6,343 views

アーカイブTOPタイトル17三浦氏プロフィール

前号のLINKEDでは、超高齢社会にあって、限られた医療資源で国民にとって安心できる生活を守っていくために、地域の医療提供体制が大きく再編されつつある動きを探った。
具体的には、病院には「病気を治す機能(以下、治す機能)」と「生活を支える機能(以下、支える機能)」があり、病院によって比重は異なるが、この二つの機能が繋がることで、地域完結型の医療を作る方向に動き出しているということである。そうした医療の体制づくりと並行して、全国各地では今、「地域包括ケアシステム」実現への取り組みが進行している。
そして、システムの要となる在宅医療の充実をめざし、「在宅医療連携拠点推進事業」という新しい挑戦も始まっている。
今回は、地域包括ケアシステムと地域医療にスポットを当て、現状と課題をレポートしたい。ナビゲーター役は、愛知県の在宅医療連携拠点推進事業の事務局として、事業の進捗管理を担う国立長寿医療研究センター・在宅連携医療部の三浦久幸部長である。

 

ナンバー1知っていますか?
超高齢社会の仕組みづくりで
遅れている東海地域。

三浦氏その1今後、急増する高齢者を、支えていく仕組みとして、国は、「地域包括ケアシステム」づくりを進めています。これはどんなシステムかというと、一人の人がある町に暮らしていると想像してみてください。この人が歳を取り、病気になり、やがて身体が衰え動けなくなり、病院に通うことも難しくなる。そしていつか、自宅で在宅医療を受けながら最期を迎えることになる。こうした老いていく過程を、ずっとその町で送っていくには、核家族化、高齢者世帯、住民の孤立化が進む今日の社会では、地域自体の仕組みを作り変えなくてはなりません。具体的にいえば、「医療・介護・予防・生活支援・住まい」の5つの支えです。これを一体にした仕組みを作り、サービスとして提供するというのが、地域包括ケアシステムの考え方です。言い換えると、それぞれの町が「地域力」をつけることですね。
今までこの5つは、縦割りで別々に成長してきました。しかし、地域包括ケアシステムを実現させるには、5つに横串を刺し、地域ごとにひとまとめにする必要があります。その観点からすると、愛知県はまだまだ、さまざまな行政政策と医療、介護、福祉が別々に動いていて、本来、一体となるべき医療職と介護職の間にも、隔たりがあるような印象を受けます。それは三重県、岐阜県も同じような状況だと感じています。

その1イラスト

 

ナンバー2このまま高齢化が進むと
病気の人がどんどん増えて、
病院は追いつかなくなります。

三浦氏その2なぜ今、超高齢社会における地域の仕組みづくりが急がれているのか。その背景にある問題について、少し説明しておきます。
10年後、我が国は、4人に1人が75歳以上という社会になります。高齢者が増えれば当然、病気になる人も増える。しかし、従来の比ではない人数の高齢者が病院に押し寄せたら、病院はどうなるでしょう。対応しきれるでしょうか。だったら病院の数を増やせばよいという考え方もありますが、それは今日の累積赤字を抱える医療経済、低迷する社会保障問題、さらに、限りある医療従事者、そうした点から見ると選択肢としては考え難い話です。ではどうするのか。病院に押し寄せる人を減らし、且つ、入院期間を短くして速やかに退院してもらう。この二つしかなく、それは病院だけでは解決できない問題です。
もちろん、重症な人には入院治療が必要です。しかし、しっかりとした支えがあれば、医学的には生活圏での治療でよい病気、症状もあります。また、一定の治療が終了したら、在宅医療で療養ができるというケースもあります。
そうしたことを踏まえ、地域ごとに医療や介護、予防といったサービスが充実した社会環境が整えられたら、高齢者は安心して我が町に暮らし続けられます。それが地域包括ケアシステムづくりの必要性です。

その2イラスト

 

ナンバー3
病院に過度に頼らない
社会改新が始まっています。

三浦氏その3まず、病院に押し寄せる人を減らす観点から見ていきましょう。歳を取れば誰でも弱っていきます。その弱っていく状態を早めに見つけ、できるだけ病気にならないように予防する、弱った身体機能を介護で支援する、あるいは、病気が進まないように生活圏のなかで管理していく。つまりは、自宅で質の良い医療と介護を受けることができれば、病院に行く前の段階で止めることができる。しかしこれまで医療と介護は別々に成長してきました。急に一つになるのは難しい。従事する人の職種も違います。少しずつ連携は行われているのですが……。
その動きに何とか加速をつけようと始められたのが、「在宅医療連携拠点推進事業」です。具体的には、行政や医師会などが結節点となり、政策を担う人も含め、医療と介護と福祉に関わる多職種の人々が「顔が見える関係」となる機会を設け、どんな問題解決が必要か議論をする。そうしたことがスタートしています。
愛知県でいうと、12箇所(※)でこのモデル事業が展開されています。うまくいっているケースでは、例えば、診療所が在宅医療を担う上でネックとなる夜間・休日の往診を、病院の支える機能がサポートしているところもあります。いずれにしても、地域それぞれに応じた形で、医療、介護、福祉の連携を進めている先進的な事例が、ぼつぼつと生まれてきている状況です。

※愛知県 在宅医療連携拠点推進事業
実施地域
大府市、一宮市、名古屋市南区医師会、名古屋市昭和区医師会、尾北医師会、瀬戸旭医師会、津島市、名古屋市東区医師会、安城市、豊川市、豊明市、岡崎市

その3イラスト

 

ナンバー4在宅医療を支えるには、
病院の「治す機能」の
サポートがもっと必要です。

三浦氏その4自宅で質の良い医療と介護を受けることができる。すなわち、地域力があれば、病院での治療が終わり、後は自宅で療養するケースにも、一般的な範囲なら対応できます。しかし、それだけでは解決しないことがあります。がん末期や神経難病、認知症など、濃厚な医学管理と専門的なケアが継続的に必要な高齢者。そうした人たちも、これからは増えるということです。もちろん病院でしっかりとした治療を受けますが、どこかの段階で在宅に戻らなければならない。また、早く戻りたいという方も増えています。こうした高齢者を支えるには、高度で専門的な医療リソースが必要なのです。
高度で専門的な医療リソース。現在それは病院の「治す機能」に集約されています。それをいかに地域に結びつけるか。方法はいくつかあります。まず、病院は、患者を生活に戻すという観点からの治療を、今より以上に実践していただく。それを前提に、例えば、緩和ケアを専門とする病院の医師が、診療所の医師に痛みのコントロール法を説明する。床ずれ予防や人工肛門などの専門知識を持った病院の看護師が、訪問看護師にアドバイスする……。実際にそうしたことを行う病院が増えてきました。それをこれからはもっと増やしていただきたい。地域ごとの実情に即して、みんなが当事者意識を持ち、超高齢社会の地域力を高めることが重要だと考えます。

その4イラスト

 


 

LINKED16号への、「過度の単純化」という識者の声。

 今回のテーマに入る前に、一つお断りさせていただきたい点がある。今日の医療の体制を示すとき、前のLINKED16号では、「治す病院」と「支える病院」という二軸に分けて語った。それに対して、「二分化は過度の単純化であり、読者に誤解を与える」という識者の声をいただいた。
 それをLINKEDなりに冷静に考えてみると、すべての病院には、治す機能と支える機能が、比重の違いこそあれ存在している。治す機能でいえば、全診療領域の治す機能を有する病院もあれば、特定領域の治す機能に強い病院もある。また、支える機能でも、退院支援や往診、訪問看護、緩和ケア病棟の設置、外来での治療機能の強化など、さまざまである。あくまでも、病院によって力点を置くところが異なっているということだ。
 ただ、二次医療圏という広域で考えたとき、治す機能も支える機能も、必要とされる量は自ずと決まってくる。それを地域のなかで最適化しようという動きが、地域完結型医療という形で行われているということである。
 この状況を読者により解りやすく伝えるという意味で、治す病院・支える病院と単純化したが、そうではなく、「治す機能」「支える機能」と表した方が実情に近い。読者に誤解をお与えした点には、ここでお詫びし訂正をしたい。

病院の変化とともに、
私たち生活者も意識を変える必要性。

 今回のテーマである、地域包括ケアシステムと地域医療。三浦部長は、超高齢社会にあって、病院での入院治療を必要としない病気、あるいは、病院を退院後の療養は、地域力を高め、生活の場で質の良い医療や介護を提供し支えていく。ただ、がん末期や神経難病、認知症など、濃厚な医学管理や専門的なケアが継続的に必要なときは、病院の治す機能に集約された医療リソースが必要であり、それをいかに地域に結びつけるかが課題であると語った。
 私たちの知っている病院は、患者を迎え入れ、施設のなかで治療をしてくれるところである。だが、それだけではなく、これからの病院は在宅医療、介護の担い手を支えるという形で、機能の一部を能動的に地域に提供していく。つまり、出ていく医療・地域の安全・安心を補完する病院医療が、さらに期待されているのである。
 そうした病院、地域医療のあり方をみたとき、私たち生活者も意識を改めることが必要になるのではないだろうか。それは、「必要な人が、必要な医療を、適切な場所で受ける」という心構え。もちろん、医療を受けることを我慢することではなく、限定されることでもない。限りある医療資源を、生活者も病院と一緒になって大切に、有効に活かすこと。結果、病院の治す機能、支える機能は高度化、充実し、私たちに活かされることに繋がるとLINKEDは考える。





【クローズアップ】愛知県の在宅医療連携拠点推進事業

三浦先生 我が国において、団塊の世代が75歳以上(後期高齢者)となる2025年。医療、介護、福祉サービスなどへの需要の高まりに、社会保障財政が支えられるかという問題が生じている。高齢者増加数の6割は大都市圏であり、愛知県は全国5番目の位置にある。
 これまで愛知県は、大災害や社会的危機に遭遇した経験が少ないことから、2025年問題への対策も遅れていた。だが、国の政策や諸情報を受け、主体的対策の必要性を認識。愛知県の地域特性や限界点、課題や伸び代を図るために、愛知県 在宅医療連携拠点推進事業が、任意の手挙げ方式にて始動された。
 事業の面展開に向け、まずは拠点となる専属職員の配置と詳細なタスク、進捗管理、事業体の指定から始まった。地域の中核は自治体(7箇所)と医師会事業体(5箇所)の2種類となり、「地域包括ケアシステム」「在宅医療・介護連携」への理解から着手。全国規模のモデル事業に比べ、確かに緩やかな進捗であった。
 事業が進むに従い、医療機関との連携、複数地域間の調整、面展開などの難しさ、また、チーム医療での専門性の追求、課題抽出など、全国展開と同じ課題が見え始めた。と同時に、県からの明確な方向性の提示、政策展開により、啓発は着実に進められているという愛知県の特性も見えてきた。そして、現場の専門職や住民の危機意識を促すことで、多くの人を振り向かせることが可能という実証と、12拠点の継続的な学びと持続力も、全国とは異なった実証を得るに至っている。
 「地域密着」が叫ばれる今日、県が一体となり、初めの一歩と後押しと手を引くことが、愛知県の伸び代を可視化させ、2025年問題への対応の重要性と可能性を見つける。地域が、自分たちのできること、問題を見つけるとともに、自ら歩み始める教育、促し、きっかけ作りを行うことで、着実に地域は変わりつつある。地域の主体性が地域を変え、未来を変える可能性を秘めていることが、愛知県 在宅医療連携拠点推進事業の最大の結果であるといえる。
 なお、平成27年度からこの拠点機能は、介護保険の地域支援事業で行われる「在宅医療・介護連携支援センター(仮称)」等に移行予定となっている。

                    国立行政法人国立長寿医療研究センター
                          在宅連携医療部 三浦久幸



 

病院からのメッセージ

病院の現実を見据えた地域医療の枠組みを。

加藤先生 今日の医療政策は、大きな流れが急性期病床を減らす方向にあります。私個人は、単純な病床削減には反対で高齢者人口に応じた病床は必要と考えています。また、地域包括ケアシステムの鍵を握るとされている200床以下の地域の病院ですが、救急対応機能の維持に、大変な苦労を強いられているのが現実です。そのため、リソースや体力のある大規模急性期病院が、地域医療の問題に対応しなければいけないと考えています。高度急性期病院は自らの使命を考え、病床機能に応じた役割分担として地域医療を支える施設として、訪問看護ステーション、診療所、そして二次病院との連携が不可欠です。

すべての連携のコアステーションづくりをめざす。

冨田先生 医療、介護、福祉などが連結した仕組みづくりを見つめ、岐阜県病院協会では平成27年度に、地域連携に関する分科会を設けていく予定です。それは病院が持っている知識やノウハウを、いかに地域全体に広げるかといった観点からの取り組みであり、めざすのは、病院が地域での情報のハブ機能を果たすことで、その場を最大限に活かし、患者さんや生活者の医療、介護に関わる流れを円滑に繋ぐことにあります。現実的には、まずはそこからのスタート。よりレベルの高い、密度の高い地域サービス展開を見つめて進んでいけたらと考えています。




 

HEYE

名大副総長 松尾清一/
従来の幸せの価値観に囚われていませんか?

元厚生労働副大臣 大塚耕平/
One for all-All for one

EEYE

生活の場でも医療を受けられる社会へと転換。
次なる課題は医療職の育成か。

 


SPECIAL THANKS(編集協力)

「PROJECT LINKED」は、本活動にご協力をいただいている下記の医療機関とともに、運営しています。
(※医療機関名はあいうえお順です)

愛知医科大学病院
愛知県がんセンター 中央病院
足助病院
渥美病院
安城更生病院
伊勢赤十字病院
稲沢厚生病院
稲沢市民病院
鵜飼リハビリテーション病院
大垣市民病院
岡崎市民病院
尾張温泉かにえ病院
海南病院
春日井市民病院
刈谷豊田総合病院
小林記念病院
岐阜県総合医療センター

岐阜県立多治見病院
岐阜市民病院
江南厚生病院
公立陶生病院
公立西知多総合病院
市立伊勢総合病院
総合犬山中央病院
総合大雄会病院
総合病院中津川市民病院
大同病院
知多厚生病院
中京病院
津島市民病院
東海記念病院
常滑市民病院
豊川市民病院
トヨタ記念病院

豊田厚生病院
豊橋市民病院
名古屋医療センター
名古屋掖済会病院
名古屋市立大学病院
名古屋大学医学部附属病院
名古屋第二赤十字病院
成田記念病院
西尾市民病院
はちや整形外科病院
半田市立半田病院
藤田保健衛生大学病院
増子記念病院
松阪市民病院
松波総合病院
みよし市民病院
八千代病院

 

※読者の皆さまへ
<LINKED>は生活者と医療を繋ぐ情報紙。生活者と医療機関の新しい関係づくりへの貢献をめざし、中日新聞広告局広告開発部とPROJECT LINKED事務局・HIP(医療機関の広報企画専門会社)の共同編集にてお届けします。

企編集協力 独立行政法人国立長寿医療研究センター 在宅連携医療部

企画制作 中日新聞広告局

編集 PROJECT LINKED事務局/有限会社エイチ・アイ・ピー

Senior Advisor/馬場武彦 
Editor in Chief/黒江 仁
Associate Editor/中島 英
Art Director/伊藤 孝
Planning Director/吉見昌之
Copywriter/森平洋子
Photographer/越野龍彦/加藤弘一/ランドスケープ/空有限会社
Illustrator/にしわきコージ
Editorial Staff/伊藤研悠/村岡成陽/吉村尚展/佐藤さくら/黒柳真咲/國分由香
      /小塚京子/平井基一/安藤直紀 
Design Staff/山口沙絵/大橋京悟
Web制作/GPS co.,ltd./Media Pro

 

 

 


6,343 views