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シアワセをつなぐ仕事

内視鏡看護。
私はこの道を極めていく。

 

 

桒原ともみ/山下病院 検査センター


看護の心と、高い専門性。
内視鏡技師の資格を持つ
看護師が、患者を支える。

main愛知県一宮市にある山下病院は、消化器疾患に特化した病院である。
いち早く高度な検査、治療法、そして、医療機器を整え、高い水準を維持しながら、地域のニーズに応え続ける。
その山下病院に勤務する桒原ともみ看護師。
内視鏡技師資格の取得をきっかけに、看護師としての彼女の可能性が大きく開花した。

 

 

 

 

 

海外で内視鏡看護を指導する。
その出発点は、自分の専門知識の低さが
患者の負担を大きくすることへの心の痛み。

 Plus顔写真 平成28年6月26日、山下病院の桒原(くわばら)ともみ看護師はタイに降り立った。この日から7月1日まで、タイ国立がんセンターで内視鏡看護の指導を行うのだ。海外での看護指導は、これで2回目。平成26年にはベトナムの医療支援活動の一員として参加した。
 今回の派遣は、厚生労働省による国際医療展開推進事業の一つである。桒原は、名古屋大学医学部附属病院の後藤秀実教授(消化器内科)を団長とする、医師と看護師ら10名のうちの一人。がんセンター看護師の検査介助・看護の確認、問題点や改善点の指導・助言を果たすのが目的だ。
 こうしたメンバーに選ばれるには、当然、キャリアを有し、指導できる能力が不可欠だ。桒原は、看護師として25年、そして、消化器内視鏡技師(以下、内視鏡技師)として14年の実績を持つ。
 内視鏡技師(日本消化器内視鏡学会認定)とは、内視鏡検査・治療の介助、内視鏡装置の管理・整備などを行う専門職である。近年、内視鏡検査・治療の普及、進歩に伴い、その取り扱いには高い専門知識や技能が求められており、医療分野で注目を集める専門資格だ。
山下病院_066 なぜ桒原は内視鏡技師の資格を取得したのか。「以前に勤めていた病院で、初めて内視鏡に携わりました。専門知識が浅いまま治療の介助を行い手間取ってしまったときに、ズバリ、『ちゃんと解ってやってるの?』と医師に言われてしまいました。イライラしているのも解って…。そうなると、検査や治療時間が延び、その分、患者さんの負担が増すのです。自分の悔しさより、患者さんに影響を与えてしまうのがとても辛かった」。
 「内視鏡技師の資格を取ろう」と決意した桒原は、2年の内視鏡経験、規定回数の内視鏡技師学会参加、機器取扱セミナー・医学講義受講などを経て、医学試験、内視鏡学術試験、口頭試問に挑戦。見事合格する。「専門的な視点で見ると、内視鏡って奥が深い。学べば学ぶほど、興味が高まりますね」と桒原は言う。
 平成15年、桒原は山下病院に就職。同院で、内視鏡技師資格を持つ看護師第一号として検査センターに配属される。

ボックス(シアワセ)

 

いつのときも看護師としてのスタンスは守る。
それが、患者が楽に、安心して、
そして、安全に、診療を受けることに繋がる。

山下病院_172 看護師の業務には、<診療の補助>と<療養の世話>の二つがある。<診療の補助>とは、医師が行うべき医行為の一部を、医師の指示に基づき行うもの。<療養の世話>とは、病状の観察、環境整備など、看護師が主体的に判断して行うものだ。その目線で考えると、内視鏡検査・治療の介助、内視鏡装置の管理・整備という内視鏡看護師の業務は、まさに診療の補助といえるのだが…。
 「私が資格を取った頃、内視鏡検査・治療は、安全・確実が第一でした。それがスムーズに流れ、終了後、患者さんに異常がないと解れば、『どうぞお帰りください』で終わっていたんです。安全・確実はもちろん大切です。内視鏡技師として、それを守らなくてはいけない。でも、内視鏡は患者さんにとって辛いものです。看護師が側にいるのに、本当にそれでよいのだろうかと、疑問を抱いていました」。その疑問を持って、桒原は、山下病院にきた。
 現在、検査時における山下病院の内視鏡看護師の役割は三つに分かれる。まず<前処置係>は、カルテをもとに、当日の患者をしっかりと観察。体調や服用薬剤、心理的状況などを確認するとともに、検査について再度丁寧に説明。その過程で何らか問題を発見したら、医師に相談して対応を考える。その上で、患者がどういう状態で検査に入るのか、次の<直接介助><患者担当>に正確に伝える。両名はその情報を引き継ぎ医師にも伝えつつ準備を行う。<直接介助>が機械のセッティングを行い、進行中は検査介助を行いつつ<患者担当>と共に患者の状態を観察し声をかける、背中をさする、ときには手を握り続けることもある。そして終了後は主に<患者担当>が、患者さんの血圧測定を行い反応や表情など状態を観察。異常がなければそれで終了となる。
山下病院_094 「患者さんに、いかに楽に、安心して、安全に検査や治療を受けていただくか。それが内視鏡看護師にとって一番大切なことです。診療する医師の補助はきちんと行いますが、私たちの目線は患者さんにあります」と桒原は言う。
 山下病院では、桒原たち内視鏡看護師が、患者にとってハードルの高い内視鏡検査・治療を、看護という視点から患者を見つめ、患者を支え続けている。

 

 

 


 

 

columnコラム

●山下病院の歴史は長い。明治34年(1901年)、地域住民の要望に応え、尾張地方唯一の病院として開設されてから、116年を数える。その歳月において受け継がれてきた精神は、<心のかよう医療>。常に地域が必要とする病院経営に努めてきた。

●現在では、内視鏡医が行う消化器の上部・下部内視鏡検査は年間約1万2千件の実績。また、内視鏡ESD・EMR(内視鏡的粘膜下層剥離術・内視鏡的粘膜切除術)から、外科医による腹腔鏡下手術・開腹手術まで、苦痛の少ない診断法・治療法を取り入れ、一宮市を中心に、地域全体の消化器疾患に対応する専門病院として、高度な医療提供を実現している。

●その背景にあるのは、職員のレベル向上への努力。学会活動・研究会への出席の奨励、外部の著名な医師の招聘、院内勉強会の開催、診療所の医師と学ぶ勉強会など、医療技術向上に向けて全職員が研鑽を続けている。

 

backstage

バックステージ

看護を活かし、常にアップデートする。
個人の成長は、病院の成長に繋がる。


●内視鏡技師になるには、基礎医学として解剖学、生理学、病理学、薬理学、疫学・衛生学、内科学、麻酔学、外国語(医学用語)を。また、消化器内視鏡に関しては、内視鏡学総論、内視鏡検査と診断、内視鏡的治療を学ぶなど、専門特化した資格といえる。

●その資格を桒原ともみ看護師が取得した目的は、あくまでも看護をベースに置き、それを活かすために、高度にアップデートし続けるためである。学会発表、論文作成。彼女の学びは常に進行形だ。

●本文でも紹介したが、桒原の<診療の補助>は、決して医師の補助ではない。但し、彼女のような人材が医師をサポートするならば、医師の医行為も円滑に進めることができ、医師自身の能力を最大限に活かすことができるだろう。
●山下病院は、内視鏡技師の資格をめざす看護師を、積極的に支援している。専門性を追求したいという人材と、彼らを後押しする病院の一体感が、同院の底力を示している。

 

 


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