3,217 views

病院を知ろう

医療の質をしっかりと支える。
それが、放射線科の使命。

 

 

愛知医科大学病院



今日の医療に欠かせない存在となった放射線による「診断」と「治療」。
臓器別の各診療科の医師たち、そして地域の医療機関と連携しながら、
愛知医科大学病院の放射線科は、これからも質の高い医療に貢献していく。

main

新病院の開設を機に、がんをはじめとする多様な疾患のより高度な診断と治療を可能にする、最先端の画像検査装置や放射線治療装置を導入した愛知医科大学病院。
だが、その真の強みは、決して最新機器の導入ではない。診療科の垣根を超えて密にコミュニケーションを図る医師たち。
そんなハイブリッドな医療体制が、同院の診療の質を支えている。

 

 

 

 

 

最新機器とその運用により、
迅速な画像診断を可能に。

 顔写真 平成26年5月に新病院を開設した愛知医科大学病院では、最先端の画像検査装置や放射線治療装置の導入により、今まで以上に放射線科の存在感が増している。
 そもそも放射線科は、画像診断と放射線治療に大別されるが、そのなかにも、「放射線診断」、「放射線治療」、「IVR(インターベンショナル・ラジオロジー)」、「核医学」の4つの専門分野がある。放射線診断とは、X線写真やCT、MRIなどによる画像診断のこと。放射線治療とは、放射線の照射によるがん治療を指す。また、IVRとは、血管撮影やCTを見ながら細いカテーテルを体内に挿入して病気を治す新しい治療法のこと。核医学とは、ごく微量の放射線を出す医薬品を体内に投与し、病気の診断や治療を行う専門分野のことだ。
 同院の放射線科は、放射線診断専門医の資格を持つ医師が、IVRや核医学といった分野別の専門医資格を併せ持っているのが大きな特徴だ。ベースとなる専門知識を備えた上で、幅広い知識・技術を有する医師が多く在籍しているため、科全体で広範な症例に対応することができる。
 まずは画像診断を見てみよう。同院の放射線科では、大量の画像を読影するための専用モニタールームを設置。医師一人ひとりのブースを確保することで読影に集中できる環境を整えている。これに加え、必要なデータをすぐに画像処理できるシステムを導入し、数千枚に及ぶ画像を短時間で3次元表示するといった処理が可能となった。「情報がシステムに瞬時に流れ、すぐ読影できるワークフローが確立されたことで、より迅速な検査とその報告ができる体制が整いました」と放射線科の石口恒男部長は説明する。
 医師の読影を支える新たなシステムが運用される一方、「PET–CT」、「2管球搭載CT装置」、「3T(テスラ)MRI装置」といった最先端の検査装置も相次ぎ導入された。どの機器も従来より精度の高い撮影を可能にするもので、これによって医師たちの読影能力がさらに発揮される。もちろん、こうした最先端の検査装置は、紹介状を持参して来院した地域の患者の診断にもこれまで以上に活かされていく。「最新機器の導入と検査体制の強化が進んだことで、地域の連携医療機関からのご依頼にもよりスピーディに対応できるようになりました。大部分の診断は、当日に診断医が所見をつけて各診療科に報告します。地域医療連携室から診療所の先生への正式なレポートは翌日送付が基本ですが、緊急性のある場合はより迅速に検査結果をご提供するようにしています」(石口部長)。

 

県外からも患者が訪れる
高度かつ専門的な治療能力。

IMG_6365 一方、種々の疾患の治療においても、各スタッフの専門性を発揮しながら高い治療能力を発揮している。
 石口部長が専門とするのは、IVR治療。主にがんや血管系の病気を血管内から治療するもの。放射線による画像診断を応用し、カテーテルを挿入して行う低侵襲な治療法のことだ。なかでも、特筆すべきは先天的な血管奇形の豊富な治療実績で、その治療能力の高さから、他県から紹介される患者も多く、同科の大きな特徴の一つとなっている。がんの放射線治療については、同院の放射線治療を牽引する河村敏紀副部長が、身体全般のがん治療を統括している。その一方で、脳神経外科出身で、ガンマナイフやサイバーナイフといった高精度放射線治療の草分け的存在である森 美雅医師が、脳腫瘍を中心とする頭部の治療を指導している。
 なお、新病院では、新たに高精度放射線治療装置「TrueBeam STx」が導入された。この治療装置は、病巣をピンポイントに照射する定位放射線治療や、IMRT(強度変調放射線治療)、IGRT(画像誘導放射線治療)などを、短時間かつ高精度で行える、すぐれたもの。放射線による正常組織への影響が少ない上、従来は難しかった小さな病変の治療も可能となり、がんにおける放射線治療の幅がより一層広がった。

 

 

各診療科の医師が連携する
ハイブリッドな治療体制。

IMG_3095 最近、「ハイブリッド手術室」が注目を集めている。これは外科手術の設備と血管撮影装置を組み合わせた手術室で、極めて高い空気清浄度の環境でカテーテルによる血管内治療が行えるのが特徴だ。この手術室は、同院の新病院にも導入されている。だがここではあえて、「ハイブリッド」という言葉の本来の意味に着目してみたい。
 そもそもハイブリッドとは、「異なるものを混ぜ合わせる」という意味を持つ言葉だ。今ではガソリンと電気を組み合わせたハイブリッドカーと同義語で使われることが多いが、同院をあえて自動車に例えるなら、病院の原動力である「ガソリン」が各診療科であり、もう一つの動力となる「電気」に相当するのが、放射線科の存在である。
同院では、内科・外科などとの合同カンファレンスに放射線科医が参加する。例えば、肝がんの患者であれば、消化器内科と消化器外科、放射線科の医師が集まる「肝がんカンファレンス」で治療方針を検討する。「放射線科医は、画像診断の専門家の立場から詳しい説明やIVR治療の可能性などを提案するのが役目です」と石口部長は話す。同院にとってハイブリッドとは、手術室だけはない。異なる診療科が互いの強みを持ち寄り、より良い治療をめざす。同院はいわば病院全体がハイブリッドなのだ。そして、地域のかかりつけ医とともに紹介患者を支える“第二の主治医”が各診療科の医師ならば、“第三の主治医”として診療を支えるのが、同院の放射線科医なのである。
 「当院では元々、診療科ごとの壁がない、話がしやすい雰囲気でしたが、そうした状況は近年、さらに良くなってきたと感じています。このような環境を育む要因になったのは、新病院を作るにあたり各科の医師が集まり、意見交換を活発に行ったことがきっかけだと思います」と石口部長は話す。
 こうした連携を象徴するものの一つが、ハイブリッド手術室だ。前置胎盤などにより帝王切開を行う際の出血に備えて、カテーテルを入れて出血を防いだり、心臓血管外科医が行う血管の置換術やバイパス術と組み合わせて、ステントグラフト治療を実施するといった、文字通りのハイブリッドな手術行為が、放射線科医と各診療科の医師たちの連携によって展開されている。

 

 

高齢化する地域を支えるため、
今後も連携を深めていきたい。

IMG_3114 今後、高齢化がさらに進展する日本では、がんを抱えながら地域で暮らす高齢者の姿が当たり前となるだろう。そのなかで、医療技術の進歩により、低侵襲で高い治療成績を収めるようになった放射線治療やIVR治療は、患者の負担を減らし、術後の生活レベルを早期に回復できる治療法として、ますます必要とされてくるはずだ。
 同院では今までも、高度な診断・治療能力を広く地域に提供してきたが、今後もその能力をさらに還元すべく、地域の医療機関とより深い連携を図っていきたいと考えている。2カ月に1度定期的に、「地域医療連携懇話会」を開催し、近隣の医師への積極的な情報発信や意見交換の場を設けている。ここでは放射線科医自らが地域の医師に講演を行う機会もあり、画像診断や治療における連携の効果を説明している。
 「新病院で新たに稼働し始めた地域連携ネットワークシステムを活用しながら、今後はさらに密な情報交換を図っていきたい」と抱負を語る石口部長。院内における診療科を超えた強固な連携を、地域へと広げていく――。さらなる地域貢献を旗印に掲げ、同院は今後も連携強化に全力を注いでいく構えだ。

 

 


 

column

コラム

●愛知医科大学病院では、新病院の開設を機に最新の医療機器を数多く導入した。がんの早期発見を可能にする「PET–CT装置」は、特殊な検査薬の投与により、PETで抽出されたがん病変とCT画像を融合。がんの正診率が大幅に向上する。高速かつ低被ばくの撮影ができる「2管球搭載CT装置」は、息止めができない患者や動きやすい小児でもきれいな画像が得られるのが特徴だ。「3T(テスラ)MRI装置」では、従来の1・5TMRI装置の2倍の静磁場強度を有し、より高精細な画像を得ることができる。

●本文中で紹介した高精度放射線治療装置(TrueBeam STx)は今後、がん治療で大きな威力を発揮していきそうだ。この装置では、照射内の放射線強度を変えて照射するIMRT(強度変調放射線治療)と、患者の画像情報から、腫瘍位置の誤差を補正し、正確に放射線照射するIGRT(画像誘導放射線治療)が可能であり、低侵襲で安全な放射線治療が可能だ。

 

backstage

バックステージ

●日本における放射線治療の実施件数を見てみると、世界の先進諸国に比べて圧倒的に少ない状況が続いている。すでに欧米諸国ではがん患者のおよそ60%〜70%が何らかの放射線治療を受けているが、日本国内では25%程度に留まっているのだ。日本で放射線治療がなかなか浸透しない要因には、治療装置や専門医が少なかったこと、がん治療は手術で病巣を切除するものだという認識が強かったこと、さらには放射線被ばくに対する心理的な不安などが挙げられている。

●放射線治療の大きなメリットは、圧倒的に低侵襲で患者への負担が少ないことだ。患者の高齢化が進み、一方で入院期間の短縮が強く求められるなか、機器の進歩により有用性を増した最新の放射線治療が注目を集めている。がん治療の大きな柱として、今後のさらなる普及が期待されるところだ。

 


3,217 views