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病院を知ろう

西三河初、
〈TAVI〉始動。

 

 

安城更生病院


地域の未来を見つめ、
積み重ねてきた5年が
今、結実する。

main

「すぐに息切れし、いつも息苦しさがあった」。
そう話す大動脈弁狭窄症の女性患者。悪化すれば命にかかわるものの、高齢のため開胸手術ができない。
そんな追い詰められた彼女を救ったのが、経カテーテル大動脈弁留置術、通称<TAVI>。
安城更生病院で行われた、西三河地域初の最新治療を追った。

 

 

 

 

 

胸を開かない。心臓を止めない。
最新治療<TAVI>が治療困難な患者に福音をもたらす。

!cid_BF3C1209-8F65-486A-A2B5-4EF06512002A 平成28年5月某日、安城更生病院で初めてのTAVIが行われた。患者は80代後半の女性。治療を行うのは総勢20名の同院ハートチーム(※)だ。麻酔のかかった患者の鼠径部(足のつけ根)からカテーテル(直径6㎜ほどの管)を血管に入れ、治療が始まった。執刀医は循環器内科の子安正純医師。モニターで確認しながら、血管を傷つけないよう注意深くカテーテルを心臓まで進めていく。心臓に到達すると、機能しなくなった大動脈弁の代わりに、人工弁(人工的に作られた心臓弁)をつけ、今度はゆっくりとカテーテルを抜いていく。最後に、3㎝の傷口が縫合されると、手術室は安堵の空気に包まれた。
 この患者の病名は、大動脈弁狭窄症。大動脈の出口にある弁が硬くなり、開きが悪くなって血流が妨げられる病気で、重症化すると、突然、死に至ることもある。根本的な治療としては、開胸して一旦心臓を止め、人工弁を取りつける外科的手術が、標準治療となっているが、高齢者は外科的手術に体が耐えられないという問題があった。命の危険があるのに治療ができない。これを解決したのが<TAVI>だった。
 TAVIとは、平成14年にフランスで考案され、日本では平成25年10月に保険適用となった大動KX0A6962脈弁狭窄症の新しい治療法。足のつけ根からカテーテルを入れる方法と、肋骨の間から直接心臓にカテーテルを入れる方法の2つがある。治療にあたっては、使用するカテーテルが通常のカテーテルより太いため、高い技術が必要。さらに、TAVIの途中で開胸手術が必要になった際、すぐに対応できるよう、カテーテル治療で使用する血管撮影装置と、手術台が組み合わされた特別な手術室<ハイブリッド手術室>を持つことが、TAVIを実施する上での条件だ。
 TAVIの最大の特徴は、根本的治療でありながら、胸を開かず、心臓も止めない低侵襲治療であること。しかも手術時間は1時間半と、開胸手術に比べて3時間ほど短い。最新治療<TAVI>は、今まで開胸手術ができなかった患者を救うだけでなく、その低侵襲ゆえに、患者の早期回復に繋がる治療法なのである。

※ 循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医、看護師、臨床工学技士、診療放射線技師、臨床検査技師、薬剤師、理学療法士などで構成。

ボックス1(知ろう)

 

将来を見据え、万全を期してTAVIを導入。
地域に先端医療を届け続けていく。

 KX0A6730 最新治療<TAVI>を行うため、同院は周到に準備を積み重ねてきた。まず5年前から、導入に向けた会議を実施。患者の安全確保のため、リスクや対策を徹底的に洗いだした。そして平成26年に、ハートチームを結成。4施設への見学、計6回のシミュレーション、月2回の勉強会と、TAVIの技術と知識の習得を入念に図り、安全にTAVIが行えるよう、チームの完成度を高めていった。平成27年には、ハイブリッド手術室も完成。ついにTAVIを実施する体制が整う。
 そのなかで、中心的な役割を果たしたのが、子安医師だ。子安医師は、関連論文を読み込み、自主的に研究会にも参加。この最先端治療の知識を深めていく。そして、そこで得た知見をチームに伝えるべく、積極的に勉強会を開催。さらに、TAVIの詳細な手順書を作成し、メンバーが自身のやるべきことを滞りなく行えるよう図っていった。飽くなき安全への追求と、チームが一体となった取り組み。これが、西三河地域初のTAVIに繋がったのである。
528A0235 「思った以上に周到な準備でした」。子安医師をそう評価する循環器内科の竹本憲二代表部長はこう続ける。「超高齢社会において、低侵襲なTAVIはますます重要になります。それに今後、臨床データが揃い、デバイス(医療用具)も進化すれば、TAVIはますます多くの患者さんに活用できるようになる。そのとき、第一線に立っていくのは、今、中堅の子安先生。だからこそ、彼をTAVIの担当に選んだのです」。
 地域の未来を見据え、地域が必要とする新しい治療<TAVI>を導入した安城更生病院。新たな治療に取り組むことは、地域の基幹病院としての務めであり、それはこれまでもこれからも変わらない。初手術から約2カ月後の7月現在、同院では5例目のTAVIが無事終わった。安城更生病院の果敢な挑戦はこれからも続いていく。

ボックス2(知ろう)


 

column

コラム

●安城更生病院には、多職種が集まり、それぞれの専門知識や技術を集約した各種センターが26ある。そのうち、ハートチームの基になったのが、循環器センターだ。同センターは平成14年に開設。循環器内科と心臓血管外科が有機的に統合し、24時間365日体制で治療にあたってきた。竹本部長は言う。「ハートチームを創る上で苦労は全くありませんでした。もともと当院は科や職種の垣根が低く、気兼ねなく意見が言える環境。それがチームの団結力を生んでいます」。

●加えて、患者第一の姿勢も同院の特徴だと竹本部長は話す。「TAVIはある意味、心臓血管外科の領域を侵す治療法です。でも当院の心臓血管外科は、『TAVIで患者さんが楽になるなら、一緒にどんどんやりましょう』というスタンス。あくまで患者さんが中心なんです」。

●長年に亘り培われたチーム医療の伝統と、あらゆる活動の原点に据えられた患者中心の医療。TAVIの実現と成功は、成るべくしてなったものといえよう。

 

backstage

バックステージ

最新治療の提供を担う
基幹病院としての責任。


●地域の基幹病院には、地域が必要とする新たな治療を率先して提供する使命がある。その際に大切なのが、いかに安全に患者に届けるか、ということである。

●たとえばTAVIの場合、事前の研修やシミュレーションに加え、最初の8例までは、プロクターとよばれるTAVIの指導医のもと、治療を行う。安城更生病院も、患者の選定から3人のプロクターに相談。当日は、慶應義塾大学病院に在籍するプロクター1人、同院の医師10人を揃え、万全の安全体制を整えた。

●病気に苦しむ患者のなかには、新たな治療法に望みをかけている患者も多い。しかし、もし何か不測の事態があれば、その治療法自体が停滞しかねない。最新治療を待望する患者に、いかに安全に、いかに早く最新治療を提供していくか。それが基幹病院に課せられた使命なのである。

 


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