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これまでLINKED紙面で繰り返し取り上げてきたように、今、地域医療の提供体制は大きな変革期を迎えている。
国は急速に進む超高齢化に対応すべく、在宅医療の充実とともに、病床機能の大再編を促しているのだ。
具体的には、都道府県それぞれで、地域に必要な医療機能を見直し、
2025年にめざすべき医療提供体制の姿を「地域医療構想」としてまとめようとしている。
私たちの地域の病院、そして医療はどのように変わろうとしているのだろうか。
LINKEDでは、20・21号の2回にわたり「地域医療構想」を特集する。
今回はまず、「地域医療構想」とは何かについて、Q&A形式でわかりやすく解説していきたい。

 


 1.ボード説明

2.顔見出し 「地域医療構想」は、簡単にいうと、地域(※)ごとに必要な医療機能を考え、地域医療のあるべき姿を示す骨組みです。私たちが怪我や病気になったとき、対応してくれる病院が地域にどの程度用意されるのかが決まるわけですから、生活者にとっても無関心ではいられない問題です。
 まず、昨年度から病院がそれぞれ持っている病床(入院ベッド)の機能を明確にする「病床機能報告制度」が始まりました。病床の種類は、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4種類に分類され、病院は「どの種類の病床を何床持っているか」を都道府県に報告します。その情報を基に、将来の人口構造の変化などを見据え、それぞれの地域で、今後、必要な病床数をおおよそ決めていきます。そして、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる<2025年>を目処に、必要な病床数にゆるやかに近づけていくことをめざします。
 たとえば、上のグラフを見てください。これは東海三県全体の病床数の試算です。2014年が現状の病床数ですが、10年後の2025年には、下の数値へ移行することをめざしています。現状と目標の病床数の間に大きな開きがあることがわかりますね。その開きを埋めていくために、地域医療構想策定後、それぞれの地域で話し合いを始めていきます。

※地域医療構想の区域は二次医療圏(複数の市町村をまとめた地域医療の単位)を原則に、人口構造の変化の見通しなどを考慮して設定される。

3.人口統計

4.病床の構成


 5.Q1 急性期や回復期という言葉は、もともと病期(病気の症状によって区分した期間)を指します。そして、その病期に応じた病床機能として、地域医療構想では、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4つに分類しています。「高度急性期」は、救命救急や集中治療を必要とする患者さんに対し、高度で濃密な医療を提供する機能。「急性期」は、地域で頻回に発症する疾患への専門的な医療を提供する機能。「回復期」は、急性期を経過した患者さんに在宅復帰に向けた、継続的な医療やリハビリテーション医療を提供する機能。「慢性期」は、短い期間では治り難い疾患を持つ患者さんを受け入れる機能です。
 多くの病院では、これらの病床を組み合わせて整備しています。また、病院によって高度急性期に特化したところもあれば、回復期中心に充実させ、急性期の治療を終えた患者さんを積極的に受け入れているところもあります。

 

6.Q2

 東海三県の病床数のグラフ(2014年)を見てもわかるように、これまでの病院は急性期病床が中心で、言い換えると「治す医療」が主役でした。しかし、今後、高齢の患者さんがさらに増えることを考えると、短期間で治す医療だけでなく、複数の慢性疾患を抱える高齢者を「治し支える医療」が必要になります。すなわち、回復期の病床やさらには、在宅療養を支える医療機能が必要になると考えられています。
 こうした人口構造の変化を踏まえ、病床の数を変更していこうというのが、厚生労働省の狙いです。

 

7.Q3

 ここまで読んできて「急性期の病床が減ると、救急医療に影響を与えるのでは?」と心配されている方もいるでしょう。そういうことがないように、救急車を受け入れる病院では、これまで以上に入院期間の短縮化を進め、ベッドの空きを確保することで、救急搬送の受け入れに尽力していく必要があります。そのためには、高度急性期・急性期の治療を終えた患者さんを、いかにスムーズに回復期の病床へ移行できるかがポイントになります。

 

8.Q4

 はい、先に述べたように、救急医療を守るためにも、患者さんには、治療後の速やかな退院をお願いすることになります。但しそれは、決して「追い出す」わけではありません。疾患によっては、急性期病院に長く入院するよりも、リハビリテーションスタッフが充分配置されている回復期病床で治療を受けた方がより良い成果を上げることができます。患者さんが症状に適したステージで医療を受けられるように、地域の病院がしっかり連携し、地域全体で治し、支えていきます。

 

9.Q5

  回復期病床では、退院後の生活をしっかり見据えて継続的な治療やリハビリテーション医療を提供。入院中から、病院のスタッフと在宅医療に関わるスタッフが緊密に連絡を取り合い、患者さんが退院後も安心して療養できる環境を整えていきます。とくに退院後、自宅で生活するのが難しい場合は、早い時期から介護施設や高齢者向け住宅への入居を検討して準備していきます。こうした施設入居も含めて、在宅医療で支える患者さんは、今後さらに29.7万人〜33.7万人(※)が増えるとされています。地域によっては、介護施設や高齢者向け住宅の大幅な不足が懸念されています。

※「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会 医療・介護情報の分析・検討ワーキンググループにおける検討内容について」より。

 

10.Q6

 日本の高齢者人口は増加を続け、2025年には65歳以上の人口が3,657万人に達すると見込まれています。高齢者の増加と反対に、今後、15〜64歳の生産年齢人口は減っていきます。そのため、医療保険や年金などの社会保障を賄うための資金が減少し、同時に、医療や介護を担う人材不足も予想されます。
 すなわちこれからの日本は、「患者さんはどんどん増えるけれど、患者さんを支える財源や人材はどんどん減っていく」社会になるのです。そのため、これまで以上に医療のムダを省き、地域の病院が連携して効率良く医療を提供していくことが必須となります。医療の効率化促進は、日本が世界に誇るべき国民皆保険制度(すべての国民が医療保険に加入し、誰もが安心して医療を受けられる医療制度)を維持していくことにも繋がっています。

 11.掛け合い


 

keyword
超高齢社会と地域医療構想

 超高齢社会を迎え、必要とされる医療は大きく変化してきた。かつては青壮年の患者を対象に、社会復帰を前提とした根本的治療が行われてきたが、これからは高齢の患者を対象にした「病気と共存しながら、QOL(生活の質)を高める医療」が求められている。また、医療の提供体制も、一つの病院で完治をめざす「病院完結型」から、地域全体で治し支える「地域完結型」への転換が進められている。こうした新しい地域医療の仕組みを構築するには、地域にある病院が役割分担して連携し、急性期から回復期、慢性期、在宅まで、切れ目なく医療を提供していかねばならない。そのために始まったのが「地域医療構想」の策定である。病院の医療機能を明らかにすることで病院間の機能分化と連携を促すとともに、地域に足りない医療機能を補い、超高齢社会にふさわしい地域医療体制づくりをめざしている。

 

 


LINKED本編_エディターズアイ見出し

 

 二次医療圏をベースに、地域医療構想調整会議(以下、会議)が行われている。LINKEDは、そうした会議を構成する医療機関、行政などからさまざまな声を聞き、会議の論点が<数>にあることを知った。将来の人口構成から予測する疾病数、その疾病数に必要な病期ごとの病床数。医療圏ごとで示されるこの数字に対し、自らの姿をどう近づけるか病院ごとに考え、地域で話し合いを進めているのだ。
 超高齢・少子社会を考えると、地域医療構想の策定は必要不可欠であろう。そして、効率的、且つ、効果的な医療提供のために、医療圏ごとで、医療資源の最適化を図る必要性も理解できる。それらに異を唱えるものではない。だが、そのための論議が、果たして<数>だけでよいのだろうか。<質>の論議も必要なのではないだろうか。
 <質>を語るとき、二つの意味がある。一つは、医療の中味、もう一つは、医療経営の質である。医療の中味とは、地域が必要とする医療に対して、展開される医療水準の高さそのものだ。医療経営の質とは、同じ成果を出すにあたってのマネジメント能力。すなわち、同じ成果を効率的に遂げるために、人材や施設・設備、そして投資を、いかに展開するかの病院経営力である。
 地域医療構想の策定には、生活者は、地域医療のオーナーは私たちだという意識を持ち、権利と責任を持って参加することが大切である。その際には、<数>だけに目を奪われるのではなく、<質>という要素があることを前提にした上で、見つめ続けてほしいとLINKEDは考える。そのための一助となる情報を、LINKEDは今後も提供していきたい。



 

HEYE

名大総長 松尾清一/
柔軟な発想とリーダーシップが、各論のサイクルを回す。

元厚生労働副大臣 大塚耕平/
国民の覚悟が問われる政策リソースのシフト。

EEYE

医療の中味と病院経営力、その<質>の論議が必要。

 


SPECIAL THANKS(編集協力)

「PROJECT LINKED」は、本活動にご協力をいただいている下記の医療機関とともに、運営しています。
(※医療機関名はあいうえお順です)

愛知医科大学病院
愛知県がんセンター 中央病院
足助病院
渥美病院
あま市民病院
安城更生病院
伊勢赤十字病院
稲沢厚生病院
稲沢市民病院
鵜飼リハビリテーション病院
大垣市民病院
岡崎市民病院
尾張温泉かにえ病院
海南病院
春日井市民病院
可児とうのう病院
蒲郡市民病院
刈谷豊田総合病院
岐阜県総合医療センター
岐阜県立多治見病院

岐阜市民病院
岐阜大学医学部附属病院
江南厚生病院
公立陶生病院
公立西知多総合病院
小林記念病院
市立伊勢総合病院
聖霊病院
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総合大雄会病院
総合病院中津川市民病院
大同病院
知多厚生病院
中京病院
中部ろうさい病院
津島市民病院
東海記念病院
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豊橋市民病院
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名古屋大学医学部附属病院
名古屋第二赤十字病院
成田記念病院
西尾市民病院
はちや整形外科病院
半田市立半田病院
藤田保健衛生大学病院
増子記念病院
松阪市民病院
松波総合病院
みよし市民病院
八千代病院

 

※読者の皆さまへ
<LINKED>は生活者と医療を繋ぐ情報紙。生活者と医療機関の新しい関係づくりへの貢献をめざし、中日新聞広告局広告開発部とPROJECT LINKED事務局・HIP(医療機関の広報企画専門会社)の共同編集にてお届けします。

企画制作 中日新聞広告局

編集 PROJECT LINKED事務局/有限会社エイチ・アイ・ピー

Senior Advisor/馬場武彦 
Editor in Chief/黒江 仁
Associate Editor/中島 英
Art Director/伊藤 孝
Planning Director/吉見昌之
Copywriter/森平洋子
Photographer/越野龍彦/加藤弘一/ランドスケープ/空有限会社/ノマド
Illustrator/にしわきコージ
Editorial Staff/伊藤研悠/村岡成陽/吉村尚展/黒柳真咲/國分由香
      /安藤直紀/水野文恵/上田翔太/糸藤広江/村島事務所
      /小塚京子/平井基一
Design Staff/山口沙絵/大橋京悟
Web制作/G・P・S/Media Pro

 

 

 


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