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シアワセをつなぐ仕事

私たち、めざす看護、
めざす病棟づくりの
仕掛人!

田中 史・上原美香・松下美加・横井翔子/中京病院 26病棟


 

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今回の舞台は、中京病院の26病棟。
整形外科・腎臓内科・脳神経外科の混合病棟である。
病床数は56床、看護師は総勢44名。
看護師長、副師長のもとに、2チームが編成されている。
これらのチームを率いる2名のチームリーダーを中心に、
より良い看護をめざした病棟づくりが展開されている。

 

 

 


和やかな病棟の雰囲気づくりを大切に、
転院・退院後の生活を見据えた
質の高い看護を提供していきたい。


 

 

 

26病棟の特長は
患者の笑顔と雰囲気の良さ。

  「鬼はそと〜、福はうち〜」。その日、中京病院・26病棟のディルーム室から、楽しげな声が響いていた。入院患者を集めて行われた、節分の豆まきである。これは、同病棟で毎週1回開催されているレクリエーション。季節の行事のほか、童謡コーラスや風船遊びなど多彩なプログラムが企画されている。レクリエーションというと、回復期の病院や施設などで症状の落ち着いた患者を対Plus顔写真1象に行われるイメージがあるが、なぜ、高度急性期病院である中京病院で行われているのだろうか。その問いに答えてくれたのは、入職4年目の田中 史看護師。「26病棟は高齢患者さんが多いんですね。それで、どうすれば患者さんの離床を促し、早期退院に繋げられるだろうと考えたとき、<楽しみながら体を動かすことはできないか>というアイデアが生まれ、この取り組みを始めました」。高度急性期病院の使命は、高度な治療を短期間で集中的に提供し、早期退院を促すことにある。そこで近年は、急性期から積極的にリハビリテーションを開始するようになってきたが、その考えを一歩進めて、レクリエーションの取り組みがスタートしたのだという。その成果について、田中と同期の松下美加看護師は「患者さんのイキイキした表情がPlus顔写真2見られ、日常生活機能の向上に役立ったことを実感しています。それに、患者さんの笑顔を見ると、私たちも元気になれます」と話す。
 このレクリエーションに象徴されるように、26病棟にはどこか和気あいあいとした空気感が漂う。「そうなんです。この雰囲気の良さは、私たちの病棟の自慢です。患者さんとのコミュニケーションを大切にしていますし、職員同士の関係もとても良好です」と田中は声を弾ませる。手厚い看護が要求される高度急性期病院では、看護師はともすれば業務に追われがちになる。しかし、そんなとき、和やかな雰囲気に包まれることで看護師は心のゆとりを取り戻すことができ、患者にとっても心やすらかに療養できる環境を作っている。

 

 

病棟の良き風土を
後輩たちに継承していく。

 入職4年目となる田中と松下は今年度(平成27年度)初めて、新人のチューターの役割を担った。「初めて教える立場になり、自分たちも学ぶことがいっぱい」と苦笑する二人だが、教えるなかでいつも心がけているのは、二人が肌で感じている<病棟の良さ>を継承していくことだといPlus顔写真3う。「急性期だから、患者さんの入退院も多く、あわただしいところもあります。でも、穏やかな雰囲気づくりを大切に、患者さんの笑顔を引き出せるような看護師に育ってほしいなと考えています」と田中は話す。松下もそれに加えて、「まだ難しいかもしれませんが、退院後の生活や地域連携への意識も持つように指導しています。入院期間の短縮化に伴い、患者さんを地域(生活の場)にお帰しすることを念頭に置いて、看護することが重要になってきましたから」と話す。
 二人のチューターの言葉を聞き、大きくうなずくのが、チームリーダーの横井翔子と上原美香である。横井は「それこそ、私たちのめざす病棟の姿です。後輩たちがそんなふうに、病棟の良さをきちんと理解してくれて、継承していってくれることがうれしいですね」と感想をもらす。Plus顔写真4
 チームリーダーは、病棟のなかで、看護師長・副看護師長が示す方針のもとで、病棟の看護全体に目配りし、看護師の業務量のバランスを見たり、不足を補ったりしながら、実務を率いる役目を担う。いわば、実質的な<病棟づくりの仕掛け人>と言っていい。その大きな責任を二人は自覚し、これまで何度も<26病棟のこれから>について熱い議論を交わしてきた。「患者さんの急変への対応などで、看護師同士がピリピリすることもあります。でも、それをカバーするだけのふわっとしたゆとりの空気感や、みんなで助け合うムードづくりを大切にしていこうと話し合っています」(上原)。

 

 

回復期の病院へ
シームレスに看護を繋いでいきたい。

IMG_6311 レクリエーションの取り組みからもわかるように、26病棟における看護の重要なテーマは、患者のADL(日常生活動作)機能の回復を促し、早期退院へ繋げることだ。そのため、リーダーの二人はかねてより、ADL向上をめざした看護に力を入れるとともに、「回復期病院との連携」を強化してきた。
 回復期病院と連携を進める上で核となるのが、「地域連携パス」である。地域連携パスとは、急性期病院から回復期病院を経て、早期に自宅に帰れるような診療計画を、治療に関わる医療機関で共有して活用するもの。同病棟では「大腿骨頚部骨折」の患者に関して地域連携パスを積極的に運用。看護師が地域連携パスの趣旨をよく理解し、連携先の回復期の病院スタッフと連携を図りながら、患者のスムーズな転院を支援している。
 しかし、地域連携パスの導入前は、その言葉IMG_0549の意味をよく知らない看護師も多かったという。そこで上原たちは、クイズ形式で楽しみながら地域連携パスを学ぶ勉強会を開催したり、病棟看護師と一緒に回復期病院へ見学に行き、看護の連携の重要性について理解を深めてきた。「回復期の病院見学では、リハビリテーションで元気を取り戻した患者さんに再会することもでき、日々の看護のモチベーションアップに繋がっています」と横井は話す。

 

 

患者の在宅療養支援も視野に入れ、
さらに看護の質の向上を図る。

IMG_0563 最後に、リーダーの二人にこれからの戦略について聞いてみた。「やはりこれからも、患者さんが笑顔で過ごせるような病棟にしていきたいと思います。そのためには、看護師一人ひとりの知識・技術をもっと底上げしていかなくては…」と話すのは、横井である。そこで横井が考えているのが、同院のリソースナース(※)の活用だ。「26病棟では、老人看護専門看護師や認知症看護認定看護師が、認知症やいろいろな健康問題を抱える高齢の患者さんのケアについて指導してくれています。そうした専門的な看護の知識と技術をもっと学び、チーム全員で共有していきたいですね」。
 一方、上原は院内から地域へ視線を広げる。「中京病院が掲げる<地域とともに歩む病院>という大きな目標に向けて、看護部長や看護師長も地域との連携強化を目標にしています。私もその方IMG_6768向に沿って、転院後も患者さんが質の高い看護を受けられるように、地域の回復期病院と顔の見える関係をさらに深めていきたいと考えています。また、自宅に帰られる患者さんについても、退院に同行するなどして、安心の在宅療養のスタートを支えていけたら理想的ですね」。
 現状に満足することなく、一段と高い目標を掲げる二人のリーダー。彼女たちが中心となり、26病棟をさらに魅力的な病棟に育て、そこで実践される質の高い看護を地域へ繋いでいこうとしている。

※ 専門性の高い知識・技術を持ち、看護実践を支援する人的資源。


 

 

column図

●中京病院では、<自律できる人づくり>をコンセプトに、新人看護職員を病棟全体、チーム全体で育てる体制を敷いている。特筆すべきは、その指導者層の厚みだろう。上の図で示したように、新人看護職員のパートナーとなる<チーム支援者>だけでなく、<チューター><実地指導者><新人管理研修担当委員><看護師長・副看護師長>に至る各階層の職員が、それぞれの立場で新人教育に関わり、看護師一人ひとりの成長スピードや個性を尊重したきめ細かい教育を実現している。

●学ぶ人、教える人、教える人を支える人…という屋根瓦方式で人員を配置している狙いの一つは、<教える人>のストレスを軽減する意味合いもある。「教える側は常に大きなプレッシャーと責任を感じています。その負担が軽くなるように助言したり、新人にも直接声をかけるようにしています」と、リーダーの横井は話す。

 

backstage

バックステージ

●一般に看護師教育は、看護実践能力開発プログラム(クリニカルラダー)にそって、集合教育とOJT(実務を通じての訓練)を通して行われる。OJTで重要なのは、どんな看護師を育てるために訓練を行うか、という目的設定だろう。目先の看護実践の到達目標ではなく、病院のめざすべき方向に歩調を揃えた人材育成の目標を設定し、その目標に向けて実践されてこそ、より実りのある教育が実現する。

●中京病院では、「地域医療の改革を進め、安心して暮らせる地域づくりに貢献する」というJCHO(独立行政法人 地域医療機能推進機構)の理念のもと、<地域医療の要>となる病院づくりを推進している。その一つとして、地域連携パスや認知症看護の一環であるレクリエーションを通じて地域に目を向けた看護の取り組みを実践している。

 

 


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