3,737 views

病院を知ろう

地域の変化を見つめ、
常に進化する病院。

 

 

岡崎市民病院


2025年を見つめ、
地域に必要な救急・高度急性期機能の整備完了。
今後は基幹病院として、医療圏のさらなる充実に尽力する。

main

平成24年から中期整備計画を進めてきた岡崎市民病院。
平成25年には西棟を、同27年には救命救急センター棟を建設し、
それらに付帯するさまざまな施設・設備を整えてきた。
目的は、
①慢性的な病床不足の解消
②救急医療の質の向上
③がん治療の充実
④生活習慣病由来の血管病の克服、
以上の4項目にある。

 

 

 

 

 

西棟・救命救急センター棟を建設し、
余裕ある体制づくり。

812245●慢性的な病床不足の解消
 「当院にとって、慢性的な病床不足は大きな課題でした。数年来、病床稼働率(※)98%台が常態化し、救急を含めた急性期患者さんすべてを受け入れるため、全職員で病床の利用効率改善に全力を注ぎましたが、それでもやはり足りない。やっと平成23年に愛知県保健医療計画改定で増床が認められ、すぐに西棟50床、救命救急センター棟15床、合わせて65床の増床計画を進めました」。
 こう語るのは、岡崎市民病院院長の木村次郎医師である。平成25年に西棟が完成すると、翌年度の病床稼働率は、88%に改善。「今年9月からの救急専用病床15床が稼働すれば、さらに余裕を持った運営が可能になると考えます」(木村院長)。
●救急医療の質の向上
 岡崎市民病院といえば、救急。これは愛知県下の医療界では共通した認識だ。事実、平成26年度の救急搬送件数は年間9614件。独歩で訪れる患者を含めると、年間3万268名、一日80名以上の患者が同院の救命救急センターを訪れた。「それだけの患者さんを受け入れるには、救急外来の面積は手狭で、どうしても煩雑な状況を生み出していました」と木村院長。701503
 そうした救急医療の実態を解決するために、正面玄関北に建設が進められた救命救急センター棟。従来の1・5倍の救急外来、治療・経過観察用病床15床があり、また、これまでの一般撮影、CTに加えMRI撮影装置も整備され、迅速な精密検査も実施可能となった。
 「救命救急センター棟の設計においては、職員の動きやすさ、また、休息スペースも考えました。スタッフにとっても余裕ある環境であれば、安全性もより高まり、今以上の救急医療の質の向上を図ることができると考えます」(木村院長)。

※ 病床稼働率とは、病院の入院病床が、どの程度効率的に稼働しているかを表す指標。百分率で表され、数値が高いほど効率が良いことを示すが、反面、病床に余裕がないことを示す。

 

 

放射線療法の充実で、
がん医療のさらなる進展を。

 Plus顔写真●がん治療の充実
 救急医療とともに、同院が焦点を当て、これまで多大な力を注いできたのが、がん治療である。そのなかで、中期整備計画において注力したのは、<放射線療法>だ。
 同院は、これまで高度な放射線治療装置を有していなかったが、新たな西棟の地下3階に、腫瘍の形や大きさに合わせ、放射線の照射量や強度を変化させるIMRT(強度変調放射線治療)対応の高エネルギー放射線照射装置2台(トモセラピー、リニアック)、密封小線源治療装置1台(ラルストロン)を設置。放射線治療専門医を確保し、先進的な治療体制を整えた。
 <外科療法>においては、平成25年に開設した低侵襲治療センターの中に、腹腔鏡手術センター部に加え、内視鏡センター部を新たに設置。外科・呼吸器外科・泌尿器科・産婦人科が集結し、より高度で安全な低侵襲治療を実現させている。そして、<化学療法>では、西棟の1階に、通院で化学療法を受けることができる外来治療センター(25床)を新たに設けた。
 「外科療法と放射線療法と化学療法。すべてにおいて医学水準をさらに高め、その総合力、つまり集学的治療により、今後さらに拡大するがん患者を支えていきたいと考えます」(木村院長)。
●生活習慣病由来の血管病診療の充実
 木村院長は語る。「今後さらに拡大するという視点では、生活習慣病由来の血管病にも目を向けました。その克服を考えると、生活習慣病の早期発見、患者さんへの指導教育、そして、すでに起きてしまった血管病を安全に治療することが重要です。そうした一つの流れのなかで、安全に治療を提供できるよう、手狭であった血液浄化センターの拡充に加え、糖尿病センターの設置、さらに、腎臓内科・内分泌内科・眼科の集約を図りました。平成25年に愛知県下で最初に導入した、ハイブリッド手術室(血管撮影装置と一体化した手術台)を含め、より高度で安心安全の治療体制が整いました」。

 

 

疾病構造の変化が、
医療ニーズを拡大する。

701248 岡崎市民病院のある西三河南部東医療圏は、岡崎市と幸田町という広域医療圏である。人口は40万超を数えるが、人口10万人当たりでみると病床数、病院勤務医数は、全国平均に比べ極端に少ない。そのため、同院が650床の病床を持ち、平成10年、現在の岡崎市高隆寺町に総合移転し、施設・設備を拡充した際には、医療圏唯一の大規模な急性期病院として、地域から大きな期待が寄せられた。
 その岡崎市民病院が、4年の年月をかけて中期整備計画を実施した理由はどこにあるのだろう。
 「疾病構造の変化による医療ニーズの拡大ですね」と木村院長は言う。「そこには、どのような機能の病院がどれくらいあるのか、といった地域の医療事情が絡んできますが…。例えば、医師不足のなか、当院以外の病院が、救急を担うことが困難になったこともあります。そのため、当院が移転の際に想定した予測をはるかに越えた次元で、質、量ともに、地域から求められるものが大きくなってきました」。701519
 その背景には、社会そのものの変化があることは言うまでもない。救急医療一つ挙げても、比較的若い世代の交通事故による外傷から、中高年層の脳疾患・心疾患への変化など、大きく変わっている。そうした社会動向によって、病院に求められる能力は絶えず変化するのだ。
 「地域に必要とされる医療資源は変わります。病院はそれを見つめ、その姿を変え、地域のニーズに対応することが必要です」と木村院長は言う。

 

 

残る課題は、急性期後。
地域と一緒に考える。

701413 団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に達する、2025年が目の前に迫っている。そのときにふさわしい地域医療のあり方を見つめ、岡崎市民病院は自院の機能・能力の追求に余念がない。
 木村院長は「当院は、今後も急性期病院としての機能を果たしていきます。今回の整備計画によって、三次救命救急・高度急性期病院としての能力拡充を終え、今後は医療の質の高度化、効率化を図っていきます」と、西三河南部東医療圏をこれまで支え続けてきた自信と、これからに対する決意を表明する。
 だが、その一方で、「地域にはまだ課題が残っている」と言う。それは何か。「地域全体で見ると、当院の高度急性期治療以降の亜急性期、あるいは、一般的な急性期といった領域を担ってくれる病院が不足しています。元々、医師や病院など、医療資源が少ない地域ですから、これをどうカバーしていくか、そこでのネットワークづくりが課題ですね」。
 これを解決するには、地域の医療機関同士が、互いにどういった方針を取るのか、その前提である地域医療政策がどのように進展していくのか。それらを睨みながら、地域全体の会話が必要であろう。「当院もその一員としての自覚を強く持ち、しなやかな発想で自院の機能・役割を、これから先も見つめるなど、あくまでも医療圏全体の発展に寄与することを、めざしていきたいと考えています」と、木村院長は言葉を締め括った。

 


 

column

コラム

●「この一つの医療圏のなかで、地域の方々が、必要とする医療を地域で受けることができるために」。そうした視点で病院経営を考える木村院長だが、その一方で、地域住民が病気を発症することなく、いかに健康を守り続けることができるか、という発想をも持っている。

●そのためには、「病気や健康に関する情報発信力を、当院自身がもっと高めなければならないと思っています。例えば、救急医療をとっても、普段から健康に注意を向けることが増えたなら、その数は減ることに繋がるはずです」。

●またさらに、在宅医療介護支援の必要性が高まり続ける今、「地域の方々の身近にいる診療所の先生との信頼関係を、さらに深めることも不可欠ですね」と言い、こう続けた。「高度急性期病院といっても、<治す>だけでは、超高齢社会を本当の意味で支えることにはなりません。地域の医療機関の皆さんと、円滑な地域医療体制づくりに力を注ぎたいと考えます」。

 

backstage

バックステージ

●愛知県には12の二次医療圏がある。そこでは人口構造や地域特性によって事情は異なるが、医療ニーズと医療資源のバランスは、いずれの医療圏でも大きな問題である。

●岡崎市は、本文でも述べたが、医師数、病床数は全国平均以下である。そのため、その両方を最も有する岡崎市民病院にかかる負荷の大きさはずっと続いている。背景には、他地域と同様、高齢化が進むとともに、働き世代の人口が一定数を保っているという事情が横たわる。

●すなわち、救急医療、高度急性期医療、一般急性期などが、バランスよく提供されなくては、地域の医療ニーズに対応することができないということだ。

●現在、国によって、地域医療のあり方を見直す<地域医療構想>が動き出しているが、地域の事情をどのように、そして、どのくらい見つめた上での進展となるか。生活者は我が事として見つめる必要性があるだろう。

 


3,737 views