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病院を知ろう

「人」を得た。
私たちは開花期に向かう。

 

 

小林記念病院


新しい院長を中心に、
 「医療・介護・福祉のユートピア」を築くという夢を実現していく。

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愛知県碧南市で、昭和20年の開設以来、70年の歴史を重ねてきた医療法人 愛生館 小林記念病院。
急性期、回復期、療養期の患者を広く受け入れる<ケアミックス型の病院>である。
地域包括ケアシステムのなかで果たすべき病院の役割を見据え、いち早く地域包括ケア病床も開設。
新しく院長として小田高司医師を迎え、医療を中心に、介護・福祉まで含めて、地域の人々の生活を支えていくために、大きな一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

他病院の要請を断り
小林記念病院の院長職を引き受けた。

 Plus顔写真平成25年10月、小林記念病院の新院長に小田高司医師が就任した。
 小田医師とはどんな人物か。まずはそこから、今回の物語を紐解いていきたい。小田医師は名古屋大学医学部出身。名古屋大学医学部第一外科(現・第一外科ユニット)に入局し、日本外科学会専門医・指導医、日本乳癌学会乳腺専門医として、乳腺外科を専門に技術と知識を磨いてきた。前職は、がんセンター愛知病院乳腺科部長・副院長。そこで、がん患者の緩和ケア(がんの進行に伴う身体的・精神的・社会的な苦痛を和らげるための医療)に携わり、がん患者の在宅療養を見据えた患者のサポートに取り組んでいた。
 小田医師が愛生館コバヤシヘルスケアシステム(以下、愛生館※)の小林武彦理事長と出会ったのは、今から7〜8年前。地域医療の課題について意見交換するなど、親交を温めてきたという。その頃から小林理事長は、「超高齢化が加速するなかで、患者さんの生活を支える医療体制を築き、介護・福祉も含めた包括的なサービスを提供していきたい」という構想を持っていた。そして、そのためにはどうしても強い求心力を発揮するリーダーが必要だった。「愛生館の夢を実現するために、小田先生の力を貸してください」。小林理事長が意を決して、そう申し出たところ、小田医師の返答は、「ぜひお願いします」。まさに、相思相愛のヘッドハンティングが実現したのである。
 実はこのとき、小田医師の元には他の病院からのオファーもあったが、それを断って小林記念病院を選んだという。その理由について、小田医師はこう説明する。「腫瘍外科医として約30年やってきて、これからの医師人生を考えたとき、もう少し全人的な医療を、生活に密着したところでやっていきたいと思いました。それを実現するのに、地域・人々の生活に密着した小林記念病院はまさに格好のステージでした」。

※ 愛生館コバヤシヘルスケアシステムは、医療法人 愛生館と社会福祉法人 愛生館福祉会の事業を統括する総称。

 

 

病院と在宅を行き来しながら
快適に療養できる仕組みづくりを。

230020 小田院長が同院でめざしている医療は何か。それは、前職で知見を広げた<がんの緩和ケア>の延長線上にあるという。「たとえば、再発したがん患者さんの治療の経過を想定してみてください。症状のコントロールがつくと患者さんは自宅に戻ります。残念ながら、しばらくするとまた、具合が悪くなる。具合が悪くなると再度、入院治療する。そして、調子が良くなったらまた自宅に戻る。がん患者さんはこんな様に、病院と在宅の行き来を繰り返します。その過程で患者さんを支えていくノウハウが<がんの緩和ケア>の領域では確立されています。複数の病気を持つ高齢患者さんも、がん患者さん同様に多くの苦痛を持ち、病院と在宅を行き来しますから、高齢な患者さんのケアでは、がんの緩和ケアでの経験、ノウハウが大いに役立てられると考えています」。
230035 そもそも、緩和ケアは本邦ではがんに限定されるイメージが強いが、海外では<すべての病気を対象にする独立した医療>という概念が一般的になってきている。「たとえば英国では<緩和ケア医学>という独立した医療のカテゴリーが確立されていて、がんを含めた様々な病気を対象に、患者さんの<痛い・苦しい・辛い>などの心身の症状を和らげるアプローチがされています。私が学んできたがんに対する緩和ケアのノウハウを活用して、いろいろな苦痛を抱える患者さんを、病院から在宅へとソフトランディング(軟着陸)させるような仕組みを作っていきたいと考えています」と小田院長は語る。在宅を基本に据えて、症状をコントロールできないときだけ入院して調子を整え、再び在宅へ。まさに、国がめざす在宅医療中心の高齢者医療を具現化していこうというのが、小田院長の基本構想なのである。

 

 

地域完結型医療を
めざしてきた長い道のり。

230114 小林記念病院には患者の生活に密着した病院として長年歩んできた歴史がある。急性期、回復期、療養期の患者を広く受け入れる<ケアミックス型の病院>へとはっきり舵を切ったのは、平成6年。だが、その後の道のりは、決して順風満帆ではなかった。人材不足などから病院存続の危機を迎え、病院経営が大きく傾いた時期もあった。その時、小林理事長は一念発起して、有名な企業経営塾「盛和塾」で経営を学び、大胆な病院改革に着手。同時に、病院の進むべき方向性として、高度急性期医療の受け皿となる亜急性期医療や回復期リハビリテーション医療、そして地域の診療所では対応の難しい急性増悪した患者に対する地域をサポートする医療を強化していくことを決意した。これらは、地域において不足している医療の領域であり、超高齢社会で必要とされる領域だと判断したからである。
 そして今、こうした小林記念病院の病院運営方針に、ようやく時代が追いついてきたといえ230069るだろう。国は、団塊の世代が75歳以上になる2025年を目標に、地域包括ケアシステム(※)の実現をめざし、地域の医療機関が役割分担と連携をして、地域全体で患者を治し、支える地域完結型医療への転換を進めている。それはまさに、同院が追い求めてきた「地域に足りない医療を補填し、地域全体で住民の生活を支える」という考え方と合致するものといえるだろう。

※ 地域包括ケアシステムは、高齢者が住み慣れた地域で生活を継続できるように、住まい・医療・介護・予防・生活支援などのサービスを包括的に提供する仕組み。

 

 

対話と連携を大切に、
医療・介護サービスの最適化を進める。

230047 平成26年10月、小田院長のもとで同院は新たに新設された「地域包括ケア病床(※)」20床の届け出を完了。在宅療養中に急性増悪した患者を受け入れる救急対応機能の強化を図るなど、地域の生活を支える病院としての歩みを加速させている。
 2025年に向けて、小田院長はどんな課題に取り組んでいく方針か?「地域のニーズに合わせて、当院が提供できる<サービスの最適化>を図っていく必要があると考えています。たとえば、この地域で、地域包括ケア病床や介護施設がどれくらい整備されるのか。この地域に不足している医療や介護は何か? そうした地域の実情を把握し、必要な医療や介護サービスを充実させていきたい。そのためにも、地域の医療・介護に携わる方々としっかり対話し、連携していきたいですね」。
230157 小田院長が見据えるのは、小林記念病院を中核とする愛生館全体の事業展開である。愛生館では碧南市鷲塚地区に、老人保健施設、特別養護老人ホーム、小規模多機能ホームなどを集約した「ひまわり村」を展開している。訪問看護、通所リハビリテーションなど在宅支援機能の充実にも力を注いでいる。「地域包括ケアに必要な機能は、愛生館に一通り揃っています。それを活用し、さらに強化して、この地域に暮らす人たちが最期まで豊かな人生を過ごせるように、地区の医療施設、介護施設と連携して歩んで行きたい。新しいことにどんどんチャレンジしていきます」と、小田院長は意気込みを語る。愛生館が目標として掲げているのは、「医療・介護・福祉のユートピア」の実現。そして、その目標を達成するために、招聘した小田院長。同院は今、「人」を得て、大きな夢を咲かせる開花期に向かう。

※ 地域包括ケア病床は、平成26年新設された病床区分。急性期病床からの患者の受け入れ、在宅等にいる患者の緊急時の受け入れ、在宅への復帰支援、の3つの役割を担う。

 

 


 

column

コラム

●愛生館コバヤシヘルスケアシステムは「人々の人生をより豊かにします」という法人使命を持ち、「全従業員の物心両面の幸福を求めると同時に、質の高い医療と手厚い看護・介護を通じて人々の人生をより豊かにします」という法人理念を掲げている。そして、それを実践するための精神的な拠り所として確立されたのが、「愛生館フィロソフィ」。愛生館の考え方や哲学、従業員のあるべき姿を記したものである。

●愛生館ではこの「愛生館フィロソフィ」を一冊の本にまとめ、全従業員に配布。朝礼で従業員が朗読するなど、フィロソフィの定着化と浸透を図っている。また、理事長の日々の経営判断も「愛生館フィロソフィ」に基づいて行われる。理事長以下、全員が同じベクトルに向かって気持ちを一つにして進んでいくという組織づくり。これこそが、愛生館、そして小林記念病院の強さのヒミツである。

 

backstage

バックステージ

●今から10年ほど前に、深刻な経営危機に陥った小林記念病院。窮地を脱するために、小林理事長は力強いリーダーシップを発揮し、法人の使命と理念を見直し、「全従業員の物心両面の幸福」を掲げた組織改革を断行。全従業員が同じ哲学を共有する組織を作り上げた。その意思統一の早さ、スピード感あふれる改革は、民間病院ならではといえるだろう。

●そして今、同院は、持ち前の柔軟な発想と機動力を駆使して、かつてない超高齢社会に待ち受ける課題を一つひとつ解決していこうとしている。

●地域包括ケアシステムの実現の目標は、2025年。あと10年の間に、どこまで地域社会の準備を整えることができるか。民間病院の強みを活かし、フレキシブルかつ俊敏な取り組みを進める小林記念病院に、これからも注視していきたい。

 


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