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病院を知ろう

先駆者が追い続ける、
心疾患の内科的治療の深化。

 

 

安城更生病院


高度な治療能力だけではなく、地域の医療機関とのネットワークをもとに、
心疾患の内科的治療の新たな地平を見つめる、
安城更生病院 循環器内科。

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安城更生病院の循環器内科では、近く大動脈弁狭窄症の新たな治療法<TAVI>を導入。
心疾患の内科的治療は、より高度な水準へ歩もうとしている。
しかし、同科の取り組みは、それだけに留まらない。
地域の診療所や病院との連携をもとに、さらなる挑戦へと視線は広がっている。

 

 

 

 

 

新たな治療法<TAVI>で
大動脈弁狭窄症の治療に光明。

408220 心臓にある弁の働きが損なわれ、機能障害を引き起こす病気、心臓弁膜症。動悸や息切れ、呼吸困難などの症状が現れるものの、じわじわと病気が進行することから自覚症状がない場合が多く、いきなり劇症化し、命の危険にさらされる患者が多い病気だ。この心臓弁膜症の一つが、「大動脈弁狭窄症」である。
 大動脈弁狭窄症は、左心室と大動脈の間にある弁が加齢で硬くなり、充分な血液が大動脈に流れなくなる病気だ。国内には50万人から100万人の潜在患者がいるとされ、高齢化の進展によりさらなる増加が見込まれている。
 この病気は、弁自体を治すしか根本的な治療がなく、それには開胸による外科的手術しかなかった。そのため、安城更生病院の循環器内科でも、東海地区屈指の手術数を誇る同院心臓血管外科との連携のもと、開胸手術で対応してきた。ただ、患者の身体への負担が大きいことから、高齢患者の中には、手術を断念せざるを得ないケースも少なからずあったという。
Plus顔写真1 ところが近年、この大動脈弁狭窄症に画期的な治療法が登場した。それは「経カテーテル大動脈弁留置術」、通称「TAVI(タビ)」。細いカテーテル(医療用の細い管)の先にバルーンをつけて心臓まで送り込み、狭窄する弁を広げるとともに、人工弁を留置するというもの。開胸し、一旦心臓を止め、人工弁を縫いつける外科的手術に比べ、半分程度の手術時間で終わり、患者への負担も小さい。安城更生病院では今、西三河地域で初となる<TAVI>の導入を進めている。
 同院の度会正人循環器センター長は、「大動脈弁狭窄症の患者さんは高齢者が多く、他の疾患を抱えるケースも多いことから、開胸手術を選択するのは、体力低下の面でも非常に大きなリスクを伴います。TAVIが導入されれば、開胸手術に踏み切れなかった患者さんにも治療の手立てが生まれることになります」と話す。その言葉どおり、二の足を踏むことが多かった開胸手術に代わる、新たな治療法・TAVI導入は、大動脈弁狭窄症を持つ患者への大きな福音となりそうだ。

 

 

血管から心臓全体へ。
先駆者としての道のり。

Plus顔写真2  安城更生病院・循環器内科は、従来から心疾患に関する先駆的な取り組みを続け、西三河地域において中心的な役割を担ってきた。
 竹本憲二循環器内科代表部長は言う。「現在ではさまざまな急性期病院で、循環器疾患に対するカテーテルによる検査・治療が行われていますが、当院ではすでに昭和50年代後半に、心筋梗塞症や狭心症にバルーンを用いる冠動脈形成術(PCI)を実施するなど、全国的に見てもかなり早い段階から、低侵襲治療に取り組んできた歴史があります」。以来、不整脈の原因となる異常な電気興奮の発生箇所を、カテーテルを使って焼き切る「アブレーション治療」を含めた低侵襲治療に力を入れてきた。
 そして、平成14年の新病院への移転を契機に、「従来の冠動脈疾患中心の医療から、心臓全体に対する医療へと方針転換しました」(度会センター長)。現在では、前述の狭心症、心筋梗塞、不整脈をはじめ、心不全、心臓弁膜症など、幅広い対応を実施している。
 こうした循環器内科の先進的な取り組みを支えるのが、いざというとき、高度な開胸手術が行える心臓血管外科との連携体制である。週に1度、両診療科の医師が集まる合同カンファレンスを実施し、互いの診断や治療に対して忌憚のない意見を交換。「常日頃から密に情報交換をしているため、開胸手術の方がいいと判断すれば、躊躇なく外科の先生へ手術をお願いできる。とても良い関係が築けていると感じています」(竹本代表部長)。

 

 

医学だけでは解決しない、
心疾患という病気の難しさ。

408313 心筋梗塞、狭心症、心臓弁膜症など、心疾患の多くは、再発のリスクを抱えている。なぜならば、発症の主な原因が動脈硬化症にあるからだ。動脈硬化により血管の壁が厚くなる、あるいは硬くなることで、血管や弁が本来の機能を果たさず、疾患の引き金となる。例えば、カテーテル治療によって心筋梗塞の治療を行ったとしても、疾患の原因となる動脈硬化が解消されたわけではない。すでに因子を持った状態であることから、いつ何時、再発してもおかしくない状態である。
408334 こう考えると、心疾患根治へのアプローチは、医学だけでは解決できない要素が大きい。となると、心疾患そのものへのリスク低減を、まず考える必要がある。例えば、動脈硬化症の主な原因は、高血圧、高脂血症、喫煙、肥満、糖尿病などである。そのいずれもが、普段からの食事や運動といった、生活習慣そのものに深い関わりを持っている。
 そのため、同院の循環器センターでは、高度な心疾患治療を行うことに併せ、治療後の患者の生活に目を向けた広範な活動に着手。心臓リハビリテーション(詳しくはコラム)への本格的な取り組みを始めた。すなわち、治療そのものの高度化を図る一方で、より患者に密着した医療提供への挑戦である。ただ、そこには、循環器センターだけで完結できない問題がある。

 

 

治療も教育も、
地域のネットワーク構築をもとに。

408503 安城更生病院の循環器内科の変遷を振り返ると、第一期は、PCIをはじめとするカテーテル検査・治療への早期挑戦。そして第二期は、病院の新設移転を契機とした、血管から心臓全体への対応拡大。その延長としてTAVI導入への決定がある。いずれもが循環器領域の先駆的な取り組みであり、愛知県のみならず、広く中部地区、いや、全国的に見ても有数の実績を積み上げてきた。
 その同科が、今、注力するのは、地域の医療機関とのネットワーク構築の強化だ。その理由は、心疾患の根治的アプローチで重要となる予防と、術後の患者の生活への目線。これを実現するには、地域の医療機関との協働関係が必要不可欠となるからだ。
 度会センター長は語る。「予防や再発防止のための日常的な管理は、地域の先生方がふさわしいと思います。患者さんにとって一番身近な存在ですからね。その上で、急性増悪化した場合は、PCIなどが行える二次医療機関に対応いただく。それでも手に負えない高い重症度の際は、当院が万全の態勢で患者さんを迎える。そして、当院での術後は、心臓リハビリテーションの道筋をつけ、日々の管理はまた診療所の先生にお任せする。こうした地域全体でのネットワークを構築することが、重要であると考えます」。
 同科ではすでに、診療所を対象とした合同の勉強会を定期的に行うほか、近隣にある基幹病院と年1~2回の合同カンファレンスも実施。同科が主導する形で、互いの情報交換を図る場を設けている。また、さらに、このネットワークを活用することで、若い医師が診療所や近隣病院での診療を学ぶ、すなわち、地域全体で、今後の循環器領域の医師教育を行うことも、視野に入れることができる。
 今後、高齢者の心疾患はますます増える。その対応に向けて、安城更生病院・循環器内科は、第三期となる新たな挑戦を通して、その真価を発揮しようとしている。

 

 


 

column

コラム

●安城更生病院の循環器内科が現在、注力する心臓リハビリテーション。同科では運動療法のみならず、食事療法も重要と考えている。

●運動領域においては、理学療法士による入院中のベッド上から始まり、運動負荷試験(運動能力測定)や血液検査を実施しつつ、歩行、自転車こぎなど、患者ごとの病状に合わせ、少しずつ運動量を上げていく。

●一方、食事療法は、心疾患の危険因子となる脂質異常、高血圧、肥満の改善を目的に、エネルギー・塩分・コレステロールに注意し、バランスの良い食生活への指導を行うものである。

●運動療法、食事療法などの生活習慣への介入は、短期間で終了するものではない。再発のリスクを抑えるための全身管理であり、長期に亘り、取り組んでこそ効果が期待できるものだ。

●同科では、今後さらに、患者に向けた啓発活動などに力を入れていく考えである。

 

backstage

バックステージ

●安城更生病院の循環器内科が取り組む、地域ネットワークの強化。それは換言すると、心疾患への地域力を高め、医療機関の協働により地域の医療の高度化を図るというものだ。

●そこにおいては、心臓リハビリテーションをも含めると、医師、看護師、リハビリテーションスタッフ、そして栄養士などの多職種による連携が不可欠となる。

●さらに、その連携のなかに<患者自身>も参加することが重要である。その理由は本文で述べてきたが、患者は、高度な治療を受けるだけではなく、自らが、自らの身体を守るという発想が不可欠な要素となる。

●通常、患者は、疾患について、治療法や治療計画について、医師からきちんと説明を受けるが、それを正しく理解、そして、納得したならば、医療者とともに病気と闘う。そうした患者を中心とした医療の輪の拡充が、心疾患治療の大きな鍵といえよう。

 


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