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シアワセをつなぐ仕事

17万人の安心・安全を守る、
看護からのアプローチ。

三矢 敏(放射線科)、浅岡早苗(地域医療連携室)、鈴木育子(看護部長)/西尾市民病院


 

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西尾市民17万人の健康な生活を支える、西尾市民病院。
市民にとって、急病や怪我のときはもちろん、高齢者が在宅療養するときにも信頼される病院をめざし、
看護師が病院の最前線に立って精力的に活動している。
医師とは違う看護師ならではのアプローチをレポートする。

 

 

 

 



地域の人々から頼りにされる
市民病院であり続けるために、
看護師が最前線に立って信頼を紡ぐ。


 

 

常に先回りして考え、動く。

 Plus顔写真1 西尾市民病院の放射線科に、医師や同僚から大きな信頼を集める人がいる。三矢 敏、入職9年目の看護師である。放射線科の看護師の業務内容は幅広い。CT、MRI、核医学、血管撮影などの各種画像検査、放射線治療(リニアック)のほか、内視鏡検査・治療における看護までをローテーションで担当している。三矢はそれらすべての領域にわたって精通した知識を持ち、患者が不安なく検査・治療を受けられるようサポートしている。
 なぜ、三矢に対する信頼が厚いのか。一つは、三矢が入職以来、ずっと放射線科を担当してきたベテランで、豊富な実績を積んでいるからである。ただ、それだけではない。もう一つの理由は、三矢の<攻めの姿勢>にある。実は三矢が関わる検査・治療には、緊急性を要するものが多い。たとえば、急性心筋梗塞に対する心臓カテーテル検査(詰まった冠動脈をもう一度血液が流れる状態に戻す治療)、消化管出血に対する内視鏡的止血術(出血部位に薬剤を注入するなどして止血する治療)などは、患者の救命に関わる緊急治療である。該当する患者が救急外来に到着したことがわかると、三矢は先回りして救急外来に向かい、患者を検査室へ運ぶ手伝いをする。「常に電子カルテを見て、救急外来の動きをチェックしています。一分一秒でも早く検査・治療を開始することが、患者さんの命を救います」と話す三矢。救急と放射線科を繋ぐ機能を自ら進んで引き受け、スムーズな検査を実現している。
三矢様_業務風景_015 また、スタッフの人数が手薄となる夜間帯は、放射線科をはじめ、各診療科の外来を担当する看護師が救急外来を兼務する。そうしたとき三矢は、「医師の診断の前に、それぞれの症状から、こんな検査が必要ではないかと先行して考え、準備します。たとえば、循環器の疾患が疑われるときは、心電図をとっておいて医師に伝えるなど、常に一歩先のことを考え動いています」と答える。その機転のきいた行動が、多忙な医師の強力なサポートとなっている。

 

 

「家に帰りたい」を何としても叶えたい。

Plus顔写真2 もう一人、<攻めの姿勢>で看護に取り組む人を紹介したい。地域医療連携室・副室長の浅岡早苗である。浅岡は長年、病棟に勤務した後、平成20年から専従の退院調整看護師になった。退院調整には看護師と医療ソーシャルワーカーが関わるが、浅岡が担当するのは、医療依存度の高い状態で在宅へ戻るケースだ。地域の訪問看護師やケアマネジャー(介護支援専門員)と密に連携し、酸素療法、人工呼吸器、経管栄養管理などを要する医療依存度の高い患者も安心して在宅に戻る道筋を支援している。
  浅岡が信条としているのは、「家に帰りたい人は、できるだけ家に帰す」というシンプルな思い。「たとえば、主治医が、患者さんの病状から<転院がふさわしい>のではないかと考えた場合でも、必ず併せてご本人や家族の希望を聞きます。そこで、自宅療養を希望されるなら、何とかしたい。どうすれば自宅で治療を受けられるか、訪問看護師などに相談しつつ、あらゆる手を尽くします」。その粘り腰の姿勢は、自他ともに認めるところ。「退院調整看護師として、これまで地域の在宅医療チームと丁寧に人間関係を紡いできました。こうした人間関係があるから、難しい局面も乗り越えられます」とほほえむ。また、医師も、退院調整を任せられる浅岡がいるから、安心して患者を地域へ帰すことができる。
浅岡様_業務風景_021 地域と病院を繋ぐ架け橋として院内外を走り回る浅岡だが、その合間を縫って、病棟看護師の教育にも力を注ぐ。これが浅岡の<攻めの姿勢>の表れ。「これからは急性期病院でも、在宅への目線が必要不可欠。<どこまで日常生活動作ができれば、家に帰って困らないか>といった基本をきちんと考えられる看護師を増やしていきたいですね」と浅岡。<退院後の生活>への理解を促すために、浅岡は退院前の自宅訪問の際、病棟看護師にも同行を促すなど、勉強の機会を積極的に設け、直接指導しているという。

 

 

少ない人数で懸命に頑張る
医師たちをサポートしたい。

IMG_7669 西尾市民病院の入口(救急)を担う三矢と、出口(退院・転院)を担う浅岡。二人に共通するのは、自分の守備範囲に留まることなく、自分ができることを主体的に考え、自律して行動していく姿勢だろう。二人を突き動かす根底にあるものは、<地域の患者さんのために全力で尽くしたい>という思い。そして、<市民病院としての責務を果たしたい>という強い責任感である。
 西尾市民病院は長く医師不足や赤字経営に苦しんできた。平成25年、禰宜田(ねぎた)政隆が院長に就任して以降は、院長自らが陣頭指揮を執り、病院再生に取り組んできた。その成果は少しずつ形になってきているが、医師不足はまだ解消されていない。限られた人数の専門医が寝る間を惜しんで救急搬送を受け入れ、入院治療に邁進している。その姿を間近に見ている看護師らは、自然と医師へのサポートに意識が向くという。「僕たち看護師ができることは精一杯やりたいと考えています。看護師としての本分に加え、常に<先生方が診療に専念できるように>ということも念頭に置いて動いています」と三矢。浅岡もまた、「面倒な書類作成をフォローするなど、先生方の負担を少しでも軽くできるように努めています」と言う。
 三矢たちの思いは、看護部の総意でもある。「この病院を守っていくために、医師の力がもっと必要です。研修医を継続的に獲得し、若手医師の定着化を図るために、看護部のパワーをフルに発揮して、サポートしていきたいと考えています」と、看護部の鈴木育子部長は語る。

 

頼りになる市民病院として、これからも。

Plus顔写真3 看護部のパワーを高めるために、必要なものは何だろうか。「看護師を育て、看護師が誇りを持って働ける環境を作ること」だと鈴木部長は言う。そのために、鈴木部長は職場満足度調査を行い、環境の改善に取り組むなど、具体的な方策を次々に打ち出している。平成26年度からは、新看護方式として「パートナーシップ・ナーシングシステム(PNS)」もスタートさせた。PNSは2人がペアを組んで一人の患者を受け持つことにより、看護師の不安やストレスの軽減とスキルアップを促すもの。「パートナーと二人三脚で仕事できるので、部署の異動もスムーズです。新しく異動した人が熟練者とペアを組むことにより、部署特有の疾患の知識、看護技術などを学べます。PNSを活用して、どんな分野にも対応できるジェネラリストを育てていきたいと考えています」。
 また、三矢や浅岡といった、意識の高い看護師をコアとして、看護部全体で看護の質や意識を高めることも大きな目標である。「今は二人をはじめ、それぞれ、創意工夫して専門性を高めてくれている看護師がいますが、そういった個々のノウハウを組織で共有し、全体のレベルを引き上げていきたいと考えています」。
109101 こうした看護部のビジョンの向こうに鈴木部長が見つめるのは、「これからの西尾市民病院」に他ならない。「医療資源は限られていますが、市民の皆さんに<市民病院があってよかった>と、思っていただきたいんです。いざというときに地域の方々の命を守る病院、健康を支える病院として、頼られる病院であり続けるために、看護部が率先して動いていこうと思います」。鈴木部長は力強い口調でそうしめくくった。


 

 

columnコラム

●西尾市民病院は地域の救急・急性期医療ニーズに対応する一方で、在宅療養を支援する役割も強化している。具体的には平成27年4月、地域包括ケア病棟を開設し、急性期治療を終えた患者を受け入れ、在宅復帰を支援している。今後はさらに、地域包括ケア病棟専従の医師を確保し、在宅で療養する患者を緊急時に受け入れ、迅速な治療を提供し、再び在宅へ帰す機能も担っていく計画を持つ。

●地域包括ケア病棟ができたことにより、看護部全体の<患者さんを家に帰そう>という意識も高まってきたという。「これからは<急病のときはもちろん、在宅療養中に急変したときもいつでも市民病院に来てください>と言えるようになりたい」と鈴木部長は意欲を見せる。在宅療養支援に向けて、さらなる看護部の強化を図っていく方針だ。

 

backstage

バックステージ

●これまで市民病院といえば、幅広い診療科を網羅する病院と考えられてきた。しかし、西尾市民病院のような中規模病院が、あらゆる診療科の専門医を確保することは難しい。また、地域完結型医療が求められ、病院の役割分担が進むなか、市民病院がすべての診療科を網羅することはもはや現実的ではない。今後、市民病院に求められるのは、救急医療を守り、頻回に発症する疾患へ対応する、そして患者を在宅療養へと繋ぐことではないだろうか。

●また、超高齢社会が到来し、多くの人が何らかの病気を抱えながら生活する今後、医療のあり方も、従来のキュア(疾患の治療)中心から、ケア(療養上のお世話や生活の支援)中心の医療へと重心が移っていく。

●こうした背景のなかで、看護師の果たす役回りは大きい。三矢や浅岡のような意識の高い看護師が、気づきを持ち、自らが果たすキュアとケアの領域を広げていくことは、今後求められる市民病院の機能をさらに高めることに繋がるのではないだろうか。

 

 


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