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大見出しLINKEDではこれまで、病院の視点、生活者の視点から「地域医療構想」の課題や見通しをレポートしてきた。
今号はその続編として、患者に最も近い存在である看護師の視点から、地域医療構想を見つめ、
〈2025年に向けて、安心の地域医療体制を創り上げる〉ための問題と処方箋を探っていく。看護師の視点を把握するために、LINKED編集部では、愛知県内の複数の病院、愛知県看護協会にご協力をいただき、看護部長の座談会やインタビューを実施した。
それらの意見のなかから共通の思いを一つに集約し、〈急性期病院に勤務する、ある看護部長からの提言〉という形にまとめた。

地域医療構想とは?

 地域医療構想は、団塊の世代が75歳以上になる2025年の医療需要(患者数)を予測し、そのときに必要な医療機能を考え、在宅医療ニーズも含めて最適な地域医療の形を示すものである。具体的には、病院の病床(入院ベッド)の機能を「高度急性期・急性期・回復期・慢性期」の4つに分け、都道府県内にある二次医療圏(※)をベースにした構想区域を単位にして、それぞれに必要な病床数を定めていく。
 現在、愛知県は11、三重県は8つ、岐阜県は5つの構想区域ごとに、地域医療構想の策定作業が進んでいる。その進度は構想区域によって異なるが、おおむね2016年度の策定をめどとし、策定された内容を都道府県の医療計画に反映していく計画である。

※二次医療圏は、特殊な医療を除く、入院治療を主体とした医療需要に対応するために設定された区域。

図

 


 小見出し1 地域医療構想の基本は、どの領域の医療が足りないのか、あるいは重複しているのかを分析し、地域ごとに最適な地域医療のあり方を考えていくことです。その実現をめざし、今、各地域で、病院や医師会などの医療関係者、行政の担当者などが集まり、各病院が担う役割分担について協議しています。
 私たちの地域の現状は、他の地域と同様に、〈治す病院(高度急性期・急性期)〉が多く、〈治し支える病院(回復期・慢性期)〉が不足しています。そのため、治す病院の多くは病院機能の一部転換を迫られていますが、病院間の調整は難航しています。
 難航している理由は、〈病院機能を転換して、果たして自院が存続できるだろうか〉と、経営面に頭を悩ましている病院長が多いからだと思います。また、急性期医療の機能を縮小することにより、医師のモチベーションの低下を不安視する声も聞かれます。地域医療のあるべき姿をめざし、地域の各病院がそれぞれの将来像をきちんと描いていくには、まだしばらく時間がかかりそうです。

問題1イラスト_1

処方箋見出し

看護師が、患者さんや地域住民の声を代弁していく。

 自分たちの病院は将来、どんな病院としてやっていくべきなのか。その答えは、地域の医療ニーズのなかにあると思います。地域住民の皆さんが今、何に困っているのか、今後、どんな医療を求めているのか。その声を反映しないと、本当に地域で必要とされる病院のビジョンを描くことはできません。そして、そうした地域の声を敏感に察知するのは、患者さんの一番そばにいる私たち看護師の役割ではないかと思います。看護師が患者さんやご家族の思いを受け止め、代弁者となり、院内での発言力をもっと高めていくべきではないかと考えます。

 


 小見出し2 地域医療構想では、機能の違う病院同士が連携して、医療を提供していく体制をめざしています。これからは、患者さんは〈治す病院〉で高度な治療を集中的に受けた後、病状によっては〈治し支える病院〉に転院して、在宅復帰に向けた治療を受けていくことになります。前述のように、各病院の役割分担は、まだ決まり切っていません。それでも一部では連携体制づくりがスタートしました。
 連携で大切なのは、患者さんを〈送る側〉と〈受ける側〉が相互理解を深めるとともに、転院前の症状や治療方針といった必要な情報を、病院間でしっかり共有することです。その部分で、まだまだ会話が不足。送る側からの情報と患者さんの状況が異なり、受ける側が慌てるということもあるようです。理由を考えると、異なる病院の医師同士、看護師同士が、本音で話し合える関係を構築できていないということがあります。また、患者さんやご家族への情報提供不足も問題です。転院の意義や目的、転院先の治療内容などを充分に理解しないまま、転院日を迎えると不満が生まれます。「なぜこんなに早く追い出されるのか」という気持ち。きめ細かい情報提供がなされていないことを物語っています。

問題2イラスト_1

処方箋見出し

看看連携(看護師同士の連携)を強化する。

 機能の異なる病院同士の連携を強化し、スムーズな転院を実現して、患者さんの満足度を高めるには、やはり看護師が率先して動いていくべきだと思います。患者さんを〈送る側〉と〈受ける側〉の看護師が、患者さんやご家族の希望、看護の注意点などの情報をきちんと共有することで、真の意味で患者さんを中心にした連携が実現すると思います。そのためには、連携する病院の看護師同士が、まず互いを知ること。施設見学や顔を合わせての協議の場を設けるなど、さまざまな機会を作ることからスタートです。

 


 小見出し3 地域医療構想のめざす先にあるのは、〈病院から在宅へ〉の医療提供体制の転換です。国は、病院中心の医療提供ではなく、在宅で医療を過不足なく提供することで、医療費を削減していきたい考えです。それを実現するには、在宅医療を支える看護の充実が必要ですが、まだ充分とはいえません。たとえば、医療依存度の高い患者さんへの専門的な看護支援、がん患者さんが安楽に過ごせるような痛みのコントロールをはじめ、褥瘡(じょくそう:床ずれ)を予防するケア、摂食・嚥下障害(食べ物がうまく飲み込めない症状)へのケアなどが、在宅でも提供されれば、患者さんやご家族はどれほど安心されることでしょう。でも、そうした専門的な看護を実践・指導できるリソースナース(※)は、現在、〈治す病院〉に集中しており、在宅の現場まで広がっていないのが現状です。
 また、在宅医療に携わる看護師の数も不足しています。看護師の間では、これまでは病院内看護が中心であり、なかなか〈病院から在宅での活躍の場の転換〉が進んでいません。

※専門看護師や認定看護師など、より良い医療提供のためのキーパーソンとして活動する、専門性の高い知識・技術を持つ看護師。

問題3イラスト_1

処方箋見出し

病院の看護師が、もっと地域に出ていく。

 病院の中で働くリソースナースを、もっと地域に派遣していくべきだと考えます。リソースナースが地域に出て、訪問看護や介護・福祉施設で働く看護師たちに、専門的な看護を指導することにより、地域全体の看護レベルの底上げを図ることができます。その一方で、病院の看護部を卒業し、「在宅医療の最前線で働きたい」という看護師がいれば、その背中を押していきたいと思います。地域で最もたくさんの看護師を抱えるのは病院です。看護師という貴重な医療資源が、病院内に集中するのではなく、地域全体で活かされるような発想の転換が必要だと思います。

 


 小見出し4 問題01〜03を解決していく上で、大きな障壁となっているのが、地域の看護師が繋がっていないことです。高度急性期・急性期・回復期・慢性期の各病院から、町の診療所、訪問看護ステーション、介護施設・福祉施設まで、看護師が働くフィールドは多岐に亘っています。そしてこの流れに沿って、患者さんは今後、医療・看護を受け生活を続けていきます。しかし、それらの領域の壁を超えた看護師の交流や意見交換は、あまり活発とはいえません。それが看護師たちの知識・技術の偏りに表れています。
 たとえば、病院で働く看護師の多くは、患者さんの退院後の生活や在宅ケアの重要性について充分に認識していません。反対に、訪問看護ステーションや施設などの看護師は、患者さんが入院中に受ける濃密な急性期看護について、理解していないケースもあります。個々の組織では、さまざまな対策を練っています。しかし、それが地域の総力となっておらず、結果、患者さんはいわばぶつ切り状態の看護を受けているのが実情です。

問題4イラスト_1eps

処方箋見出し

地域の看護師が繋がる
〈教育〉と〈場〉と〈道具〉を作る。

 多様な領域の看護師を繋げるきっかけ作りとして有効なのが、〈教育〉です。私自身も含めて、看護師は、学ぶことが本当に好き。知識のアップデート(更新)には意欲的です。そうした〈学習意欲〉を、継続的に喚起すれば、看護師はもっともっと成長できます。
 また、教育を通した出会いの〈場〉を作ること。実際に顔を合わせる勉強会は地域で少しずつ始まっていますが、職種的に時間的制約が多いことを考えると、ICT(※)といった〈道具〉を積極的に活用するなど、看護師を孤立させず、個々の力を集積する。そうすれば、地域の看護師は繋がることが可能となり、結果、患者さんにとっては質の安定した継続看護を、どの環境にあっても受けることができ、また、必要に応じて必要な医療に繋がることができるのではないでしょうか。

※ITの概念を一歩進め、通信コミュニケーションを加味した情報通信技術。

 


 結論結論イラスト_1こう考えています さまざまな二次医療圏で看護に携わる看護部長に話を聞き、示唆に富んだ意見を聞いた。そのなかから共通の考えをまとめたのが、今回の、看護の目線から見た「地域医療構想の問題と処方箋」である。正確を期すと、地域によって現実的な動きに違いはある。地域医療構想の策定以前から、地域の病院看護部に働きかけているところ。これからスタートというところ。さまざまではあるが、〈看護部長の思い〉という面での共通認識をまとめた。
 実は座談会のなかで、看護部長たちが看護師自身の問題として、共通してとらえていることがある。「看護師は自分たちをアピールすることが下手」という点だ。そもそも看護師は、患者に対して、単に医師の指示に従い医行為を提供したり、療養生活の世話をするだけの職種ではない。〈医療の知識を持ち、医学的な見地から患者を援助する生活支援者〉である。あくまでも生活に根づいた視点で、エビデンス(科学的根拠)に基づき患者を支える仕事なのだ。だからこそ、チーム医療のなかで、患者や家族の状況、思いを他の医療職に繋ぐ〈要〉と成り得る。これは病院や診療所など、組織体が変わろうと同じである。
 そうした自分たちの本領を、看護師は自ら語ることが少ない。しかし、これからの医療は、病院から在宅へという流れになっている。国の政策ではあるが、ともすれば、医療を提供する側の価値判断が優先され、医療を受ける患者の思いは置き去りになりがちだ。そのとき、生活者の存在を知らしめ生活者を守るのは、医療の視点と生活の視点を併せ持つ看護師。「今こそ、自らを語ることが、最終的には、生活者の安心に繋がることを、私たち自身が認識しなければ…」。
 地域にある医療機関が密に連携し、地域全体があたかも一つの病院のように繋がる未来へ。そのためにも、看護師自身が高い意識を持って、変わることが必要。すべては患者のために。それが看護部長たちの共通した思いである。


 

平成28年6月20日(月)、LINKED編集部は、プロジェクトリンクト事務局にて、〈看護部長座談会〉を開催しました。当日は愛知県下の8名の看護部長・次長、愛知県看護協会から会長、監事、合わせて10名の方々がお集まりくださり、3時間余りの意見交換を行うことができました。
また、事前ヒアリングとして、東海三県の看護部長の方々にもご意見を伺いました。
座談会出席の皆さま、また、事前ヒアリングにご協力くださった皆さまには、心から御礼を申し上げます。

 

HEYE

名大総長 松尾清一/
自らを知り、地域の声を聞き、
長期目標をもって、戦略的に組み立て直す。

元厚生労働副大臣 大塚耕平/
デュアルシステムと処遇。

EEYE

自らも変わり、そしてその本領を発揮する時代へ。

 


SPECIAL THANKS(編集協力)

「PROJECT LINKED」は、本活動にご協力をいただいている下記の医療機関とともに、運営しています。
(※医療機関名はあいうえお順です)

愛知医科大学病院
愛知県がんセンター 中央病院
足助病院
渥美病院
あま市民病院
安城更生病院
伊勢赤十字病院
稲沢厚生病院
稲沢市民病院
鵜飼リハビリテーション病院
大垣市民病院
岡崎市民病院
尾張温泉かにえ病院
海南病院
春日井市民病院
可児とうのう病院
蒲郡市民病院
刈谷豊田総合病院
岐阜県総合医療センター
岐阜県立多治見病院
岐阜市民病院
岐阜大学医学部附属病院

杏嶺会
(尾西記念病院・
上林記念病院)
江南厚生病院
公立陶生病院
公立西知多総合病院
小林記念病院
済衆館病院
市立伊勢総合病院
聖霊病院
総合犬山中央病院
総合大雄会病院
総合病院中津川市民病院
大同病院
知多厚生病院
中京病院
中部ろうさい病院
津島市民病院
東海記念病院
常滑市民病院
豊川市民病院
トヨタ記念病院

豊田厚生病院
豊橋市民病院
名古屋医療センター
名古屋掖済会病院
名古屋市病院局
(東部医療センター・
西部医療センター)
名古屋市立大学病院
名古屋大学医学部附属病院
名古屋第二赤十字病院
成田記念病院
西尾市民病院
はちや整形外科病院
半田市立半田病院
藤田保健衛生大学病院
増子記念病院
松阪市民病院
松波総合病院
みよし市民病院
八千代病院
山下病院

 

※読者の皆さまへ
<LINKED>は生活者と医療を繋ぐ情報紙。生活者と医療機関の新しい関係づくりへの貢献をめざし、中日新聞広告局広告開発部とPROJECT LINKED事務局・HIP(医療機関の広報企画専門会社)の共同編集にてお届けします。

企画制作 中日新聞広告局

編集 PROJECT LINKED事務局/有限会社エイチ・アイ・ピー

Senior Advisor/馬場武彦 
Editor in Chief/黒江 仁
Associate Editor/中島 英
Art Director/伊藤 孝
Planning Director/吉見昌之
Copywriter/森平洋子
Photographer/越野龍彦/加藤弘一/ランドスケープ/空有限会社
Editorial Staff/伊藤研悠/村岡成陽/吉村尚展/國分由香/水野文恵
      /一色彩香/轟 亮佑/上田翔太/糸藤広江/小塚京子
      /平井基一/株式会社Switch
Design Staff/山口沙絵/古澤麻衣
Web制作/G・P・S/Media Pro

 

 

 


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