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今、私たちの国の医療は大きく変わろうとしている。超高齢社会にあって、
限られた医療・介護資源でいかに国民の安心を守っていくか。
この大きな課題に対し、国は地域医療提供体制の再編を進めているのだ。
それに伴い、地域の病院において、病気を治すだけではなく、病気を治した後、
自立して生活できるように患者を支える機能が求められてきた。それは、治す機能と支える機能。
すなわち、「治す病院」と「支える病院」を機能分化させ、そのうえで相互に連携することで、
病気の発症から治療、在宅療養まで、切れ目なく医療を繋いでいく形だ。
そのとき、「治す病院」と「支える病院」は、果たしてうまくバトンを渡し、
継続的な医療を提供することができるのだろうか。
病院と病院のあり方と、そこに立ちはだかる課題を考えてみた。


 治す病院、支える病院


 

治すロゴ

治す病院1

病気を治す病院とは

二次医療圏(※)で発生する重症疾患に対応する病院。
救急機能、検査機能や集中治療機能を備え、
手術等の積極的な治療を行うとともに、
入院治療においても手厚い看護体制をもとに、
重症な患者を受け入れ、
集中的で高度な急性期医療を効率的に提供する。
※地域医療においては、市町村を単位とする一次医療圏、複数の市町村をまとめた二次医療圏、
都道府県の区域を基本単位とする三次医療圏が設定されている。

治す病院2


 支えるロゴ

支える病院1

生活を支える病院とは

「治す病院」と協力して、患者の生活を支える病院。
発症頻度の高い一般的な疾患に広く対応すると同時に、
「治す病院」で高度急性期治療を終えた患者を受け入れ、
継続的な医療やリハビリテーション医療を提供し、
日常的な生活への復帰を支援する。
また、在宅療養中の急変時に対応し、患者の生活を守っていく。

支える病院2

 

 


 

しかし、病院同士がうまく連携するには課題があります。

数字アイコン1「治す病院」と「支える病院」のバランスを、
 地域の医療ニーズと整合させることが必要です。

地域完結の医療を考えたとき、多くの地域で「治す病院」の抱える病床数は、「支える病院」と比して多すぎる状態です。また、「治す病院」と「支える病院」の機能、役割に対して、専門医・総合医、看護師等の医療職の配置も適正であるとは言いがたい状況です。「治す病院」から「支える病院」への転換や、医療職の適正配置を実現するためには、社会や医療職自身の新しい価値観の醸成や、地域内での医療職の異動を容易にするための、ルールやシステムの構築が必要です。


数字アイコン2医療の質の連続性を担保して、
患者を次の病院へ繋ぐ仕組みが必要です。

重篤な病気を発症し、「治す病院」と「支える病院」を経由して自立した生活を取り戻すときに、二つの病院間で医療の質に大きな違いがあると一番困るのは私たち患者です。「治す病院」から「支える病院」へと医療依存度の高い患者を繋いでいくためには、双方の病院で相互に乗り入れる領域を増やし、患者情報を共有し、スタッフ同士が顔の見える関係を構築。地域連携パスの高度化やICT(情報通信技術)等のツールを駆使し、医療の「質」の連続性を保つ仕組みが必要です。

 

 Check!
病気が治っていく過程には、
高度急性期から、急性期、回復期、慢性期までのステージがあり、
それに応じた病院の機能分化が求められています。


 

 

病院と病院のスムーズな連携。
その体制づくりは、今まさに始まったばかり。

 

 国は今、団塊の世代が後期高齢者の仲間入りをする2025年を見据え、従来の「病院完結型」から「地域完結型」へと地域医療の提供体制を転換。すべての病院に、地域医療における自院の役割の明確化と、その役割に基づく他の医療機関との連携の推進を求めている。
 上記では、わかりやすいように「治す病院」と「支える病院」の二つの軸で、地域における病院の役割と、病院同士の連携(以下、病病連携)の仕組みをイラストに描いてみた。実際には、これほど単純ではなく、地域の医療資源の充足状況や疾患の種類などによってさまざまな形が想定される。ただ、今までのように、個々の病院が別々に患者に対応するのではなく、病院の役割分担と病病連携により、地域医療が、病気の発症から在宅復帰まで、スムーズに切れ目なく展開されれば、患者や家族にとって安心できるに違いない。
 現在、病病連携には二つの課題が立ちはだかる。一つは、「治す病院」と「支える病院」のバランスが、多くの地域で現場の医療ニーズに合っていない点だ。すなわち、「治す病院」である高度急性期・急性期病院の病床が、地域の中で発症する重症疾患に比して圧倒的に多く、地域において必要とされる「支える病院」への転換が進んでいないこと。さらに、双方の病院の機能と役割の違いを考えると、単に病床数だけの問題ではなく、「治す病院」には臓器別の専門医が、「支える病院」には複合疾患に対応できる総合性をもった医師が配置される必要があり、また看護師をはじめとする他の医療職も、病院の機能に合わせた再配置が不可欠になる。これらを解決するためには個々の病院の努力だけに任せるのではなく、転換や再配置を可能にする社会や医療職自身の新しい価値観の醸成と、地域のなかでの異動を容易にするためのルールやシステムづくりが必要になる。
 二つ目の課題は、病病連携を結ぶ病院で患者に提供される医療の「質」の継続性をいかに担保するかという問題である。「治す病院」では、命に関わる重篤な疾患に対して、集中的で高度な急性期の医療を効率的に提供することが求められる。そこでは患者の在院日数はさらに短縮が必要になる。そのため、患者は命の危機は脱したものの、医療必要度の高い状態で退院が求められ、その後を引き受ける「支える病院」にも、高度な医療を継続できる医療レベルが必要になる。そのため、病院が変わっても同じ疾患についての治療を継続させるべく、異なる病院の医師、スタッフ同士が、治療方針、患者の家庭背景や生活背景といった情報の共有と、それらを円滑にするため、地域連携パスの整備や、ICT(情報通信技術)のさらなる積極的活用が必要になろう。
 平成26年度診療報酬改定では、高度急性期・急性期病院を絞り込むための大きな改定が盛り込まれ、高度急性期・急性期医療機能の高度化・集約化と、同時に高度急性期・急性期以降の(亜急性期・)回復期・慢性期の医療を担う病院、すなわち、「支える病院」への転換が強烈に促されている。だが、各地域で地域完結型医療体制を築くのは、一朝一夕でできることではない。そこには何よりも医療を受ける側、患者や地域住民の理解と協力が重要な鍵を握る。「どんな病気でも、わが町の大きな病院(=治す病院)にかかればひとまず安心」という従来の認識を改め、自らの地域にある病院の機能と役割を理解し、かかりつけ医との相談の上、日常的な病気については、「支える病院」を利用、重篤な疾患にかかったときだけ「治す病院」へ。さらに高度な集中治療を終えた後は「支える病院」に転院が必要なことを理解し、受け入れなくてはならない。そういった私たちの意識改革が、病院の機能分化と連携を推し進め、超高齢社会のなかで、限られた医療・介護資源で自分たちの安心を守っていく原動力にもなるのだ。
 地域の医療機関があたかも一つの病院のように機能し、高度急性期から急性期、回復期、慢性期、在宅までを切れ目なく繋いでいく体制が実現するかどうか。その取り組みは、今まさに始まったばかりである。

 


 

 

時代を読み解くキーワード

01:7対1病床
「治す病院」の多くは、7対1入院基本料(以下、7対1病床)を算定している。7対1病床とは、入院患者7人に対して、常時看護師1人以上を配置する、手厚い看護体制を持つ病床だが、病床の数が多すぎることが問題視され、平成26年度診療報酬改定では、7対1病床の算定要件が非常に厳しくなった。主な変更点は次の二つ。

●重症度、医療・看護必要度
7対1病床の要件に必要な「重症度、医療・看護必要度(従来の名称:看護必要度)」が厳格に設定された。創傷処置、呼吸ケア、専門的な治療・処置などの評価項目が見直され、急性期病床に求められる要件をより明確化した内容になった。

●在宅復帰率(自宅などへの退院割合75%以上)
7対1病床に新たに加わった要件。この「自宅など」には、自宅以外に、介護施設、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、在宅復帰機能を強化させた医療療養病棟、介護老人保健施設などが含まれる。

 

02:回復期リハビリテーション病棟
「支える病院」の病棟。リハビリテーション科の医師をはじめ、看護師や理学療法士、作業療法士など、多くの医療専門職がチームを組んで集中的なリハビリテーションを実施し、在宅復帰をめざす。

 

03:地域包括ケア病棟
「支える病院」の病棟。平成26年度診療報酬改定で、新たに作られた病棟のカテゴリーで、「治す病院」で命の危機を脱した患者を受け入れ、継続治療を行い、在宅への復帰を支援する。また、軽症の救急患者の受け入れ、在宅療養中の患者の急性増悪時の受け入れも行う。

 

04:地域連携パス
病病連携に欠かせないツール。患者が病院を転院しても切れ目のない治療を受けられるように作成する診療計画表。高度急性期、急性期、回復期、療養期、そして在宅療養などを受け持つ医療機関が情報を共有し、協力して患者の在宅復帰を支援していく。「地域医療連携パス」「地域連携クリティカルパス」とも言う。

 

05:病床機能報告制度
平成26年10月から始まった制度。一般病床・療養病床を持つ医療機関が、病棟ごとで「高度急性期機能」「急性期機能」「回復期機能」「慢性期機能」の4区分から一つずつを選び、その他の報告事項と合わせ、都道府県に報告する。平成27年度からは、その情報をもとに各都道府県が地域医療構想(ビジョン)を策定し、医療機能の分化・連携を推進させる見通しである。

 

 

 

 


 


 

HEYE

名大副総長 松尾清一/
医学の進歩と利用する知恵


元厚生労働副大臣 大塚耕平/
地域医療成功の鍵、CAFÉな人材
EEYE

 


SPECIAL THANKS(編集協力)

「PROJECT LINKED」は、本活動にご協力をいただいている下記の医療機関とともに、運営しています。
(※医療機関名はあいうえお順です)

愛知医科大学病院
愛知県がんセンター中央病院
足助病院
渥美病院
安城更生病院
伊勢赤十字病院
稲沢市民病院
鵜飼リハビリテーション病院
大垣市民病院
岡崎市民病院
尾張温泉かにえ病院
海南病院
春日井市民病院
刈谷豊田総合病院
岐阜県総合医療センター
岐阜県立多治見病院
岐阜市民病院
江南厚生病院
公立陶生病院
市立伊勢総合病院
総合犬山中央病院
総合大雄会病院
総合病院中津川市民病院
大同病院
知多厚生病院
中京病院
津島市民病院
東海記念病院
豊川市民病院
トヨタ記念病院
豊田厚生病院
豊橋市民病院
名古屋医療センター
名古屋掖済会病院
名古屋市立大学病院
名古屋大学医学部附属病院
名古屋第二赤十字病院
成田記念病院
西尾市民病院
はちや整形外科病院
半田市立半田病院
尾西病院
藤田保健衛生大学病院
増子記念病院
松阪市民病院
松波総合病院
みよし市民病院
八千代病院

 

※読者の皆さまへ
<LINKED>は生活者と医療を繋ぐ情報紙。生活者と医療機関の新しい関係づくりへの貢献をめざし、中日新聞広告局広告開発部とPROJECT LINKED事務局・HIP(医療機関の広報企画専門会社)の共同編集にてお届けします。

企画制作:中日新聞広告局

編集:PROJECT LINKED事務局/有限会社エイチ・アイ・ピー

Senior Advisor/馬場武彦

Editor in Chief/黒江 仁
Associate Editor/中島 英
Art Director/伊藤 孝
Copy Director/村島 旬
Planning Director/吉見昌之
Copywriter/森平洋子
Photographer/越野龍彦/加藤弘一/ノマド/ランドスケープ/空有限会社
Illustrator/にしわきコージ
Editorial Staff/伊藤研悠/吉村尚展/佐藤さくら/村岡成陽/黒柳真咲/國分由香/高原珠美
      /小塚京子/平井基一
Design Staff/山口沙絵/大橋京悟
Web制作/GPS Co.,Ltd./Media Pro

 

 

 


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