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明日への挑戦者

看護とは、人々の生活に寄り添い、
その人らしい健康を支えること。
その原点に立脚し、
確かな実践能力を育む。

 

 

日本福祉大学


人々の幸せな生活を見つめる   
日本福祉大学で始まった、
これからの社会が求める看護師の養成。

main

平成27年4月、日本福祉大学東海キャンパスのオープンとともに
開設された「看護学部」。
真新しい学舎で、多くの学生たちが看護職をめざして学んでいる。
その教育は、看護の本質にこだわり、基礎的な看護実践能力の教育に力点を置く。
次代を担う看護師の養成をめざす、日本福祉大学の新たな挑戦を追った。

 

 

 

 

 

教育ビジョンの柱は看護の本質の追求。

Plus顔写真1 ここ数年、大学の看護学部・学科の新設が相次いでいる。そうしたなかで、日本福祉大学の看護学部は、構想から5年以上を費やし、まさに満を持して開設された。「やはり<ふくしの総合大学>が看護学部を作るのだから、よほどの覚悟を持ってしっかりした学部を作らなくては社会から認めていただけない、という思いが私たちの間にありました」と語るのは、看護学部の設置準備に計画当初から携わってきた東海キャンパス事務部長の塩見 渉である。とくに教育の核となる看護学部長の人選については、慎重に討議がなされたという。候補として白羽の矢が立ったのは、それまで愛知県立大学で長く教鞭をとり、学部長まで務めた山口桂子教授だった。「山口学部長は、豊富な教育歴と研究実績、そして何よりも看護教育に対して確固たる信念をお持ちです。そういったところが本学の看護学部のリーダーにふさわしいと、学部長就任を、お願いすることになりました」(塩見部長)。
Plus顔写真2 では、その確固たる信念とは何か、山口学部長に話を聞いた。「一言で言えば、看護の本質を大事にしたいということです。看護とは何か?…と考えていくと、<人々がその人らしく生活できるように支援すること>に行き着きます。その原点に立った看護を実践できる看護師や保健師の育成に力を注ぎたいと考えています」。その山口学部長の思いは、<人々の幸せな生活を支援する人材>育成を進める日本福祉大学の理念と響き合う。「本学を選ぶ学生さんは皆、多かれ少なかれ、人に関心があり、人々の役に立ちたいという気持ちがあると思います。<ふくしの総合大学>を標榜する大学が行う看護師養成に参画してみたいと考えて、この任をお引き受けしました」と山口学部長は振り返る。

 

 

看護実践能力に必要な 「4つの力」を鍛える。

Plus顔写真3 看護の本質を追求する山口学部長の思いを、実際の教育内容に落とし込んでいったのが、学部長補佐の白尾久美子教授をはじめとする、看護学部立ち上げメンバーだった。「山口学部長の考えとブレが出ないよう、カリキュラムの細部や物品調達の一つひとつにもこだわった」という白尾教授に、その教育の特徴を説明してもらった。「教育の柱は、看護の基礎的な実践能力の育成です。看護には、成人看護、精神看護、在宅看護などの多様な専門領域がありますが、そこで専門性を発揮するには、まずベースとなる基礎的な看護力を確立しなくてはなりません。それは簡単そうで、実はなかなか難しいんです。そのため、カリキュラムは基礎を中心に必要な科目を絞り込み、徹底して基本が身につくよう工夫しました」。
 さらに、看護職の基盤を成す人間力の養成に力を入れているのが、同学部の大きな特徴だ。「看護師に必要な人間力として、<4つの力(伝える力・見据える力・共感する力・関わる力)>の育成をめざしています。たとえば、伝える力では、グループワークやレポート提出を通じて、<聞いて・話して・書く力>をトータルに訓練していきます。そうやって看護師の土台を作り上げた上に、確かな看護実践能力を積み上げていきたいと考えています」と、白尾教授は語る。
図 この4つの力は、日本福祉大学の全学共通の人材養成目標(日本福祉大学スタンダード)ともなっている。ここも、山口学部長の思いと同大学の教育方針が重なり合う部分だ。山口学部長は「<4つの力>というキーワードを初めて見たとき、とても共感しました。まさに看護学部の教育指針にふさわしいと考え、土台に据えています」と話す。

 

 

どうして、
ベーシックな看護教育にこだわるのか。

講義風景_050 看護の本質の追求、看護の基礎力の育成…。なぜ、同学部はそこまでベーシックな看護基礎教育にこだわるのだろうか。「昨今、病院などの臨床現場に見られる医療の高度化や複雑化の一方で、健康問題を持ちながらも地域で生活する人々のニーズにも応えなければいけない。そういった状況において、医師や看護師を含むコメディカルスタッフが、それぞれの専門性をより発揮し、チームで医療を提供することが求められています。そのなかで、看護職が果たす役割もこれまで以上に重要視され、より水準の高い専門的な看護ケアの提供とともにコーディネーター的な役割も求められるようになっています。そして、専門看護師や認定看護師といった分野ごとのスペシャリストも多く登場してきました。ただ、こうした看護師の専門性のベースには、確かな基礎的看護実践能力が必要になります」と、山口学部長は、土台作りの重要性を説く。
講義風景_071 さらに近時では、JANPU(一般社団法人日本看護系大学協議会)において、高度実践看護師教育課程として、専門看護師の他にナースプラクティショナーを養成する教育課程が認定され、その教育が始まっている。また、一方では、保健師助産師看護師法に示された<特定行為研修>の制度に見られるように、今後の看護業務拡大の動きも見えてきている。「時代のニーズを受け、看護師の活躍の場は広がりを見せています。キャリアアップの先で、こうした高度実践看護師としての道を歩む学生も出てくるでしょう。しかし、その過程で<人々の生活に寄り添い、その人らしい健康を支えること>という視点がおろそかになってはいけません。私たち教員には、学生に対し、コミュニケーション能能力を含む確かな基礎的看護実践能力を育み、看護師としての大切な視点を持ち続けられるよう、導いていく責務があると思います」(山口学部長)。

 

 

地域包括ケア時代に必要な看護師を、
大学全体で育てる。

講義風景_062 人々の生活と健康を支える看護職養成をめざした同学部の姿勢は、別の視点から見ると、時代の流れにも合致している。団塊の世代が75歳を超える2025年に向けて、地域のなかで住まい・医療・介護・予防・生活支援のサービスを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」構築の取組みが始まっている。それにともない、これまでの病院中心の医療から在宅医療へのパラダイムシフトが進行。今後、病院の平均在院日数はさらに短縮化され、ADL(日常生活動作)が充分に確立しないまま地域(自宅や施設)へ戻る患者が増えるだろう。そして、多くの人が、病気を抱えながら地域のなかで生活する時代が到来する。そこで必要になるのは、人々の療養生活の質の向上をサポートする看護師や保健師の存在である。
外観_003  医療機関の看護師は、患者に寄り添い、患者を一番近くで知る存在。そして、同時に医療にも精通した存在である。だからこそ、医療必要度の高いまま地域へ戻る患者にとって欠かせないパートナーとなる。「これからは、病院の看護師には、より退院後の生活までを見据えた看護が要求され、在宅ケアを担う看護師には、患者さんの安全で安楽な療養生活を支えていく看護が求められます。どんな場面でも<生活支援>が重要な鍵を握ると思います。また、地域包括ケアシステムは、病院や診療所といった医療機関だけではなく、行政をはじめ地域全体が一体となって実現していくものです。そこでは、医師・看護師・保健師だけでなく、理学療法士や作業療法士、社会福祉士などいろいろな立場から、人々の豊かな生活を支えていくことが重要になるでしょう。人々の暮らしと密接したさまざまな学部の学生や教員との接点が身近にあることは、本学の看護職養成の特長の一つです」と、山口学部長は言う。
 日本福祉大学の看護学部は、知多半島で初めて開設された4年制の教育機関であり、地域の医療界からの期待も大きい。「本学で学んだ卒業生たちが、地域医療のさまざまなところへ就職し、人々の気持ちに寄り添い、生活を支える看護を実践していってほしいと願っています」(山口学部長)。<人の幸せを見つめる日本福祉大学>らしい看護師が羽ばたいていくのは、平成31年3月から。その旅立ちの春が、今から待ち遠しい。

 

 


 

column

コラム

●日本福祉大学は、昭和28年創立の中部社会事業短期大学を前身として、昭和32年創設。社会福祉系の4年制大学として日本で最も古い歴史を持ち、今日まで送り出した卒業生は約7万人に及ぶ。

●現在は、「健康・医療」「福祉・経済」「教育・発達」の3つの領域において、社会福祉学部をはじめ、経済学部、健康科学部、子ども発達学部、国際福祉開発学部、福祉経営学部(通信教育)、そして看護学部の7学部を開設している。

●創立60周年を迎えた平成25年には、「地域に根ざし、世界を目ざす『ふくしの総合大学』」という大学コンセプトを策定。全学部に共通して、すべての人々が幸せに生活できることを支援できる人材育成を進めている。平仮名の「ふくし」には、「ふつうの・くらしの・しあわせ」を実現しようという思いが託されている。

 

backstage

バックステージ

●2025年に向けて、病院中心の医療から在宅医療へと、医療の提供体制が変わりつつある。同時に、特定行為の研修制度開始にも見られるように、看護業務が拡大される動きもあり、今後、看護職の働く場所や働き方は大きく変化していくことが予想される。

●だが、どんなに時代が変化しても、ナイチンゲールが唱えた看護の本質は変わらない。すなわち、「看護とは患者の生命力の消耗を最小にするように、暖かさや清潔さ、適切な食事などのすべてを整えること」にある。どんな場面においても、いかに人々が安全・安楽に過ごせるかを考え、さまざまな角度から生活を援助していくことこそ看護師が果たすべき役割の肝である。看護師を取り巻く環境が激しく変化するからこそ、基礎的な看護実践能力を大切にした教育を貫く日本福祉大学。その骨太の教育成果を、大いに期待したい。

 


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