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病院を知ろう

すべてはがん患者のQOLのために。
先進的がん治療、
本格始動。

 

 

岡崎市民病院


がん患者のその後の人生を考え、
治療の低侵襲化を推し進め、
一人ひとりに最適な治療を提供していく。

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平成25年に、新しく西棟が完成、平成27年9月には救命救急センター棟が供用開始されるなど、施設の拡充が進む岡崎市民病院。
こうした患者受け入れ体制の整備とともに力を注ぐのが、医療機能の強化である。
とくに地域に増え続けるがん患者に対応するため、外科療法(手術)、放射線治療の分野では、先進的な治療体制を整備。
近年、めざましい進化を続ける化学療法と合わせ、患者のQOLを最優先に考えた、体に負担が少なく、治療効果に優れる最新のがん治療を展開している。

 

 

 

 

 

鏡視下手術を行う診療科が集結して、
体に負担の少ないがん手術を追求。

423103 がん治療でもっとも基本的なのは、「がんを切除して治す」外科療法(手術)である。切除範囲は、がんの進行度やがんの大きさ、部位などによって異なる。かつては、がんの根治(完全な治癒)を追求し、病巣の周辺部も含めた広範囲を切除する拡大手術が主流だったが、それでは患者の体への負担が大きい。そこで、近年は手術の低侵襲化が進められている。診断技術が向上し、がんの根治性を確保しつつ臓器の機能温存が図られるようになり、切除を必要最低限の範囲に留めた手術や、傷口の小さい鏡視下手術が行われている。
 岡崎市民病院では、こうした外科療法の進化に歩調を合わせ、低侵襲手術に力を注いできた。なかでも、日進月歩の鏡視下手術において技術の向上と治療機器の集約を図るために、平成25年、低侵襲治療センター(腹腔鏡手術センター部)を開設。鏡視下手術を行う外科・呼吸器外科・泌尿器科・産婦人科が集結し、それぞれの知識と技術を集積し、より高度で安全な鏡視下手術をめざしている。
Plus顔写真2 鏡視下手術は、体に数カ所、小さな穴をあけ、そこからお腹の中(腹腔)や胸の中(胸腔)にカメラ(内視鏡)と手術器具を入れ、行う手術だ。傷が小さいことから、術後の痛みが少なく、回復も早いなど、患者にとってメリットは大きい。しかし鏡視下手術は、モニター上で患者の体内を確認しながら㎜単位の指先の動きで治療を行うため、医師には熟練した技術と解剖学的な知識が必要である。同院の腹腔鏡手術センター部を統括する、内視鏡外科統括部長の石山聡治(日本内視鏡外科学会技術認定医)は、「このセンターができたことで、鏡視下手術に携わる診療科同士の解剖学的な知識をはじめとした情報が共有でき、より的確な治療戦略が立てられるようになりました。診療科間の距離が一気に縮まり、手術のクオリティを高める上で効果を上げています」と成果を語る。

 

 

待望の放射線治療が
昨年からスタート。

Plus顔写真1  治療の低侵襲化という観点からすれば、「切らずにがんを治療する」放射線治療(がん細胞に放射線を当てて、がんを縮小させる治療法)も非常に有効な治療法である。とくに昨今は、放射線治療装置の進歩などにより、病巣に放射線を集中させる「ピンポイント照射」が可能になり、治療効果が向上するとともに、病巣以外への照射が避けられるようになった。
 「特筆すべきは、がんの大きさや形状に合わせて放射線の照射量や強度を変えられるIMRT(強度変調放射線治療)という治療法の登場ですね」と語るのは、同院の放射線治療の立ち上げから携わってきた放射線科部長の大塚信哉(放射線治療専門医)である。IMRTは不必要な被曝による副作用を軽減し、がんを狙い撃ちにできる。たとえば、前立腺がんの治療を例にすると、一般の放射線治療では、がん病巣だけでなく、直腸や膀胱にも高い放射線量が照射されてしまうが、IMRTは、病巣だけに必要な放射線量を与えつつ、直腸や膀胱などへの不必要な照射を避けることができる。こうした技術革新により、放射線治療は「手術の前後に行う補助的な治療というだけでなく、根治的な治療法として選択されることが増えてきました。たとえば、前立腺がんや頭頸部のがん(顔面から頸部までにできるがん)など、さまざまながんに対し、放射線単独の根治治療を行うことができます」と大塚医師は説明する。
423411 同院では、このIMRTに対応した「高エネルギー放射線照射装置(トモセラピーHD、シナジー)」を導入し、「密封小線源治療装置(マルチソース)」を加えた3台による治療体制を確立。放射線治療に必要な人材を確保し、平成26年より本格的な放射線治療をスタートさせた。約1年余りの治療実績を振り返り、「まだ走り始めたばかりで、実績づくりはこれからですが、手術の前後の補助的治療、根治的治療の両面で着実に実績を積み重ねはじめています。前立腺がんなどに対するIMRTでは、近隣医療機関から患者さんを紹介していただくケースも増えています」と大塚医師は手応えを語る。

 

 

臓器の機能を温存し、
術後のQOLを維持するために。

 小さな傷口でがんを切除する鏡視下手術と、がん病巣を狙い打ちにする放射線治療。これらと並び、がん治療のもう一つの柱となる化学療法の分野においても、近年めざましい進歩が続いている。抗がん剤と副作用を抑えるための支持療法薬剤の増加、がん細胞の性質に反応して作用する分子標的薬の開発など、治療の効果を高めるだけでなく、患者の負担を減らすための研究がされている。こうした化学療法の進化により、患者には治療の選択肢が広がった。岡崎市民病院においても、進化を続ける化学療法をできるだけ早く患者に届けることをめざすとともに、平成25年10月には外来治療センター(病床数:25床)を開設。通院で化学療法を受けられる体制を整えている。
423311 同院が力を注ぐこれらのがん治療の根底を流れるのは、「患者さんのQOLを第一に考えたがん治療を展開したい」という強い思いに他ならない。QOL(クオリティ・オブ・ライフ)は「生活・生命・人生の質」と訳される言葉で、身体的・精神的な状態だけでなく、生活の活力や生きがい、満足度という意味がある。「がん患者さんがより良く生活できるように、ご本人やご家族の意向を充分にお聞きして、どの治療法が最適かを慎重に検討します。治療成績が同じなら、より体に負担の少ない手術、場合によっては放射線治療が第一選択になります。また、単独の治療ではなく、複数の治療を組み合わせた集学的な治療を行うことで、患者さんのQOLを向上できることもあります。そのため当院では、外科、放射線科、腫瘍内科など、複数の診療科が協力し、がん患者さんを支えています」(石山部長)。
423429 同院のがん治療では、手術の前に放射線や抗がん剤によってがんの広がりを小さくしてから切除するなど、さまざまな治療法において、患者の負担を減らすための集学的な連携を進めているという。「根治が望めない進行がんでも、がんの進行を抑え、できるだけ長い期間その人らしく生活できるような道を探ります。放射線治療は負担も少なく、さまざまなかたちで患者さんを支えています」と大塚医師は言う。

 

 

エキスパートを育て
最先端のがん治療を地域の患者に届けていく。

423424 最先端の手術、放射線治療体制を整備し、化学療法にも注力する岡崎市民病院。同院がその先にめざしているものは何だろうか。石山、大塚両医師が声を揃えるのは、「自らの研鑽も含め、人材育成を強化し、患者さんに最新、最適ながん診療を提供し続けていくこと」だ。
 鏡視下手術においては、手技のトレーニングと録画を振り返るカンファレンスにより、医師の習熟度を向上 (コラム参照)。さらに、手術室看護師、臨床工学士などが常に技術革新に対応した専門知識を学び、腕を磨いている。放射線治療においては、専門医を中心に、放射線治療専門技師、医学物理士、放射線治療品質管理士、がん放射線療法認定看護師などの専門家が集結。勉強会などを通じて切磋琢磨して知識・技術の向上に努め、チーム医療の高度化をめざしている。
423219 石山部長は言う。「私たちが大切にしているのは、この地域に住んでいるから最先端のがん治療が受けられない、ということがないようにしたい、という思いです。がん治療で名立たる病院と同じ最先端の治療を、ここ岡崎で安全・確実に提供していきたいですね。海外を含め最新の医療情報に常にアンテナを張り、スタンダードな治療法はもちろん、一歩先の治療法も積極的に導入していくつもりです」。石山部長は力強い口調で、そう締めくくった。

 

 


 

column

コラム

●岡崎市民病院の医局内には「内視鏡外科トレーニング室」が設けられている。ここでは、腹腔鏡や胸腔鏡の手技を練習できるトレーニングボックス(シミュレーター)が何台も並び、医師たちが自由に練習できるようになっている。この充実した教育環境の背景には、「がんの手術に<神の手>はいらない。誰もがハイレベルで均質な手術を再現できるようでなくてはならない」という石山部長の強い信念がある。同院では、ここで充分な手技を身につけた者だけが、実際の鏡視下手術に携わることができる。

●また、鏡視下手術は手術中、テレビモニターに映し出された映像の一部始終を録画できる。同院では鏡視下手術の録画映像を残し、外科・呼吸器外科・泌尿器科・婦人科の複数の医師たちで映像を見直し、意見交換するなど、常に技術の向上と安全性確保に努めている。

 

backstage

バックステージ

●開腹せずにがんを切除できる鏡視下手術。ひと昔前からすれば、それは夢のような技術の進歩だ。しかし、このような新しい技術を導入する際には、いかに患者の安全性を確保するか、が重要になる。今年に入り、大学病院における鏡視下手術後の痛ましい死亡事故のニュースが駆け巡ったことは、まだ記憶に新しい。

●医療は不確実なものであり、医療行為そのものが患者の体に負担を与えることも当然ある。だからこそ、患者に新しい医療技術を提供する際は、院内での二重、三重の安全対策が求められる。岡崎市民病院では「低侵襲治療センター」を設置し、複数の診療科による協力体制を整え、複数の医師やスタッフが多様な視点を持ち寄ることで、手術の安全性・確実性をめざしている。医療の安全を守るには、同院のような病院が一体となった複数の目・複数の仕組みによるチェックが必要不可欠ではないだろうか。

 


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