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病院を知ろう

地域の公的病院として、
10年、20年後の地域医療をしっかり、見据える。

豊田厚生病院


病院メイン_07豊田厚生

新しい病院機能のすべてを活かし、地域住民の医療と健康生活を支えていく。

長く親しまれていた「加茂病院」から名称変更し、 2008年1月1日、豊田市浄水町に移転した、豊田厚生病院。地上5階、地下1階の施設に高度専門医療機能を集積。移転と同時に救命救急センターと地域中核災害医療センターの指定を受け、西三河北部の拠点病院としてさらに大きな役割を担う存在として地域医療に邁進している。

患者のアメニティを最優先して建てられた気持ちいい空間。

183024 ゆるやかなカーブを描く1階外観のフォルム、吹き抜けから自然光が注ぐ明るいエントランスホール、緑豊かな周囲の遊歩道や屋上庭園、ターミナルのような広い駐車場。その上、最寄り駅から地下道で結ばれ、雨に濡れずにアプローチできる利便性。「まるで高級シティホテルのよう…」。初めて豊田厚生病院を訪れた人の多くが感嘆の声をあげるほど、心地いい環境が整っている。
 豊田厚生病院がこの地に移転したのは、今から4年前。設計にあたっては、何よりもアメニティを重視し、動線計画からすべてを見直したという。たとえば、入院患者がベッドのまま移動できるよう、ベッド2台がすれ違うことを想定した広い通路幅を確保。病棟の4人部屋も、個室のようなイメージで広々と作られている。「当院の理念でも謳っていますが、“患者さまへの優しさと温かさ”を最優先して設計しました」と語るのは、片田直幸院長である。
  同院の医療圏は豊田市とみよし市で、人口は合わせて約48万人。名古屋中心街へ結ぶ名鉄豊田線(地下鉄鶴舞線)のアクセスの良さもあり、人口は増加傾向にある。移転当初、病院の周辺は空き地が目立っていたというが、やがて住宅が立ち並び、賑わいを増してきた。まさに病院が町づくりの牽引役も担ってきたと言えるだろう。

 

地域住民のニーズに応え、救急医療、がん医療、健診の3機能を重点整備。

IMG_31793F 新築移転に際してとくに重点的に整備されたのは、「救急医療」「がん医療」「健診」機能の3つである。地域住民が万一のときに頼れる救急医療、増え続けるがん疾患に対応するがん医療、そして地域の健康増進を目的とした健診。どれもみな、地域住民の要望に応え、老朽化した旧・加茂病院ではできなかった高度な医療・保健・福祉の提供を実現した。
  第一に力を注いだのは、救命救急センターの整備である。救急車4台を同時に受け入れ可能な外来のほか、ICU(集中治療室)6床・HCU(高度治療室)24床を確保。屋上にはヘリポートを備え、屋上から救命救急センターや手術室へエレベーターで直行できる設計だ。ヘリポートは重装備の防災ヘリも離着陸でき、災害時には地域中核災害医療センターの真価をいかんなく発揮できる。
 がん医療については、同院はすでに2007年、地域で中心になってがん治療を行なう「地域がん診療連携拠点病院」の指定を受けていた。その機能を強化するために、「外来化学療法科」を新設すると同時に、以前は各診療科で個別にやっていた緩和ケアを一元化。新たに「緩和ケア科」を開設し、豊田市で唯一の「緩和ケア病棟」を用意した。最上階の5階に設けた病棟は明るい陽光が入り、ゆったり穏やかな空気が流れる。医師、緩和ケア認定看護師、薬剤師、臨床心理士、管理栄養士という多職種からなる医療チームで、がん患者と家族のケアに全力を注いでいる。
 3つ目の健診機能については、新たに「健康管理センター」を開設。生活習慣病予防と疾病の早期発見を目的とした人間ドック、脳ドック、もの忘れドック、生活習慣病予防健診、豊田市住民健診など各種健診のほか、がんの早期発見に有効なPET検診も実施している。新築移転以来、受診者数は年々増加。地域住民の健康管理に大きく貢献している。

 

地域医療の発展のなかで、懸念される超高齢社会の兆し。

273018 豊田厚生病院に高度医療機能が揃ったことで、西三河北部医療圏の医療供給体制はかなり充実し、盤石な状態になったと思える。
 「確かに、現在の状況には対応できる医療機能を整えました。しかし、今後を考えると、充分とは言い切れません。とくに今心配しているのが、高齢者の増加なのです」と片田院長は語る。
 この地域にはもともと、基幹企業であるトヨタ自動車の社員や家族として移り住んできた人たちが多い。その人たちが次々と高齢期を迎え、高齢者数が年々増加。2025年に向けて、65歳以上が50%増、75歳以上が115%増と予測されている。若年層も増加傾向にあるが、それでも高齢化の波は忍び寄っているのだ。
 「今は落ち着いていますが、今後の対応策を誤ると、大変なことになると危惧しています」と、片田院長は険しい表情を見せる。2つの救命救急センターで支えてきた救急医療も、高齢者が劇的に増える10年後には支えきれなくなってしまうかもしれない。すでに患者の多い冬場は、ベッドが満床になり、救急患者の受け入れに苦慮することもあるという。「この地域は、入院機能を有する病院に加え、老人介護施設も非常に少ないんです。だから、当院で治療して症状が落ち着いても、最終的な落ち着き先が見つからないという問題があります」と片田院長は頭を悩ませる。

 

地域の医療連携を強め超高齢社会に備える。

181036 超高齢社会に備えるには、何が必要だろうか。「やはり地域の連携しかありません。幸い、この地域は人口が多い割に、医師会が1つしかないので連携が取りやすく、勉強会や交流会を通じて密に連携しています」と片田院長は語る。その医師会(豊田加茂医師会)、そして地域の診療所と協力し、患者に継続的な治療を提供するための「地域医療連携パス」の開発にも意欲的に取り組む。すでに5大がん(肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がん)をはじめ、各種疾患別の地域医療連携パスが運用され、継続ケアの成果を上げている。さらに同院では訪問看護や介護事業にも取り組み、在宅医療支援にも力を注いでいる。
 また、常に満床に近い状況を打開するために、周辺病院との協力も模索中だ。「たとえば、特別養護老人ホームなどに入居されている方の急変時対応を、まずは周辺の二次救急病院さんにお願いできないかと相談しています。そこから、重篤な患者さんを当院へ振り分けていただくような形をとることで、当院の救急機能はかなり助かります」(片田院長)。
 こうした院外での動きに加え、院内では高度専門医療機能をいっそう強化していく方針だ。「移転してから、医師も看護師も順調に増えてきましたが、まだまだ不足しています。人材の拡充と育成に力を注ぎ、当院のすべてを活かして、この地域医療を守っていきたい」と片田院長は力強くしめくくった。


 

column

83R83898380●豊田厚生病院は、旧・加茂病院時代と合わせて60年以上の歴史を持つ、西三河北部医療圏における急性期病院である。この歴史のなかで常に地域住民の要望に応え、また地域の人々に支えられながら、豊田市の「市民病院的役割」を果たしてきた。

● 市民病院的役割とは、わかりやすく言うと、地域で必要な医療・保健・福祉サービスを安定して供給すること。たとえば、健康管理センターを開設し健診に力を 入れるのも、市民病院的役割の一つであり、同院の大きな特色となっている。「採算・不採算にかかわらず、地域で求められる医療・保健・福祉はすべて提供し ていきたい」という片田院長の言葉は、この地域で暮らし、この地域で老後を過ごそうと考える住民にとって非常に心強い。基本理念に明記されているように 「地域の人たちと共に歩む」病院をどこまでも志向している。

 

 

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●本文でも紹介したように、西三河北部地域では今後急速に高齢化が進むと予測されている。2035年には、なんと65歳以上の人口が70%増、75歳以上の人口が137%増にふくれ上がるという。この予測が現実になったとき、一体、地域医療はどうなるのだろうか。

● 豊田厚生病院ではその未来に備え、「地域連携」の強化に着手している。しかし、個々の病院ができることには限界がある。この地域の行政、病院、医師会が連 携し、在宅医療・介護に関わる診療所や事業所、福祉施設などが一つに集まって、超高齢社会の医療と福祉をプランニングしなければならない時期を迎えている のではないか。検討を始めるのに早過ぎることはない。今は平穏に見えるこの地域も、高齢化対策は待ったなしで必要なのである。

 


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