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病院を知ろう

中京病院の風土が
地域包括ケア時代の
<医師>を育てる。

 

 

中京病院


これからの医師に必要なコミュニケーション能力とリーダーシップ。
それを育む中京病院の<雰囲気の良さ>。

main

団塊の世代が後期高齢者になる2025年。日本は未曾有の超高齢社会を迎える。それに向けて、現在、国は地域包括ケアシステム(※)の構築を進め、一方では医療提供体制が大きく変わろうとしている。そのとき、医師には何が求められ、どうあるべきなのか。
超高齢社会における地域医療を見据え、これからの医師を育てようとする中京病院の取り組みを追った。

 

 

※ 地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で生活を継続できるように、住まい・医療・介護・予防・生活支援などのサービスを包括的に提供する仕組みのこと。

 

 

 

 

 

医学生に強い印象を残す
中京病院の病院説明会。

Plus顔写真1 「『私もこんなふうになりたい!』と、中京病院の<初期臨床研修プログラム説明会>(以下、病院説明会)を見て思ったんです」。そう話すのが、平成27年4月から同院で初期臨床研修(※)を受ける矢崎明香医師だ。
 その病院説明会とは、平成26年の7月、医学部5、6年生を対象に、同院の研修内容や特長を深く知ってもらうために行われたもの。「研修プログラムの説明」、「研修医の生活の紹介」、「指導医や若手医師、研修医とのマンツーマン対話」「救急外来のシミュレーション」などが開催された。なかでも特に医学生に好評だったのが、「指導医や若手医師、研修医とのマンツーマン対話」だ。指導医などが一人で複数の学生に説明する病院も多いなか、同院では、平成26年3月まで同じ医学生だった研修医が説明に参加。歳が近いため、学生も緊張せずに聞きたいことが聞けるのだという。
207_Linked19_Chukyo_Linked2015 矢崎は言う。「私は出身地も大学も愛知県ではないので、入職して壁ができないか心配でした。でも、研修医の先生から、いろいろな出身地や大学から研修医が集まっていること、そして、実際に壁がない様子を直接聞くことができたので、とても安心したんです」。「それに」と矢崎は続ける。「司会や院内外での誘導、救急外来のシミュレーションでの処置もすべて研修医の先生が行っていたのが驚きでした。その姿を見て、私も1年後にこうなってるんだ、こうなりたいなと、強く思ったんです」。
 平成27年度、中京病院に入職した医学生は、すべてこの病院説明会の参加者。矢崎のように、病院説明会への参加がきっかけで中京病院に決めた学生も多い。

※ 初期臨床研修とは、医師免許を取得した医学部卒業生に義務づけられた2年以上の臨床研修のこと。大学病院や、厚生労働省の審査を通り、指定を受けた臨床研修指定病院でのみ研修ができる。

 

 

研修医自らが企画運営をして
創り上げる病院説明会。

 Plus顔写真2 実はこの病院説明会、研修医が自ら主導して、企画から運営まで行っている。平成26年、そのリーダーだったのが、現在、初期研修2年目の玉腰大悟医師である。
 玉腰をはじめとする研修医たちは、中京病院がどのような病院であり、学びの場なのかを学生たちに正確に伝えるため、試行錯誤しながら病院説明会を準備する。そのなかで、新しいプログラム「救急外来のシミュレーション」も生まれた。その経緯を玉腰は説明する。「入職して、大学で学んだ救急外来と、実際の救急外来の現場のギャップに驚きました。その違いを医学生にも知ってもらい、学びの場としての中京病院を意識してもらいたかったんです」。そう話す玉腰は、「シミュレーションには、『研修医がこんなことまでできるんだ』と思ってもらえるような事例を集めました」と笑みをこぼす。「大変だったのは、診療科によっては業務が忙しく、集まれない研修医がいたこと」。玉腰はリーダーとして、何とか準備を前に進めるため、研修室で待ち構えたり、それぞれに担当を決めて、当事者意識を持ってもらうよう工夫。研修医が一丸となり準備を整えていった。
 玉腰が病院説明会の企画運営を通じて得たもの。それは、複数の人間の間で調整をとったり、相手が何を求めているのかを考え、伝えたいことをいかに伝えるかだという。「いろいろと大変なこともありましたが、とても良い経験になりました。何よりも、同じ目標に向かって、一つのものを創り上げていくのは楽しかったですね」。
 今年のリーダーは、矢崎明香。「今回は、院内見学に来られない学生のために動画を作ります!」。イキイキとした表情で矢崎は語る。

 

 

研修医主導の病院説明会に
隠された狙いとは。

Plus顔写真3 平成26年から始まった研修医主導の病院説明会という新たな試み。この試みを始めた理由について、研修担当の馬渕まりえ医師はこう説明する。「医学生向けなので、研修医自身が学生のときに知りたかった内容を教えた方がいい。それに、これから一緒に働く仲間たちに知ってほしいことは、自分たちで伝えた方がいいと思ったのがきっかけです」。加えて、そこには一つの狙いがあるという。それは、2025年にピークを迎える超高齢社会をにらんだものだ。
 国は現在、高齢者の増加に伴う医療費急増を抑えるため、医療提供体制の見直しを進める。そのなかで病院は、医療機能の役割分担をした上で、他病院をはじめとした地域の医療機関、介護福祉施設などと連携し、患者を病院から在宅まで切れ目なく繋ぐことが求められている。そこにおいて医師は、患者の退院後の生活まで見据えた治療計画を立て、多職種間でそれが実行されるよう必要な措置を講じなければならない。これからの医師には、診療技術に加え、調整力や伝達力などの高いコミュニケーション能力と、多職種のなかでリーダーシップを発揮することが求められるのだ。
246_Linked19_Chukyo_Linked2015 こうした能力を養い、多職種連携の<要>となる次代のリーダーを育てる試みの一つこそ、中京病院における研修医主導の病院説明会に他ならない。相手のニーズを読み取り、そのニーズに合わせること、さまざまな人間と交渉し、円滑に企画運営を行うこと、そして目的実現のため、リーダーシップをとり行動すること。こうした訓練は、来るべき地域包括ケア時代において、必ず活きてくると馬渕は信じている。
256_Linked19_Chukyo_Linked2015 そして、この病院説明会には、医学生に向けた病院の目線もあると馬渕は言う。「私たちが求める人材は、研修医が一丸となって創りあげた病院説明会や、病院に流れる雰囲気に感応してくれる人たち。そこに関心を持ってくれる医学生こそ、これからの中京病院を担うにふさわしい人材だと思うんです」。

 

 

中京病院の雰囲気と風土が
研修医を育てる。

 平成26年4月、中京病院は、社会保険病院から独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)に移行。「地域医療、地域包括ケアの要として、超高齢社会における地域住民の多様なニーズに応え、地域住民の生活を支えます」というJCHOの使命のもと、急性期病院でありつつも、今まで以上に地域を見つめる病院へと生まれ変わった。
262_Linked19_Chukyo_Linked2015 その中京病院に、今も変わらず守り続けられているものがある。それが、玉腰と矢崎が強調する<雰囲気の良さ>だ。「上下や各科の間に壁がないので、年齢や診療科を気にすることなく相談できる」と玉腰が言えば、矢崎も「上級医の先生方はもちろん、看護師やコメディカルの皆さんも入ったばかりの私たち一人ひとりを覚えてくれて、サポートしてくれるんです」と口を揃える。こうした風通しが良く、研修医を皆で見守る同院の雰囲気が、研修医が主体的に考えることを促し、行動できる風土を生んでいるのである。
 「人間的にも魅力のある医師になりたい」(玉腰)、「患者さんの背景を考えて診療できる医師になりたい」(矢崎)とめざす医師像を明るく語る2人の研修医。彼ら研修医たちに向けて馬渕は「これからも初心を忘れず、素直に育って315_Linked19_Chukyo_Linked2015ほしい」とエールを送り、こう言う。「私たち上級医に、自分たちで企画した勉強会の講師を務めてほしいと言ってきたり、彼らの成長を実感することも多々あります。今後は、医師としての診療技術を学ぶとともに、地域での健康教室や相談会など、自分が医師として地域にできることを考え、自ら実行してほしい。彼らが本当に望むなら、その芽をつむようなことはありませんから」。

 


 

column

コラム

●超高齢社会がますます進むなか、求められる医療が変わりつつある。高齢者の場合、一人の患者が複数の病気を持つことが多く、総合的な視点で治療していかねばならないからだ。そのため現在、臓器別の専門治療だけではなく、総合的な診療能力を持つ<総合医>の必要性が叫ばれている。

●中京病院のある南区は、市内で最も高齢化の進むところである。平成26年の統計では、高齢化率は27・8%にもなる。

●同院はJCHOへと移行した際、地域の高齢化を見据え、地域への貢献とともに<総合医の育成>を大きな使命とした。総合性を持ち、多職種連携の<核>となれる医師。<地域とともに生きる病院>である同院が、育成を図っているのはそうした医師である。

●いずれ同院から生まれるであろう2025年を背負う医師たち。それは、来るべき地域包括ケア時代の医師のロールモデルでもある。

 

backstage

バックステージ

●従来、医師は病院の中でヒエラルキーの頂点に立ち、看護師やコメディカルに指示を出す存在だった。そうした場では、上意下達で医師がものごとを進めていく、指示管理型のリーダーシップが非常に有効だった。

●しかし、これからの時代の医師には、オープンなコミュニケーションとメンバーの自律性を重視し、協調してものごとの解決にあたるコラボレーション型リーダーシップが求められる。医師が院内外で、医療、介護、福祉などの多職種間のコミュニケーションを図り、目的の実現に向けて、全員の意見や行動を調整していく。そのリーダー像は、今まで我々が医師に持っていたイメージとは全く異なるものである。

●現在、中京病院で行われている研修医主導のさまざまな活動は、これからの医師が必要とするリーダーシップのあり方を示唆しているのではないだろうか。

 


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