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病院を知ろう

受け継がれた<志>が、
TAVIという最先端を拓く。

 

 

大垣市民病院


卓越のハートチームが、この地に拓く最先端治療<TAVI>。
循環器内科と心臓血管外科、
そして、医療スタッフの結束力が、さらなる未来を見つめる。

main

一人の医師が、念願の大垣市民病院に帰ってきた。循環器内科医・髙木健督。
「患者さん一人ひとりに提供するものは違う。そのために必要なものを、僕は命をかけて学びとってきた」と自らに言う。
TAVIという、循環器領域では画期的な治療に真正面から挑戦。
病院からの期待を胸に、今、強力な仲間とともに、この地での新たな治療の地平を拓く。

 

 

 

 

 

大垣市民病院初の
TAVI治療。

073R_Ohgaki_2015 平成27年12月10日は、大垣市民病院循環器内科の髙木健督医師にとって、記念すべき日である。大動脈弁狭窄症の新しい治療法・TAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)を、念願の大垣市民病院で初めて実施するからだ。
 その日は、朝10時のリハーサルに始まった。治療に関わるメンバーは、それまで何度も重ねたシミュレーションによって、自分がやるべきことが解っており、リハーサルは滞りなく進ん147_Ohgaki_2015だ。
 そして、午後1時、86歳の女性患者が手術室に入り、足のつけ根(鼠径部)からカテーテルを入れ治療は始まった。カテーテルの先には人工弁がつけられている。大動脈を辿って心臓まで進め、本来の大動脈弁の位置に留置するのだ。すべて想定どおり順調に進み、約1時間半で終了。麻酔から覚めた患者は「楽になりました」と穏やかな表情をみせた。
 大動脈弁狭窄症は心臓弁膜症の一つ。大動脈弁が硬くなり動きが悪くなることで、必要な量の血液が心臓から全身に送り出されない。重症化すると、突然、死に至る危険性を持つ。そのためより早期に、開胸して一旦心臓を止め、人工弁を取りつける外科的手術が効果的とされていた。だが、高齢者や持病を持つ患者には負担が大きい。合併症のリスクも高くなるため、手術を断念するケースが多々あった。髙木の患者も手術を強く拒んでいたのだ。
 「TAVIは、体にメスを入れず心臓も止めない低侵襲治療です。患者さんとご家族にきちんとご説明し、『それなら受けたい』という思いを持ってくださいました」(髙木)。
 平成14年にヨーロッパで最初の治療が行われ、日本では平成25年10月から保険内での治療が可能となったTAVI。循環器領域において画期的なこの治療法を、大垣市民病院に導入したのが髙木なのである。

 

 

自らの幸運を自覚し、
研鑽と修練を重ねる。

 Plus顔写真1 髙木は、虚血性心疾患、大動脈弁狭窄治療の専門医である。彼は「自分は幸運」だと言う。その幸運とは、何であろうか。
 出身は大垣市。平成14年に名古屋大学医学部を卒業後、大学病院で2年間の研修を受け、その後、自らの専門を循環器内科とし、大垣市民病院に赴任。「前院長の曽根孝仁先生が循環器内科専門で、その人格、仕事ぶりには定評があり、学ぶなら曽根先生の元でと思いました」。4年間、徹底的に循環器内科医としての基礎訓練を受ける。これが最初の幸運である。
 その後、他地域の市民病院勤務を経て、新東京病院心臓内科に進む。ここは、循環器領域では日本でも有数の病院。髙木は赴任するとすぐ、病院の留学制度により、循環器では世界で五指に入り、ヨーロッパでもTAVIに精通する医師がいるイタリアに向かった。目的は、TAVIの修得。さまざまな症例、治療を目の当たりにする。「初めて人工弁留置を見たとき、これで手術が終わるんだと、とても驚きました。同時に、すごくうれしかった! 高齢の方には福音となる治療だと思いました」。髙木の第二の幸運は、このイタリア留学である。
 帰国後は、新東京病院でTAVIの立ち上げを任される。何109R_Ohgaki_2015百という患者データを自ら確認し、年間50名以上の患者に、1年間は施術医として、半年間は指導医として、TAVIを実施した。イタリアでの学びの実践は、髙木の第三の幸運となった。そして、平成27年、満を持して大垣市民病院に戻る。8年ぶりの同院で、病院からの期待のもと、TAVI導入を自分の使命とし全力を注いできたのだ。
 新しい治療法の確立。それは医師の誰もが、経験できることではない。髙木は「イタリアでも東京でも、決して生半可ではなく、TAVIだけを考えずっと時間を費やしてきました」と言う。自分に訪れた幸運を、すべて自分の血肉とし、知識の研鑽と技術の修練を重ねてきたのだ。

 

 

歩みを止めない準備が、
TAVIに収斂する。

 IMG_3779真正面からTAVIに取り組む髙木。しかし彼は、「TAVIは循環器内科の専門医一人ではで きない」と言う。治療時は、心臓血管外科を筆頭に、麻酔科・エコー指導・放射線科など医師8名。看護師、検査技師、臨床工学技士、放射線技師、理学・作業療法士らを含めると総勢30名となる。TAVI自体、それだけのスタッフを必要とする専門性の高い治療であり、いわゆるハートチームとしての総合力があってこそ、成し得る治療なのである。
 なかでも心臓血管外科医は重要な役割を担う。患者の足のつけ根の血管が細い、あるいは、腹部の血管が曲がっている場合は、心臓の先端から弁を挿入する経心尖(けいしんせん)アプローチを実施。またもし、治療中に不都合が生じた場合、すぐさま開胸手術へと切り替え、治療を続行するのだ。
 そして、ハイブリッド手術室。手術台と心・脳血管X線撮影装置を組み合わせた手術室である。従来は、手術室と内科的治療が行われるカテーテル室は別室であったが、このハイブリット手術室は同室でそれらの治療が行えるようになった。さらに周辺支援システムと検査画像とを融合させ、血管内治療をより安全に進めるための環境を備えている。
 こうしたハートチーム結成と環境の整備に、大垣市民病院Plus顔写真2で、足掛け3年をかけ準備を進めてきたのは、心臓血管外科部長の横山幸房医師(心臓血管外科専門医)である。横山は言う。「当院は、元々、人材豊富。職種を問わず、新しい治療に挑戦する土壌がありました。ただ、環境までを考えると、経済的な面が問題になります。そのため、僕自身、常に治療の最前線に視線を伸ばし、前院長の時代から、僕の描く循環器治療のイメージをお話ししてきました。その一つの結果が、髙木医師の赴任を契機に、TAVIという形に収斂したと思います」。<その先の治療>を見つめ、常に歩みを止めない。だからこそ実現できるTAVIである。

 

 

大垣市民病院には、
私たちがいる。

 ソフトもハードも整い、着実な第一歩を進めた大垣市民病院のTAVI。今後への目線を聞こう。 
 横山は語る。「第一に、循環器内科と心臓血管外科のさらなる融合ですね。治療が必要な一人の患者さんを前に、内科系・外科系の壁はありません。内科的手法と外科的手法のどちらが良いのIMG_3918か。両科が突き詰めて考える。それでも判断がつきにくい場合、合同カンファレンスでディスカッションする。だからこそTAVIの治療時は、みんな同じ目線で手術室に入り、いわばチームの代表として、髙木医師が手技を進めていると考えています。この姿勢をさらに徹底したいですね」。
 「そして第二に」と横山は続ける。「ハートチーム結束力の強化です。当院の医療スタッフは元々優秀です。日常業務に加え、自ら勉強し論文も書く。彼らの底力があってこそ、医師は力を発揮できる。だからこそ、みんなには、誰に遠慮することなく、言いたいことは言葉に出すよう勧めています。みんな積極的で、言いたいことを言ってくれますね」。
 最後に髙木の抱負を聞いた。「TAVIは、絶対にチャレンジであってはいけない治療です。医師には、毎回100%同じことをする、一回でもミスをしない正確性が求められます。当院で、TAVI実施は今後増えていくと思いますが、単に症例数を追うのではなく、本当に必要な人に必要な治療を行っていきたい。TAVIに関して、一番適切な手技ができるという自負心はありますが、その自分をさらに高め、後輩を育てIMG_3921る。そして、この地域の皆さんには、大垣市民病院には僕らがいて、安定した成績で患者さんのためになる治療ができると、知っていただきたいですね」。
 自らの責任あるポジションを自覚し、それを冷静に見つめ静かに抱負を語る髙木。その髙木を活かしながら、横山がまとめる大垣市民病院のTAVI。今後のさらなる進展に期待が高まる。

 


 

column

コラム

●髙木は最初に同院に赴任したとき、大きな驚きがあった。臨床で同じ2年の研修を受けた医師たちの動きが、自分とは全く違うのだ。「急変に対応する力、そのレベルが高かった」と言う。また、指導医が厳重にチェックした上で、「若手にもどんどんカテーテル治療をさせてくれた」(髙木)ことも、若き髙木にとっては、この上ない力となった。

●その一方で、学術的な研究も求められる。髙木は「4年間で身についた研究心、探究心は、イタリアでも東京でも活かすことができた」と言う。

●大垣市民病院の医師教育は、徹底した厳しさで定評があるが、それは医学部を卒業したばかりの医師にとって、かけがえのない力を身につけることを意味する。また、ここで育った医師がさまざまな経験を培うときも、その医師としてのありようを決して忘れないことで、研鑽を重ねていくことができる。

●こうして積み重ねられた同院の実力。それが永年、受け継がれていることに、この病院の真髄がある。

 

backstage

バックステージ

●最先端医療を、地域医療に持ち込み実践する。言葉で表すのは容易だが、そのためには誰かが汗をかき、歯を食いしばり、地域の患者を片時も忘れず、追求し続けることが必要だ。

●そしてそれは独りの力だけで終始させず、多職種と連携させチーム力となってこそ初めて、<地域医療>に昇華させることが可能となる。

●いかに速やかに、いかに確実に、そして、いかにしなやかに地域に持ち込むか。

●それでいうと髙木医師は、今なお止まることを知らず、挑戦を続けている。その髙木を要と認め、全体のプロデュースに徹する横山がいる。

●最先端医療と地域医療を繋ぐには、点ではなく線、個人ではなくチーム、そしてそれを強力にバックアップする病院の姿勢。これが揃ってこそ実現するものだと、大垣市民病院のTAVIチームを通して、新たに確認することができる。

 


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