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明日への挑戦者

特色ある二つの病院で
生活復帰に挑む。

 

 

杏嶺会(尾西記念病院・上林記念病院)


重症患者も認知症患者も幅広く受け入れ、
在宅への復帰をめざす。


main尾張西部医療圏(一宮市・稲沢市)において、急性期医療に特化した一宮西病院を中心に、4病院2施設と在宅医療・介護を支援する各種事業所を通じ、急性期から在宅まで幅広い医療を展開する社会医療法人杏嶺会(きょうりょうかい)。
今回はその多様な事業のなかから、
尾西記念病院と上林記念病院で提供している<回復期リハビリテーション医療>にスポットを当て、同法人がめざす回復期リハビリテーション医療のあり方を探った。

 

 

 

 

 

尾西記念病院と上林記念病院、
法人内の二つの病院がそれぞれ特色ある
回復期リハビリテーション医療を展開している。

 病気や怪我で障害を持った人に対し、心身機能の改善を促すリハビリテーション医療。これは、回復過程によって、急性期、回復期、生活期(維持期)の3段階に分けられる。まず、発症・受傷後の間もない急性期では早期離床をめざしたリハビリテーションが行われ、その後の回復期で、退院後の生活を見据えた集中的なリハビリテーションを実践。そして、生活の場に戻った後も、身体機能の維持、生活の質の向上をめざしたリハビリテーションが継続される。杏嶺会では、総勢274名にのぼるリハビリテーションスタッフ(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)を投入し、患者の在宅復帰をめざしている。
尾西リハ室 今回、紹介するのは、最も集中的に訓練を行う回復期リハビリテーションの取り組みである。杏嶺会では、尾西記念病院と上林記念病院に、合計188床の回復期リハビリテーション病棟を開設する。
 その一つ、一宮市南西部にある尾西記念病院は、内科・外科をはじめ全13科の診療科を持ち、急性期から回復期までの医療を提供している。<地域を大事にする>という同院の哲学のもと、医師、看護師、リハビリスタッフなどが一丸となり、地域のニーズにあわせたリハビリテーションを提供している。その結果、日常的な基本動作を評価する機能的自立度評価(FIM利得※)において、同院は23・3をマーク(平成26年度)。これは、全国平均16・7をはるかに超える優れた実力を示すものだ。リハビリテーション科部長の山村裕明医師は同院の特色について「質と密度の高さが特色です。質の高さでは常に学KX0A8503会情報などをチェックし、有効なリハビリテーション技術や知識を取り入れています。また、<地域の患者さんをより良くしたい>という想いから、西尾張エリアで初めて(平成28年4月)、最新リハビリ機器<アルターG>を導入し、下肢障害のある患者さんの歩行訓練に効果を上げています(詳しくはコラム参照)。密度の高さでは、実生活の自立を見据え、患者さん個々のプログラムを作成し、それに基づいて集中的な訓練を行っています。遠方にいかなくても、この地域で効率的なリハビリテーション医療の提供をめざしています」と語る。
 一方、尾西記念病院から北方へ車で15分ほど行ったところにある上林記念病院は、一般のリハビリテーションだけでなく認知症も含む精神科領域の治療にも力を注いでいる。上林記念病院・回復Plus顔写真1期領域管理師長の齊藤良枝看護師は、「徘徊や奇声など、認知症の周辺症状があると、訓練や病棟生活に支障を来します。そのため、認知症の方が骨折などをして訓練が必要になっても、なかなか受け入れる回復期リハビリテーション病棟はありません。そういう方々を率先して受け入れることこそ、当院の重要な役割だと考えています」と話す。同院では、認知症や精神疾患を持つ患者に対して、心の安定を図る専門的なアプローチを併用しながら、在宅復帰をめざした訓練を行う。また、脳卒中後に、うつ病を発症した患者に適切に対応できるのも、同院の強みとなっている。こうした専門性の高い医療の展開が評価され、同院には、一宮市・稲沢市はもちろん、名古屋市、岐阜市、羽島市など広域から患者が訪れるという。
 地域のニーズに応えるリハビリテーション医療を提供する尾西記念病院と、社会問題でもある認知症に真っ向から向き合い、認知症を抱える高齢者のリハビリテーションを担う上林記念病院。二つの特色ある病院機能をフルに活かし、杏嶺会では多面的な回復期リハビリテーション医療を展開している。

※ FIM利得は日常生活活動の改善度を示す指標。FIM利得が高いほどリハ効果が高いことが示される。

ボックス(挑戦者)

 

<予防から在宅まで>をキーワードに
質の高いリハビリテーション医療で
高齢者を支えていく。

 Plus顔写真2杏嶺会では法人内の多様な施設のリハビリテーションを統括するセクションを設け、全体の運営にあたっている。その責任者(リハビリテーション科統括部長)である小倉清孝(理学療法士)に、今後のビジョンについて聞いた。
 「私どもの回復期リハビリテーション医療の機能をフル発揮していく上で重要なのは、やはり地域連携です。同じ地域にある急性期病院との<前方連携>、退院後の在宅療養を支える診療所や在宅サービス事業所との<後方連携>をそれぞれしっかり深めていきたいと思います。また、これから、地域医療の提供体制が<病院から在宅へ>と移っていくことを考えると、生活期リハビリテーションの支援がより重要になると考えています。当法人の回復期リハビリテーション病棟では、患者さんの退院前に行うご自宅訪問はもちろん、退院後も1カ月後に必ずリハビリテーションスタッフが訪問し、回復した身体機能を維持できているか、日常生活動作で困りごとはないか確認しています。今後もそうしたきめ細かい支援を通じて、ご自宅で暮らす患者さんを支えていきたいと思います」。
KX0A8821 その一方で、小倉はこれからの超高齢社会を見据え、予防リハビリテーションにも目を向ける。「高齢になるほど脳卒中や認知症を発症しやすく、また転倒リスクも高まります。でも、適切な栄養管理や運動をすることで病気や怪我の予防に繋がります。私たちがこれまで培ってきた運動療法のエビデンス(科学的根拠)を活かし、地域の皆さまの健康作りに貢献していきたいと考えています」と意欲を見せる。
 杏嶺会の理念は「街と人が明るく健康でいられますように」。その理念に基づき、同法人はこれからも、法人内の連携、地域全体の連携を深めつつ、予防から在宅までの道筋を、濃密なリハビリテーションで支えていく。


column

コラム

●杏嶺会では、効率的なリハビリテーション医療を積極的に取り入れている。たとえば、片麻痺のリハビリ療法として注目される「川平法(促通反復療法)」。これは、こわばって動かない手指を1本ずつ伸ばす施術を繰り返すことで、脳卒中で遮断された神経回路に働きかけるもの。同法人では、川平法の考案者である鹿児島大学の川平和美名誉教授のもとに職員を派遣し、そこで直接研修を受けた者を尾西記念・上林記念の両院に配置している。

●また、尾西記念病院では、アスリートの早期競技復帰を助ける機器としても注目される反重力トレッドミル「アルターG」を導入。空気圧を利用し、体重の負担を軽くして<立つ・歩く・走る>訓練ができることから、下肢・膝に障害を持つ患者の訓練に役立てている。これからも同法人では、最新機器を取り入れ、地域のニーズに応えるリハビリテーション医療を追求していく構えだ。

 

backstage

バックステージ

生活機能を高める
リハビリテーションの重要性。

●「訓練すれば、失われた機能を元通りに回復できる」。リハビリテーション医療は、しばしば、そんなふうに誤解される。しかし、実際の目的は、失われた<身体機能>の改善を促すとともに、残された身体機能を最大限に活用して、日常生活活動の向上をめざす。すなわち、食事、排泄、着替え、買い物などを自分でできるように促す、いわば<生活機能>を高める訓練である。

●地域の高齢化に伴い、これからは、重度の障害を持っていても、病院を退院して在宅で暮らすことが求められていく。その不自由な生活をより過ごしやすいものにするには、身体機能とともに、生活機能を高めるリハビリテーションが欠かせない。杏嶺会はその重要性を認識し、生活を取り戻すためのリハビリテーション医療の面展開に力を注ぐ。地域で存在感を高める同法人の挑戦に期待したい。

 


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