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仕事も子育ても妥協しない。
この病院で、看護師として働き続ける。

甲斐美政/名古屋掖済会病院 救命救急センター


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東海地区における救急医療の草分けとも言える名古屋掖済会病院。甲斐美政看護師は、その心臓部である救命救急センターで、日々、多くの患者と向き合う。そんな病院での真剣な姿から一転、家に戻れば3人の子どもの優しい父親。同じく看護師である奥さんと二人三脚で育児に忙しい。仕事の充実と家族の幸せ、どちらも大切にする甲斐看護師のライフスタイルを追った。

 

 

 

 


めざす看護を追求し、家族との時間も大切に。それが私たちのライフスタイル。


2人で協力し、仕事と子育てを両立。

0021 「家事はもっぱら奥さんがします。僕の担当はお風呂かな…」。そう話すのは、名古屋掖済会病院の救命救急センター看護師、甲斐美政。5歳の双子と1歳、男児3人の父親だ。1歳の子を抱きながら双子と合わせ3人同時にお風呂に入れるのはひと苦労だが、「慣れました」と笑う。奥さんの亜希子さんも同院の整形外科の看護師。仕事に子育てに、夫婦で奮闘する毎日だ。
 平成14年に入職。亜希子さんとは同期で、配属された神経内科の病棟で出会った。5年の交際を経て平成18年に結婚。19年、双子の男児を、23年夏にもう一人男の子を授かった。お互いの実家は宮崎と富山で遠く、両親のサポートはほとんど期待できない。亜希子さんは最初「子どもは自分が中心となって育てる」と覚悟したが、双子が生まれると分かった時点で、甲斐にも「自分も手伝わなければ」という自覚が芽生えた。「3人目がお腹にいたとき、双子が精神的に少し不安定になった時期があったんです。そのときはパパがよく面倒を見てくれて、外に連れ出して遊んでくれたりしたので助かりました」と亜希子さん。
 仕事が同じ看護師だったことも良かった。不定休なので、平日でもどちらかが家にいて、子どもの面倒を見ることができる。また、仕事への責任感や情熱もお互いによく理解しあえる。子育てをきちんとしながら、仕事にも妥協しない。「2人で協力すれば何とかなる」と、仕事と子育てを両立してきた。

職場では、仕事に全力を注ぎ込む。

0157 甲斐は、救命救急センターに配属されて6年目となる。昭和53年、東海地区初の救命救急センターの指定を受けた名古屋掖済会病院は、東海地区の救急医療の草分け。ER医が専従し、軽症から重症まで幅広い救急患者を受け入れる、純粋な北米型ERシステムを取り入れる救命救急センターには、毎日100人以上の患者が訪れる。
 医師の診療の補助はもちろん、患者のトリアージ、家族への対応など、救命救急センターの看護師に求められる仕事は多種多様。配属当初は自分がどう動けばいいのか分からず右往左往したが、めまぐるしい現場でも落ち着いて行動する先輩看護師の背中を見ながら、一つひとつ学んでいった。「救急の現場では、この患者さんが次どうなるか、常に少し先を見て動くことが必要。忙しい状態で、あまり周りのスタッフに頼ることはできませんので、一人ひとりの看護師が独立して動ける人材であることが大切です」。
 甲斐はいま、救急の第一線で看護師として働くことに、やりがいを感じている。目の前の患者を助けるために、自分の持っている能力を注ぎ込み全力投球する。「やり終えた後の達成感は大きく、この職場は自分にとてもあっていると感じます」。
 一方、奥さんの亜希子さんは、双子を産んだ後、1年の育休を取り整形外科の看護師として職場復帰。3人目ができたときには、病棟スタッフのなかでもリーダー的立場になっており、育休は取らずすぐに復帰、現在は整形外科の主任を任されている。

病院の理解と、サポートがあってこそ。

0060 甲斐夫婦が、仕事と子育てを両立できた背景には、病院側のサポートがある。
 救命救急センターの甲斐は、救急外来へも行き来するため、勤務体制が2交代と3交代のミックスとなっている。救命救急センターでの2交代の夜勤と、救急外来での3交代の準夜・深夜勤務を行っている。整形外科の主任をしている亜希子さんも、病棟の夜勤と救急外来の主任夜勤がある。
 病院側ではシフトが夫婦で重なってしまわないよう、救命救急センターと整形外科の師長がコンタクトを取りあい、部署を越えた勤務調整を行っている。「師長さんも子育てを経験されてきた方なので、いろいろと配慮してくださいます」と甲斐。
 院内に託児所があり3歳まで預かってもらうことができるのも大きな助けとなっている。双子は3歳まで託児所に預け、以降は保育園に通っているが、曜日によっては夜、面倒を見てもらえる日もあり、そういった施設も上手く利用している。
 昨年4月から整形外科の主任となった亜希子さんは、仕事が増えたことで子どもといる時間が減り、いかに子どもと過ごす時間を確保するかが課題と言う。「でも上の双子はもう、パパもママも働いていて今日は病院、今日は夜勤って分かってくれているみたいで…」。病院や師長の理解とサポートのもと、夫婦二人三脚で子育てを続けている。

それぞれのめざす看護を追求していく。

0123 「名古屋掖済会病院の救急は、医師だけでなく看護師もすごいと言われたい」と甲斐。ER型救急のパイオニアである同院では、救急のドクター陣は有名だ。「そのドクター陣にしっかりとついていける看護師を、僕らが育てていかなければと思っています」。
 院内では、基礎研修から専門的なものまで1~6段階の教育システムがあり、救急部門ではアメリカ心臓協会(AHA)の蘇生教育に関するトレーニングサイトも設立されている。学べる機会はたくさんあるが、新しく入ってきた看護師には、「まず自分のめざす先輩を一人作るといい」と話すという。自分も常に先輩の背中を見て学んできた。今度は自分が、その背中を見せる番だ。
 亜希子さんは、主任になったことで新人看護師たちの教育への関心が高くなった。いま、愛知県看護協会の新人職員教育担当研修も受けているという。「医療はどんどん進んでいます。私たち看護師も、病態を知ったうえでエビデンス(根拠)に基づいた看護をできるようにならなければ…。そういう視点を持った看護教育ができるようになりたい」。
 忙しい毎日でお互いの看護観についてゆっくりと話す機会は少ないが、同じ職場で働きながら、それぞれの看護をめざす。その看護の根底には、患者や家族を「導き助ける」という「掖済」の精神が流れている。
 家族での写真撮影をするため病院を出て自宅に向かう途中、「次の休みには子どもたちをトミカ博に連れて行くんです」と甲斐。その顔は、看護師から父親へ。3人を育てながらの仕事は大変なことも多いが「子どもがいるから頑張れる」とニッコリ。めざす看護を追求し、家族との時間も大切にする。これが、甲斐夫婦の素敵なライフスタイルだ。


column

83R83898380●「誰のための看護なのか」、「どういう看護をめざしたくて看護師になったのか」。名古屋掖済会病院では、医師やコメディカルとは異なる「看護師にしかできないこと」を追求できる看護師の育成に力を注ぐ。新人向けの1~3段階の必須研修と、専門性を高める4~6段階の研修を整え、4段階以降は看護師が挑戦する時期を選ぶことができる。例えば女性看護師の場合、4段階目を終えた時点で結婚・出産し、育児休暇を終えてから5段階目に挑戦することも可能。ライフスタイルを考慮した教育制度となっている。

●平成20年4月には託児所をリニューアル。子どもを持つ看護師が子育てと仕事を両立できるよう、夜間保育や休日保育も開始した。看護師同士の院内結婚にも理解が深く、診療科を越えた勤務シフトの作成など、看護師が仕事とプライベートを無理なく両立させることができるよう配慮し、働きがいのある職場づくりに努めている。



 

backstage

83o83b83N83X83e815B83W●厚生労働省の調査によると、2012年は約51,000人、2013年は約42,000人、2014年は約30,000人の看護師が不足すると予測されている。決して、新卒の入職者が少ないわけではない。原因は、勤務時間が長い、夜勤負担が大きい、超過勤務が多いなどの理由や、結婚、出産・育児、身内の健康問題など自身の状況の変化で、現場を離れる看護師が多いことにある。

●健全な看護を展開していくためには、新人、中堅、ベテランの看護師が各部署にバランス良く配置されることが望ましい。そのためには一人ひとりの看護師が長く働き続けられることが理想だ。看護師の国家資格を持ちながら退職し、そのまま看護師として働いていない潜在看護師は、全国で50万人以上いると言われている。交代勤務で夜勤もある看護師の仕事は、他の仕事よりもプライベートとの両立が困難なのだ。看護師が少しでも長く働き続けられる環境づくりを進めていくことは、今後の医療において重要な課題である。

 


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