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病院を知ろう

<特別な病院>として
これからの日本の医療を創り出していく。

 

 

名古屋医療センター



診療だけでもない、臨床研究だけでもない。
名古屋医療センターだからできることがある。

main

独立行政法人 国立病院機構名古屋医療センターは、国立病院時代から受け継ぐ政策医療(※)を担うと同時に、地域の医療ニーズに応え、高度急性期病院として機能している。
さらに平成25年、新しい医薬品・医療機器の創出をめざす<臨床研究中核病院整備事業の対象機関>に選定された。
政策医療・地域医療・臨床研究というさまざまな機能を併せ持つ同院が担う、特別な使命を追った。

※政策医療とは、国民の健康を守るため、国が担うべき医療であると厚生労働省が定めているもので、がん、循環器病、精神疾患など、19の医療分野がある。
国立高度専門医療研究センターと国立病院機構は、それら政策医療の担い手と位置づけられている。

 

 

 

 

 

血液難病・エイズの治療・研究拠点。
そして臨床研究中核病院として。

  名古屋市の中心、緑豊かな旧名古屋城郭内の官庁街に位置する、独立行政法人 国立病院機構(以下、NHO)名古屋医療センター。明治11年に陸軍の病院として開院し、戦後は国立名古屋病院となり、平成16年に独立行政法人に移行した。国立病院の歴史を持つ同院は、いくつかの特別な役割を担っている。
6025 まず一つは、国立病院時代から受け継ぐ政策医療と臨床研究の役割である。古くから血液疾患分野の研究に力を注いできた同院は、血液・造血器疾患において高度医療専門施設(準ナショナルセンター)の指定を受けており、なかでも全国の小児血液がんの臨床研究拠点として機能している。また、血液難病に対する豊富な実績をベースに、90年代に大きな社会問題として浮上したエイズ治療にもいち早く着手。平成9年には、エイズ治療東海ブロック(愛知・岐阜・三重・静岡県)拠点病院の指定を受け、エイズの治療と臨床研究においても東海地区ではなくてはならない施設に成長してきた。
  こうした長年の臨床研究をバックボーンとして、同院は平成25年、大きな飛躍を遂げた。それが、厚生労働省から日本発の新しい医薬品・医療機器などの開発をめざす<臨床研究中核病院>に選定されたことである。同院は全国に約5万床を抱える国内最大の病院グループ・NHOのネットワーク機能と、小児血液がんの臨床研究拠点として構築した高度なデータセンター機能を駆使して臨床研究を行い、エビデンス(※)の創出をめざしている。目標は、日本発の新しい医薬品・医療機器の開発である(詳しくはコラム参照)。

※ エビデンスとは、ある疾患に対する治療法が、実際に効果のあることを示す科学的根拠や臨床的な裏づけのこと

 

 

地域医療を支える高度急性期病院として。

Plus顔写真 臨床研究を推し進める一方で、同院には地域医療を支える高度急性期病院という、もう一つの役割がある。「政策医療の提供を第一に掲げてきた国立病院から独立行政法人に転換し、地域医療への貢献を以前にも増して重視しています」と語るのは、同院の院長、直江知樹である。
 地域重視の姿勢を端的に示しているのが、高度急性期医療の追求である。同院では各診療科にその分野のトップレベルの専門医を擁し、多様な医療領域において豊富な実績を蓄積。なかでもがん疾患においては、<地域がん診療連携拠点病院>に指定されており、地域のがん診療をリードする存在である。平成25年5月には、外来化学療法室を拡張し、治療体制をさらに充実。手術による外科療法、放射線治療、抗がん剤による化学療法の3つを組み合わせて、複数の専門医による集学的な治療を提供するとともに、緩和ケ40116アにも力を注いでいる。
 また、地域の命の砦として、救急医療にも懸命に取り組んでいる。救命救急センターでは、二次から三次までの広範な救急患者を24時間365日受け入れ、日々フル稼働している。年間の救急患者受け入れ人数は1万6863人、そのうち心肺停止患者搬送数は334人(平成23年実績)を数える。

 

 

地域医療や社会が抱える問題に対峙する。

2953 名古屋市中心部にある同院の救急現場には、現代社会特有の問題を抱えた患者が数多く搬送される。「特に最近は、危険ドラッグの乱用や自殺未遂などの救急搬送が増えています。それ以外でも、何らかの精神疾患を背景に抱えた救急患者さんが多いですね」と直江院長は話す。精神疾患の場合、身体的な診療と精神医学的な診療を同時進行で行わなくてはならない。その点、同院は、急性期病院としては県内でも数少ない精神科病床を持っており、精神科医が速やかにアプローチできる利点がある。精神科医とその他の専門医が連携することで、精神疾患の救急患者に最適な医療を提供している。
 また、同院が守備範囲とする地域には、名古屋市でも高齢化が急速に進んでいる西区、北区が含まれている。高齢患者の多くは複数の疾患を抱えるとともに、疾患が慢性化しやすい。従来の臓器別専門医療だけでは対応できず、全人的な医療機能が必要となる。そのため同院では、平成22年、総合内科を開設した。総合内科は診療対象とする病気・臓器・領域を限定せず内科全般に対応し、必要に応じて臓器別専門医に繫ぐ役割を担う。また、専門分化した医療を統合、チーム医療を推進し、全人的な医療を提供していく体制づくりに力を注いでいる。
 薬物乱用や自殺未遂患者、精神疾患患者の増加、そして高齢患者の急増。同院のある名古屋2897市都心は、ある意味で時代を反映した社会問題が凝縮された地域といえるだろう。「ここは時代を先取りした地域といいますか、当院で起きていることはいずれ名古屋全体、あるいは郊外の都市でも起きる可能性があると思います。そうした現代社会の抱える問題をテーマに臨床研究を行い、そこから生まれた医療を社会に還元していくことも私たちが取り組むべき重要な課題だと考えています」と直江院長は語る。

 

 

診療・臨床研究・教育を3本柱に、
新しい医療を創出し、患者に届けていきたい。

 血液難病やエイズの治療・研究を推進する拠点であり、臨床研究中核病院であり、地域医療に貢献する高度急性期病院でもある。さまざまな<顔>を持つ同院が、今後、めざしていく方向性はどこにあるのだろうか。
 「やはり当院は、臨床研究機能を備えていることが最大の特色ですし、その強みを活かしていきたい」というのが、直江院長の考えである。その一例として、直江院長は、HIVの薬剤研究を挙げる。「たとえば今、当院では感染症科と臨床研究センターが協力し、HIVの薬物療法で問題になっている薬剤耐性HIVの研究を全国医療機関の中心となって進めています。このほか、血液内科、呼吸器内科の領域でも、積極的に臨床研究に取り組んでいますし、整形外科でも多くの治験を実施しています。ただ、そうした臨床研究が全診療科で行われているかというと、そうではなく、これからの課題ですね」。
6056 しかし、同院が臨床研究中核病院に指定されてから、明らかに各診療科の医師たちのリサーチマインド(研究心)は高まってきたという。「リサーチマインドという視点から見れば、診療の現場には、臨床研究のテーマがいっぱいあります。たとえば、最近こんな患者さんが多いのはどうしてだろう、とか。患者さんがこの薬の方が良い、というのはどうしてだろう、とか。そういうことを検証し、臨床研究に取り組もうということになれば、当院の臨床研究センターがしっかり支援できます。そのように<診療>と<臨床研究>が車の両輪のようになって動き始めていますし、そこから新しい医療の創造に繋がっていくと感じています」と直江院長は語る。
 その体制づくりに必要なのは、リサーチマインドを持つ若い医師を育てていくことだ。「当40162院の若い医師には、臨床研究の喜びや楽しさを知り、リサーチマインドを養ってほしいと考えています。そのため、診療の知識や技術を学ぶだけでなく、日々の診療のなかから課題を見つけて研究し、論文を書いて発表するところまで学んでもらっています」と直江院長は言う。
 診療と臨床研究と教育。それらを三位一体で取り組み、高度に融合させることで、同院はこれからの新しい医療を創造し、その成果を患者に還元していこうとしている。

 

 


 

column

コラム

●臨床研究中核病院は、日本の成長戦略である<先端医療の振興と産業化>を踏まえ、厚生労働省が整備を進めているもの。国際標準の臨床研究の中心的役割を担う病院を全国から選び、日本発の革新的な医薬品・医療機器の開発をめざしている。名古屋医療センターは、平成25年臨床研究中核病院整備事業の対象に選定され、5年間で臨床研究の中核機能を自立して果たせる病院をめざすことになった。

●臨床研究中核病院事業は主に、大学病院やナショナルセンター(国立高度専門医療研究センター)を対象としたものであり、名古屋医療センターは異例の抜擢ともいえる。同院の強みの一つは、全国143の病院からなるNHOの強力な臨床力を備えていることだ。NHOのネットワークを活用することによって、メーカーや大学から受け取った多様な基礎研究成果をもとに、臨床研究や治験を行い、新しい医薬品・医療機器をいち早く患者に届けること、治療最適化のためのエビデンスを創出することをめざしている。

 

backstage

バックステージ

●国立病院および療養所が、独立行政法人 国立病院機構へ移行したのは、平成16年4月1日である。その目的の一つは、国立病院を国の直接運営から外し、組織の経営効率化によって国が交付する運営費をできる限り少なくすることにある。その狙い通り、国立病院機構は経営改革を推し進め、国立病院時代の赤字体質から脱却し、現在、国立病院機構の運営は税財源ではなく、診療報酬によって支えられている。

●しかし当然ながら、独立行政法人 国立病院機構は民間病院ではない。その運営は厚生労働省が担い、病院の収益は財務省が管理している。すなわち、病院の戦略に応じて自由に収益を投入することは許されていない。今後、名古屋医療センターをはじめとした国立病院機構の病院改革をさらに進めるには、現在、各病院に与えられている裁量権にもう少し弾力性を持たせることが重要なのではないだろうか。

 


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