手術を受け、放射線治療や化学療法、緩和ケアまですべてを同院で受けることができる。また、ハイリスク妊婦は、遠方の病院に入院しなくても、同院で出産し、生まれた子どもの集中管理も任せられる。地域内に必要な医療機能が揃う安心感は非常に大きい。
 国は今、病床の機能分化を進めているが、同院は当然、これからも高度急性期病院として発展をめざしている。「地域の事情を考えれば、自ずと当院の立ち位置は決まります。地域に求められる幅広い診療領域の急性期医療をカバーするとともに、救急医療についても、これまで同様、<断らない救急>を実践していきます」と、井本病院長は力強く語る。その言葉を裏づけるように、同院の救急車受け入れ数は9595名(平成24年度)で、全国第11位にランキングされている(平成24年10月26日、『週刊ダイヤモンド』特大号より)。これは、地域の最後の砦として闘う同院の姿勢を如実に示しているといえるだろう。

※ 3市1町が相互に連携・協力し、生活利便性や地域の魅力の向上に努める、広域連携の地域づくり

 

 

今後の課題は、忍び寄る高齢化にどう備えるか。

 079_KariyaToyotaSogo_2014刈谷市を中心とする3市1町は、トヨタ系企業を中心とする堅調な産業基盤に支えられ、人口も増加傾向にある。全国のなかでも高齢者の人口比率が少なく、若々しい地域だ。しかし、いずれはこの地域にも少子超高齢化社会が訪れることは間違いない。
 「地域の高齢化が進めば、当然、救急医療、急性期医療のニーズが高くなります。当院として、今後さらに増え続ける急性期の患者さんにしっかり対応していくことがまず第一の使命だと考えています。また、地域の医療機関との連携も、今後さらに重要になると思います」と、井本病院長。同院では、ITを使った地域医療ネットワーク(詳しくは、コラムを参照)をつくるなど、診療所の医師と一緒に、地域の患者を治療していく体制づくりに力を注いでいる。 
 さらにまた、井本病院長は同院の医療資源を地域へ還元する仕組みも模索している。「3市1町のなかでは、当院がもっとも多くの医療者を抱えていますし、福祉や保健の専門家もたくさん在籍しています。そうした職員の専門知識や技術を、もっと地域に役立てていきたいですね。たとえば、地域の医療・介護者に向けて勉強会を開催したり、当院の職員が地域の医療機関で出張講座を開くなど、さまざまな側面で在宅医療を支援していきたいと思います」。
 この地域で高齢化がどのように進んでいくかは、まだまだ未知数だ。しかし、井本病院長は来るべき超高齢社会を見据え、地域の医療機関や行政とも協力しながら、安心で健康に暮らせる地域づくりへの貢献をめざしている。

 

 


 

column

コラム

●刈谷豊田総合病院では、地域のかかりつけ医と協力して、地域医療ネットワークシステム「KTメディネット」を構築し、平成24年10月から稼働させている。これは、同院と衣浦定住自立圏域(刈谷市・高浜市・知立市・東浦町)の各医療機関をインターネットで結び、患者情報の共有や紹介状のやりとりをするもの。地域のかかりつけ医が同院へ紹介した患者について、同院での診療情報(医師記録・検査・画像データなど)を参照することができる。さらに診察や委託検査もオンライン予約できる。

●異なる医療機関同士が役割分担し、深く連携するには、診療情報の共有が重要な鍵を握る。そのため、全国各地でさまざまな地域医療ネットワークシステムの実用化が模索されている。その先陣を切り、同院と衣浦定住自立圏では、一歩先の地域医療ネットワークシステムを築いている。

 

backstage

バックステージ

●刈谷豊田総合病院のある刈谷市を中心とした地域は、比較的高齢化が遅れている全国でも珍しいエリアである。一方、この地域に、急性期病院は同院ただ一つであり、急性期以降を担う病床や介護関連施設などもそれほど多くはない。同院はそうした地域のありようを見極め、自らのポジションを高度急性期病院と定め、これからも地域の最後の砦として使命を果たしていく構えだ。

●国は今、4人に1人が75歳以上になる2025年に向けて、病院機能の分化を進め、地域完結型医療体制づくりを推し進めている。だが、地域によって、提供されている医療の供給量やバランスはまったく違う。同院は、自分たちの地域にふさわしい独自の「地域完結型医療体制」を構築し、地域住民の安心と健康を守っていこうとしている。その行方を、これからも興味深く追っていきたい。

 


3,370 views