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新救急棟を最大活用し、
質を上げ、成果を問う。

 

 

白瀬裕章(救急看護認定看護師)/岡崎市民病院 救命救急センター


看護の質をさらに向上させ、
広域医療圏の救急医療を
守り抜いていく。

mainきっかけは、小学4年生のときに友人宅で起きた火災だった。
やけどで苦しむ友人の母を心配し、一緒に救急車へ乗り込んだ少年。
彼が病院で目にしたのは、誰よりも頼もしい看護師の勇姿だった。
「何とかしようと必死になってくれている姿に憧れました」。
その後、彼は、救急看護認定看護師となった。
憧れの職を得た看護師の奮闘が、岡崎市民病院の救急医療を支えていく。

 

 

 

 

 

認定取得で得た高度な知識を活かし院内の教育に力を発揮。
トリアージの質を高めて救急医療の底上げを図る。

 629073ある日の深夜、一人の男性高齢者が、岡崎市民病院の救命救急センターを訪れた。混雑する救急外来で、診察の順番を待つ。空咳が何度も出る。その横を、白瀬裕章看護師が通りかかる。そして、足を止めた。空咳と、苦しそうな呼吸音を耳にしたのだ。白瀬は男性を見つけるとすぐに脈拍、熱などを計り、顔色や全身状態を観察しながら「いつから具合が悪いですか?」と聞く。「昨夜くらいから押さえつけられている感じが…」。白瀬は気管支喘息の重積発作を疑い、患者に「息が苦しそうですね。すぐに医師を呼び、治療を開始します」と告げ、その場で医師に連絡を入れた。重積発作とは、喘息発作が24時間以上続くもの。放置すると窒息、意識障害、心停止などに繋がる。
629134 白瀬が行ったのはトリアージと呼ばれるもの。救急患者を看て、重症度に基づき治療の優先度を決定することである。白瀬は言う。「医師が診察するまで、看護師が責任を持ち患者さんの安全を守らなくてはなりません。軽症に見えて実は重症という患者さんを、見極めることが重要です。トリアージは、救急看護には必須の能力ですね」。前述の患者も、空咳、呼吸音に加え、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色となる状態)が現れており、白瀬はすぐに重積発作を疑い、迅速な診療に繋げたのである。
 白瀬は、少年時代の経験から、救急看護師の道を志し、平成18年、岡崎市民病院に入職。以来ずっと救急看護に携わり、平成26年に救急看護認定看護師の資格も取得した。それ以降は、自らの知識・技術を発揮するとともに、救命救急センター看護師の指導・教育に力を注ぐ。トリアージ能力の標準化もその一つ。救急現場の緊急度判定システムであるJTASを取り入れ、経験の少ない看護師でも、安全・確実に、トリアージできるよう取り組んでいる。
 入職11年目、これまでを振り返り白瀬は「この病院で、めざした道をずっと歩いてきました。ただ、以前の救命救急センターはとても狭く、煩雑ななか、何とか患者さんに対応してきたのが本音です」と苦笑いする。ボックス(シアワセ)

 

 

 

満床警報が鳴り続けるなか断らない救急を、支え続けてきた。
新救急棟を舞台に、救急看護の可能性を見つめる。

629092 西三河南部東医療圏で唯一の三次救急病院、岡崎市民病院・救命救急センター。重症から軽症まで、年間約1万台を数える救急搬送、独歩の救急患者を幅広く受け入れ、同院の病床稼働率は、ほぼ100%の時期もあった。病床の空きがないときは、救急外来のベッドで一時的に患者を預かり「断らない救急」をずっと実践してきた。
 また、ドクターカーも早期に立ち上げ、一日平均3〜4件に対応。病院で救急患者を待つのではなく、攻めの救急で、地域住民の命を守り続けてきた。
 そんな岡崎市民病院に、平成27年秋、新たな救命救急センター棟(以下、救急棟)が完成。救命救急センターを取り巻く環境は一変した。15床の専用病床、MRI、CTなど最新の専用検査装置も備わり、より機能的で充実した診療環境が整ったのだ。以前に比べて、患者の救急外来滞在時間も短くなり、専門治療に繋ぐスピードも一段と向上。名実ともに、岡崎市・幸田町からなる西三河南部東医療圏唯一の救命救急センターとして、万全の体制が整ったのである。
629043 そうした環境のなか、白瀬は今、一つの意識を高めている。救急看護における<アウトカム>、すなわち、成果である。「認定資格を取るための教育課程で一番学んだのは、アウトカムです。僕が行ったことに対して、それで終わりではなく、患者さんにどのような利益がもたらされたか。今はそれが大事だと考えています」。
 救急看護におけるアウトカムといった場合、救命率、不応需率など、数値で表せるものが思い浮かぶ。そうしたものは、救命処置を通して患者の命をまず繋ぐ、繋いだ上で、的確に専門医に繋ぐ、その結果、患者の利益となって表れてくる。だが白瀬が考えるのはそれだけではないようだ。白瀬は言う。「看護は、患者さんに寄り添って行うものです。その視点で考えると、救急看護という一瞬のステージで、患者さんの思いに立ち、そして寄り添い、結果、いかに適切で安心できる医療・看護を提供することができるのか…。救急棟というすばらしい環境が与えられたのですから、それをフルに活用して、答えを見つけていきたいと思います」。

 

 

 


 

 

columnバックステージ

●岡崎市民病院・救命救急センターの看護師たちが、今、全員で取り組んでいるのが、看護の質の均てん化である。本文で紹介したトリアージの高度化もその一つ。指導・教育を繰り返している。

●院内の病棟看護師に対しても、スキルアップ研修を年3〜4回実施。病棟患者の急変時の対応を中心に、白瀬をはじめとする救急看護認定看護師が講師やアドバイザーを務め、全病院の看護師がより広い視野を持った看護実践に取り組んでいる。

●院外での活動もある。白瀬は、地域の病院、岡崎市立看護専門学校などで、BLS(一次救命処置)をはじめ、緊急時、急変時での講義を実施。「いろいろなところから声をかけていただき、これまで培ってきた知識や経験を、少しでも広げることができるようになりました。ちょっとした相談に乗ることも含め、少しでもみんなの力になれるのは、現場とはまた違った喜び、やりがいを感じますね」(白瀬)。

 

backstage

コラム

課題だったハードを造り替え、
地域医療の最後の砦として機能する。

●岡崎市民病院がある西三河南部東医療圏は、岡崎市と幸田町という広域医療圏だ。人口は40万人超を数えるが、人口10万人当たりの病床数、病院勤務医数は、全国平均に比べて極端に少ない。

●岡崎市民病院の救命救急センターは、昭和57年の開設以来、地域医療の最後の砦としての役割を担ってきた。「24時間365日、受け入れ要請を断らない」を目標とし、不応需率(受け入れを断る率)は約0.6%(平成27年度実績)。また、ドクターカーによる攻めの救急を実施し、病院という点ではなく、医療圏という面を意識した救急への挑戦も果たした。

●課題は、救命救急センターの手狭さだった。これまでは、限られたスペースで大量の救急患者に対応してきたのだ。

●それを解消し、市民にもっと大きな安心・安全の救急医療提供を、そして、職員の能力を十二分に発揮させるために建設した、新救急棟。これまで培った救急機能を、最大限に活かした展開が始まったといえる。

 

 


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