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病院を知ろう

<キュア+ケア>への相互理解が、
住民を見つめた
協業のステージへ。

 

 

東海記念病院


東海記念病院と春日井市民病院が合同で行った<地域連携研修会>。
 <あたかも地域が一つの病院>のように機能する、
新たな地域医療の可能性が広がる。

main

機能と役割を明確にし、その上で、領域が異なる病院と病院が連携する。それが今後の医療提供の形である。
言葉を換えると、地域医療にあっては、いずれの病院も単独で存在することは難しく、異なる機能を互いに補完し合うパートナーの存在が不可欠だ。
そうした医療のあり方を見つめて、より明確に自院の方針を打ち出した東海記念病院。
春日井市民病院との二人三脚の歩みが、地域住民の安心・安全の要となる。

 

 

 

 

 

始まりは、看護師同士の連携強化。

IMG_4196 二つの病院で、新しい試みがなされた。平成27年12月7日開催の「地域連携研修会」である。会場は、春日井市民病院。対象は、同院の看護師。そして、講師を務めるのは、東海記念病院の看護部長と病棟看護師長。すなわち、異なる母体を持つ病院同士の研修会である。
 テーマは、<地域包括ケア病棟の機能と看護>。地域包括ケア病棟とは、平成26年度診療報酬改定で新たに作られた病棟カテゴリー。急性期(※)の治療を終えた患者を受け入れ、継続治療・看護を提供しつつ、在宅生活への復帰を支援する。また、救急患者の受け入れ、在宅で療養する患者の急性増悪時の受け入れをも担う。いわば、医療と生活、病院と在宅を繋ぐ病棟である。
 この病棟を、東海記念病院は50床開設。そこでどのような看護が行われているか、患者をどのように在宅復帰へと促すか。それを、急性期病棟のみを持つ、春日井市民病院の看護師に理解してもらい、二病院の看護師間の連携を深めるのが研修会の目的だ。そのため、看護部長の目野千束は、病棟の役割、看護内容、自院に転Plus顔写真1院した患者のその後、さらには、患者の満足度をデータに基づき説明をした。
 目野は言う。「看護師は、養成・教育機関で急性期看護を学び、医療機関に就職します。つまり、急性期以外の看護知識が元々乏しいのです。加えて、現在は異なる領域を担う病院と病院が連携して医療を提供、在宅復帰へと繋ぐ時代です。そこで重要になる、患者さんの在宅生活を見つめた継続看護、そのための二病院間の看護師連携の重要性をお話ししました」。
 当日は、春日井市民病院から百名以上が参加。看護師に加え、医師やリハビリスタッフ、栄養士たちも顔を見せた。熱心に講義を聞き入る彼らの姿に、目野は大きな手応えを感じたという。

※ 病気や怪我の発症まもなく、激しい症状への積極的な治療が必要な時期。

 

 

点ではなく、面に広がる相互理解。

 Plus顔写真2 今回の地域連携研修会、春日井市民病院の反応はどうだったろうか。まずは同院医療連携室主査で、MSW(医療ソーシャルワーカー)の上野陽介に聞く。「東海記念病院と当院とは、従来から連携し良好な関係を築いていました。ただ、地域包括ケア病棟が新しい領域だけに、当院には今回の研修会で初めて知ったという看護師もいます。当院では、医療連携室が病病連携の窓口を担い、MSWは日々の連携のなかで新しい病棟への理解はありますが、それが看護局全体に周知された点が、とても良かったと感じています」。
 その言葉に頷きながら、春日井市民病院の副院長 兼 医療連携室長である佐々木洋光医師は、こう語る。「急性期病院の平均在院日数が、ますます短縮化されているなか、病病連携の大切さを広く周知させたい、というのが看護局の狙いでした。その意味では看護師にとって、自分の患者さんの継続看護を担ってくれる相手の顔(機能と役割)が解り、ならば自分たちの急性期看護はどうあるべきか、どPlus顔写真3ういう患者さんがスムーズに転院できるのか、といった検討への動きが出ています」と言う。
 「加えて」と、佐々木は言葉を続ける。「医師をはじめ、看護師以外のスタッフも参加してくれたのが、当院としては意味があります。特に、将来の地域医療を担っていく若手医師。彼らは、自分たちが高度な急性期病院として機能しようとしたとき、急性期後を担ってくれる病院の重要性は認識していますが、研修会でその実際が具体的に示され、さらに理解が深まったと思います。つまり、地域連携の重要性への理解が、<個人=点>ではなく、<面=病院>に広がるきっかけになった。それが研修会の大きな成果ですね」。

 

 

春日井市民のための、病院。

Plus顔写真4 東海記念病院(199床)は、急性期から回復期、在宅医療と、ケアミックスの医療を展開してきた。平成26年4月からは、地域包括ケア病棟を段階的に導入。より一層、在宅支援の方向性を打ち出している。これは、<中規模病院は今後、単独では生き残っていけない>という、理事長・岡山政由医師の経営判断。「当院の病院機能を最大限発揮し、基幹病院である春日井市民病院を支えることで、地域に貢献する」との考えからだ。その真意は、春日井市民病院の渡邊有三院長にすぐに伝えられ、経営者同士の理解が生まれていた。
 「地域包括ケア病棟は、当初、院内でも戸惑いがありました」と言うのは、東海記念病院副院長の堤 靖彦医師である。「でも実際に使い始めてみると、なかなか使い勝手が良いんです。急性期でのキュア(根治的治療)は終了したけれど、まだ継続治療が必要、あるいは、高齢で在宅に戻るためにケア(生活に寄り添う全人的な医療、看護)が必要。この点は、急性期病院では大きな問題であり、私も経験しました。そうした患者さんを担うのが、この病棟です。急性期と在宅を繋ぐ役割ですね。但し、キュアの能力が担保されていることが重要。急性期からの継続治療、二次救急、急性増悪時への対応力を有する病院でないとできません」。
049_ToukaiKinenL21_2016 「看護師にもそれは同じです。キュアの流れを持った看護力を有した上で、患者さんが元いた生活に戻るためのケアを提供する。大切なのは<生活>への視点ですね。それを春日井市民病院と当院が、重なりあって持つことの必要性を強く感じます」(目野)。
 春日井市民病院は、年間一万件という、愛知県下で一番、救急搬送を受け入れる病院だ。平成27年10月には、県から救命救急センターの指定を受けた。堤は言う。「春日井市民病院の救命救急センターを守りたいと、当院は考えています。自治体と民間との違いはありますが、<春日井市民>のための病院であることは、同じですからね。そのためにも春日井市民病院とは相互理解を深め、単なる連携ではなく、<協業>による医療連携まで高めたいと考えます」。

 

 

めざすのは、人材の相互乗り入れ。

014_ToukaiKinenL21_2016 二病院の経営者同士、副院長同士、そして、看護部長と看護局長の信頼関係が高まり、今回の研修会は実現した。その研修会で一定の成果を得た今後、二病院の協業はどのような形をめざすのだろうか。
 「患者さんに、段階的に地域に帰っていただくために、安心して紹介できるのが東海記念病院。キュアの能力、長期継続治療・看護の対応力など、信頼して全権を依存できます。今後はもっと医師同士の繋がりを深め、意見交換、コンサルテーションといった形で、行き来ができる関係になりたいですね」(春日井市民病院 副院長 佐々木)。
 「春日井市民病院は、本当に<断らない救急>を実践しています。当院からより高度な治療が必要な患者さんをお願いしても、断られたことはありません。また、当院に患者さんを紹介くださるときも、とても丁寧なアプローチをしてくださる。市民の安心・安全への目線が高い証拠です。今後は、医師同士の関係をさらに深めていきたいですね。現在は、医師の初期臨床研修時の<地域医療>枠で、春日井市民病院の医師をお預かりしていますが、広い視野で述べるなら、医師同士の相互乗り入れなどができるといいですね。もちろん、母体が異なるため、クリアすべき問題はありますが」(東海記念病院 副院長 堤)。
IMG_9558 相互乗り入れは、看護師にもいえる。女性が多い看護職では、出産や育児といったライフイベントに合わせて、春日井市民病院と東海記念病院間で行き来ができれば、地域の大切な医療資源を、地域で大切に守り育てることに繋がる。
 二病院で始まりつつある協業ステージ。その可能性は、地域医療の可能性をも大きく広げようとしている。

 


 

column

コラム

●急性期後の病棟でいうと、東海記念病院も有する回復期リハビリテーション病棟がある。この病棟には、脳血管疾患、脊髄損傷、大腿骨骨折、廃用症候群など、対象となる疾患が限定されている。

●それに対して地域包括ケア病棟は、疾患が限定されてはおらず、本文で記したように、二次救急を受けることができる治療能力と、在宅復帰への支援能力が求められている。

●在宅復帰となれば、リハビリテーション(機能回復、維持)が必要であるが、東海記念病院では、地域包括ケア病棟に専従の理学療法士、作業療法士を配している。「看護師とリハビリスタッフとの間に壁がありません。病棟での看護師申し送りにリハビリスタッフも参加し、患者さん一人ひとりにどうやって在宅復帰への道筋をつけるか、力を合わせ取り組んでいます。元々、リハビリテーションは当院の顔。リハビリテーションを意識したチーム医療に取り組んでいます」(看護部長・目野)。

 

backstage

バックステージ

●団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に達する2025年を目前に控え、今、わが国では、<地域医療構想>が進められている。これは、後期高齢者の増加、イコール、医療・介護需要の爆発的な増加に対し、地域の医療資源を無駄なく的確に、そして、効率的に活用して医療を提供する仕組みの構築である。

●そこでは、領域を異にする病院と病院の連携が前提となるが、患者にとって、病院が変わってもいかにシームレスに医療が提供されるか、そして、いかに在宅への復帰へと繋がるかが、大きな問題である。その解決に何より重要なのは、病院間の相互理解だ。但し、経営層だけではなく、一般スタッフレベルでの相互理解が不可欠である。

●本文で紹介した東海記念病院のアプローチは、まさにスタッフレベルを意識した、本当に<顔が見える>関係づくり。従来からの連携関係ではなく、より明確な意志をもった協業関係構築への大いなる一歩といえよう。

 


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