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シアワセをつなぐ仕事

時代が求める
医療を見つめ、常に、
市民とともにある病院。

伊藤 治(院長)・尾崎真代(総看護師長)/みよし市民病院


 

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約6万人のみよし市民の健康と生活を守る、みよし市民病院。
ここで働く看護師の多くは地元出身者で、「みよし市民のために」という心意気が強い。
地域に密着した病院が、地域の人のために提供する質の高い看護。
その根底にある思いとこれからのビジョンについて、院長と総看護師長の二人に話を聞いた。

 

 

 


この地域が好き。だから
どこまでも市民の生活に寄り添い、
市民の健康と生活を守っていく。


 

 

 

地域に根ざした病院で
心の通い合う看護を実践。

 119_Linked19_Miyoshi2015三好町立の病院だった頃から、地域の人々に親しまれてきたみよし市民病院。患者と職員の距離は非常に近く、外来の待合室は親密な雰囲気がただよう。「今日は暑かったから、道中、大変だったでしょう」「お宅のおばあちゃん、お薬、ちゃんと飲んでいらっしゃいますか」。診療の合間に、看護師はさりげない言葉をかけ、患者と家族の健康を気づかう。
 「当院の看護師は皆、患者さんの家族構成まで把握していて、驚かされます。その上で、<この患者さんはいつもお嫁さんが送迎されていて、次回の診察も水曜日がいいそうですよ>といった助言もしてくれます。僕ら医師も助かりますし、患者さんにとっても頼りになる存在だと思いますね」。そう語るのは、今年(平成27年)4月、同院の院長に就任したばかりの伊藤 治医師である。伊藤院長は平成Plus顔写真110年、同院に赴任。以来、内科・消化器科の医師として貢献してきた。
 伊藤院長はまた、「専門治療においても看護師が重要な戦力です」と言う。たとえば、伊藤院長が専門とする消化器科では、拡大内視鏡や超音波内視鏡を用いた胃や大腸の早期がんの診断とその内視鏡治療に力を入れている。消化器科の病棟ではそうした最新鋭の内視鏡治療や消化器疾患に熟知した看護師らが、治療前のケアから治療後の全身管理までをトータルに担う。「患者さんの生活まで把握しつつ、なおかつ専門的な看護を提供できるのが、当院の看護部の優れた特徴だと思います」と伊藤院長は誇らしげに語る。

 

 

退院後の生活を見据えて
患者と家族を支える。

Plus顔写真2 同院の看護部を統括する総看護師長の尾崎真代は、伊藤院長の言葉にうなずきながら、次のように話す。「私自身を含め、うちの看護師は地元出身者がとても多く、地元の患者さんの生活背景までよく把握できていることが強みですね。それに、最近は高齢の患者さんが増えて、その強みを活かして、患者さんの生活により深く関わる場面が、多くなってきたように感じています」。それは、具体的にどういうことだろうか。
 「急性期疾患で入院される患者さんのなかには、認知症や嚥下障害(飲食物の飲み込みが困難になる障害)など、高齢者特有の持病を持つ方が大勢いらっしゃいます。病棟の看護師は、急性期の看護を提供しつつ、それぞれの持病に目配りして、退院後の生活を見据えた看護を行っています」。たとえば、自宅404058での介助法を家族と一緒に考えるなど、退院後に困らないような準備を行っていく。そうしたきめ細かいサポートは、患者の生活背景を把握し、家族と信頼関係を築いているからこそできるものだといえるだろう。「退院するときは在宅医療チームと綿密に打ち合わせして情報を繋いでいますが、患者さんの<生活の質>を守るために、継続看護の取り組みに、いっそう力を入れていきたいですね」と尾崎は話す。

 

 

超高齢社会を予見した
先駆的な病院づくり。

IMG_6703 みよし市民の生活に寄り添う同院には、一般の公立病院とは一線を画す、いくつかの特徴がある。たとえば、一般病床68床を設けて、多様な急性期疾患に対応する一方で、愛知県の公立病院で唯一、54床の療養病床を開設。ここでは、在宅療養中の患者を短期間、受け入れるレスパイト入院に対応しているほか、さまざまな事情で今すぐ在宅に戻れない患者も受け入れている。また、病院自ら、在宅医療に取り組んでいることも特徴の一つ。通院が困難な患者で民間医療機関では対応できないケースについては、同院の医師が往診し、希望に応じて看取りまで対応している。さらに病院には、みよし市の訪問看護ステーションと、介護の相談にきめ細かく応える在宅介護支援センターも併設されており、まさに<在宅療養の支援に必要なものがすべて揃った拠点>となっている。
 こうした病院の原型を作ったのは、前病院事業管理者の故・柴田時宗医師だった。柴田医師は<地域包括ケア>という言葉がない頃から、<超高齢社会における地域の医療がどうあるべきか>をとことん考えた。そして、市民が年老いて病気になっても困らないように、考えられる限りの知恵と工夫を同院に詰め込んだのである。
 この先駆的な病院設計と同時に、柴田医師はIMG_6708その新しい病院に必要な人材獲得にも奔走した。実は前院長の成瀬 達医師(現・病院事業管理者)、現院長の伊藤医師も、「ぜひ来てほしい」と請われて赴任してきた。二人とも、柴田医師とは、名古屋大学医学部第二内科・膵臓病研究室で共に学んだ間柄だという。「柴田先生の遺志を引き継ぎ、この病院を軌道に乗せて発展させていくことが私の使命だと考えています」と伊藤院長はきっぱり語る。

 

 

市民にとって必要な
病院であり続けたい。

107_Linked19_Miyoshi2015 超高齢・長寿時代に必要な医療と介護を追求するみよし市民病院。同院が、今抱える課題は何だろうか。伊藤院長は「これは当院がずっと悩んでいることですが、医師不足、そして看護師不足です。引き続き人材採用に力を注ぐとともに、医師や看護師の負担を軽減する方策に力を入れていきたいですね」と言う。たとえば、看護師については、服薬指導に関わる業務は病棟薬剤師に、経管栄養を含めた栄養や食事に関することは病棟栄養士に任せるなど、看護師が看護の仕事に専念できるような環境を整備していく方針だ。
 一方の尾崎は、看護師の卒後教育カリキュラムの開発に力を注ぐ。「<地域密着>という当院の特色を活かした看護師教育体制を作り、患095_Linked19_Miyoshi2015者さんの生活を支える看護師を育てていきたいですね」。その視線の先にあるのは、地域のニーズに応え、今まで以上に在宅療養を支援する看護の強化だ。「今後は訪問看護の充実に取り組むとともに、病院の看護師も地域へ出ていかねばならないと思います。たとえば当院の医師やリハビリテーションスタッフが開催してい106_Linked19_Miyoshi2015る<健康講座>に、私たち看護師もどんどん関わっていけたら…と考えています。また、ゆくゆくは、病棟の看護師も訪問看護師に同行して、在宅療養中の患者さんをケアするような取り組みも行っていきたいですね」と尾崎は言う。
 めざすのは、どこまでも市民のニーズに応え、市民の生活に寄り添う看護の提供。病気とうまく付き合いながら、住み慣れたわが町でずっと暮らしていこうとする患者とその家族を支えるために、同院の看護師たちは心のこもった看護に全力を注ぐ。


 

 

columnコラム

●みよし市民病院の理念は「みよし市を愛し、みよし市民の健康に寄与することを誓います」。この理念には、前病院事業管理者の故・柴田時宗医師の思いが凝縮されているといえるだろう。柴田医師自身、三好町(現みよし市)生まれの三好町育ち。わが町をこよなく愛する気持ちが、市民のための市民とともにある病院づくりに結実したのである。

●超高齢社会を見据えた柴田医師の先駆的な理念は今、成瀬 達病院事業管理者と伊藤院長に引き継がれている。成瀬病院事業管理者が対外的な折衝や人材採用を、伊藤院長が院内のマネジメントを主に担当し、二人三脚で病院運営の舵取りを行っている。二人の胸中にあるのは、「柴田先生の遺志を守り抜き、みよし市民病院を医療と介護を繋ぐ拠点にしていこう」という思い。愛知県で最も小さな市民病院は、大きな志を持って歩んでいく。

 

backstage

バックステージ

●国は今、高齢者が住み慣れた地域で生活を継続できるように、住まい・医療・介護・予防・生活支援などのサービスを包括的に提供する<地域包括ケアシステム>の構築をめざしている。

●地域包括ケアシステムの実現には、24時間対応の在宅医療や訪問看護の充実強化が必須であり、患者の入退院時から在宅まで継続した医療サービスの提供が重要となる。そして、その切れ目のないサービスにおいて重要な役割を果たすのは、患者にとって最も身近な存在である看護師だろう。病院の看護師と在宅の看護師(訪問看護師や介護施設の看護師など)が連携することで、患者も家族も安心して在宅療養を続けることができる。みよし市民病院では、病院の看護師と、病院併設の訪問看護ステーションの看護師が力を合わせ、さらに地域の在宅医療チームとも連携して、患者の生活を末永く見守っていこうとしている。

 

 


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