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シアワセをつなぐ仕事

看護師が架け橋となって、
地域医療の最適化を実現していく。

松本佳代(3C病棟課長)・伊藤由美子(4C病棟課長)/八千代病院


 

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地域に足りないもの、必要な医療を提供したい。
<地域医療の最適化>を基本方針に掲げ、スーパーケアミックス病院(※)として、急性期から在宅まで切れ目のない医療を提供する八千代病院。
平成26年11月、二つの新病棟がオープンし、地域包括ケアシステム実現を見据えた新たな看護の取り組みが始まっている。
※ 種類の異なる複数の病棟を持つ病院をケアミックス型病院という。
同院では、地域が求める医療、足りない医療を提供するという姿勢を表す意味で、「スーパーケアミックス」と呼んでいる。

 

 

 



地域に必要な医療・看護を。
地域包括ケア実現に向けた
八千代の看護スタイル。


 

 

 

地域包括ケア病棟に
求められる役割をしっかり果たす。

 Plus顔写真1 患者や家族から「この病棟に入院できてほっとしました」、という言葉をかけられる八千代病院の「地域包括ケア病棟(病床数:46床)」。この病棟は、ポストアキュート(急性期経過後に引き続き入院医療を要する状態)とサブアキュート(在宅や介護施設などで症状が急性増悪した状態)の患者を両方受け入れ、在宅復帰を支援する病棟だ。
 たとえば、急性期病院からの紹介患者の場合。早期退院を勧められ、とまどう患者や家族にとって、この病棟は、継続的な医療を受けながら、じっくり在宅復帰を準備できる場となる。一方、在宅療養中の患者と家族にとって、ここは急変時にいつでも入院できる、駆け込み寺のような存在。まさに地域住民待望の病棟なのである。
 ここでの看護のポイントは、「安全安心な在宅復帰支援です」と語るのは、地域包括ケア病棟・看護課長の松本佳代。自宅に戻った後、患者や家族が生活に困らないように、入院中に何をすべきか明確な目標を立てる。その上で、リハビリスタッフをはじめ、栄養士や薬剤師など多様な職種が一緒になって、互いに情報共有し、在宅復帰をめざしている。「とくにリハビリ専門職との連携はIMG_9372緊密で、職種の壁を感じないほど、常に一緒に取り組んでいます。そうやってみんなで力を合わせた結果、患者さんのADL(日常生活動作)が向上し、ご自宅にお帰りになるとき、一番のやりがいを感じますね」と松本課長は笑みをこぼす。リハビリスタッフをはじめとした多職種連携は院内に留まらない。必要に応じて訪問看護師を病院に招き、自宅での介護方法を指導するなど、<生活への目線>を大切に日々の看護に取り組んでいる。

 

 

救急・急性期医療対応病棟で
最新の消化器疾患治療を提供する。

Plus顔写真2 地域包括ケア病棟と同時期にオープンしたのが、「救急・急性期医療対応病棟(病床数:54床)」だ。現在は、54床のうち25床を消化器内科を主体とした急性期病床として稼働させている。消化器内科は同院の得意領域の一つで、以前から小腸内視鏡など特殊な検査・治療にも対応できる高度な医療体制を整えてきた。さらに平成26年、最新機器を取り揃えた内視鏡センターを新館に開設。それに歩調を合わせて、新館内に救急・急性期医療対応病棟を開設したのである。
 病棟の立ち上げから関わってきた同病棟・看護課長の伊藤由美子は、「現状では消化器内科に特化した病棟なので、若い看護師にとって専門的な知識・技術を集中して学び、看護実践できる醍醐味があります。この半年間で、患者さんの急変を見逃さない観察力や対応力など、病棟全体の看護力が向上しつつあると思います」と手応えを語る。
 また、現在は25床を先行してスタートさせているが、平成27年度中に救急・急性期医療対応病棟IMG_622954床をフル稼働させる計画で、病院全体の急性期を対象とする病棟は合計270床となる。「スタッフみんながフットワークを軽くして、急性期の患者さんを迅速に受け入れていきたいです。その一方で、患者さんの気持ちに寄り添うことも大切です。私たちにとっては日常でも、患者さんにとって<入院>は非日常的な体験。患者さんやご家族の不安・緊張感を丁寧に受け止め、安心な看護をめざしています」と伊藤課長は語る。

 

 

地域に足りない医療を
提供するための二つの新病棟。

IMG_9446 八千代病院はこれまで、<地域医療の最適化>を掲げ、急性期から在宅までの医療機能を網羅し、地域に必要な医療と看護を提供してきた。その病院が二つの新病棟を開設した狙いはどこにあるのか。「人口動態や限られた地域の医療資源から、地域に必要なものは何かと考えた結果です」と語るのは、副院長 兼 看護部長の永坂和子である。まず、人口動態の分析。同院のある安城市の人口はここ数年、増加基調にある。転勤で引っ越してくる若い世帯が多く、子どもや働き盛り世代の急な疾病に対応できる医療の充実が求められている。もう一つは、地域の医療資源。高度急性期病院は充実しているが、頻繁に発症する疾患に対応する急性期病床が、圧倒的に不足している。さらに、高度急性期治療を終えた患者の受け皿や、在宅医療を支援する病院も不足していた。これらのことを勘案した答えが、二つの新病棟なのである。
IMG_9419 「当院の特徴は、単なるケアミックスではなく、救急医療を根幹とする急性期医療を主体にしているところ。急性期病棟機能の充実により、これまで以上に急性期医療を必要とする地域の患者さんを積極的に受け入れ、高度な診断・治療機能を発揮していきます。その上で、どうしても対応できない重症・重篤な患者さんについては従来通り、近隣の高度急性期病院にお願いしますが、そこを退院した患者さんを地域包括ケア病棟で受け入れるとともに、在宅医療支援にも力を注いでいきます」と、永坂副院長。二つの新病棟がオープンしたことで、地域の医療機関や診療所からは「退院患者さんを安心してお願いできる」「困ったときに患者さんの入院をお願いできる」と、歓迎の声が届いている。また、院内においても、患者の症状に応じた医療をよりスムーズに提供できるようになったことは言うまでもない。

 

 

看護師がファシリテーションし、
地域医療の最適化を進めていく。

IMG_6275 急性期、地域包括ケア病棟のほか、回復期リハビリ病棟、療養病棟を備える八千代病院。同院では、入院患者が症状に適した病棟で治療を受け、在宅復帰をめざす道筋をファシリテーションする役割を看護師が担う。
 ファシリテーションとは、会議の場で参加者の認識を一致させ、相互理解による協働を促進させる意味を持つ。同院では、全病棟の看護課長やリハビリスタッフらが週1回集まり、<多職種コーディネート会議>を開催。入院患者一人ひとりの治療プロセスを基に、在宅復帰に向け、どの時点からどのような支援が必要かを検討する。この会議により病棟課長たちは、早期から患者への共通認識を醸成。患者が入院・転棟した際、切れ目のない看護を提供できるよう、病棟スタッフの意識統一を図る。また、それだけに留まらず、医師や多職種の意見を常に調整し、相互理解と協働による患者への最適な医療サービスの提供を図っている。
Plus顔写真3 なぜファシリテーションが必要なのか。永坂副院長は言う。「今、国は、医療費削減を目的に、効率的な医療提供を促進させています。医療機能も明確に分類され、どの領域も短い入院期間で、迅速な在宅復帰が求められてきました。そうしたなか、患者さんが必要な医療サービスをきちんと受け、不安なく在宅復帰をめざすには、調整機能が必要なのです」。
 ではなぜ、それを看護師が担うのか。「在宅復帰への道筋を立てるには、患者さんやご家族の気持ちが何より大切です。その上で、病状変化の予測や必要な介護などを見通し、周到に準備する。それができるのは24時間365日、患者さんとご家族のそばにいる看護師しかいません」。
 永坂副院長の言うファシリテーションは、院内だけではない。退院後は、訪問看護師(八千代訪問看護ステーション)が病棟看護師の情報を引き継ぎ、かかりつけ医をはじめとした在宅医療チームを円滑に協働させる役目を担う。「異なる場所にいる看護師が、それぞれの現場でファシリテーションを担うことで、地域の医療・介護資源の最適化が図れると思います。そして、その延長線上で、地域包括ケアシステム(詳しくはコラム参照)の構築をめざしていきます」と永坂副院長は語る。地域住民が高齢になっても安心して暮らしていける地域包括ケア社会の実現に向け、同院では、看護師が架け橋となって、地域を一つに結んでいこうとしている。


 

 

columnコラム

●国は今、高齢者が住み慣れた地域で生活を継続できるように、住まい・医療・介護・予防・生活支援などのサービスを包括的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築をめざしている。その一環として、平成27年度から、愛知県では愛知県医師会が主導し、県内すべての医師会に「在宅医療サポートセンター」を設置し、在宅医療提供体制の整備を加速させていく方針だ。

●安城市医師会の在宅医療サポートセンター事業には、八千代病院が参画。同法人内の経験豊富な看護師1名を、同センターの専任コンダクター(指揮者)として配置し、地域住民や診療所などから寄せられる多様な相談に応え、院外の医療・介護資源も含めて、最適なサービスを紹介していく。法人内の人的資源を地域で共有し、活用することをめざしている。

 

backstage

バックステージ

●平成26年度に新設された病棟区分、「地域包括ケア病棟」。急性期病院を中心に、病棟の一部を地域包括ケア病棟に転換する病院が増えている。しかしまだ地域での連携が進まず、院内での機能分けに留まっているケースが多く、本来、期待されている機能は充分に発揮されていない。

●八千代病院では地域包括ケア病棟の制度化をにらみ、かなり以前から病院と在宅を結ぶ病棟機能について研究を進めてきた。その綿密な準備が奏効し、地域包括ケア病棟はポストアキュート・サブアキュートの両面で機能している。平成27年3月末の実績では、同病棟の入院患者比率は、院内の急性期病棟からの転棟が53%、院外の高度急性期病院からの紹介が26%、そして、残り21%が、地域の診療所からの紹介と救急患者である。一方、入院患者の在宅復帰率は約91・2%と高い水準をキープしており、今後さらに地域包括ケア病棟の存在意義を発揮していくことが期待される。

 

 


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