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病院を知ろう

衆知を結集し、
西三河南部地域の
<2035年>問題に立ち向かう。

 

 

安城更生病院


20年後を見据え、安城更生病院が高度急性期病院として
果たしていくべき三つの役割とは。

main

安城更生病院がある西三河南部地域は、働き盛りの人々が比較的多く住むエリアである。
そのため、高齢化は全国的な速度より遅れている。今、我が国で問題とされる2025年問題は、この地域では2035年問題となる。その将来予測を直視し、さらなる進化をめざす安城更生病院。
創立80周年という節目の年に、浦田士郎院長に今後のビジョンを聞いた。

 

 

 

 

 

創立80周年。
100周年に向けて助走が始まった。

 Plus顔写真平成27年3月に、創立80周年を迎える安城更生病院。平成27年の年明けとともに、院内ではその記念式典などの準備が始まり、いつにも増して活気あふれる雰囲気が漂っている。80周年を前に、院長の浦田士郎はどんな思いを抱いているか。「一言で言えば、感謝の思いです。これまで支えてくださった地域の方々、先人の方々、そして、職員の皆さんのおかげで、ここまで歩んでこられたのだと感慨深く受け止めています」。浦田院長はそのように語った上で、「ただ、単純に80周年を喜んでばかりもいられません。今年は、100周年に向けての助走の年。<2035年問題>に向けて、職員が団結しなければならないと考えています」と話す。
 全国的に取り沙汰されているのは、2025年問題。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となるため、医療、介護、福祉サービスへの需要が高まり、社会保障財政のバランスが崩れることが懸念されている。その2025年の危機は、同院のある西三河南部地域では10年遅れでやってくると推計されている。すなわち、同院が創立100周年を迎える2035年、西三河南部地域における高齢者の医療・介護・福祉需要は頂点を迎えるのだ。
347_AnjoKosei80th_2015 2035年を見据え、同院はどんなビジョンを描いているのか。「第一に優先すべきは、この地域に地域完結型の医療体制を構築することだと考えています。地域の医療機関が協力し、高度急性期から在宅までの一貫した地域医療ネットワークを作り、高齢者を中心とした患者さんを地域の力で支えていかねばなりません。そして、そのなかで当院が果たすべき役割をしっかり再認識して、自らの機能強化に邁進していく。そのスタート地点に立つのが、80周年を迎える年だと考えています」と浦田院長は語る。

 

 

市民病院的役割と広域の中核病院という
二つの使命。

287_AnjoKosei80th_2015 地域医療ネットワークのなかで、同院が果たすべき使命として、浦田院長はまず、<人口約18万人の安城市における市民病院的な役割>を挙げる。同院はもともと「地域住民が自分たちの健康を守るために創設した」という歴史的経緯を持つ(詳しくはコラム参照)。「地域の人々の健康を守り抜く」という使命をこれからも貫き、地域の医療ニーズに的確に応えていく構えである。そのために、同院は地域の最前線で医療を支える診療所と連携し、地域全体で質を担保した継続的な医療を提供できるよう努めている。また、特に医療依存度の高いがん終末期や神経難病の退院患者については、退院後も同院の医師が訪問し、在宅療養を支えている。さらに同院は、急性期病院では珍しく、訪問看護ステーションを併設し、疾病を抱えながらでも安心して在宅で生活できるように支援している。こうした在宅医療は、高齢化に伴い、ますます需要の増加が予測される領域である。「診療所のサポート役として、地域で賄い切れない部分があれば、当院が持つ医療リソース(資源)を在宅へ送り出していきたい」と浦田院長は語る。
456_AnjoKosei80th_2015 同院の二つ目の使命は、<人口約110万人の西三河南部地域における中核病院>である。たとえば、24時間365日、重篤な患者を受け入れる救急医療体制、ハイリスク妊娠を24時間体制で受け入れ、小さく生まれた新生児に最先端の治療を提供する体制など、同院は西三河南部地域における中核病院として、いくつかの重要な役割を担う。「当院には、救命救急センター、総合周産期母子医療センター、地域中核災害拠点病院、地域がん診療連携拠点病院などの高度なセンター機能があります。地域の医療機関との連携を深めながら、高度急性期病院として機能を高めていく。そのなかでも、これらのセンター機能をさらに強化し、地域の命の砦としての使命を果たしていきたい」と浦田院長は話す。

 

 

医療も介護も供給体制が
厳しくなるという将来予測。

407_AnjoKosei80th_2015 西三河南部地域における高齢化の速度は、全国平均よりも10年遅い。それだけに余裕を持って準備できるようにも思えるが、浦田院長は大きな危機感を抱く。それは、この地域の医療・介護の供給体制が、全国的にも厳しい地域と見なされているからだ。
 現在でも、西三河南部地域は、地域の204_AnjoKosei80th_2015人々の健康を支える医療体制が不足している。そこで、それを補いつつ、医療・介護需要が頂点となる2035年までに、高齢化に対応できる医療・介護資源の拡充を進めなければならないのだ。
 医療・介護資源の不足の背景には、この地域がもともと病院や診療所の数、医師、看護師の数ともに少ないという事情がある。現在と未来とにおいて、種類の異なる需要の大きな伸びと、資源の圧倒的な不足。二つの板挟みのなかで「だからこそ地域の連携が何よりも大切」だと浦田院長は強調する。「地域の限りある医療資源を有効に活用するには、地域の医療機関同士が明確に役割分担し、互いに機能を補完し合いながら、協力して、地域の患者さんを支えていく。さらに行政機関や介護福祉機関とも連携を深め、衆知を結集して2035年問題に立ち向かうことが必要なのです」。

 

 

地域に必要な
教育センター的な役割を担う。

040_AnjoKosei_80th_2014 地域医療ネットワークを構築するために、同院ではかねてより、救急医療、周産期医療といった領域ごとに<連携ネットワーク協議会>などを組織し、<顔の見える関係>づくりに力を注いできた。その考えを一歩進めて、浦田院長は「人材教育や人材交流を通じて、さらに各医療機関との絆を深めていきたい」と構想する。これが、同院が果たそうとしている三つ目の使命、<教育病院>の役割である。
 「たとえば当院で学んだり、経験を積んだ医師がやがて独立して、地域の在宅医療に貢献するようになれば、素晴らしいですよね。当院を巣立った人が地域で活躍したり、反対に、他の医療機関で経験を積んだ人が当院で活躍したり…。そんな双方向の人の流れが生まれることで、地域内の情報共有も進み、医療連携はより強固なものになると思います」と、浦田院長は説明する。
114217 教育病院として、取り組んでいきたい人材教育プランは多岐にわたる。たとえば、医師の臨床研修において、地域の複数の病院が協力して指導するような機会を用意する。あるいは、医師教育を担う大学のサポートも得ながら、地域合同の研修医カンファレンスを行う。また、地域の医療従事者が共に学ぶ研修会や勉強会を企画していく。「これは私の夢でもありますが、大学や短大、専門学校とは別軸の、地域スケールでの卒後の臨床教育や、さらには臨床研究推進を前提とした教育研究センター的な機能を当院はめざしていきたいと思います」と浦田院長は意欲を燃やす。
 創立80周年を一つの通過点として、次の90周年、100周年に向かって、大きな夢を描く浦田院長。<安城市の市民病院的な役割><西三河南部地域の中核的な病院>、そして、<教育病院の役割>。この三つの使命を支える病院機能をそれぞれ高め、さらに高次元で融合させながら、同院は西三河南部地域の超高齢社会の未来を果敢に切り拓いていこうとしている。

 

 


 

column

コラム

●安城更生病院の創設は、昭和10年。当時、日本の農村地帯をめぐる状況は大変厳しかったが、安城市のある碧海地域は先進的な農業経営を実現し、わずかながら経済的な余力があった。その余力を活かし、地元の協同組合組織が何とか資金を捻出して、自分たちの健康を守るために創設されたのが、同院である。

●最新鋭・最先端の医療をめざすアカデミックな病院としてスタートした同院。創設当初から、大学病院にしかなかった医療機器を導入するなど、診療環境の整備を図りつつ、診療そのもので先進的な取り組みを続けている。地域住民が自らの手で医療資源の偏在を克服し、「自分たちで、近代的で質の高い医療を手に入れよう」と考えたのである。その強い意志は、同院の根底に流れる精神であり、「徹頭徹尾、地域とともに歩んでいく」という同院の使命へと繋がっている。

 

backstage

バックステージ

●日本の2025年問題が、西三河南部地域では2035年問題となるように、医療と介護の需要が最大となる時期や程度、医療・介護に使用できる資源については地域によって大きく異なる。そのため、医療・介護のあり方を地域ごとに考えていく<ご当地医療、ご当地介護>の必要性が指摘されている、と浦田院長は話す。

●その視点に立てば、医師をはじめとした医療従事者教育も地域ごとに考えていくべきではないだろうか。地域によって必要な医療従事者の数、専門分野は異なる。医師教育についても、地域のニーズに合わせて、地域で医師を育て、環流させることができれば、医師の適正配置に向けて大きく前進することができるのではないか。地域の医療機関が設立母体や自治体の違いを超えて歩み寄り、医療従事者教育においても連携できるような体制づくりに期待したい。

 


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